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フロートは、後ろに控えていた黒装束の姿の男たちへ指示を出した。


指示を受けた黒装束の男たちは、ロロとルルが連れて行かれたほうへと走って行く。


そしてフロートは、パレットの元へゆっくりと近づいて来た。


パレットは再び弓をヴァイオリンへと当て、魔力を込めた音を奏でる。


ヴァイオリン組曲 断罪のワルツ――。


先ほど防護服を着た大人たちにしたように、音が黒い霧へと変化してフロートへと向かって行く。


「子どもが音を具現化させただと?」


フロートはそういうと、自身の右手に魔力を込めた。


するとどうだろう、降る雨さえも吹き飛ばしそうなほどの光が、彼の右手から発せられる。


「ルヴィの言う通り大した才能だ。だが、その程度の魔力で私は止められないぞ」


フロートはその魔力を込めた右手で、パレットの奏でた音――黒い霧を簡単に打ち消した。


パレットはすぐに次の曲に入ろうとしたが、ヴァイオリンが鳴る前に、フロートが一瞬で間合いを詰める。


こんな大きな体で何故そんなに早く動けるのか?


パレットがそう思ったときには、彼女はもう地面に押さえ付けられていた。


「お前がパレット·オリンヴァイだな。あまり乱暴な真似はしたくないが、こちらもこれ以上振り回されるわけにはいかないのでな」


「あなたスカイパトロールでしょ!? ロロを捕まえようとするなんて、ぜったいになにか誤解してるよ!」


フロートは、パレットを地面に押さえ付けながら、誤解などしていないと返事をした。


それから自分の立場と名前をパレットへと伝える。


「私たちが彼を捕まえようとしているのは、彼が犯罪者だからではない」


「じゃあなんでよ!? ロロはただ空疫病(くうえきびょう)について知りたがっているだけなんだから、放っておいてあげて!」


「まあ落ち着いてくれ。とりあえずどこか屋根のあるところ行こう。ここでは風邪をひいてしまうぞ」


そういったフロートは、パレットを押さえ付けていた手に再び魔力を込めた。


すると、パレットの体に鎖が巻き付けられ、彼女はあっという間に拘束される。


拘束魔法はスカイパトロールの基本中の基本だが、今フロートがやったように、片手で鎖を具現化させるには相当の修行が必要だ。


ルヴィがフロートのことをからかってはいるため、他人から笑われやすい彼ではあるが、そのたしかな実力でスカイパトロールのリーダーとなった男である。


「放して! 放してよ! じゃないととんでもないことになるよ!」


身動きができなってしまったパレット。


だが、それでも喚きながら激しく暴れていた。


その姿は、海岸に打ち上げられた哀れな魚のようだ。


フロートはそんなピチピチと跳ねるパレットのことを無視して、自分の肩に彼女を担ぐ。


「ロロとルルのところへ行かせて! 彼、なんかこの街に来てから変だったのよ!」


それからフロートは、パレットが何を言おうがいくら暴れようが無視を継続。


そのまま雨の中を歩き始めた。


その後も、結局何もできないパレットは、この街にあった警察署――スカイパトロールの屯所(とんしょ)へと連れて行かれる。


その中で彼女は――。


拘束魔法を解かれ、大きなタオルを渡され――そして牢へと閉じ込められた。


パレットは、自分がスカイパトロールに捕まったことよりも、様子の変だったロロのことばかり考えていた。


仮設テントで見た空疫病の患者たちを見たときの彼の姿が、まぶたに焼き付いて離れない。


「出して! ここから出してよ! ロロとルルに会わせて!」


渡されたタオルで体を拭くことも忘れ――。


パレットは牢屋の扉に向かってただ喚き続けた。

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