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それからルルが飛空挺へと戻ると、パレットはさらに高度を上げて雲の中を突っ切っていく。


空中大陸オペラの地面が見えなくなるまでさらに飛んでいく。


「見てよあれ! お日様があんなに近くに!」


雲を突き抜けるとロロが歓喜の声をあげた。


気がつけば太陽がもう手に掴めそうだと、手を伸ばして遊んでいる。


ルルははしゃぐ彼の姿を見ながら嬉しそうにしていた。


そして、久しぶりに飛んだせいなのか、グッタリと飛空挺の船体に寄りかかっている。


「自由だ! ぼくは今自由なんだ!」


港でもそうだったが、ロロはそのとき以上に興奮しているようで、太陽向かって一人叫んでいた。


パレットはそんな彼を見て、ずっと部屋に閉じ込められていたのかなと、改めて思っていた。


何故ならばそのときのロロは、常識では考えられないくらい喜んでいたからだ。


思えば大劇場の前――。


ルビィの家――。


楽器屋――。


港、そして飛空挺で上がった空――。


それらで見たロロの姿は、彼がこれまで不遇な境遇だったのではないかと、パレットに思わせるのには充分だった。


「そうだね。あたしたちは自由だ!」


そんなロロに続いて叫ぶパレット。


彼女は舵から両手を放して、思いっきり高く上げて広げる。


それを見たロロは微笑みながらまた叫ぶ。


「自由だ!」


「そうだよ! 自由だよ!」


パレットとロロは同じことを叫び合いながら陽の光を感じていた。


また風も、そんな二人を祝福するかのように穏やかに吹いている。


「まったく、そんなに何度も叫ばなくてもいいじゃないのよ」


グッタリと寄りかかっていたルルは、そんな二人を見て憎まれ口を叩いていた。


だが、その表情は言葉とは裏腹にとても嬉しそうだ。


それからパレットたちは、大空から見える光景を堪能すると、劇場街がとは違う別の街へ行ってみることに。


「今さらだけど、ルビィは大丈夫かな?」


心配そうにいうロロ。


パレットはそんな彼を元気づけようと、声を弾ませるようにして励ます。


「大丈夫大丈夫、心配いらないって。ルビィはあたしが知る限りこの大陸オペラ最強の人だよ。ちょっとやそっとのことでやられたりしないよ」


ロロのためにこうは言っているが。


パレットも実はルビィのことを心配していた。


ただでさえ居候させてもらって迷惑をかけているのだ。


そのうえよくわからない厄介ごとに巻き込んでしまい、本当に無事だろうか。


――と、ルビィに対して申し訳なさと共に、彼女の安否を気にしているのだった。


そのとき、パレットたちが今乗っているボートサイズの飛空挺に付いていた通信機がけたたましく鳴った。


パレットとロロ、そしてルル全員かビクッとなり、互いに顔を見合わせる。


そして、パレットが恐る恐る通信機のパイプ――受話器を手に取った。


「こ、こちらパレット。ど、どこのどちら様でしょうか?」


《こちらルビィ、って、なんであんたそんなに怖がってるんだよ?》


「ルビィ!? ルビィなの!?」


連絡をしてきたのはルビィだった。


その事を知ったロロとルルも、パレットと同じように喜んでいる。


それからルビィは、パレットたちに何か問題はないかと訊ねた。


どうやらパレットたちが今乗っているボートサイズの飛空挺は、しばらく動かしてなかったらしく、そのことを心配しているようだ。


パレットはこちらは問題ないと返事をすると、ルビィのほうは大丈夫なのかを訊き返す。


《こっちは大丈夫。まあフロート奴がうるさいけど。あいつはいつもあんな感じだからね》


ルビィは簡単にフロートとの関係性や、家に来たオペラの警察――スカイパトロールのことを話した。


パレットは追いかけてきていた黒装束の男たちがスカイパトロールだと知り、驚きを隠せないでいた。


ルビィは言葉を失っている彼女へ優しく声をかける。


《かなりショックを受けているみたいだけどさ。あの子が悪いやつじゃないのはわかるだろ?》


「う、うん……そうだね……」


《よし、それがわかっているならいいや。じゃあ空疫病(くうえきびょう)のこと調べるついでに、しばらくどっかで遊んできな》


ルビィはそういうと通信を切ってしまった。


パレットはぼうっとしたままパイプを戻すと――。


「ルビィは元気なの? 酷いこととかされてない?」


ロロが心配そうに声をかけてくるのだった。

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