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そういったフロートは、無理矢理に扉に手をかけてルヴィの家へと入ってきた。


ルヴィにからかわれたのあったのだろう。


その強引さは、まるで何かを誤魔化しているようだった。


「ちょっとあんたら!? 了解もしてないのに勝手に入って来るなよ!」


だがルヴィの言葉は届かず、フロートに続いて彼の部下である黒装束の男たちもあとに続いて侵入してくる。


フロートはまず一階の客間から調べ始めていた。


そこに誰もいないのを確認すると、すぐに別の部屋へと向かって行く。


「まったく、あんたらには女の一人暮らしに対する礼儀(マナー)ってもんはないのかい?」


ルヴィはそういいながら、あることを確認していた。


それはロロたちが隠れているだろう場所だ。


いつもと違う部屋の変化を不自然じゃないように目で探し、そして見つける。


テーブルの側にあった木箱の位置が変わっている。


いや、箱がひっくり返っていた。


「これでなにも出てこなかったら、あんたのあることないこと言いふらしてやるからね」


ルヴィはフロートに向かってそういうと、そっと屈む。


そして、木箱に顔を近づけた。


「くッ!? ルヴィお前、俺のないことばかり言いふらすつもりだろう!」


大声で叫び返すフロートを見て、黒装束の男たちはまたも笑い始めていた。


注意がそちらへと向いたとわかったルヴィは、そっと木箱に小さく声をかけた。


「ロロ、入っているんだろ? 返事はしなくていいからこのまま聞きな」


二階へ行けば、ボートサイズの飛空艇がある。


とりあえずそれに乗って逃げるんだと、ルヴィは指示を出した。


それから木箱を片付けるように見せ、足で引きずるように階段の近くまで運んだルヴィは、今度は大声をあげる。


「ああ~フロートッ! なにあたしの下着を物色しようとしているんだよ!」


「なッ!? そ、そんなことをしようとなどしていないぞ!」


「嘘だぁ~。だってあんた、そこの棚は私の衣類棚だぞ」


「し、知らなかっただけだ! だいたい俺がお前の下着なんぞに興味があると思っているのか!?」


「あれ~? 昔に私の着替えをのぞいたときは、顔を真っ赤にしてなかったけ?」


「の、のぞいてなどいない! あ、あのときはお前が着替えているなど知らなかったのだ! 部下たちの前で人聞きが悪いことをいうな!」


慌てて訂正するようにいうフロートを、黒装束の男たちは堪えながらも笑っている。


普段は厳格なスカイパトロールのリーダーとして振舞っているフロートだが、ルヴィの前ではただのシャイな男でしかないのが面白いのだろう。


狙い通りかうようにいったルヴィは、またも彼らの注意を引いたのだ。


その間に、コソコソと階段を上がっていくロロたち。


パレットがまだ気を失っているため、彼女を背負い、相当な気を遣って一段一段を踏みしめるように進んだ。


そして二階に着いたのだが、ルヴィがいっていたボートサイズの飛空艇がどこにあるのかがわからないでいる。


「ふむ。ここには誰もいないようだな」


「さっきまでは子どもや動物もいたんだけどね。どうやら私が知らない間に帰っちゃったのかも」


「ならば、次は二階を調べさせてもらうぞ」


「あら? なんだよフロート。私の寝室がそんなに見たいのかい?」


「ふざけるな! そんな理由で調べるわけではない!」


一階からはフロートとルヴィの声が聞こえてくる。


その会話を聞くに、彼らは次にロロたちがいる二階へと向かおうとしているようだ。


「マズい。どうしようルル? このままじゃ捕まっちゃうよ」


「わたしに任せなさい。今わかるやつを起こしてやるのよ」


ルルはそういうと、気を失っているパレットの体を押さえ付けるように指示を出した。


そして、さらに彼女の口から声が漏れないようにとも付け加える。


「準備はいいわね? さあ、いくなのよ」


ルルはそういうとパレットの首筋に噛みついた。


痛みで両目を広げるパレットだったが、ロロががっちりと押さえていたため呻いているだけだ。


「しー、静かにするのよ。連中に聞こえっちゃったらマズいじゃない」


ルルとロロの顔を見たパレットは、現状を把握はできずに混乱していると、ロロが優しく声をかける。


「ゴメンねパレット。起こす方法がすぐに思いつかなかったんだ」


それからロロは、今の状況を説明した。


パレットが気を失ってからルヴィの家に着いたのだが、そこへ追手がやってきた。


自分たちは二階にいて彼らは今一階を調べており、ルヴィが時間を稼いでくれている。


その間にボートサイズの飛空艇で逃げろと、彼女から指示があったのだと――。


状況を理解したパレットは、すぐにボートサイズの飛空艇を用意するために立ち上がった。


その間に一階では――。


「おかしいな……。からかってくるのはいつも通りだが。なんだか今日はいつも以上に過剰じゃないか?」


「なにをいってんだよ? いつもこんなもんじゃないの?」


「いや違う。……そうだった。ルヴィ、お前は何か隠し事あると、やり過ぎなくらいいつも通りに振舞おうとするところがあったな?」


「そ、そんなことないけど……」


そのとき、ルヴィの表情の変化に気が付いたフロートは、急いで階段へと走った。


「目標は二階だ! 俺以外の者は外を見張れ! いいか、絶対に逃がすなよ!」


ルヴィは、家中に聞こえるくらいの声で指示を出したフロートを見て、頭を抱える。


「あちゃ~、ちょっと調子に乗り過ぎたようだねぇ」


そしてその内心では、ロロたちが早く逃げてくれるよう願うのであった。

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