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僕は親戚のおばさんに呼ばれたの

 運転席の父は不機嫌だった。

 僕が相模原東署から歩いて数分にある豪邸、楊の婚約者の祖母の松野葉子宅に置いてきぼりにされた後に、彼は楊に一体何を吹き込まれただろうか。


 僕の完全なる庇護者にして最高の父親の端整な横顔を眺めながら、彼の憤懣やる方のない表情にやれやれと肩を竦める。

 彼は僕よりも堪え性が無く、激しやすく、破壊的な魔王でもあるのだ。

 そんな彼、百目鬼とどめき良純りょうじゅんは禅僧でもある。

 最近買ったランドローバーの新車であり愛車を運転する彼は僧衣姿で、足元は草履ではなくドライビングシューズだ。


 ちなみに、足元は戦闘時や仕事時には安全靴に変わり、装いは僧衣からツナギとなり、時として地獄の殺し屋のような黒スーツ姿にもなる。

 彼は債権付競売不動産の売買を専門とし、自らリフォーム業務もしてしまう、多才でやり手の不動産業者でもあるのだ。


「良純さん、かわちゃんの話って何だったのですか?」


「お前の淳平クンの犬騒動で、楊の愚痴を聞かされただけだ。」


 僕も葉子に淳平の「犬」騒動について聞かされたばかりだ。

 思い出して思わずブフっと吹き出してしまった。


「何がおかしい。」


 片手で丸型の黒眼鏡をずらし、切れ長で奥二重の目を金色に煌めかせて僕を睨みつけてきた。

 高い頬骨を持つその顔は貴族的で、色素の薄い瞳は光によって金色に輝く様は本当に悪魔的な美しさである。

 昼間は黒眼鏡を着用しないと目が痛いらしい不便さがあるようだが。


「僕も葉子さんから詳細を聞かされたのです。」


 僕が笑いながら答えると彼は大きく舌打をして、ずらした眼鏡を掛け直して運転に戻った。


 松野葉子はマツノグループの総裁でもある。

 よって、彼女の家は迎賓館のような公人スペースと南欧風の豪邸のような私人スペースを併せ持ち、公人スペースには松野の施設警備員だけでなく警察から派遣された警護の人までも詰め、メイドのようなスタッフ二名が常時待機しているのだ。


 僕や良純和尚が葉子宅に迎えいれられるのは、葉子自らお茶を淹れ料理を振舞ってもらえる私人スペースの応接間で居間である。

 けれども、今日は公人スペースの方だった。

 僕の親族である長柄運送の社長夫人である長柄由紀子が、僕に会いたいと僕の祖母に頼り、祖母から葉子に話が行ったからだ。


 祖母と葉子は女学院の先輩後輩の仲である。

 けれど、長柄運送は武本物産のとても近しい親族会社の一つでもある。

 そんな長柄運送の令嬢であり社長夫人の由紀子が僕に話があるのならば、普通に僕に会いに来るか僕を呼び出せば良いのに、わざわざ祖母や葉子を仲介したのには訳があると僕は不安になったのである。


 大体、良純和尚も由紀子とは面識があるのだ。


 そこで良純和尚に相談すると、彼も何かがあると考えたのか、新車にモルモットは乗せたがらなかった人が僕とモルモットを一緒に車に乗せてまで松野邸に駆け付けたのである。


 ちなみに、モルモットはアンズちゃんという可愛い名前があり、スキニーギニアピッグという子豚のような丸裸の子だ。

 ピンク色の無毛の身体に、とさかの様に鼻から頭にかけてちょこんとアンズ色の毛が生えているという、どこにもいない最高に可愛らしい女の子なのだ。


 そんな可愛いアンズと僕を車に乗せるほどに良純和尚が心配して駆け付けたにもかかわらず、松野邸に着いた途端に彼は楊に呼び出されてしまい、長柄夫人に会えず仕舞いだった、と、そういうわけだ。

 彼はそれで不機嫌なのだ。

 情報不足で事が起きたら後手に回るしかない。

 その後手の結果が僕の大怪我だったり誘拐だったりと、彼は何度も経験しているのだから、彼が不機嫌になるのは当たり前なのだ。


 僕は僕で良純和尚を見送ると、「また?」とウンザリしながらも葉子に尋ねたのである。

 彼女は元検事長でもあったので、警察関係の噂話は早いという情報通だ。


「良純さんが僕を置いて彼だけ楊さんに呼ばれたって、また僕関係の事件なのでしょうか?」

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