表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/24

009 戦闘訓練

 月曜日の朝。


 いつも通りに五人で登校して、教室に入ろうとした瞬間だった。


 いつもなら鳴らない時間に、チャイムが鳴り響く。


 何が有ったかと疑問に思っていると、校内放送が始まった。


「校長先生からお話が有ります。一年の皆さんの中で名前を呼ばれた方は、ドームに集合して下さい!!」


 校長先生に対して余り良いイメージが無い為、名前を呼ばれないように祈る。


 しかし、五人全てが呼び出される対象となった。


 また、前みたいな事が起きたらどうしよう。


 考えれば考える程に不安になったが、ドームに行かない事には、何が起こるのか分からない。


「行きましょう!」


 そう言葉を発したのは望で、コクリと頷く。


「また、前みたいな事にならないか不安なの……」


 不安そうなこのみを抱きしめる望。


「もしそうだとしても……。皆は私が守ります!!」

「嬉しいの……」


 凛々しい望のセリフ。


 見た目は綺麗な女の子なのに、王子様のセリフみたいでドキドキきてしまう。


 ここは、魔法少女学校だから男の子が一人もいない。


 そうなった環境で、女子にやたらと人気が有る望。

 二番人気が華。


 この二人は手作りのお菓子を女の子に貰ったりして、廊下を通っただけでも騒がれる。

 

 華に関しては、自分が女の子に騒がれている事に自覚が有りそれを楽しんでいるように見える。


 しかし、望にいたっては普通にしているだけでモテている感じだ。


 なんだか、セリフがキザというか……


 好みに関しては、スッカリその世界にハマっている様子で、望を「お姉様」なんて呼んでいる。


「お姉様は私の回復魔法で守るの!」

「このみの回復力は一年じゃ飛び抜けているので、頼りにしていますよ」

「は、はいなの!」


 そんなやり取りをしている間に体育館に辿り着いた。深く深呼吸をして中に入る。


 そこにいたのは、柔道着姿の校長先生。


 思い出したのは五人がかりで挑んでも、どうにもならなかった事実。


 不安の色を宿した瞳で校長を凝視してしまう。


「今日、お主らが戦うのはわしじゃ無いから安心するがよい。五人ずつのチームを作って少し戦って貰うだけじゃ」


 五人ずつの戦い。

 正直戦うなんて嫌で堪らない。


「五人のチームはこちらで決めてよいのでしょうか?」

「そこは、お主らに任せる」

「では、私達は今来たメンバーで戦います。残りの方はそれでよいでしようか?」

「異議なし!」

「では、皆が変身をするのを待つとするかねぇ!」


 そう言うと、体を動かし始めた校長先生。


 その度に、薄紫色の足首まで有る髪の毛が大きく揺れる。


「皆さん。変身しましょうか……」


 望の言葉を合図に変身を始める魔法少女達。


 相手の五人の武器を見る。


 一番気になるのは鞭と斧を持った、女性。


 鞭を持った女性は中世ヨーロッパの貴族みたいな格好をしており、斧の方は露出の高い鎧を装備している。


 今での経験から察するに、望や華と似たようなタイプだろう。


 分からないのが、フリフリのメイド服を着た少女が持っているブーメランだ。


 あとは、ロッドが二人。


 二人は双子なのだろう。顔は一緒で短いワンピースにかぼちゃパンツ。


 ただ、服の色が黒と白で対照的だ。

 回復が二人居るのだろうか。


「いつものようにしたら勝てるさ!!」


 斧の露出女がそう言ったかと思うと、双子が同時に「ラジャー」と返事をした。


 黒い服の方が呪文を唱えたかと思うと、露出女の周りに赤いオーラが炎の様に浮かぶ。


「ありがとよ!」


 斧をグルリと振り回したかと思うと、下に叩きつけ地面が裂けた。


 地割れがこのみに向かう。


「落ちて、ジ・エンド!!」

「危ない!!」


 望がこのみを抱き上げ安全地帯に移動させる。


「ありがとうなの……」

「お気になさらずに!」


 その間に、黒ロッドが鞭に呪文を掛ける。


 次は青い光が下から上へ上向した。


「なんの魔法だろう……」

「その人の持ち味のパラメーターを上げる魔法って所でしょうか」


 冷静に分析する、望。


「なんか、僕イライラするわ!!」


 そう言い残したかと思うと、鞭女に向かい突っ走った華だったが鞭が飛んで来た。


 器用に避け続ける華と鞭の動きはギリギリ目で追う事ができる。


「私も戦うよー!!」


そう言うと、真っ青で大きな鳥を呼び出すまなか。


「一緒に戦ってね!」


 鳥の羽を撫でると、上空に飛び立った鳥が空中から氷のブレスを吐く。


 斧がブレスを受け止めたが、体がボロボロだ。

 慣れた様子で回復魔法を唱える、白ロッド。


 あまりに激しい戦いに呆然としていると、ブーメランを投げる動作を見せた。


風なびいたかと思うと凄まじい勢いでこちらに飛んできたブーメラン。


 まるで生きている様な不規則な動きを見せたかと思うと、このみに向かって飛んで来た。


 望が庇ったが、肩にブーメランが当たり血が滴り落ちる。


「ご、ごめんなさいなの!」

「回復さえしたら、問題有りませんよ」

「そ、そうなの。回復なの……」


 オロオロしながらも回復魔法を唱えるこのみ。


 しかし、戻って来たばかりのブーメランを、再度このみに向かって投げる。


 それを望が盾で防いだ。


 このままじゃ、防御で一杯一杯だ__

 

 望みの前に移動すると、ロッドを握り締め光の壁をイメージする。


 ずっと、役に立たないのがコンプレックスでバリアをアレンジする練習は怠らなかった。


 練習の成果もあってか、二人分の大きさのバリアが張られる。


「これは、有難いです。七瀬! このみを任せても大丈夫でしょうか?」

「う、うん!」


 返事を確認すると、華の応戦に向かう望。


 まなかが出した青い鳥も再び戦闘に加わった。


 しかし、こんな事をしていたら三対五の闘いと変わらない為にこちらが押されてゆく。


 ボロボロになった望と華。

 魔力が尽きそうなまなかとこのみ。


 もう嫌__


 回復するとは言っても仲間がボロボロになるのを見るのは苦しいよ。


 もう、戦いなんて嫌だ!!


 時間を止めちゃって相手の武器を奪ったら、望と華の性格的に戦いを止めるだろう。

 

 時間を止めると懐中時計が空中に浮かぶ。


 何より、皆の動きが止まっている。


「急がなきゃ!!」


 自分の持つ最大のスピードで斧、鞭、ブーメランと回収した瞬間に誰かに話掛けられた。


「便利な魔法じゃのぅ……」


 突然、目の前に現れた校長先生がキョトンとした表情でこちらを見ている。


 時間を止めたはずなのに、なぜ動けるのだろう__


 そんな事を考えているうちに限界が来て、時間が動き始めた。


 私と校長先生以外の皆は戸惑っている状態で、混乱しているが、仲間は私が魔法を使った事を理解したようだ。


 自分の武器を取られている事に気付いた露出女が、こちらを睨む。


「なんで、お前が俺達の武器を持ってるんだよ!」

「なんでかねえ」


 そう、口にした校長先生は微かな笑みを浮かべた。


「武器を取られたら、ギブアップじゃのう! て、事で試合終了じゃ」


 試合の終了と聞いて安心する。


「お主らもゆっくりと休むが良い」


それだけ言うと、どこかに消えてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ