002 魔法学園に来ました!
突然の入学拒否。
なぜか、黒ずくめの男に真っ黒な長い高級感漂う車にに誘導され乗り込んだ。
最悪だ__
そう思っていたが、白いシートに座ってみたら今まで感じた事の無いようなフワフワとした座り心地に感動してしまった。
凄く長くて広い車内に、シャンデリアが白い光を放っている。
何より、何故か車内に備え付けられている光沢の綺麗な白の冷蔵庫の中身が気になって堪らない。
と、いうか。この待遇はまるでお金持ちが通う学校にでも連れていかれるのだろうか?
頭の中に、白い制服に身を包んだお嬢様達が上品な会話に花を咲かせている光景が浮かんで消えた。
いやいやいや。そんなはずない!
私の家はごくごく平凡な家庭であり、お金持ちが通う学校に行かされるだなんて有り得ない。
成績、運動神経、容姿。その全てに置いて普通な自分が特別な学校なんて無理な話。
そんな事を考えていたら、顔色一つ変える事無く冷蔵庫に手を伸ばした望。
ブロンドヘアーだからか、帰国子女のイメージがあるのか高級な雰囲気が似合いすぎて憧れてしまう。
冷蔵庫が開き、ついつい中身に視線をやると見た事の無いようなオシャレなドリンクがぎゅうぎゅうに入っていた。
「皆さん。好きな飲み物でも飲んで落ち着きましょう!」
望がそう言った瞬間、重かった空気が動き出す。
最終的には皆が、飲みたい飲み物を選び少しだけ空気が落ち着いたように感じる。
しかし、冷静な二人以外は今の状況に納得は出来ない事がヒシヒシと伝わって来る。
せっかくの綺麗な顔が表情でキツく見える華が口を開いた。
「何処に連れていかれるんだろうね……」
横でこのみが口を開いた。
「車を見たらほんの少しだけ安心しましたのですが。
不安で堪らないのです。ただ、ひとりぼっちじゃ無い事だけが救いなのです」
メンバーが全て憧れていた女の子達。
外の様子が見たくて、窓に付けられたカーテンを開けてみたが、外の景色が全く見えない様にされており不安が大きくなっていく。
冷静さを保つ為に、ジュースを口に運んだ。高級なドリンクだが、緊張で味すら良く分からないまま白い光を放つシャンデリアを眺めていた。
とんでも無い所に連れて行かれる。心の何処かでそう思っていた。
数時間程で目的地に着いたのか、車が止まったままで動かない。
あまり、話した事の無い者同士が多いせいか沈黙が続いたが、痺れを切らした華が車のドアに手を掛けた。
「ああ。開かない……」
そう呟いた瞬間に、外から扉が開けられたのか外の景色ぐ視界に入る。
「何ここ?外国に来たの?」
目に入った物は、視界に入った建物は全てが白一色で統一された宮殿みたいな建物がズラーッと見えた。
青と赤の旗がユラユラ揺れている事に、高級な歴史を感じるし、緑の植物が至る所に飾られていて癒しの空間が広がっている。
まなか以外は現実離れした空間に、ポカンとした表情を浮かべていた。
見た感じ問題児を集めた雰囲気の学校には見えない。
外国のお嬢様が通うような、オシャレな雰囲気に空いた口が塞がらないでいると、黒ずくめのスーツ姿の男性達が一列に並び同じタイミングで頭を下げる。
「今までの失礼な対応申し訳有りません。部屋に移動し次第皆様をここに呼んだ理由を説明しますので、もう少しだけ我慢を……」
「はい……」
もう少し我慢したら、ここに呼ばれた理由が分かる。
その言葉でホッと溜息を漏らす。
このみも華も同じ気持ちだろう。二人の表情に余裕が現れ始める。
ここに呼ばれた理由を気にしながら、素敵な景色を眺めていると正しい大きさすら想像出来ない宮殿の建物のなかからシスターみたいな格好をした年寄りが現れた。
その顔には素敵なシワが刻まれており、悪い人間には全然見えない。
「今から皆さんの疑問をお答え出来る場所に移動します。私に着いて来て下さい」
「はい……」
やっと、全員が置かれている状態が分かる__
気を抜いて中に足を踏み入れた瞬間、感動の感情で胸がいっぱいになった。
とにかく広い入り口から見えた宮殿の室内は神秘的な空間が広がっていて神々しい。
真っ白な細工の細かい壁には、さまざまな模様が刻まれており、沢山ある窓からは明るい光が差し込んでいる。
「凄い……」
更に天井を見てみると柔らかな色彩で、天使達の絵が描かれている。
自分には似合わない場所に来てしまった感じがして足が止まったまま動かない。
「そろそろ、話を聞きに行きましょうか?」
優しい声でシスターに話し掛けられ、我に変える。今は見とれている場合じゃない__
自分がこれからどうなるかを受け入れなきゃならない状況になるかも知れない。
表情筋に力を入れて、シスターの後を付いて行くと入ってすぐの場所に有るドアが開かれた。
広く、素敵な空間に白い皮のソファーが綺麗に並べらられている。
「どうぞ、お座りになって」
皆んながソファーに腰掛けると、おばあさんの笑顔が真剣な表情に切り替わり、私達を見つめた。
「ここは、魔法少女学園です」
私達の反応を見た老女が上品に笑っているが、頭の中は疑問でいっぱいだ。
魔法少女学園て、何?
都市伝説の魔法の学園が本当に存在していたとでも言いたいのだろうか?
盛大なドッキリだろう。と考えていたら、再びゆっくりとした口調で話し始める老女。
「一般の方には公開してないので、ピンと来ないかも知れませんが魔法を習うための。中でもここは、魔法少女としてのノウハウを学ぶ学校になっております……」
「失礼な事を言うようだけど、魔法なんて有り得ないだろう?」
皆が思っていたで有ろう言葉を代弁してくれた、華の肩にシスターが触れる。
「いえいえ。魔法は存在しますよ!」
「そんな話……。子供でさえ信じない……」
「では、信じさせましょう」
老女がそう言った瞬間、扉がゆっくりと開き黒髪に真っ赤目をした赤いゴスロリの服に身を包んだ女の子が真っ赤な傘を右手に持った状況で部屋に入ってきた。
なんていうか、服が大好きな私からしたら堪らない。
まるで、人形のような容姿にアンティーク感漂う赤と白いレースはの服は高級感漂っている。
ああ__
この子と一緒に紅茶を飲みたい。そんな妄想に掻き立て来れながら見惚れてさはまう。
「では皆様。魔法をご覧頂き下さい」
まるで、子供がサーカスを見に来たかのようなドキドキ感。
女の子から目を離さず見ていると傘をくるくると回し出す。
「炎の精霊よ……。私に力を頂戴……」
表情の無い瞳でそう、口にした瞬間にテーブルの上に置かれた紙だけが炎に包み込まれて燃えた。
「これが魔法……」
「まるで、手品みたいなの!!」
このみの言う通りに、魔法と言うよりは手品の類に見える。
「そんなの、仕掛けでどうでもなるよね?」
「魔法……だから……」
「最初は皆疑うんですよね。でも、自分が魔法少女になれば、理解出来るだろうからやってみないかしら?」
笑顔を絶やさない老女。
「別に、僕はいいけど?」
「あら、やってみる気になったのね!!」
嬉しそうな表情で、華の手の握り締める老女。
「やる気になったよ。その代わり!!もしも僕が魔法少女になれなかったら、ここから帰して貰うけどいいい?」
そうか!!
魔法少女なんて有り得ないという事は、老女がOKさえ出せば家に帰れる。
それに気付いたこのみが、「私も、それで……」と呟いたから、続く。
どうせ魔法少女なんて存在しない。
と、思っていたのに優しい笑顔で頷いた老女。
「皆さんに魔力が有る事は調査済ですから、それでどうぞ!」
「じゃあ、今から僕に魔法を使わせてよ!」
「魔法が使えなければ家に帰すとはいいましたが、それは明日の話。今日は寮の案内と街の案内をしなければならないのでね」
「まあ、明日帰れるなら旅行でも来た事にするか!」
「そうですね。それが良いでしょう。では、街を案内した後に、寮に行きましょう。それでは、この先は、案内人に任せますよ。
では、望。宜しくお願いしますね」
「はい」
はっ?望!?
望ってこの学園の人を知っているの!?
そんな、疑問を胸に秘めてその場を後にした。
建物を出ると、さっきの車が待っており買い物に最適な場所とやらに向かう。
さっきは、窓から外の風景は一切見えなかったが、宮殿だらけの景色が通り過ぎて行く。
「ていうか、金髪! お前、アイツ達とグルだったのかよ!?」
「グルって言うか、フランスに居た時に同じ系列の魔法学園に居たの。私は、ただの学生よ」
「魔法だなんて、お前狂ってるな!」
「最初は、有り得ないと感じるわね……」
冷静な望と少し興奮気味の華で話し合っているうちに、街に着いたらしい。
車から降りたら宮殿みたいな大きな建物が有り、入ってみるとデパートのような作りになっていて、食品が売っているフロアに服や小物並んでいるフロアが有り生活する上で困る事は無さそうだ。
最上階には食事をする場所まで豊富に並んでいるから、驚きの連続だ。
ぶっちゃけ、日本にこんなにもオシャレな空間の広い場所が有るなんて知らなかった。
「このくらいで良いかしら?」
「ああ!どうせ明日には、こんな場所からはおさらばだからもういい!!」
「そう。じゃあ、寮を案内するわね!」
そう言うと再び車で移動する。
結果コの形をした、オシャレなマンションに辿り着いた。
ハッキリいって、海外の高級なホテルにでも来たかのような気分になってしまう。
しかし、どの建物も見た目が統一されていて素晴らしい。
寮の中に入るとルーム番号の書かれた可愛らしいデザインの鍵を渡され、各自の部屋に向かった。
慣れた仕草で
「また明日よろしくね!」
とだけ言って部屋に入った望。
「うん。明日ねー!」
華以外は挨拶や会釈を返し、自分の部屋の扉を開いた。
内装までお洒落な作りになっており、友達と旅行に来たような感覚を覚えながら、壁の細かい細工に目を奪われた。
「あーあ!結構変な雰囲気だったけど、楽しかったかも!!」
そう叫びながら、フカフカのベットに飛び乗り大きな白い枕をギュッと抱き締める。
皆、私が憧れる様な個性的な魅力の有る女の子だから、明日は仲良くなりたいな……。
なんて思ったらノックする音が聞こえ、急いでドアを開ける。
そこに居たのはこのみ。
「あの……。一人じゃ不安で……。少しだけお邪魔しても大丈夫ですか……?」
「わあ!嬉しい!私も、このみちゃんと喋りたかったの!!」
何処か落ち込んでいた様子のこのみの表情がパッと明るく切り替わる。
その笑顔が可愛らしくてニコニコしてしまう。
「ねえねえ、魔法少女って本当になれるのかな?」
「んーーっ。無理だと思う……」
「だよねえ……。
私ね、ここに連れて来られる時は凄く怖かったんだけどね、魔法少女になるって聞いた時にちょっとドキドキしちゃったの! だから、嘘だと思うとちょっと残念なの……」
そう言ったこのみは寂しそうな笑顔を浮かべて、眉を八の字にした。
魔法少女かぁ。
確かに、子供の時変身して不思議な力を使う女の子に憧れたりしていたっけ。
変身ごっこに夢中になった時期もあったのだが、その時の気持ちは忘れてしまった。
でも、なれるもんならなってみたいなんで思ったりするのも、確かな事実。
「確かに、不思議な力が有ったら楽しそうだなぁ!!」
「え!七瀬ちゃん!本当にそう思う?」
「思うよう!」
「じゃあ、笑わないで聞いてね……」
「うん!」
「私、魔法少女になりたい……」
そんな話をしていると、魔法少女に対する憧れがムクムクと膨れ上がる。
私は普段取り柄なんてなくし、地味だから、うんっと、可愛い魔法少女になって人助けをしたい。
この日、このみと魔法少女について熱く語った。
ああ、こんなにも胸がときめくのは数年ぶりだろう。
いつしか、現実を見過ぎて夢を見る事もしなくなっていたのかも知れない。
それが、大人になるって事。
でも、夢の話は楽しくて、ドキドキして、幸せな気分にしてくれる感覚を思い出してしまう。