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017 沖田総司を説得しよう!

 沖田総司の生い立ちを学んでから、1週間以上が過ぎた。


 バスに揺られ、学校に向かう。


あれ以来、このみの沖田熱は増すばかり。

 このみは、学校で一人だった自分と沖田を重ねていると思われる。


 確かに、一人は寂しい。


「沖田様には、幸せになって欲しいのです!」


 最近のこのみの口癖。

 この台詞を口にする時のこのみは、涙目になっている。

 そんな優しさもこのみの魅力に感じた。


 学校の前で止まったバスから降りると、いつも通りの日常で教室を選ぶ。

 弓を覚えたから、攻撃を得意とする赤の教室に通っている。


 しかし、他の生徒と比べたら微妙な攻撃しか出来ない。


 落ち込んでいると校内放送が鳴り響く。

 呼ばれたのはいつもの五人。

 廊下に出ると、五人で集合して校長室に向かう。


 校長から呼び出し=タイムリープ


 皆、それを理解しているのだろう。

 このみなんて、ずっと沖田に会う事を楽しみにしていたから、足取りが軽い。


「やっと、沖田様に会えるの!」

「良かったねー!」


 校長室のドアを二回ノックすると、中に入る。


 険しい表情で資料に目を通していた校長先生が、こちらに気付き目が合う。


「よく、来たのう」

「あ、呼ばれたので!」

「さて。七瀬。お主の魔法のことじゃが、どうやって覚えたかのう」


 私の魔法。


「それは、突発的に覚えた物が多いです!」

「突発的か」

「はい。無意識に……」

「おぬしの身内で魔法を使える物はいるかのう?」


 そんな人聞いた事ない。

 大体、魔法という存在が未だに不思議で堪らない。


「いないです!」

「そうかい。まあ、いい! 今日皆を呼び出した理由は分かるかのうー?」


 考え込んだ華が思い出したかのように、手を叩く。


「あー! もしかして、またタイムリープするの?」

「当たりじゃ!」


 タイムリープ=沖田に会えると分かっているこのみのテンションが盛り上がってゆく。


「早くタイムリープしたいのです!」

「じゃあ、タイムリープの部屋に移動するのじゃ!」


 本棚の裏から地下に入り、魔法陣の中に足を踏み入れる。


 くろたんが呪文を唱えると魔法陣が光り始めた。

 下から風が吹いたかと思ったら、時間が巻きもどる。


 次にちゃんと意識がちゃんとした時、見た光景は畑が並んでいる田舎の光景だった。


 見渡す限り、畑。

 しかし、小さな平家が目に入る。

 

「当たり! そこに沖田総司が居るよ!」


 くろたんにはそう言われたが、人が住んでいるとは思えない、ボロボロの小屋。


 念の為に変身してから、玄関に移動すると扉をノックした。

 反応がない。

 

 留守かと思って外で待とうと思った瞬間に、玄関に手を掛けた華。


「病気なんだよね。僕、倒れて無いか心配……」


 ドアを開けると、土作りの床が目に入る。

 ボロボロの障子越しに見える、床に伏せている誰か。

 乾いた咳の音。


「大丈夫ですかー?」


 そう言うと、中に足を踏み入れるまなか。

 その後に続いた。


 黄ばんだ布団がモゾモゾと動いたかと思ったら、映像で見た銀髪の男が顔を覗かせた。

 沖田総司で間違えは無い。


「あの、お邪魔してよろしいでしょうか。と、いうかもうお邪魔しているんですが……」

「好きにしていい」


 一応、了解をもらう事が出来て安心する。

 と、いうか。

 家に入れてくれるなんて、良い流れだ。


 しかし、新選組の為に頑張った沖田の最後を迎える家にしてはみすぼらしい。

 あまりに粗末で、胸が締め付けられる。


 でも、こんな扱いをされているならこっちに来てくれるかも知れないという期待を感じてしまう。


「あの……」


 眉毛を八の字にして、こちらを覗き込むこのみ。


「どうしたの?」

「沖田様の病気を治しても良いか知りたいの……」


 良いよ……

 そう、言おうとした瞬間だった。


「現代に連れていかなきゃ、無理だよ」


 そう口にした、くろたんが沖田が居る部屋に入る。

 そして、沖田に対して説得を始めた。


「沖田さん。もう分かっていると思いますが、貴方は病気であと少ししたら命を落としてしまいます」


 猫が喋っているのでに、驚いた表情を見せない沖田。

 ただ、無表情で話を聞いている。

 

 銀髪の髪はサラサラと綺麗に揺れている。

 冷酷な赤い瞳が更に沖田を冷たく見せた。


「ああ」

「しかし、我々なら貴方の病気を治す事が出来ます!!」


 病気を治す代わりに、我々の世界に来い。

 くろたんはそう言いたいのだろう。


「別に治さなくてもいい」


 そう言った瞬間、外の木の葉が一枚ヒラリと地面に落ちた。


 このみの瞳には涙が大量に溜まってゆく。


「治さないと死んじゃいます!」

「それでいい。そろそろ、帰ってくれないか」

「わ、私は帰らないの!

沖田様が死んじゃうなんて嫌なの!」

「これは、僕の問題ですから」


 苦しそうな表情で喋っていた沖田。

 手拭いで口を押さえて咳をすると、白が赤く染められた。


 分からない。

 どうして、自身の死を目の前にこんなにも冷静なのだろう。


「誰かが死ぬなんて寂しいの!

だから、沖田様を治す事に決めたのです!」


 祈りを捧げようとするこのみに、くろたんが飛び付いた。


「説得してから回復しろよ!」

「でも、沖田様が辛そうで」

「今治したら、元もこうもないだろ!!」

「は、はいなの……」


 叱られて、しゅんとするこのみ。

 自分が憧れている人がキツイ思いをしているのに、力になれない事が辛いのだろう。


「もう、帰って下さい」

「帰らないの!

沖田様を無理矢理にでも、現代に連れて行くのです!!」


 そう言いながら、沖田に近付くこのみ。


「最後に忠告しますよ。もう帰って下さい」

「帰らないの!」


 このみが沖田の近くに駆け寄る。

 それを見た沖田は近くにあった、剣を手にした。



 



 

 


 


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