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016 沖田総司について学ぼう!

 あの後、くろたんに呼ばれて皆が部屋に集まった。


「おい! お前ら!」


 相変わらず口の悪いくろたんを、抱っこするまなか。


「くろたん。口の悪いの治しましょうねー」

「くろたん?」


 不思議そうな表情でそう口にした、華と望。

 嫌そうな表情を浮かべるくろたん。


「あ、この子の名前くろたんになったのー!!」

「分かった!」

「はぁ……」


 まなかのテンションには、くろたんも押され気味なようだ。


「で、ここに集まって貰った理由だが、沖田総司について学んでもらうから、ちゃんとしろよ!」

「勿論なの!」

「じゃあ、ちゃんと学べよ!」


 そう言ったかと思うと、空中に浮かび上がった映像。


 そこには、黒髪で赤い目の子供が映し出されている。


 本来なら、子供は親が守ってくれる。


 しかし、沖田には親という存在が無いみたいだ。

 生きる為に泥水を啜り生きてきた。

 店先に有る盗んだり、スリなどもした。


 生きる為の人から外れた行為。

 失敗して、半殺しにされた事も一度や二度じゃない。


 しかし、子供である沖田はそれをするしか無かった。

 いつ死んでもおかしくない、生活。

 子供から青年になる頃には、髪は白髪になっていた。

 

 辛い思いをした沖田は、何を考えているか分からない無表情の少年。

 この時、十二歳だった。

 今日も食いぶちを探す為に街を徘徊する。

 沖田の目に映ったのは、綺麗な着物を着て街を歩いている男。


 男にぶつかり財布をスった瞬間、手首を握られた。

 今度こそ殺されるかも知れない。

 しかし、死への恐怖は表情に僅かたりとも表情に出ていない。


「その小僧を連れてこい!」


 そう言われ、連れて来られた場所は剣術道場。

 何故か、一本の竹刀を投げられ掴む。


「死ぬ気で掛かってこい。一発でも食らわせる事が出来たら、これからの面倒は俺が見てやる」


 初めて握った竹刀。


 沖田は相手の動きを見て、一歩も動かない。


 数秒後。

 ほんの少し、相手に隙が見えた瞬間に凄まじいスピードで切り掛かったが、避けられてしまう。


  相手の男の顔は、少し嬉しそうな表情を浮かべた後沖田に切り掛かる。

 沖田の身体は竹刀の攻撃を受け過ぎでボロボロになってしまった。


 それでも、顔色ひとつ変える事無く隙を見付けては男に一太刀浴びせようとする。


 それは、日が暮れるまで行われた。

 身体こそボロボロになったが、静かな闘志は青い炎となって燃え続けている事が良く分かる。


 ボコボコになっては、立ち上がり朝を迎えていた。


「もう、お終い」


 相手の男がそう吐き捨て、後ろを向いた瞬間だった。


 静かに男の横に移動すると、首を狙った沖田の竹刀が髪に掠れる。

 その瞬間、沖田が初めて口を開いた。


「当たったよ」


 試合を見物していた取り巻きが、不服そうな表情を浮かべた。


「「もう、終わってるだろ!!」」

「戦場で背を向ける奴が悪い」

「これは、戦場じゃねえよ!!」

「試合だろ!!」

「僕にとっては全て殺し合い。今まで、そうやって生きていた」

「なに言ってるんだコイツ!」

「お前ら喋るな」


 そう男が口にした瞬間、静寂が訪れる。


「確かに、コイツの言う通りだ。ここが戦場なら俺は死んでいる」

「近藤さん! そんな!」

「黙れ。コイツの言ってる事は間違いない」



 そこで、画像は停止した。


「これが、沖田総司の新撰組に入るまでの謎だ!」

「そんな! 沖田様が可哀想なのです!」

「泣いている場合じゃない。新選組を生きる理由としている沖田をこちら側に連れてくるのは難しいと思うから、ちゃんと策を考えろよ!!」


 くろたんがそう言うと、再度動き出す画像。


 時は進み、浪士組【新選組が出来る前の名前】が出来ている。


 近藤の言う事には、無表情で淡々と従う沖田。

 無表情で人を斬り、何事も無かったかのように日々を過ごす。


 浪士組で沖田を気に掛けていた男。

 それが、身長が高くでっぷりした狸のような男。芹沢鴨(せりざわかも)だった。

 

 やがて、芹沢を筆頭に新選組を作り上げた。


 しかし、常に酒を飲んで部下に手を出す事もしばしば有る芹沢。

 芸妓通い。

 飲食店で酒を飲み暴れる。


 沖田にとって芹沢は目の上のたんこぶでしかない。


「なぁ、沖田」


 沖田に話し掛けて来たのは土方歳三(ひじかたとしぞう)

 土方は近藤を心から慕っている、沖田的にも信用が出来る奴だった。


「なに?」

「芹沢の事どう思う?」

「興味無い」

「俺は、近藤さんの為に消したい」

「土方さんがそう言うなら、従います」


 この、一月後。

 芸妓通いに行った芹沢の、寝首をかいた。

 

 芹沢は沖田の事を気に入っており、優しくしていた。

 しかし、沖田にとってそんな事はどうでも良かったのだろう。


 沖田に助けを求める芹沢を、表情を変える事無く切り捨てた。


 その様子を見ていていた、芹沢の愛人であるお梅は部屋の隅でガタガタと震えている。

 沖田と目があった瞬間、死を覚悟したが無言で部屋を出て行く沖田。


「おい! 全部殺ったか?」

「はい。全員殺しました」


 意外な事に、お梅を助けた沖田。

 しかし、芹沢に対しては容赦なく斬っている。



 そこで画像が切れ、くろたんが喋る。


「とにかく、沖田は何を考えてるか分からねえんだよ!」

「新選組。命みたいな方なのです!!」


 このみが言った言葉の意味が分かる。


 誰にも救われた事の無い沖田にとって、近藤が大切にしている新選組は何よりも大切だったのだろう。


 真剣な表情を浮かべた望が、一歩前に出た。


「そう考えたら、沖田さんが新選組を置き去りにして現代に来る事は無さそうですね……」

「それが、問題なのです!」

「新選組を裏切るくらいなら自決を選びそうー!」


 

 解散してからも色々考えたが、沖田をこちらの時代に連れて来る口実が思い浮かばないまま、時間だけが過ぎてゆく。



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