013 原田左之助を保護しよう!
ここから、歴史が出てきますが妄想も入ります。
「では、わしの代わりに説明を宜しくなのじゃ」
「おい、お前ら! 原田左之助くらい知ってるよなー?」
校長がそう言うと、老婆に抱かれた黒猫が喋り始めた。
知らない!
原田左之助なんて人は知り合いには居ない!!
「勿論、知っています……」
「大好きーっ!」
「原田左之助を知らない人が居たらびっくりするの!」
「確かに、そうですね!」
望、このみ、まなかに関しては原田左之助という人物を詳しく知っている様子だ。
しかし、訳がわからないといった表情を浮かべた華。
「それ、誰?」
「ま、さか原田左之助を知らないのですかぁ!?」
「もしかして、僕の事を馬鹿にしてる?」
華は不機嫌な表情を浮かべている。
「私も分からないから、華だけじゃないよ……」
「げっ! 七瀬と同じ枠かぁ……」
そう言った、華の表情は不服そうに見える。
確かに、原田左之助を知っているグループメンバーは知性に満ち溢れている。
対して、知らないメンバーら余り勉強が得意ではない。
こんな事なら、新選組の本でも読んで最低限の知識を身に付けておけば良かった。
「おい情報弱者。原田左之助は慶応四年五月十七日戊辰戦争の伊賀・上野で負った傷で亡くなるんだ! て、事で左之助が死ぬ一週間前にタイムリープする! その前に左之助の人柄が分かる映像を見せるから絶対に助けろ!!」
そう言ったかと思うと、映像が空中に映し出される。
赤い髪を一本結びにした、筋肉が美しいおり大柄な男が豪快に笑いながら、デカい槍を振り回している。
その腹部には横に一本字の傷跡。
酒好きで、大飯喰らい。
大雑把で豪快な性格で、男女平等に慕われている。
そんな左之助が出会ったのは、和風でおしとやかな女性。
やがて、二人の間に男の子が産まれた。
意外な事に愛妻家で子煩悩だった。
映像を見るに幸せな家族その物だが、伊賀・上野に向かう。
奥さんは笑顔で左之助を見送ったが、辛さを我慢しているようにしか見えない。
「ほっといたら死んじまうから、よろしく!」
「ちょっと待って!!」
「なに?」
「あのさ……」
「うん」
「助ける事は理解したよ。左之助さん以外に関わったらいけないと言う事も理解している……
たださ、左之助さんの奥さんと子供もこちら側に連れてこれないかな?」
画像の中の家族はとても素敵な笑顔を浮かべていたから、それがもっと長く続けば素敵だなと思ったんだ。
「あーん? だめに決まってるだ……」
「よいぞ!!」
許してくれたのは、校長先生。
なぜか、頬を赤くして目を逸らしている。
「え、いいんですか?」
「別に、それをした所で歴史は変わらないから問題無いのじゃ」
「あ、ありがとうございます!!」
私のイメージする魔法少女は誰かの役に立てる存在。
確かに戦わなきゃいけない時も有るけど、人を幸せにするのが魔法少女のような気がするんだ。
「じゃあ、行く準備が出来たら魔法陣の中心に立って!!」
それぞれが返事をして、魔法陣の中心に立った。
死ぬ一週間前にタイムリープかぁ。
向こうに着いたら一週間しか猶予がない。もし、失敗したら三人の幸せを奪ってしまう。
そう考えたら真面目にしなくてはならない。
「じゃあ、行くよ!」
黒猫がそう言ったかと思うと魔法陣がより強い光を放ち、下から風が舞う。
気が付いたら、どこまでも草原が続く場所で戦いが行われている。
嫌な空間が見渡せる場所に飛ばされたようだ。
探すのはさっき映像で見た、赤髪の男性。
あんな、イケメンはなかなか居ないから近くに居たら目立つだろう。
まなかが心配そうな表情を浮かべ、言葉を発した。
「きっと、傷を追った左之助様はどこかに隠れてるのかも知れないですわ!」
喋り方がいつものまなかじゃない。
憧れの人に会うからか、上品な話し方になっている。
不気味だ。
「おい、お前ら! モタモタしてないで左之助を探せよ!!」
そう口にしたのは、黒猫。
「探せて言っても、人がいっぱいで……」
「そんな事言ってる間に死んだらどーすんだよ!
まあ、この近くに居る事は確かだから、がんば!」
黒猫がそう言った瞬間、顔色を変えて辺りを検索するまなか。
それにしても、この場所は最悪だ。
人と人がお互いを傷付けあっている。
戦争なんて生で見るのは初めてだけど、愚かな行いにしか見えない。
そんな事を考えていたら、近くにある林から飛び出て来たまなか。
「このみ!」
「はいなのです!」
「左之助様を見付けたので、今すぐ傷の手当てをお願いー!」
「勿論なのです!」
「じゃあ、ついてきてー!」
そう言った、まなかの後をついて行くと沢山の怪我人が目に入る。
ターゲット以外の人間に関わったらいけないという約束くらい理解したつもりだった。
「ねえ、黒猫……」
「なに?」
「怪我人の手当てしたら駄目かなぁ……」
「約束を理解してないのかよ。馬鹿が!」
「約束理解してるよ……」
「じゃあ、我慢しろ……」
そう言った黒猫の声には、今までの様な悪態と元気がない。
もしかしたら、この黒猫も人を救えない事を悩んでるんじゃないかと思っていたら、大きめの岩が目に入る。
「左之助様は、岩の裏にいるー!」
まなかの言った通り、岩の影に居たのは映像て見た赤髪の男。
白に赤のラインの入った、派手な袴を身につけていて、虫の息だ。
傷は腹部らしく、腹部の辺りが真っ赤に染まっている。
「直ぐに治すのです……」
このみが傷を治すと左之助は驚いた表情で、このみを見つめた。
「あ、あんたら、お迎えにでも来たのか?」
左之助は傷が治った腹部を触り、不思議そうな表情を浮かべている。
て、お迎えにきたなんて……
私達をなんだと思っているのだろうか。
「私達は、魔法少女!」
そういうと、ゲラゲラ笑い出す左之助。
「はっ? おめえ、何言ってるん?」
大分、失礼な奴だと思う。
なのに、目をハートにして左之助を見つめているまなかの気が知れない。
「と、とにかく。あんたを家族ごと保護するから、家族の居場所教えてよ!」
「か、家族に会えるんか?」
「家族に会いたい?」
「そりゃ、会いてえに決まってる!!」
頬を赤らめ幸せそうな表情を浮かべる左之助は、可愛さも持ち合わせているらしい。
「じゃあ、行こう!」
「おう!」
左之助の走るスピードに合わし、追い掛ける。
左之助はとても人間とは思えない程、足が速い上に体力がある。
さすが、あの学園に目を付けられただけの身体能力の持ち主だ。
着いた家は小さな畑付きの平家で、奥さんは畑仕事に夢中になっている。
横にいた男の子が「父上」と叫び走り寄ると、左之助は瞳に涙を浮かべた。
「父上。帰ってこれたの?」
「おうよ!!」
「もう、どこにもいかないで下さい。父上……」
そこに、母親が加わり三人の幸せそうな笑顔が見える。
そこに近く、黒猫。
「お話している所申し訳有りませんが、私達の世界に来て下さい」
左之助達は驚きながらも、黒猫に返事を返す。
「お前達の世界ってなんだ?」
「未来です」
「へっ?」
「貴方は近い内に死ぬから助けに来たのです……」
てか、黒猫の奴左之助に対する態度凄く丁寧なんですけど……
「あー。俺あんたらに助けられなければ、死んでいたのかあ!!」
ゲラゲラと笑いながら、そんな事を口にする左之助は自分の死を目の前にしてもあっけらかんとしている。
「来て頂けますね?」
「俺が活躍出来る所が有るんなら、どこでもえーぞ!」
「勿論、有ります!」
「行こう、行こう!!」
そんな話をしていると、不安気な表情でこちらを見ている嫁と子。
「貴方達にも来てもらうので、質問が有ればどうぞ!」
「……これからは、ずっと父上と一緒に居れる?」
「まあ、今よりは格段に!」
「なら行く! いいですよね、父上?」
「おーよ!!」
「私は左之助が行く所なら、何処にでも付いて行きます!」
なんて、しおらしい女性なのだろう。
「了解しました。元の世界に戻るので皆さん集まって下さい!」
黒猫の元に集まると魔法陣が現れ、眩い光を発する。
気が付いた時には飛ばされた場所に戻っていて、今まで起こった事が夢のように思えてしまう。




