1-02 冒険支援センター
私は西洋風の街に転移した。
「どうやらここは広場みたい……。うわー! 何このでっかい宝石!?」
広場の中心に、虹色に光る大きな宝石が鎮座していた。その大きさは、小さな家ほどある。
「やあ、冒険は初めてかい? この宝石はメテオジャム。世界と世界をつなぐ宝石さ」
にこやかな男性が近づいてきて、話しかけてきた。
「えっ、何ですかー、あなたは?」
「メテオジャムについての説明を聞きたいかい?」
私の質問はやっぱりスルー。どうやらプレーヤーではないらしい。
よかった。変な人にいきなり声をかけられたのかと思った。
「はあー、お願いします」
暇だし、一応聞いておくことにしよう。
「メテオジャムは、冒険者にとってのテレポーター兼セーブポイントさ。冒険者はセーブポイントを各街の広場、各ダンジョンの入り口にあるメテオジャムに設定することができるんだ。設定ウインドウを開いてごらん」
言われたとおり、設定ウインドウを開く。
「その中の、『セーブポイントの設定』を開いてみて」
セーブポイントの設定を確認する。
『セーブポイント:レスターン(メテオジャム)』
となっている。
「レスターンとはこの街、フェクレバン王国の王都のことさ。たいていの物や施設はこの街に揃っているよ」
ここは始まりの街でもあり、最終拠点でもあるようだ。
「セーブポイントは、宿屋やマイホームにも設定できるのさ。ここのメテオジャムをセーブポイントにしておくと、ダンジョンへの移動や買い物などに便利だよ」
「宿屋やマイホームに設定するメリットって、何かあるんですかー?」
気になったので質問してみた。
「宿屋やマイホームには、倉庫BOXが設置されているからね。補給に便利だよ」
どうやら質問には答えてくれるみたいだ。
「説明を続けていいかい。メテオジャムはテレポーターでもあるんだ。メテオジャムに手をかざしてごらん」
私はメテオジャムに手をかざした。
宝石が輝くとともにウインドウが出現。
「行き先をクリックすると、テレポートできるのさ。といっても、君は初心者だから行ける場所はまだないけどね」
言われなくてもわかってるって。
ウインドウには『レスターン(メテオジャム)』としか書かれていないからね。
「説明は以上だよ。じゃあね」
そう言って男は歩き去っ……らなかった。少し離れたところにぼーっと立ち尽くしている。
街並みとか背景はものすごくリアル(キャラの顔はアニメ顔だけど)なのに、ゲームという感じがする。
そういえば、冒険支援センターってどこにあるんだろう。
RINEを確認。私が送ったメッセージはまだ既読になっていない。
リンはJAOではなく、夢の世界にログインしているようだ。
自分のキャラ名を教え、目覚ましのスタンプを送る。いい加減に起きろ。
さっきの人にもう一度話しかけてみたら、意外にも教えてくれた。
冒険支援センターは、広場を南北に横切る「プラチナムストリート」という大通りにあった。
「こんにちわー」
中に入ってみる。
あれ? あまり人がいない。受付の女性が1人。それと中年の戦士と老魔法使いがいるだけだ。2人とも頭の上に「?」マークをつけている。
「すみませーん」
戦士と魔法使いに用はない。受付嬢に話しかけた。
「はい、冒険者の登録ですね。少々お待ちください」
受付嬢が優しく答えてくれた。
「Raffineさんですね。登録を完了しました。冒険に関するチュートリアルを受けられますか?」
「えっ、早っ!? 私、まだ名乗ってなかったはずなんですけどー、」
名前を言ってないのに、登録が完了したようだ。
チュートリアルは受けることにした。
このゲーム(JAO)のことを何も知らないからだ。
通されたのは、大学の教室のような大部屋。黒板の前には初老のおじいさんが立っている。
「えー、こんにちは。私はステータスの説明を担当するエジオスです」
研修を受けているような気分だ。いわばこの世界にとって新入社員。実戦形式の授業ではなさそうだけど、座学も大事。しっかり理解しなければ。
まずはメモ帳アプリを起動させる。その後、ステータスウインドウを開く。
教官の話をまとめるとこうだ。
基礎ステータスとは以下の6つのステータスのことである。
生命力を表すvitality。略してvit。HPとFP(疲労度)の上限が上がる。
筋力を表すstrength。略してstr。ATK(物理攻撃力)と所持重量の上限が上がる。
器用度を表すdexterity。略してdex。HIT(命中)が上がる。
敏捷性を表すagility。略してagi。DOG(回避)が上がる。
知力を表すintelligence。略してint。MAT(魔法攻撃力)が上がる。
抵抗力を表すresistance。略してres。DEF(防御力)と状態異常耐性が上がる。
基礎ステータスは、11の倍数ごとにボーナスがもらえる。上限は99。計画的にキャラメイクする必要があるとのことだ。
「では、ステータスを振ってみてください」
んー……、何に振ればいいんだろう。
vit・str・resは2種類の効果がある。どれにしようか。
FPはMAXになると行動不能になる。何もできなくなるのは嫌だ。HPもがゼロになれば死んでしまう。よし、vitを11にしよう。
もう1つは少し悩んだが、strを11にした。状態異常耐性は、状態異常をしかけてくる敵が少なければ意味が薄い。今の段階でresに振るのは危険だ。少しポイントが余ったがそのままにしておく。
「決定、と」
基礎ステータスを決定した瞬間、自分の体が黒く光った。
「おめでとう、ラフィネさん。レベル2になりましたね」
えっ、私まだ何もしてない。ただステータスを振っただけですよ。こんなのでレベル上がっていいの?
「インベントリを開いてください。ささやかながら、私からのプレゼントです」
インベントリとは所持アイテムを確認できる画面だ。
初心者用ポーションやら、おにぎりといったアイテムや、お金(マネ)を受け取っていた。
「もしステ振りに失敗した場合は、4000円の課金でステータスリセットができるから安心してください」
また、課金の話か。さっきとはまるで逆のことを言っている。
今から冒険を始めようというときに、2キャラ目とかステータスリセットの話をいきなりするのは辞めてもらえませんかね。
そのあと、こまごまとしたことを教えてもらった。
そのたびに私の体は黒く光り、レベルが上がった。5レベルまで上がったところで、戦闘訓練室に移動させられた。
戦闘訓練室は、板張りの道場を再現した部屋だった。前方正面には「心技体」の大額が掲げられている。
「俺は戦闘訓練を担当するウォーレスだ。みっちり鍛えてやるぞ、覚悟しろ」
戦闘訓練の教官は、がっちりとした体格の中年男性だった。ベテランの元冒険者といったところか。
「はい、お願いしますねー」
「ラフィネ、お前は今まで格闘技やVR格闘ゲームで戦闘した経験があるか?」
「はあー……。普通、ないと思いますけどー」
何、このセリフ? 現実感満載で引くんですけど。
でも、よく考えてみれば前の教官だって課金をちらつかせていた。今更かもしれない。
「当たり前だが、VRゲームとは体を実際に動かすわけではない。プレイヤーの思考を読み取って動かすものだ。プレイヤーがコツさえつかめれば、アバターを自由に操作することができる。現実にはできないような動きでも、ある程度はできるようになるぞ」
なるほど、戦闘の素人でもゲームでは戦闘の達人になれる、可能性があるということか。
「そして、JAOはどんな下手くそな冒険者でも、武器があれば戦闘はできる。逆に言えば、どんな歴戦の戦士でも武器が無ければ戦えないということだ。そうは言ってもピンとこないだろう。これより、実戦に入る!」
次回は8月10日の12時頃に更新の予定です。
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