1-16 vsマザーボア2
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その後、マザーボアの体当たりを受けたり躱したりしていたが、4度目の衝突の後、マザーボアがスタンした。雑魚敵とは違いスタンはしないものだと思っていただけにびっくりした。スタンすると20秒ほど行動不能になる。一気に1本目のHPバーを折った。
2本目になると牙が生え、高威力の噛みつき攻撃を繰り出すようになった。そのうえ、体当たりよりモーションが小さく、硬直も短い。といってもDEFを固めた私にはそれほど効かなかった。そうこうしているうちにまたスタンして、2本目のHPバーも折れた。
「いよいよ3本目ですね」
ちらりと時計を見る。午後9時57分。少し時間をオーバーしそうだ。
プギィ、プギィ、ブグォォォォォ!!
手負いの獣の咆哮が、森中にこだまする。
「ラフィネ! タンクの練習、ここからが本番やで!!」
異様な叫び声を上げる猪の後ろから、リンダの声が聞こえた。
ここからが本番? どういうこと? ボスはHPバーが折れるたび、武器が強くなったり、攻撃のバリエーションが増えたりする。そのことと関係あるんじゃないかな。
――オオオオオオ!!
おかしい。叫び声が長い、長すぎる。牙を見せていないから、牙攻撃じゃない。
地面には魔法陣らしきものが浮かび上がっている。
何が来る? 今のうちにヒールで回復しておこうか。
カタールを外そうとしたその時、獣の絶叫が止んだ。
そして、目の前に6体のボアが現れた。
――うわ、どうする。
突然のことに頭が真っ白になった。
動かなかったのは失策だった。6体中、4体のボアがくるりと後ろを向いたのだ。
その先にいるのは――リン。
「させません」
その事実が、私の思考をクリアにした。
急いで装備ウインドウを消し、スキルウインドウを開く。プロボックはエイムが無い分、スキルウインドウでしか起動できない。
マザーボア
ボア(フォロワーA)
ボア(フォロワーB)
ボア(フォロワーC)
ボア(フォロワーD)
ボア(フォロワーE)
ボア(フォロワーF)
どのボアか全然わからない。クリックして確かめる時間は無い。数が多すぎる。スキル残弾は3。撃ち終わったら180秒のスキル不可時間(リキャストタイム)が待っている。
闇雲にスキルを浪費するわけにはいかない。
かといって、迷っている場合ではもっとない。
「ハイスピードボルテージ!」
当たるかどうかわからない挑発スキルではなく、自己バフでヘイトを稼ぐことにした。硬直が解けると同時に、猪の群れに突っ込む。後ろに向かって駆け出そうとしていた4匹のうち、2匹が振り向いた。最低でもあと1匹タゲを取らないといけない。
向かって来る雑魚ボアの間をすり抜け、リンに向けて走りだそうとする2匹のボアに握刀を突き出した。
ブオ! ブオォォ!!
殴ることでMobのタゲを固定した。カタールの刃を引き抜こうと力を込める。あとは足を使って、この取り巻きたちをまとめて処理すれば――
「あれ? 抜けない?」
「ファンブルや!」
くそっ、このタイミングでファンブルとは。ファンブルする相手が違うでしょ!
ファンブル中は動けなくなる。動けなくなった私に一斉に猪たちが襲い掛かる。
マザーボアの噛みつきはともかく、ボアの突進を真正面から受けても大してHPは減らないが、そのせいでタゲが外れる恐れがある。それだけは避けないと。
「動けなくてもやれることはあります。ファイティングオーラ!」
ファイティングオーラとはATKを上げる自己バフスキルだ。動けなくても、自己バフでヘイトを稼ぐことはできる。もみくちゃにされたが、おかげでタゲが外れた取り巻きはいなかった。
「子豚狩りや!!」
ヘイトを稼いでタゲを固定すれば、あとはアタッカーに任せておけばいい。敵を倒すのはタンクの仕事じゃない。リンにも出番が必要だろう。
「やっと動けるようになりましたか。さて……」
ファンブルしたボアを倒した私は、マザーボアに視線を移す。
先程は私に噛みついてきたマザーボアだったが、ファンブルが解除されるや否や距離をとったのだ。
フゴォォ!!
荒ぶる母猪は、先ほど以上の猛スピードで驀進してくる。おそらくフェイズ1の突進とは威力が違う。
しかし、私はなおも3体のボアを引きつけている最中なので、逃げることは許されない。
マザーボアが眼前に迫る。手を伸ばせば、その頭に届くほどに――
「迎え撃ちます!!」
殴りつけるようなカタールの一撃。刃が頭に触れる。
重量級のアタックをカタールで受け止めたが、私の身体は盾動画のリザードマンのようにぐらりと傾いた。その瞬間を狙って2体の子ボアたちが走り出す。これは間一髪のところで回避。そのまま攻撃して倒した。これで雑魚はいなくなった。
「取り巻きの雑魚を倒すんはアタッカーの仕事やで、ラフィネはマザーボアの……」
「申し訳ないですけど、マザーボアは3度目のお昼寝タイム中です。ヘイトが稼げません」
マザーボアは私の一撃を受けてからピクリともしていない。
「えっ!スタンさせたん? 迫りくる巨大ボアの脳天を殴ったんや。やるやん、アタッカーの才能もあるんちゃう? 天は荷物を与えず……やっけ?」
「リンはことわざ、弱いですねー。時間もないし、さっさと片付けますかー」
その後は、マザーボアを問題なく倒した。
「取り巻きの処理、なかなか手間取りました。私の初タンク、何点くらいでしたかー?」
「10点やな」
「そうですか、ハイスピ中の身体コントロールは今後の課題です」
「そんな落ち込む必要あれへんって、10点満点中10点――満点や」
リンがニヤリと嗤う。
「なぜそれを先に言わない」
「そのほうが面白いからや」
そういう彼女のドヤ顔が腹立たしい。
「取り巻き召喚のことを言わなかったのも?」
「対応力を試すためや。それに……何が起こるかわからへんのも冒険やん? お客様、リンダちゃんプロデュース『初のJAOボス狩りショータイム』お楽しみいただけましたか? 高貴友美さん」
リンはうやうやしく礼をする。
そう言われると、何も言い返せなくなる。でも、悔しいので頬はつねっておいた。
「それより、時間。10時過ぎてますよ!」
「うわ、ホンマや~!」
リンは急いでログアウトした。
これにて、私の冒険初日は終了。明日以降は何が待っているのか、楽しみだなー。
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