1-11 エイム
前回は評価をいただきました。そして、昨日に引き続きVRゲームの日間ランキング48位、週間ランキング85位に載ることができました!
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木漏れ日を浴びながら、森の澄んだ空気を胸いっぱい吸い込む。
どこからか聞こえる小鳥たちの囀り。涼やかな風がさわさわと木の葉を揺らす。
「こうして歩いていると日々の喧騒も、ちっぽけな私の悩みも、全部癒されそう……」
散歩道をのんびりと歩く。踏みしめる落ち葉の感触が心地いい。
ここはダンジョン。「ククリクの森」だ。
「えー、別にククリクなんかどうでもええやん。このMAPにはイベントで何度も来てるし、何の感慨もないねん」
言葉とは裏腹に、リンのテンションは上がっているようだ。さっきから装備しているステッキをグルグル振り回し続けている。
私たちはサンドさんのお店を出た後、冒険支援センターに向かった。王宮でメインクエストを受けるためだ。レクチャーついでにメインクエストを進めることにした。
メインクエストをある程度こなすことで、メテオジャムで行ける場所が増えるからだ。それに経験値や石も多く獲得できる。やっておいて損はないとのこと。
メインクエストの内容は正直どうでもいい話だった。王宮のメテオジャムに異変が生じたので、国王が直々に各地のダンジョンのメテオジャムの調査を依頼してきた。なぜレベル10の冒険者である私に頼むのか。その辺りの矛盾を追及しようとすると、決まってNPCたちは黙り込む。現実にも都合が悪くなるとすぐ黙り込む人っていますよね。
リン曰く、JAOのメインストーリーは、ソシャゲから引き抜いた評判の悪いライターが書いたものだそうだ。
ということで、最初のフィールドマップ「ナナン平野」を歩くこと20分、ようやくククリクの森にたどり着いた。途中で、ハミング(可愛いキノコのMob)と遊んでいなければ、もう少し早く着いたんだけど。
「なかなかおれへんなー……ん? おった、おった」
散歩を始めて2、3分経ってから、リンが1本の木を指差した。
ククリクの森はいかにも雑木林ですというダンジョンだが、リンが指差す向こうに1本の白樺らしき木が生えている。ただし、高さ2mいかない幹に顔がついている。その下には腕のような枝も2本ついている。
「さて、リンダ先生ちゃんがヒーラーのイロハを、教えてあ・げ・る」
「色気づいた声は男にだけ向けてください。キモいです」
「ええやん。今なら、誰も……見てへんで」
ミニスカートの裾をちらりとたくし上げる。どうせ見えもしないだろうけど。
「セクハラですねー。えっとー、GMコールは……」
「ああん。もう、どうせ見えへんのやからサービスしたってええやん。まあ、ええわ。まずは、当たり前やけどヒーラーは魔法を撃ってなんぼや」
「ヒーラーは回復魔法を使うロールですよね?」
ロールとは役割のことだ。
「そうや。回復魔法は文字通り魔法スキルやから、魔法が使えな話は始まらん。ラフィネはヘイト稼ぎのために回復魔法を使うんやろうけど、それでもヒーラーとして最低限の知識とプレーヤースキルを身につけとかんとな」
「プレーヤースキル?」
「腕前ってことや。さて、ラフィネにはこれを装備してもらうで」
貸してもらったのは1本のHRスタッフだった。
スタッフとは木でできた大きな杖だ。ステッキのレシピはこうなっている。
種類:スタッフ
ランク:HR(ランカー武器 製造者:通ならわかるこの逸品)
内蔵魔石:威力の魔石R×3
防御の魔石R×4
マジックアタックの魔石HN×1
フォトンアローの魔石HN×1
サイコバレットの魔石HN×1
ヒールの魔石HN×1
マジックバリアの魔石HN×1
「んー、私が持ってるSワンドよりレアリティ低いですよね。練習用ですか?」
「そうや。このゲームでは、攻撃魔法と同じように、回復魔法も対象に当てる必要があるねん。だから、まずは魔法を当てる――エイムの練習をしよっか」
「宜しくお願いいたします」
私はリンダに頭を下げた。
親しき仲にも礼儀あり。青パッチが実装されて一刻も早くUダンジョンに行きたいはずなのに、彼女は初心者を相手にしてくれている。その事実を私は忘れたくない。
「お安い御用ってことよ、さて、まずは、マジックアタックって叫ぶんや」
「えー、叫ぶ必要ないんじゃない? とりあえずマジックアタック」
私の右肩の上あたりに光球が現れた。
「わかりました……あれ? 魔法が飛んでいかない」
「そのスタッフをあの木のMobに向けてみ」
スタッフを水平にかざす。
「そのまま、ゆっくり前進」
私は杖を構えたまま前進した。1歩、2歩、3歩……。
「んー……。あっ! 出ましたー」
「出たやろ、照準」
10歩ほど歩いたら、スタッフを向けた先に、光る『+』とそれを中心とする大小二つのサークルが現れた。
「なんか魔法というより銃みたい……あっ、消えた」
突然、サイトが消えた。
「時間切れや。魔法はスキルを起動させて10秒経つか、ダメージを受けると発動失敗になるねん」
いつの間にか光球も消えていた。
「えー、それを早く言ってよー」
「口でサイトの説明してもわからんやろうと思ったんや。百聞は……えっと……」
「一見にしかず、です。なるほどー、それはたしかに一理ある。リンの説明を聞いても多分わからなかっただろうしね」
「なんか、引っかかる言い方やな」
「気のせいですよ。それより質問です。サイトが突然出てきたのは射程と関係あるんですかー?」
メモ帳アプリを起動させる。
「正解やで。魔法の射程にMobが入ったってことや。もうJAO免許皆伝かもしれん」
「いくらなんでも免許皆伝早すぎでしょー。射程は何メートル? 魔法によってちがうのー?」
「魔法の射程は一律10メートルや。この10メートルを身体で覚えるのは、JAOで最も大切なテクニックの1つやで」
10メートル。たしか、女性の腕の長さが70センチほどだったはず。約14倍の間合いということになる。
「サイトの詳しい説明も欲しいやろ。説明するで」
「是非おねがいします」
「ターゲットが全く動かん場合、光る『+』に命中する。小円はターゲットが動いても『+』の位置に命中する範囲。大円はターゲットが動いても身体のどこかに命中する範囲。魔法はホーミング機能がついてるから、追尾補正があるねん」
「へー、便利ですねー」
「じゃあ、今度こそ撃ってみよか」
再びマジックアタックを起動。サイトが現れる。私のわずかな腕の震えに合わせて『+』が揺れる。
「スタッフを握ってる手に力を込めるんや。それがスキル発動のトリガーになる」
「いけっ!」
集まった光が力となり、杖の先から放たれる。その刹那、押し寄せる反動。腕がブレる。魔法は放物線を描き、Mobに命中した。
「おーっ、狙い通りいけた?」
「んー、ちょっとずれたかもー」
私が狙ったのは鼻の部分。実際に当たったのは眉間だった。
「低レベルやったらそんなもんや。intやstrを上げれば反動も小さくなるで」
「んー、でも悔しいなー」
「相変わらず負けず嫌いやな。まずは動かんバーチ相手にどんどん練習しようか」
「オッケー、今度は外しません。マジックアタック!」
スキルを起動させ、狙いを定める。『+』が鼻と重なった。
右手に力を込める。発動と同時に足を踏ん張る。
光の弾がさっきよりも真っ直ぐ飛んでいく。そのまま鼻に命中。Mobはワイヤーフレームだけ残して砕け散った。
「おおー。初めてにしては上手いなあ」
「さあ、この感触を忘れないうちにいきますよー」
テンションが上がってしまって、つい声が大きくなってしまうのを押さえられない。
次なる標的を求めて、私たちは遊歩道を駆けだした。
次回は8月21日の12時頃に更新の予定です。
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