どうか見ていて、【GL】【NL表現注意】
いらっしゃいませ。
気楽にお楽しみいただければと思います。
なにかがおかしいと気付いたのは、五人目の彼氏と別れた社会人三年目の秋だった。
ありとあらゆる手段を使って復縁を迫ってくる彼から逃げ回りながら、私はなにがおかしいのか必死に考えた。
五人ともひどい別れ方をしたし、周囲に言わせれば誰ともありえないくらい不健全な交際状況だったらしい。このままじゃダメだ。変わらなくちゃ。
でも、いくら考えてもなにが間違っていたのかわからない。焦りが最高潮に達した頃、いちばんの親友からスマホに何気ないメッセージが飛んできた。
「あのさ、好きな人ができたんだけど……恋愛ってどうやってやるのかな。今まで全然してこなかったからわからなくて」
それを見た瞬間、心臓が止まったような気がした。そして、なにがおかしかったのかも、気付いてしまった。
私は、彼女のことが、好きだったんだ。この世界で、いちばん。
指が震える。大丈夫、文字ならかろうじて平静を装える。そう言い聞かせながら返事を打つ。
「それ、私に聞く? 今まで散々だったのに」
「だって、他に聞く人もいないし」
「消去法かよ」
「違うもん、やっぱりこういうのはいちばんの親友に最初に言うものでしょ」
いちばんの親友。もちろんそうだ。でもそれじゃ物足りなくて、寂しさを埋めるために男を選んでいた自分を自覚した後だと、その言葉も苦しい。
「まあ、素直になるのは大事だと思います」
「恥ずかしいよ」
「照れていても進展しないよ」
ああ。自分の感情を抑えて恋敵を応援する当て馬の気持ちってこんな感じなのかな、なんてくだらないことが頭をよぎっていった。
でも、彼女の恋は実る余地があるから。私は、とてもじゃないが、無理だ。
そのまま会話は続いて、近況報告が混ざりだす。
「最近は元カレさんはどうなの?」
「だいぶ落ち着いてきたかな。全部連絡先ブロックしてるし」
「そっかあ」
「見ててよ。絶対幸せになってみせるから」
「応援してる」
――見ててよ。どうか見ていて。あなたと結ばれるっていういちばんの幸せ以外の、全部の幸せを、きっとこの手につかんでみせるから。
全然ガールズがラブしてないのですが百合と書くと怒られそうな気がしました。