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ひとかけらのしずく
「はいこれ。」
突然渡されたのは結婚式の招待状だった。
「わたし、結婚するの。」
驚きと同時に嬉しさが込み上げる。
「おめでとう。絶対出席するね」
「ありがとう。」
ふと招待状に目を落とすと、
見慣れた名前があった。
どこかで見たような……
結婚式当日、ドレスアップをして
会場に向かう。
「あれ?先輩?」
思わず、見覚えのある顔にたじろぐ。
「おっ楓じゃないか、久しぶりだな」
タキシードをきていても
笑顔は中学時代と変わらない。
「お久しぶりです。先輩。
お元気そうで何よりです。
あっ本日はおめでとうございます。」
早口でまくし立てる。
「おう。今日はありがとな。」
そういって足早に去っていった。
懐かしい。
心の奥底に封印していた恋心が疼く。
思い出してはダメ。
思い出してはダメ。
そう思えば思うほど、甘酸っぱい密かな
恋心がよみがえってくる。
「誓います。」
永遠の愛を2人が誓う。
私も誓う。
永遠に恋心を封印すると。
だから、今日だけは、
いいえ、この瞬間だけは許してください。神様。
滴り落ちる一筋の涙に全ての想いを
込めた。