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6・頭部、頸部保護システムって必要じゃねぇ?と思うんだ

 ドラゴン・ベインなる格闘用ロボが出来ているという。


 ロボット好きではないのでどうしても乗りたいとも思わないし、全く嬉しくもない。


「ドラゴンの動きを参考に収穫機より大型にしているんだ。連中は体重もあるからこちらもそれなりの重量が無いとシッポや体当たりで簡単に弾き飛ばされてしまうから、重めに作ってるとも言っていたよ」


 と、リンが解説してくれる。あまり乗り気がしないのはどうすれば良いだろうか。


 とはいっても、騎士家に生まれた以上、あの恐竜どもと戦うのは運命みたいなものだし、生身よりもロボットの方が良いのかもしれない。


 そんな葛藤がありながら、リンに連れられてソレの試験場へと連れられて行った。


「デカいな」


 それは三階建てある実家よりデカいんじゃないかと思うほどだ。しかも、色が白と来ては・・・・・・


「おう、来たか」


 俺を見付けた鍛冶師が声を掛けてきて説明をしてくれる。


「ドラゴンより随分デカいと思っただろう?」


 そう聞かれたので頷いておく。


「だが、ドラゴンが顎で攻撃する時の動作を考えたら、こんくらいなきゃ、乗ってる人間に直撃喰らうんだ。櫓すらぶち壊すあの威力は多少分厚い鎧を着せた程度じゃ防ぎきれん。もっと上からアレを見下ろして躱す方がやり易いと思ってな」


 と、説明してくれる。


 脚も太く作られているし、胴体も頑丈そうだ。まあ、アレだな、どこぞの陸戦用量産機と言った風貌だ。


 もちろんだが、頭に当たる部分に人間が顔を出すので、小さな頭風に作られているのが分かる。そこは収穫機の構造を踏襲しているらしい。


 これは魔法や何らかのファンタジー技術で映像を機内に映し出せないのだから仕方がない。カメラとディスプレイが開発できるなら素直に胴体内にコクピットを作っていたことだろう。


「まあ、乗ってみろよ」


 そう促されて乗り込んでみると、そこまで窮屈ではないコクピットだった。操縦法も収穫機や土木作業機などと変わりがないので簡単に動かせる。


 コイツの武器はハルバートだ。斧と槍の機能を併せ持った武器で、兵士たちも使用している。


 機体を歩かせると思ったよりも軽やかに歩いてくれた。ただ、振動が凄く伝わってくる。当然だが、スリットからしか外が見えないので歩行も一苦労なシロモノなのは仕方がない。


「その向こうにある木を切ってみろ!」


 下からそんな怒鳴り声がしたので辺りを見回すと、たしかに木があった。手にしたハルバートを振りかぶって木へと振り下ろす。


 ドンという音と共に木にハルバートが食い込み、勢いのままに叩き折る事が出来た。そして、勢いが止まらないハルバートは地面に刺さる。


「うわ」


 地面に刺さった振動がコクピットに伝わり揺さぶられてしまった。


 ベルトを締めて居るとはいえ、こんな衝撃があるのではヘルメットが無いと危ない。


 いや、それだけじゃない。


 もし、ドラゴンの攻撃を受けたり、今後対戦形式の訓練をすることを考えると、ハンス状の器具も必要ではないだろうか?


 ハンスと言っても一般に知られているものではないだろう。


 自動車レースの世界で着用が義務化されつつある器具だ。


 自動車レースでは難燃性のスーツやシューズ、グローブ、そして頭部を守るヘルメットに加え、衝突時に首を守る器具が存在する。


 ハンスと云うのは登録商標でもあるので、FIAではFHRシステムという呼称を使用している。要するに首部分を守る器具の事だ。


 と言ってもピンとこないが、一般的に言えばむち打ち症状の軽減に役立つ装置と思えば良いだろう。


 事故の後に首が痛くなるようなことがあるが、それは事故の衝撃で重い頭が慣性で前へ放り出される際に首が延びてしまう事で起きるとされている。

 首が延びれば神経や関節が延び、引き戻される際に損傷してしまい、その痛みが各部に出て来るというモノ。

 自動車レースだとさらに酷くて、衝撃で首が延びて引き戻されることで起きる頭部や頸部の骨折で死亡してしまうという事例が実際に何件も起きている。


 そのような事故を調査研究した結果、シートベルトとヘルメットだけではドライバーを守りきれず、頭が慣性で前へ飛び出すのを防ぐ必要がある事が判明し、ヘルメットを肩に装着した器具と紐で結んで動きを規制するという方法が考案され、商品化されたモノがハンスと言われるものだ。今では国際レースのレーサーは義務化されているので、マシンから降りる際、ヘルメット以外の器具を背負っているのを見かけることは多いだろう。


 この器具、確かにメリットが大きいがデメリットもあり、装着すると首を自由に振れなくなる。可動範囲はミラーからミラーまで動かせる程度で、側方確認すら満足に出来ない。

 その為、ラリー用により可動範囲を拡げたモノが後に作られたほどだ。

 当然ながら、一般道で利用できるものではない。



 ロボットアニメではシートベルトは絞めていても、画的にキャラクターの表情を見せるためにヘルメットすら被っていないモノがあったりするが、衝撃を受けてもジェットコースター程度に身をこわばらせて終わりといったシーンしか見ない。


 もちろん、重力制御などの超技術や魔法で衝撃を抑えているのかもしれないが、ハンス無しでロボット同士の衝突や転倒と言った衝撃を与えれば、自動車レースのように、「なぜその程度で?」と言うほど簡単に首や頭の骨折で死者が出てしまう事だろう。 


 今後を考えてヘルメットと頸部保護装置は必需品となりそうだ。


 そんな事を考えながら機体から下り、鍛冶師にそのことを伝える。


「そんな事が起きるのか。確かに、収穫機やこのドラゴン・ベインで首を傷めたとかめまいがするとかいう奴が何人か出たが、単に虚弱体質だと思ってたぜ」


 まあ、この鍛冶師みたいな奴らならばそうそうケガもしないのかもしれないが、そんな例外を基準にしてはいけない。

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