2・足を作る
一応あった脚を作る話を載せてみた。
さて、パンの実収穫機がこれで完成するんだろうか?
一応納得した俺はパン収獲用の脚作りに協力することにした。
「それではうまく行かないのでは?」
研究者の作った脚は腕を造った経験があるので脚部は特に問題なかったが、足裏がうまく作れていなかった。
多脚歩行であれば一枚板や爪型にしても問題ないだろう。しかし、二足歩行でそれをやると歩行が難しくなった。
現に今、試作した脚部はうまく動いていない。
「そうかな?ちゃんと歩かせることは出来ていると思うけど?」
そう言う研究者。確かに平たんなところであれば問題ない。
そこで、ちょっと荒れ地を模して乱雑に石をばらまいてみた。
「そんな事をしたら・・・・・・」
そんな事をしたらという研究者。彼も分かってはいたらしい。
「ほら。足首だけではうまく歩かせる事が出来ない」
問題となるのは、ロボットの脚だからと言ってまるで靴を履いた足を前提にして作ってしまう事だと思う。人間の脚はそんな構造じゃないんだから、それで歩けるのは平たん路に限られてしまう。
と言っても、人間の骨格標本なんかないので簡単な事ではない。
「で、なんでそんなに僕の脚を見てるのかな?」
リンに裸足になって貰い、歩いてもらった。
「人間の脚はかかと足先、指と接地点が三か所ある。そして、歩く時には水平に脚を上げるのではなく踵から揚げ、指で地面を蹴る様にしている。着地は踵からで衝撃を分散しながら足先、指と着地してる。これを再現しないとパンの木が生える山地では使えないと思うんだ」
リンにゆっくり歩いてもらって研究者にも説明する。
「なるほどね。最低限、三つのパーツで足裏を構成しないといけないか」
研究者が悩んでいる。
ロボットの脚というとまっ平だったりするが、それでは悪路での歩行が難しいのではないだろうか?しかも、踏ん張りも利かないだろう。
そう言う事を考えると人間の足を参考に分割構造とした方が良いと思う。
そして、分割構造の足を研究者とともに作ったのだが、研究室では何の問題も無かったが、外で使うと支障が出た。
「確かに歩くことに関しては優れている。傾斜でも十分歩行出来てはいる・・・・・・」
問題は関節構造が多いので土や岩場を歩かせると泥が詰まったり石で損傷したりすることだった。
外での試験には山の人たちも参加している。彼らも将来のユーザー候補であることを考えれば気にもなるだろうし、製造するとなれば担当するのは鍛冶師たちだ。
「巧い事考えられているが、素足で歩く以上に問題が起こりそうだな。靴履かせた方が良いんじゃねぇか?」
歩行試験をつぶさに見ていた一人がそう言う。
「靴?確かに人は靴を履いて坑道に入るだろうけど、革とか木で作ってもすぐにダメになると思うんだ。かと言って金属では意味が無い」
そう言うと、鍛冶師のオッサンはニヤリとこちらを見る。
「鍛冶に使ってるこの靴見てみろ」
それはまるで前世の様に鉄芯入りの革靴だった。ただ、それがどうしたのだろうか。
よく意味が分からないという顔でそれを見ていると、ため息をつきながら答えてくれた。
「金属でも使い方さ。それにだ。木の靴底も柔軟性なんかないだろ?靴の中で指や踵の部分が動くように二重構造にしてやれば良いだけだ」
なるほど、確かに此処の鍛冶師たちならば合金技術にも優れているから適材適所で金属を選んでそう言うモノだって創り出しそうだ。
そう言う事で実物大の試作を請け負ってくれた言い出しっぺの鍛冶師がひと月試行錯誤して作り上げたモノは、確かに二重構造に出来上がっていた。
「脚部だけで人の背丈越えてるのは迫力が違うな」
ソレを見上げながらそう感心していた。
「どうだ?指先と踵の衝撃吸収に苦労はしたが、これなら問題ないはずだ」
そう言って足部の点検ハッチを開けて中を見せてくれた。
それは確かに外観が靴状になっており、中に骨格が伸びている。キャタピラみたいに自在に動きはしないが、靴という面積を持つ部分と実際に支えとなる骨格を別構造としたことで荷重の分散も出来たらしい。
なにより、外見に似合わない柔軟な動きが可能となった。
「指は主に力を掛ける親指部分が可動式だ。強度の問題で蹴ったりは出来ないが、歩く、駆ける程度の動きには十分対応している。踵部分は強度を上げている。ここから降ろしていくからな。だが、ここで衝撃吸収したんじゃあ、姿勢が保てない。足首から膝までである程度吸収できる構造と素材にしている」
さすがに飛び跳ねたり飛び降りたりという行為には対応できていないらしい。
「股関節までの動きを利用すれば相応に衝撃は和らぐだろう。何なら、コイツに胴や腕を付けて剣や槍を振り回す事だって可能だ」
最終目的はそこだ。そこを考慮して作っているらしい。