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10/11

10・人型ロボは使えないって事が正しいとは限らないんだと、そんな気がして来た

「そうと決まればまずは整備だ。任せとけ!」


 鍛冶師がそう言って機体を引き取っていく。俺たちは我が家の部隊が出撃する明後日まで特にやることが無い。


「ユーヤ!」


 忙しそうに準備をしている父が俺を呼び止める。


「最近はこの辺りの騎士にもバリスタが行き渡った。お前の部隊は他家へ指導に向かうばかりだったが、今回は数が多い、最近はまた何かやっているらしいが、アレは使えるのか?」


 どうやら父もドラゴン・ベインを知っているらしく、興味があるらしい。


「収穫機のように歩行できる機械を対ドラゴン用に作ってみました。使えるかどうかは試してみないと分かりません」


 正直にそう言う。


「リンは使えると言っていたぞ?ドラゴンと1人で対峙出来る機械ならばそれに越したことは無い」


 兵として人を雇うのは大きな負担だから、騎士としては当然の考えだろう。どこの騎士家もバリスタの導入で主力部隊はスリム化している。

 と言っても、整備やボルト()の輸送に人手を取られるから実際に削減できる人数は知れた程度だとは思うが。

 

 大きく変わったのは魔動バリスタが普及した事で小規模な部隊で迅速にドラゴンの撃退が可能になった事だろう。


 それでも今回は大規模な出陣が必要になるほどの規模らしい。


「一昔前ならカルヤラ存亡の危機と言えるスタンピードだ」


 そう言われるほどの来襲らしい。


「ドラゴン・ベインの初陣だ。周りが混乱しても困る。共鳴石を積んだ車も3台ほど用意した。うまく使ってくれ」


 谷へとベインを受け取りに行くと鍛冶師はそう言って通信車両も引渡してきた。


 扱いを習得している坑夫や鍛冶師を臨時に俺の部隊へと入れ、彼らを通信員代わりにして父や有力騎士へと通信車両を貸し出すことにしている。


「全体の指揮は父上が執るそうですね。コレは一定の距離まで会話が出来ます。何処でベインを出すか、そして、ベインを出す場合、騎士や兵士が足元で動くのは危険なので、退避してもらえるよう、2台は有力な騎士に貸してください」


 そう言って引き取って帰った3台の通信車の事を説明すると難しい顔をしていたが、鍛冶師が一通りの事が分かっている事を伝えると、彼と話し合っていくという事で話が纏まった。


 いよいよ出撃となったが、バリスタ以上にベインは歩兵隊と距離をあけて移動している。


 正直、足元に人が居ても見えないので移動の際には頭の装甲を跳ね上げて身を乗り出すような形で動かすことになった。

 俺の中ではハッチをあけて顔をのぞかせて走る戦車のそれだ。


「指揮より各機、砦からの伝令によるとすでに30は倒したが全く数が減らないそうだ。バリスタ、ベインは砦へ急行する」


 いつものオッサン声でそのような通信が入った。


「白、了解」


 戦隊ものよろしく5機はそれぞれ色を塗り分けて誰が誰か一目で分かるようにしている。俺は白、リンは無地の銀。他の3人が赤、青、黄となっている。


 バリスタがその動力性能を生かして先行し、ベイン隊は歩幅があるのでそれに追いすがる様に砦へと向かった。


 砦を遠望しただけで各種恐竜が蠢いているのが分かる。数十なんてもんじゃなさそうだ。


「指揮より各機。鎧を閉じろ。目前のバリスタがそのまま前線へ案内してくれる」


 そんな通信が入ったので機体上部の鎧を閉じ、スリットから見える視界だけを頼りにバリスタを追う。


「白より指揮、ドラゴンを確認した。任意の戦いで良いか?」


 どうやら砦の兵たちがベインに驚いているようだが、手を止める隙は無いらしく、騒ぎはすぐに収まった。


 本来は追撃するバリスタを通す通路から巨大なベインが砦の外へと出る。


「いつも通りやれ」


 そんな声を聞いて「了解」と返し、リンの機体をチラッと見る。


「銀より白、背中は任せて」


 どうやら向こうも気づいたらしい。そんな通信が入ったので「任せた」と返す。


 後はアニメやゲームで見たようなやり方でハルバートを振り回すだけだ。


 予想したよりも恐竜の動きは遅く、そして、ファンタジーの魔物ほど硬くない。


 ハルバートを振り降ろせば首の長いブラキオサウルスらしき恐竜の首が半ばからちぎれ、横になげばティラノサウルスらしき肉食恐竜の頭に突き刺さる。

 そこへすかさずリンが突きを入れて完全に仕留めてしまう。


 リンとのコンビネーションで次々恐竜を倒していく。


 時折視界の隅を矢が飛んでいき、離れた恐竜に刺さっているが、ちゃんとベインを避けてくれているらしい。

 俺はひたすらにハルバートを振り回し、そして突く。


 大口を開けて突っ込んでくるティラノサウルスの口にハルバートを突き刺し、リンが首へハルバートを振り降ろせば、それまでの勢いを失って倒れ込んでいく。


「ユーヤ、右から来るよ!」


 リンがそう言って来たので右を向くとブラキオサウルスみたいな奴が鋭いくちばしで突きに来ていたのでハルバートを振るって頭を叩く。


 ドンと感触が機体に伝わると奴の頭にハルバートがめり込み、体がゆっくり倒れていく。


 日暮れまでそんな事を続けていると、通信が入った。


「指揮より各機、ドラゴンの撃退は成功だ。ベインは砦に戻れ」


 ようやく戦いが終わった。いつの頃からか銀色だったリンの機体は赤黒く染まっている。きっと白いはずの俺の機体も赤黒いんだろうな。


 砦に戻ると5機とも赤黒くなっていた。一部機体が損傷していたりはするが、乗員は無事だ。


「ベインなら勝てる。僕の言ったとおりになった」


 リンがそう胸を張る。確かにその通りだった。相手が巨大生物という事もあるんだろう。人型は非常に戦いやすい。


 なるほど、人型ロボは役立たずとは限らないんだ。ようやくそんな結論が俺の中にも芽生えて来たよ。

 

中途半端ですが、一応、これにて完結

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― 新着の感想 ―
[良い点] マニアックな説明を一般読者向けファンタジーに落とし込んだところは見事です。ちょっと物知りなナロウ読者でも満足できるレベルですね。 [気になる点] マニアよりもファンタジーに寄ってきたかも?…
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