1.出会い
「おい優介、起きろって!次、移動教室だぞ!」
「ん・・・うるさいな~」
駿の声で起こされる俺。
「うるさいなら、放っていくからな!」
「ごめんごめん!それはやめて!」
駿は俺の兄弟みたいなやつ。
幼稚園から今の高校まで
ずっといっしょにいる。
そのせいでつい甘えちゃうけどな。
「行くぞ!」
「うぃ~」
俺は重そうに体を起こす。
「武田!」
廊下で俺の名を担任の松崎が叫ぶ。
「お前はいつもだらだらして!」
松崎は服装にうるさい…
助けてほしくて駿の方を見ると
すでに姿がなかった…
あいつ…先に行きやがった…
それから服装をただし
移動先の音楽室に向かうと
そこでも授業遅刻として怒られる始末…
駿は声を押し殺して笑っている。
俺の席は駿の横。
近づいて小声で駿に言う。
「何で先いくんだよ」
「あのままいたら俺まで遅刻になる」
「見捨てることないだろ~」
「仕方ないだろ。時間なかったんだから」
「うーん…もういいや」
「あっそう」
なんだかんだ言っても
俺と駿は喧嘩という喧嘩をしたことがない。
まああとはいつも通りで
今日の授業は全て終わった。
部活はまだ入ってないから
駿といっしょに帰路につく。
「部活しないの?」
駿が俺に聞く。
「まだやらないかな」
「まあいいけど」
どうでもいい会話をしているうちに駿の家に着いた。
「じゃあ、バイバイ」
「おう、また月曜日な~」
そこから少し歩いてるうちに
俺の家に着いた。
ガチャ…
「ただいま…ん?」
俺は見覚えの無い靴を見つけた。
「おかえり~」
階段の上から聞こえる。
姉の優子の声だ。
「姉貴~これ、誰の靴?」
「私の友達のだよ。紹介したいから早く上がってきて!」
といって部屋に戻っていく。
ん?俺を紹介するのか?
まぁ挨拶くらいしておくか・・・
階段を上がり足早に
姉貴の部屋に向かう。
「こんにちは……」
言いながら入っていくと
俺はその場の光景に驚いた。
これほどまでに
俺のタイプどストライクの人は
いるんだろうか!とさえ思った。
今思えば、姉貴に感謝の一言だ。
「どしたの?」
素頓狂な声をだしたからか姉貴が聞いてくる。
姉貴の友達がくすくす笑っている。
その笑顔にまたドキドキした。
これが俺たちの出会いだった…