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十月欠片  作者: とにあ
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願うは

 

 幸せになってください。

 そう言ったのははじめてつきあった少女だった。

 それは別れの言葉でじゃあ、別れるなんて言うなと思った。思っただけで言葉を突きつけることができなかったのは俺もまた遠距離恋愛に自信がなかったから。

 今、思い返せばどうして「幸せに」とか「またいつか」とか返せないのだろうかとも思うけれど、そんな余裕はいつだって後から湧いてくる無責任な想いだ。

 残業あがりの空はすっかりと日も落ちていた。つい先日まではおかしなくらい暑かったというのに。

「気候の変化にやられそ」

 ぼやけば同僚が携帯をひらいていた。

「歩きながら見んなよ」

「わかってますよ。明日は雨だそうですね。風邪をひいて休まないでくださいね」

 年下にして同期のこの同僚はいつだって突き放すようにものを言う。

 悪い奴ではないのだが。

「お前は休むかー?」

「休めるなら残業なんかしない」

 駅に向かう奴を見送り、一人空を仰いだ。

 ビル灯りが夜を侵食し空に星は見えない。

 行き交う人々の声や雑踏。

 それでも誰にも気に留められることはない。

 ひとりだ。

 君と夜を見上げれば星が見えるだろうか?

 アスファルトを踏み歩き出す。

 喧騒は遠のく。

 それはいつも通りに騒々しくも静かで優しい夜だった。

「幸せになってください」という台詞で始まり「静かで優しい夜だった」で終わります。

#こんなお話いかがですか

https://shindanmaker.com/804548

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