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左の足首に痛みを抱えたまま、シルヴィはナルフィに戻った。
足が回復するまで動かさないように医者に言われたので、シルヴィは仕方なく医者の言葉に従った。だが、動いているほうが好きな彼女にとってはつらい日々だった。
体を動かし、剣を振り回すことでストレスを解消したいところなのに、じっとしていることしかできなくて、医者から普段どおりの生活に戻っていいという許可が下りた一週間後には、シルヴィにはかなりの鬱憤が溜まっていた。
足が治った後、シルヴィはさっそく剣を手に訓練場へ足を運んだ。
「おう、シルヴィ。怪我をしたと聞いたが、もういいのか?」
「はい、先生。剣の稽古を休んでしまい、すみませんでした」
シルヴィは師ロイクに頭を下げた。
「うむ、仕方ない。じゃあ、今日も素振りから始めるぞ」
「はいっ!!」
シルヴィは自分ではどう対処すればいいのか分からない胸のつかえからどうにかして逃げたくて、一心不乱に剣を振り下ろした。




