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パーティーの間から廊下に出るとすぐに、ジョルジュがシルヴィに直球の質問をぶつけた。


「シルヴィ、お前、あの王子と何かあったのか?」


ジョルジュの追及するような鋭い視線から逃げるように、シルヴィはうつむく。


「何かって……?」


「ごまかすなよ。さっきのお前はどうも変だった」


「……そうかしら?」


シルヴィは曖昧な返事をしてから、ジョルジュの背中を押した。


「それより、ここでもう大丈夫だから! ジョルジュは戻って!」


ジョルジュは心配そうな瞳でシルヴィを見やった。


「……本当にいいのかよ?」


「うん。じゃあね!」


シルヴィは彼の背中をもう一度押し、さっそくすたすたと歩き出した。


今日彼女は踵の高い靴を履いていたのだが、早くこの屋敷から立ち去りたいということだけで頭がいっぱいになってしまい、足元への注意がおろそかになった。


不安定な慣れない靴を履いていることを忘れていつもどおり歩いていたら、段差もくぼみもない平らな床で、シルヴィの左足が突然バランスを崩した。


くきゅっという音が体内に響き渡った瞬間、彼女の視界がぐらついた。


シルヴィは派手に転んでしまった。


自分が転んだことを悟り、シルヴィはよろよろと上半身を起こした。


続いて立ち上がろうとした時、左足首に鋭い痛みを覚え、彼女は思わず顔をしかめた。


しかし何よりもまず立ち上がらなければ。幸い今廊下には誰もいないが、いつ誰がやって来るか分からない。こんな無様な姿、誰にも見られたくない。


「ああ、もう……!! 嫌になっちゃうわ……」


シルヴィは壁にもたれて立ち上がり、そのまま伝い歩きした。


くじいた左足を引きずりながら、シルヴィは何とか待たせてあったナルフィ家の箱馬車まで戻った。


御者に手伝ってもらって馬車に乗り込み、席に腰を下ろしてくじいた左足首に触れると、はっきりと熱を帯びていた。少し動かすだけでも痛みが走った。


けれど、体よりも心のほうが痛かった。


「ほんと、馬鹿みたい……」


この靴を選んだのは、自分を大人っぽく見せたかったからだ。


でも、私には似合わないこんな踵の高い靴を履いて、その結果転んで怪我をするなんて……。


本当に馬鹿みたい……!!


激しい自嘲の念が湧き上がり、シルヴィは座席に置かれていたクッションを顔に押しつけて泣いた。


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