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結局のところ、くよくよしているのはシルヴィの性には合わなかった。
シルヴィは姉イヴェットが差し入れてくれた手作りクッキーを頬張りながら自分に誓った。
私みたいな生意気で男勝りな女、どうせ誰も女だとは思ってくれないわ!!
だったら好きなように生きてやる!!
剣の練習をもっともっとするわ!!
誰がパーティーになんて行くものか!!
誰が結婚なんてするものか!!
私はこの身を剣に捧げて生きていく!!
そんな気持ちを胸に、シルヴィはクッキーの山を胃の腑に収めた。
「よしっ!!」
カップに残っていたお茶を口に流し込んでからシルヴィは勢いよく立ち上がり、自分を鼓舞するために頬を二回叩いた。
そして荒々しく愛用の剣をつかむと、彼女は大股で訓練場へ向かった。
その日以来、シルヴィは以前よりも深く剣の稽古にのめり込んだ。
姉イヴェットと二人の妹たちは、部屋に閉じこもっているよりはシルヴィらしいと思い、彼女に対して何も言わなかったが、女官や侍女はシルヴィが傷だらけになってしまったことを嘆いた、当の本人は全く気にしなかったのだが。
ダンスや礼儀作法の教師たちは
「最近シルヴィ様はせっかくやる気を見せて下さって、こちらも安心しておりましたのに……」
「そんなことではいよいよ誰からも相手にされなくなりますよ!?」
などとシルヴィに言ったが、彼女は聞き流すだけだった。
どうせ最初から誰からも相手になんてされていないわよ!!
もう男なんてまっぴら!! 誰かを好きになるなんてまっぴら!!
私の恋人は剣だもの!!
シルヴィは犯した失敗も、恥ずかしさや情けなさも、ニコラスへの不器用な恋心も、全てを忘れてしまいたくて、がむしゃらに剣を振るった。
彼女の迫力に指南役のロイクは
「最近のシルヴィは気迫が違うな」
と満足げに呟き、見習い騎士たちに
「おい、ひよっこども、うかうかしていると姫に置いていかれるぞ」
と発破をかけた。




