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ナルフィ城に戻ると、ラザールとニコラスは兄の部屋でくつろぐと言って二人で消えてしまった。


シルヴィはアデライードと一緒に自分の部屋に戻り、女官が呼んだ医者の診察を受けた。


多分風邪の引き始めだろう、という診断を医者は下し、シルヴィは寝室で横になることにした。


「シルヴィ、大丈夫?」


アデライードは心配そうにシルヴィの顔を覗き込んだ。


ニコラスが同じ空間にいないからだろうか、シルヴィの胸の苦しみもいくぶん和らいだ。


彼が視界の中にいない今、シルヴィにはアデライードに対する謝罪の気持ちしかなかった。


こんなにきれいで優しいアデライードに対して、私は何て醜い気持ちを持ってしまったのかしら……!?


シルヴィはアデライードに申し訳なく思った。


「大丈夫……。アデライード、ごめんね」


シルヴィは素直に謝罪した。


アデライードは当然、シルヴィが体調を崩したことを気に病み、早く城に戻ることになってしまったことに対して謝っているのだととらえ、


「気にしないで、シルヴィ」


と笑った。


その完璧な笑みに、シルヴィは泣きたくなった。


アデライードの優しい気持ちが嬉しかったからだ。


けれど同時に、自分がひどく未熟な人間だと痛感させられて、自分の卑小さがどうにも情けなかった。外見の美しさでも内面の純粋さでもアデライードには到底かなわないと悟ったシルヴィは、自分がどうしようもなく惨めに思えた。


「ごめん……」


思わずシルヴィは繰り返した。


泣きそうになっていることをアデライードに知られたくなかったし、彼女の笑顔はあまりにも清らかだったから、シルヴィは目をぎゅっとつむった。


「気にしないでったら、シルヴィ。わたくしも自分のお部屋に戻るから、ゆっくり休んでね」


アデライードの優しい声がシルヴィの心に沁みた。


アデライードはシルヴィの頭をそっと撫でてから、足音を立てずに部屋から出ていった。


一人残されたシルヴィは頭からブランケットをかぶり、わけが分からない感情に心をかき乱されたことに狼狽し、声を押し殺して泣いた。


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