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こうしてシルヴィは、ナルフィにいる間必死に剣の稽古をし、家族や城の者に文句を言わせないためにも同じくらい真剣に淑女教育にも取り組んだ。
月に一度はローゲに上京し、ニコラスと一緒にパーティーに出席し、その翌日に彼と対戦するということを繰り返した。
初めて出会った4月から半年も経つ頃には、それが二人にとって自然な、当たり前の流れになっていた。
二人の間には、一風変わった友情のような関係が少しずつ育っていった。
いつの間にかシルヴィは彼のことを『ニコラス』と呼び、ニコラスはシルヴィを『お前』と呼ぶようになっていた。
シルヴィは大公の娘という立場から、家族や親戚、幼い頃から知っている友人以外に『お前』と呼ばれたことはなかった。
もし誰かに『お前』などと呼ばれたら抵抗があるだろうが、ニコラスにそう呼ばれるぶんにはなぜだかあまり気にならなかった。
それは彼が自分を『お前』と呼ぶ時、兄ラザールからそう呼ばれているような気になるからかもしれない。また、彼の声の中に親しみのようなものを感じたからかもしれない。
とにかく、二人は以前より打ち解け、毎月顔を合わせた。




