＃8 謎の人物
どうも、チヒロです。さて軽く挨拶をしたところで現在の状況をお知らせしたいと思う……現在俺は……
「ジョウジ！今日こそ勝負だ！」
「……また来た」
「いるのは知ってるんだぞー！」
……すごく困ってます。3日前から朝になると謎の人物が家の前で叫ぶのだ。どうやら村長に用があるようだが、村長は会おうとしない。その人は5分くらいで帰るのだが、来るのは朝だけじゃない。昼頃、夕方にも来ると村長が言っていた。なぜ村長は相手にしないのだろうか……？
「いい加減相手したら？」と俺が言うと
「いや……そもそも誰だか覚えてないんだよな……」
「え、覚えてない？」
「あぁ、知らん奴だ」
いや、あれは嘘をついている目だ……どういうことだ？
「……ちょっと話してみる」
このままではホントにずっと家にやってくると思い、俺は謎の人物に接触してみることにした。
「あのー……」
「む、誰だ？」と謎の人物がこちらを振り向く。その人は『狐獣人』で少し怖そうな雰囲気があった。
「あー、俺は村長の家に居候してるチヒロっていいます」
「何！？ この家に住んでいるのか？」
「はい」と俺は返す
「ジョウジはいるんだろ？ ちょっと呼んできてくれないか？」
「あの……村長はあなたのこと知らないと言ってるんですけど……」と俺が言うと謎の人物が
「……何？」と言葉を低くした。
「この空手の師範である『リキ』様を覚えてないのかー！！」と再び叫びだす。
「……王者？」
「あぁ、35年前に空手の師範になってからワシは無敗を築いていった、大会の上位常連、優勝者、どんな相手も倒してきた…そしてワシが60の時にあの男、ジョウジが現れた。そして勝負の末、完膚なきまでに倒された。その後もどんなに修業を積んでも奴はその上をいった、あれほどまでの屈辱はなかった……」
「……なるほど」
「5度目の対決を最後にに奴はどこかへ消えてしまい、消息もつかめず、もう戦えないのかと思っていた……しかし、弟子たちに奴がこの村にいることを聞いた！ そしてやってきたというわけだ」
……そうだったのか、それは悔しかっただろうな。空手の師範か……ん？ 師範？ 俺はふとあることを思い出す。あれは俺が空手を習い始めたとき……
(村長って昔、空手の師範だった人に圧勝したんだって)
(マジで！？)
(噂なんだけどねー)
「……ホントだった」
「ん、どうした？」と謎の人物……リキさんが不思議そうな顔をする
「あの……」
――居間
「村長ー」
「おう、どうだった？ 帰った？」
「上がってもらった」
「おう、そうか…………え？」村長がバッと振り返る。
「……久しぶりだな、ジョウジ」
俺はリキさんを家に上がらせることにした。……そういえば村長が青ざめている顔は初めてみた気がする……。
