#6 ハルコ
――ツキカゲ学園・2年生教室
「どうしたトモ?」
「……ん?」
教室に入るとトモが珍しく微笑んでいたので俺はトモに話しかける。
「今日はあの日……」
「ん?……あー、そういえば今日はあの日か」
「あの日だね」とナオも思い出したようだ。今日は何の日か言うと…
「おはよう!今日も持ってきたよー!」
俺たちが振り返るとハルコがいた、ハルコの手には大きな紙袋を持っている。
「今日は何?」とナオがハルコに問いかける
「今日は前回好評だったクッキーを作ってきましたー!」
紙袋に入っていたのは小さな袋に小分けされたクッキーだった。俺たちが言った『あの日』とは、ハルコが手作りお菓子を持ってくる日のことだ。週に1回のちょっぴり嬉しいイベントになっている。
「はい、チヒロ」
「おぉ」
俺はクッキーを受け取る。
「はい、ナオ そしてこれがトモの」
「ありがとー」
「……ありがと」
ナオも嬉しそうに受け取る。トモは早速1つ食べている、微笑んでいるので美味しかったのだろう。じゃあ俺も1つ…
「お、やっぱ美味いな」
「ホント?」
「トモ、美味いよな?」
「……(こくり)」 トモが頷く。
「ありがと、リクエストがあったら言ってね!」とハルコは嬉しそうに言う。
「ただいま~」とミイナが教室に入ってきた。手には空の紙袋を持っていた。
「あ、ミイナありがとー」
「今日のも好評だったよー!」とミイナが笑顔で言う。ハルコが手作りお菓子を作るのは8年生だけじゃない。先生たちにも作っていて、ミイナがそれを配って回っているのだ。
「そういえばさ、ハルコは料理はできるの?」 ふとそう思った俺はハルコに問う。
「そうだなー……まぁ大体かな?やっぱりお菓子つくりの方が楽しいけどね!」
「へー……ん?」
「…………」 ふと見てみると、トモはもうクッキーを食べ終わったようだった。そして目線は俺のクッキーに行っている。
「ダメだぞ」と俺は注意する。すると今度はナオの方を向いた……あれは完全に狙っているな、マモルのクッキーを。
「おはよーさん」とマモルがやってきた。トモはちょっと悔しそうな顔をしていた。
「よかったねマモル……」とナオが言いながらマモルにクッキーを渡す。
「ん、何が?」とマモルはわかってないみたいだ。「あー今日はあの日だったな」とマモルも早速食べていた。
「トモ」
悔しそうにしているトモにハルコが話しかける。
「次はトモが食べたいのを作ろうと思うんだけど……何がいい?」
「……えっ?」
「トモはとても美味しそうに食べるから嬉しくて……だからトモの一番好きなのを作ってあげようと思って!」
トモは一瞬驚いたがすぐに無表情に戻り「……考えとく」と答えた。ハルコが「わかった、思いついたら行ってね!」と自分の席に戻っていった。そして俺はトモをちらっとみると、無表情ながらどこか嬉しそうだった。




