#4 トモ
――ツキカゲ学園・図書室
学校が始まって1週間。その日の放課後、俺は図書室へと向かっていた。理由は俺が3カ月前に借りっぱなしだった本を返すためだ。気づいたのはつい昨日のことで・・・。そして図書室に入ると……
「トモ?」
「……チヒロか……」
同じ2年生のトモがいた。
「あれ、図書室の先生は?」
「用事……俺が代役……」
「あ、そうなの……あ、これ返したいんだけど」
「……ここに名前と日付」
「はいはい」
こうして本を返す手続きを終わらせ、ついでに暇なので図書室を見ることにした。それにしても……図書室は2,3回しか来た覚えがないな……最後に来たのがいつかも覚えてないが。
「ん?」
気が付くとトモは図書室の受付におらず、一般の生徒が使うテーブルに座って本を読んでいた。…トモとは去年から一緒のクラスだが、まだまだよくわからない部分がある。別に仲が悪いわけではない、むしろ仲はいい。だが時々なにを考えてるのかわからない…だから「何考えてたの?」と俺だけじゃなくナオたちも聞いたことがあるが、トモの回答は「いや……」、「何も……」「……秘密」といった感じだった。
「前、いいか?」
「……(こくり)」
トモは俺の答えに頷き再び目線を本に戻す。さて、俺も本を読むとするか…ちなみに俺が選んだ本は伝記の本。どうやら昔、空手の達人だった人の話らしいがなるほど…意外と面白い。俺は本はあまり読まないがたまにこうして本を読んでみるのもいいかもしれないな。
「ぽりぽり……」
「……ん?」
何か音がするので顔を上げてみると、トモが何かを食べてるみたいだった。
「……トモ、何食ってんだ?」
「……ん」
トモが見せてきたのは『おかき』だった。
「あれ、ここって飲食はダメじゃ……」
「ばれなきゃいい……」
「いや、おかきのかけらがお前……」
「……掃除をする」
「……しっかりしてるな」
「……あげる」
「お、いいのか?」
「……ん」
トモがカバンの中身を見せてきた。なかにはおかきのほかに色々なお菓子が入っていた。確かにトモは無類のお菓子好きとされているがまさかここまでとは…。
「……いつもこんなに持ち歩いてるのか?」
「…………(こくり)」
「じゃあもらっておくよ」
「ん……」
そして俺はトモからもらったおかきを食べ、しばらく本を読んだ後、家へ帰ることにした。その前におかきを食べた後を残さないように掃除をするのを忘れずに。
「トモ、また明日な」
「……うん」
……また図書室に行くのもいいかもしれないな、とちょっと思った今日この頃。