#19 不安
――前回のあらすじ
村長の娘のエミリが来ることになり、客間の掃除をする2人。その時、まだ封を開けていない手紙があった。その手紙を見た村長は絶叫する。手紙には『結婚』の文字が……。
「…………」
村長は朝からずっと黙り込んでいる……あの手紙を見てから何かずっと考え込んでいるようだ。
今日からエミちゃんが来るのだが、ケンカにならないは俺は不安になっている。大丈夫かな……?
「あー……エミちゃんってもうすぐ来るよねー……」
「…………」
「楽しみだなー……早く会いたいなー……」
「…………」
こっちを見ようともしない……ホントに何を考えてるんだ……
その後、村長は昼メシが終わっても朝と同じく黙り込んでいた。この重い空気が耐えられなくなった俺は、とりあえず退避しようと思い……
「村長、俺 エミちゃん迎えに行くね」
「…………」
「行ってきまーす……」
俺はエミちゃんが来るのを広場で待つことにした。
……さて、どうしようか。エミちゃんに村長の状態を伝えるかどうか……、俺は目を瞑って考えてみる。エミちゃんは村長があの手紙を読んでいるという前提で話をするだろう、やっぱり話しておいたほうのがいいかな……? どちらにしろ口論になりそうだけど……。
「あれー、もしかしてチヒロ?」
前から声がしたので瞑っていた目を開けると、そこにはスーツ姿の『狐獣人』の女性がいた。そしてその女性は……エミちゃんだった。
「エミちゃん!」
「久しぶりー! 迎えに来てくれたの?」
「あー、うん……」
「どうしたの?」
話すか……どんな反応されてもしょうがいないよな…
「あのー、エミちゃん……実は」
「お父さんは? 家にいる?」
「え? あぁ、いるけど……」
「そっか、じゃあ早く家に行こう!」
「あ、いや エミちゃん、ちょっと……」
「チヒロも早く早く!」
……エミちゃんはさっさと村長の家へと歩き出した。村長と同じくマイペースな人だなあの人は……
その後、エミちゃんと一緒に村長の家へと着いた。しかし結局話せなかったな……大丈夫かな?
「ただいまー!」
「ただいま……」
……返事はない。玄関で靴を脱ぎ、二人で居間の方へ行く。そして居間へ着くと……
「あ、お父さん ただいまー!」
「…………あぁ」
村長は呟くような声でそう言った。相変わらず無表情だが……。
「あ、そういえば私ずっとスーツだった ちょっと部屋着に着替えたいんだけど」
「あぁ、じゃあ客間に案内するよ……」
俺はエミちゃんを客間へ案内する。
さて……エミちゃんが着替えたらいよいよあの報告だよな……不安だ、とにかく不安だ。
これからのことを思うと俺は不安でしかなかった……。
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