#10 リキ
――前回のあらすじ
村長はリキに対しあまりいい表情をしていない。リキが理由を問いただすと、村長は静かに語りだす。村長は昔、リキの宝である黒帯を持ってきてしまったことが原因だった。しかしそれは村長の勘違い、二人は和解(?)、そして二人は空手の対決へ……。
――空手道場
「あの……リキさん」
「…………」
リキさんはさっきから顔をうつむいている……というのもついさっき、村長との勝負が繰り広げられていた。そして勝負の結果は…お察しの通りである。村長は先に帰り、今は俺とリキさんの二人だ。
「俺、二人とも凄いなって思いましたよ 最後までどっちが勝つか予想できなかったです」
「……お主」リキさんがようやく口を開く。
「はい?」
「お主は空手をやっているか?」
「え、はい やってます……」
「空手は楽しいか?」
「そうですね……友達と一緒に楽しくやってます」というとリキさんは「そうか……」と小さく返す。
「また村長と勝負はするんですか?」
「……わからん」
「そうですか……」
「しかし、アイツは昔から変わってなかったな あの身のこなしは……」
そうだ、この機会に聞いておこうか……!
「あの……村長ってどんな人なんですか?」
「ん? ……そういえばお主はジョウジとはどんな関係なんだ?」
そういえば、この人に俺のことについていっていなかったな…
「えーと、俺は……」
俺はリキさんに昔の事情を説明した。リキさんは時々驚きながらも真剣に話を聞いてくれた。
「なるほど、そんなことが……」
「はい…あれ、そういえば俺が『人間』ってことについて驚いてないですね?」と俺はふと思ったことを言った。
「それはまぁ、『人間』という種族を見たのはお主が初めてじゃない……といっても、ワシも2,3回ほどだが」
「そうなんですか」と俺は納得する。
「……チヒロだったな?」
「あ、はい」と言うとリキさんは俺の頭の上に手をぽんと置き、「早く記憶が戻るといいな」と優しく言ってくれた。
「そういえばジョウジのことだったな」
「あ、はい!」
「あいつはな……」
それから村長のことについてだけでなく、空手についても色々話してくれた。話しているうちにすっかり日も落ちていた。
「そろそろ帰らなければな」
「そういえばリキさんってどこに泊まってたんですか?」
「海沿いのあたりで野宿をしている、じゃあな チヒロも早く帰りなさい」
リキさんが海の方へと帰っていこうとしたとき俺はあることを思いついた。
「リキさん!」
「ん?」
――村長の家
「ただいまー」
「お帰りー」
「じゃまするぞ」
「はい、いらっしゃ…………え?」と村長がバッと振り返る……この光景朝も見たような…
「何で!?」
村長はいまだにこの状況を理解できていないようだ。
「リキさんしばらくウチに泊まるから」と言うと「何言ってんだお前!?」と村長がすぐ言葉を返す。
「野宿をしていたのだが、チヒロがこの家に泊まっていけばいいと言ってな」
「一日?一日だけ?そうでしょ?」
「しばらく休暇をとったからな……十日ほどはここにいる予定だ」
村長は唖然としていた。どこまでリキさんのこと苦手なんだこの人は。
……余談だが村長はリキさんが家にいる間、再び悪夢にうなされている村長の寝言が聞こえた……。
空手のルール等を勉強しています。改めてそんなルールなんだと驚きます。
空手の試合の描写はもうちょっと後になります……多分。