#1 チヒロ
――村長の家
「チヒロー、起きろー」
「……ん」
もう朝か……まだ眠いが今日から学校だったな……。
「チヒロー?」
「起きてるよー……」
「朝飯出来てるぞー」
「うん」
俺は眠い体を起こして着替える……ところで紹介が遅れたな、俺は「チヒロ」。1年前にこの「ツキカゲ村」に住んでいる。しかし俺は自分の名前以外の記憶を失っている。1年たった今でも思い出せないままだ。
「おはよーさん……」
「おう」
この人は「ジョウジ」、この村の村長だ。俺は今この村長の家に居候させてもらっている。そして村長はこの村では一番多い「猫獣人」だ。
「今日から学校だったな?」
「うん」
「あれから1年たったのか……早いな……」
「そうだね…」
「さっ早く食べろ、そろそろナオが迎えに来る頃……」
「チヒロー!」
村長が話している途中に玄関から大きな声が聞こえた。
「おっ、噂をすれば」
「チヒロー?」
そこに茶髪の『猫獣人』が居間までやってきた。
「あれ、まだ食べてんのか?」
「お前が早いんだよ、ナオ……」
ナオは村長と同じ「猫獣人」で俺の最初の友達だ。学校の日は毎日家まで迎えに来るのだが……これがまた早く来るもんで……。
「ナオは相変わらず元気だな」
「村長、おはよー」
「ごちそうさま」
「あっ、食べ終わった?早く学校行こうぜ!」
「はいはい、じゃあ村長行ってくるね」
「おう、二人とも勉強頑張れよ!」
「「はーい」」
そしてナオと二人でツキカゲ学園に向かった……。
――ツキカゲ学園
ツキカゲ学園は村長の家から徒歩10分のところにある。小学部1~6年から中学部1~3年まであり、俺とナオは今年から中学部2年生だ。俺はナオと一緒に2年生の教室へと向かった。2年生の教室に入ると早くも3人の生徒がいた。
「あ、二人ともおはよー!」
最初にあいさつしたのは茶髪の『兎獣人』のハルコ。
「おはよう二人とも」
次にあいさつしたのは金髪の『猫獣人』のミイナ。
「……zzz」
机で爆睡しているのは銀髪の『犬獣人』のトモ。
「おはよー!はぁ~間に合った~」
「マモル……」
教室に入ってきたのは黒髪も『猫獣人』のマモル。遅刻常習犯の彼だが今日はセーフだったようだな。ともあれ8年生はこの6人である。
「はい、皆おはよう」
「あ、先生」
教室に入ってきたのは8年生の担任である『犬獣人』のサトル先生だ。
「そろそろ始業式が始まるから校庭に集合しろー」
「「「「「はーい!」」」」」
「……zzz」
「おいトモ、起きろー」
「……ん?」
トモを起こして俺は校庭へ向かった。……さてここでプロローグにも書いてあったと思うが一応ここでも話しておこう。さっきから『猫獣人』『犬獣人』と獣人ばかりが出てきているが、実はこの世界には『人間』という種族はかなり珍しいのである。ましてやこのツキカゲ村に『人間』はたった1人、つまり俺だけなのだ。俺も村長から聞いて驚いた。
「チヒロー?早く行こう?」
「あぁ、ワリィ」
今度こそ俺は校庭へ向かった。