表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら魔族の子  作者: ヤッサン
魔族の息子
2/43

第2話 固定された神の悪戯

 目覚めると、見慣れない木製の天井が視界にあった。生まれて数日、ようやくこの異世界での生活リズムにも慣れてきた。赤ん坊の体は不自由だが、思考だけは自由だ。

 昨夜、両親が「スキル」や「ステータス」について話していたのを思い出す。確か、父さんは「念じれば自分のステータスは見れる」と言っていた。半信半疑で、俺は心の中で強く念じてみた。

『ステータス』

 すると、目の前の空間に、半透明のウィンドウがふわりと浮かび上がった。本当に見えた。感動もそこそこに、俺は食い入るようにその内容を確認する。

 ====================

 名前: スタン

 種族: 魔族

 職業: 幼児(生後3日)

 状態: 普通

 レベル: 1

 HP: 3/3

 MP: 3/3

 攻撃力: 3

 防御力: 3

 知力: 3

 素早さ: 3

 器用さ: 3

 運: 3

 称号:

 母親のおっぱい大好き幼児

 スキル:

 鑑定 LV.1

 言語翻訳 LV.MAX

 フィックストアタック LV.1

 フィックストグロウ LV.1

 ====================

 ……絶句した。

 名前はスタン。種族は魔族。そこまではいい。問題は、その下だ。

 HP、MP、そして全ての能力値が、見事に「3」で固定されている。おい、神様。転生しても俺の人生は「3」から逃れられないのか?手の込んだ嫌がらせをありがとう。転生者といえば、初期ステータスからして圧倒的なのがお約束だろうに。

 称号もひどいものだ。『母親のおっぱい大好き幼児』。まあ、事実だから反論できないが、もう少し格好いいものはなかったのか。

 気を取り直して、スキル欄に視線を移す。ここが重要だ。

 鑑定と言語翻訳。これは当たりスキルだろう。特に言語翻訳がレベルMAXなのはありがたい。両親の言葉が完璧に理解できるのは、このスキルのおかげか。

 そして、見慣れない二つのスキル。俺は意識を集中させ、それぞれの詳細情報を表示させてみた。

【フィックストアタック LV.1】

 常時発動型スキル。MPを1消費し、素手による攻撃に対象の防御力を無視した【攻撃力×50】の固定ダメージを与える。武器の攻撃力は加算されない。レベル上昇により倍率が成長する。

【フィックストグロウ LV.1】

 常時発動型スキル。自身が敵と認識した者を倒すたび、全てのステータスが【+1】される(自身よりレベルの低い相手には無効)。また、レベルが1上がるたび、そのレベルの数値分、全てのステータスが上昇する(例:LV.2になると全ステータス+2)。

「…………なんだ、これ」

 思わず声が漏れた。

 フィックストアタックは、武器が使えないという制約付きだが、防御無視の固定ダメージは強力だ。そして、問題はフィックストグロウ。なんだこの、地味だけどとんでもない成長スキルは。

 敵を倒せばステータスが上がる。レベルが上がれば、さらに上がる。つまり、レベル10になれば、レベルアップだけで全ステータスが10も上昇するということか。

 初期値がALL3なのは、このスキルがあるからか。神様は、俺に「地道にコツコツ強くなれ」と言っているらしい。悪くない。いや、むしろ最高のスキルかもしれない。前世で「コテイさん」と呼ばれた俺に、神様がくれた、固定された運命を打ち破るための力。そう思うと、俄然やる気が湧いてきた。

 早速、スキルの効果を試してみたい。だが、今の俺はベッドに寝かさることしかできない赤ん坊だ。

「……ん」

 ふと、すぐそばにあるベッドの木製の柱が目に入った。あれなら殴れるかもしれない。

 俺は、ありったけの力を込めて、小さな拳を柱に向かって振り下ろした。赤ん坊のか細いパンチ。そう思っていた。

 バキィッ!

 乾いた、木が砕ける鋭い音が部屋に響いた。

 自分の拳に痛みはない。だが、視線の先のベッドの柱は、根本から無残にへし折れていた。

 フィックストアタック……発動したのか。MPが1だけ消費されているのを感じる。

 威力を確認できたのはいいが、これはまずい。どう言い訳すれば……。

 そう考えているうちに、最後のMPが尽きたせいか、急激な脱力感が全身を襲い、俺の意識は再び遠のいていった。

「なんだ今の音は!?スタンの部屋からだぞ!」

「まあ大変!スタンのベッドが壊れていますわ!」

「なんだと!?あの商人の野郎、不良品を掴ませやがって!今度会ったらただじゃ済まさんぞ!」

 父さんの怒声が聞こえる。ごめん、父さん。犯人は、俺です……。

 その日の夜。自分の寝床を破壊した俺は、両親のベッドで川の字になって眠ることになった。そして翌朝、父さんのギタンは、寝相の悪いスタンの無意識の鉄拳を顔面に何度も食らい、いくつもの青あざを作って絶叫することになるのを、まだ誰も知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ