遊愛少女
恋愛はゲームだよ。
楽しく楽しくそして上手く勝つ。
本気になった方が負け。
だから私は綺麗に騙して綺麗に釣り上げる。
ほら、今日も楽しいゲーム。
恋とは駆け引きを楽しむ物である。
「今日バイト休んだから遊びに行かない?」
下心見え見えで鼻の下伸ばした奴に話しかけられても嬉しくないわ。
ただ遊んであげるだけ。
「ごめんねー?今日用事があるのっ」
ニッコリとグロスの光る唇で笑みを作る。
そして何かを言われる前にそれじゃ、と言って逃げる。
あぁ、楽しいなぁ楽しいなぁ。
私目当てで釣られて遊ばれる男を見るのは。
「お前…最悪だな」
幼馴染みは呆れた目で私を見るがそんなことは関係ないのだ。
私は今が楽しければそれでいいから。
「何なら、章とも遊んであげよーか?」
ふふっと笑いながら腕を絡めると整った顔が歪んだ。
章がそんな反応をするのは今に始まったことではない。
だが、今日はいつもとは違った。
いつもならここで私の腕から逃れため息をつくのに。
今日はそのままの体制で私を見た。
「安売りだな」
ポツリとだが私の耳にはハッキリと聞こえるように言った言葉。
頭に血が上った。
勢い良く章の胸ぐらをつかみ睨みつける。
が章の目はあくまでも淡々として冷静だった。
「愛なんてねぇ、安売りだな」
こんな章は初めて見た。
今まで私のしてきたことに何も言わなかった癖に今になってこんなことを言い出す。
私は感情のままに章の頬を打った。
乾いた音がやけに響いた気がした。
息を荒らげる私に頬を赤くした章が対峙する。
「アンタにっ、何が分かんのよっ!!」
激高する私に対しても章は冷静で、それがまた火に油を注ぐ。
「分かんねぇよ」
章の瞳が寂しそうに揺れ、呟く。
するといきなり章の顔が近く……。
「なっ?!」
キス、された。
スッと身を引く章。
どこまでいっても変わらないその表情。
「このまんまじゃ、お前はいつまで経っても愛も恋も知らねぇよ」
ため息混じりに吐かれた言葉は私の心を酷く抉ったのだった。