集まれ!いじめられっ子!
とりあえず投稿!
桐原高校2年の桐野明。彼はこの学校の放送部員。この高校は一学年が5クラスもある大型高校だが、放送部員は彼一人。
痩せていてチビでメガネ。髪は長くていつもラーメンを食べる時などは苦労している。物静かで成績は中の中。彼女いない歴=年齢の16歳。
新学期に入り数日。この日も放送室でテープのチェックと機材の手入れ。顧問の先生はいないに近い。いつも桐野に任せている。
午後6時を過ぎたあたり。帰宅しようと思って荷物をまとめて放送室を後にする。
この時間は部活の最中だし。帰宅部のやつらはみんな帰っている。だから安全な時間なのだ。
下駄箱にはいつもどおり何個かゴミが入っていた。気にせずに靴を取り出して履く。
帰ろうと扉を開けようとしたその時だ。肩にガシッと手がかかる。
「桐野明君だよね。」
少し低めな声が聞こえた。手も大きく。明らかに大きい人だ。
またやられてしまう。手を振りほどいて走り出した。
「おい!待てよ。」
そう言って追いかけてくる。急いで校門を飛び出して逃げる。だけどまだ追いかけてくる。
急いで逃げるが日頃の運動不足がたたり。追いつかれて腕を掴まれてしまう。
桐野は諦めて腕を掴まれた方をみる。そこにはいつものチャラい奴らではなく。天然パーマで色黒のブサイクな男だった。
「ハァハァ・・逃げるなよ。」
男と桐野は息を整える。桐野はすぐにわかった。この人は違う。
「だって。いじめられると思って。君は?」
「俺はお前と同じ2年生の吉本太一だ。クラスは違うからな、知らないわけだ。」
「それで、なんのご用事ですか。」
「そうだ。ここじゃ何だ。近くに公園あったよな。そこまでいいか。」
桐野は応じて二人で公園のベンチに座った。
「なあ。毎日楽しいか。今日お前が蹴られているのみたよ。」
吉本が聞いてきた。
「見られちゃったか。そうだな、楽しくないよ。」
「安心しろよ。俺も鞄の中にジュースぶち込まれたよ。」
桐野は吉本に親近感が湧いてきた。彼はどこか口調がいい。
「それで、お話って?」
「ああ。なあ、人生を変えようぜ。」
「人生を?」
「このいじめられている毎日からさ。もう散々だ。」
「それは・・そうしたいけど。どうやって?」
「俺ら二人じゃ無理だ。」
一瞬期待していた桐野はがっかりした。そうだ。二人じゃ無理だ。
「だから。集めるんだよ。」
「えっ?」
「二人で無理なら三人。それでも無理なら出来るまで集める。」
「誰を?」
「鈍感だなお前は。仲間だよ。」
「仲間・・」
久しく聞いていない言葉だ。
「この学校はいじめが多すぎなんだよ。各クラスに一人以上はいるぜ。」
「もしかして。集める人って。」
「そうだ。同じいじめられっ子達だよ。もちろんお前を誘いに来た。」
「僕を・・?」
「そうだ。才能あるやつにしか声はかけない。」
「ちょっと・・僕は何も取り柄がないよ。」
桐野は少し足が早いだけ。勉強は歴史だけは上位だが、ほかはからっきし。
「必要なんだよ。お前が。」
この言葉。桐野は嬉しかった。今まで必要とされたことがない。
「わかりました・・あの・・何人くらい集めるんです?」
「俺とお前を含めて9人。予定は未定だがな。」
「なんだか・・楽しそうですね。」
吉本はとても嬉しそうな顔をして。
「そう言ってもらえるか!そうだよな、楽しそうだよな!」
テンションが上がった。この後二人は会話を楽しんだ。どうやっていじめを耐えているか。嫌いな奴の話などで盛り上がった。あたりはすっかり暗くなってしまった。
途中まで一緒に帰り。桐野は家へと着いた。
「遅かったじゃない。」
桐野の母だ。特段どこにでもいる普通の母。食卓にはビールを飲んでいる父の姿も。
「ほら明。今日はハンバーグだから。早くこっち来て食べろ。」
こう言う父は公務員で自慢できる父親だ。東京に住んでいるのに珍しい阪神タイガースのファンだ。僕はハンバーグを食べ始めた。
阪神の試合が終わりそうな時だ。
「なあ。学校は楽しいか?」
箸が止まる。小さな声でうんと答えるのが精一杯だ。
「そうか。たまには友達を連れてきてもいいんだぞ。」
「・・わかっているよ。」
「それと、学校で何かあったら言えよ。」
「うん・・」
今日吉本と出会えて本当に良かったと。後に僕はそう思った。
次の日。朝起きたら吉本からメールが入っていた。昼休みに会おうという内容だ。
いつも朝に見ているテレビの占いチェックが日課だ。僕は11月2日生まれのさそり座だ。今日は1位だった。素敵な出会いに恵まれますらしい。
だけど現実、この日も登校中に後ろから自転車軍団に頭を叩かれ。ツバもかけられた。何が一位だ。泣きそうになった時だ。
「気にしないほうがいいわ。嫌な連中のやることよ。」
となりを見るとショートカットの女の子がいた。うちの高校の制服を着ているがスラックスに茶色いコートを羽織っている。
これが運命の出会い?
「き・・・き・・君は?」
「またいずれ。そう遠くない未来に会えるわ。じゃあね、桐野君。」
僕の名前をさらりと言って。彼女は学校への道を歩き出した。後を追いかけたかったけど、追いかけられなかった。女の子なのにコートの背中はかっこよく見えた。
下駄箱には今日も何個かゴミが入っていた。これも気にせずに靴を取り出す。
「あのー・・すいません。ちょっといいですか?」
また女性の声だ。今日はなんだか忙しいな。声の先には黒髪ロングの可愛い子が。また運命の出会い?
「靴見ませんでした?恥ずかしい話・・隠されちゃって。」
その子の足を見ると靴下で上履きを履いていない。
「あっ・・その・・あの・・大丈夫ですか?」
まともに女性と会話をしたことがない。その為に口調はしどろもどろだ。
「あっ!ありました!」
そう言って彼女は玄関にあるゴミ箱に走った。躊躇なく手を入れ自分の上履きを取り出した。
「まったく。今日はゴミ箱だったか。」
そう言いながら桐野の元に戻ってきた。
「すいません。お騒がせしました。じゃあね。」
軽く頭を下げて彼女は行ってしまった。昨日の吉本との出会い。登校中に二人の女の子から声をかけられる。今日は何かあるのかなと思いながら教室に向かう。
廊下に人だかりが出来ている。そういえばテストの結果表示の日だった。うちの学校は競争意識を高めるために大きいテストから小さいテストまで、全てランキングにして表示している。
まあ、僕には興味の欠片もない話。教室に入り席に座る。前の席で女数人がブランドについて話している。なんでも彼氏に買ってもらうやつを決めているらしい。それに後ろでは男子が競馬や麻雀にパチスロの話。日本の未来が危ない。
担任の先生が入ってきた。朝のホームルームだ。
「おーい。いいか最近ネット犯罪が頻繁にあるらしいから。みんなも気をつけろよ。」
今日の注意はそれか。この先生はいつもテレビで話題になっていることばかり注意してくる。先日SNSを使った犯行が増えている報道があったのを思い出した。
授業は淡々と進み。すぐに昼休みの時間になった。
弁当を持って吉本と待ち合わせしている場所に向かう。そこは放送室だ。ドアの前にはもう吉本が立っている。
「よう。早く開けてくれよ。」
吉本に急かされ鍵を取り出す桐野。ここは彼の部屋と言っても過言ではない。放送員とは名ばかりで仕事は生徒会や先生共の雑用。映像編集ばかりだ。仕事内容のせいか桐野は5年ぶりの放送員らしい。
部屋に入ると涼しい風が出迎えてくれた。窓は音量を調整する狭い部屋に一つ。それと防音されたスタジオみたいな部屋がある。
「涼しいでしょ。光がそんなに入らないからね。夏場は最高だよ。」
二人はスタジオの方に入った。ここは広い。逆に調整室は狭いのだ。あたりを見る吉本。テープの山に配線の波。大きいテレビもある。ノートパソコンが2台にマイクのスタンドが数本。大きい棚が二つもあって機材でパンパンだ。
「食べる前にいいかな。とりあえずモノには触らないでくれ。責任は取れないからね。」
この時の桐野の顔は凄みがあった。吉本は思った、みんなに何を言われようとも彼はプライドを持ってこの仕事をしている。
「じゃあ食べようか。机をこっちに出すから。」
桐野が教室机を出してきた。パイプ椅子に二人で向かい合って座った。弁当を互いに取り出して
「おい。うまそうだな。お前の弁当。」
吉本が言った。
「へへ。母さんは料理上手だからね。」
「羨ましいよ。俺なんて菓子パンだぜ。」
とりあえず二人は食事を済ませる。そして吉本が今後について話す。
「集まったよ。俺とお前合わせて6人だ。」
「6人?話じゃ9人のはずじゃ。」
「いい返事がもらえなかった。とりあえずその6人で話し合いたい。」
「そっか・・しょうがないね。」
桐野はその断った3人はきっと心が強い人なのだと思った。
「放課後に○×デパートのフードコートに集合しよう。今日大丈夫か?」
「大丈夫だよ。でも緊張するね。」
「なーに。みんな俺とお前みたいな省かれ者さ。安心しろよ。」
吉本の言葉に少し安心した桐野であった。この日の放課後。桐野は約束のフードコートに向かった。場所に向かうと吉本と一人の男が喋っていた。恐る恐る近づき声をかけた。
「やあ。君が桐野君だね。初めまして、2年B組の伊沢です。」
そう言って手を出してきて、桐野は握手をした。顔を見ると少し日本人離れしていて、映画の俳優さんみたいな顔立ちのイケメンだ。
「こいつはハーフだ。生まれはアメリカがだ小学校のころに日本に来ているから言葉は大丈夫だ。」
吉本が言った。
「紹介ありがとうな。本名はブラッドだ。好きな方で呼んでください。」
「伊沢さん。初めまして、桐野です。吉本君から色々聞いていると思いますが、放送委員をやっています。」
「たった一人の放送委員なんだってね。」
「そうです。僕で5年ぶりらしいです。」
本当にこんなイケメンがいじめられているのか。少し疑問に感じている。
「吉本君。おまたせ。」
今度は女性の声だ。
「麻耶さん。それと、桜井も一緒か。」
麻耶と呼ばれた女の子の横に男も立っていた。
「みなさん初めまして。私は2年D組の麻耶クララ。オカルト研究会の部長をやっています。」
長く黒い髪に目はキツネ目。若干猫背の女の子。この子はいじめられそうな要素があると桐野は思ってしまった。
「俺は桜井悠太。2年C組だ。麻耶さんとはそこでばったり会って。直感的にここに来ると思ったら案の定でさ。」
坊主でフレンドリーな感じを受けるお兄さんみたいな感じだ。この人もいじめられるような感じを受けない。みんな席に着いた。
「オカルト研究会って・・そんな部活ありました?」
伊沢が麻耶に聞いた。
「そこの放送委員長と同じよ。私一人しかいないわ。だけど真面目に活動をしているわよ。」
麻耶はそのキツネみたいな鋭い眼光で桐野をチラッと見て言った。
「へー。具体的にどんな?」
「この街に溢れる噂の検証や実態調査よ。」
「なるほど。なんだか楽しそうですね。」
「伊沢君も入ってみる?」
「ちょっと考えますね。」
「フフッ・・」
麻耶はコーヒーを口にやった。
「あの・・まだ一人来るんですよね。」
桐野が言った。
「そうだ。あと一人な。おっ・・噂をすればなんとやら。あの子がそうだよ。」
みんなが吉本の目線の先を見ると。そこには茶色いコートを着たあの子が立っていた。吉本が手を挙げて呼んだ。
「みなさん。私は2年E組の成宮夢です。よろしくお願いします。また会えたでしょ、桐野君。」
みんな桐野を見る。
「なんだお前ら、そういう仲だったのか。」
吉本が冷やかす。
「やめてよ。彼とは今日登校中に会ったのよ。教えてくれたでしょ。参加者の名前を。」
そう言って桐野の前の席に座る。これで6人揃った。
「これで全員だ。とは言えない。みんなに知らせたように後3人いる。」
吉本が言った。するとすぐに伊沢が。
「なあ。別に3人くらいいなくても。いいんじゃないのか。」
「ダメね。9人いないと始まらないわ。」
麻耶が言った。
「なんでですか。」
「占いよ。私達は9人揃わないと、何も出来ないわ。現状からも脱却できない。」
「ハハハッ。占いなんて、そんなのでわかったら苦労しないね。」
伊沢は笑った。
「まてよ。占いには歴史がある。それに日本の有数な権力者だって占いに頼るぞ。」
桜井が言った。
「権力者ってどんなやつらだよ。」
「大企業の社長や政治家だよ。それに、俺も9人揃わないとなんか気持ちが悪いっていうか・・なんかちょっと嫌な気がするよ。」
「僕も同じです。9人にならないといけない気がします。」
桐野も同じ意見だ。
「よし。まずは残りの3人の勧誘だ。いいな、ブラッド。」
吉本に言われて伊沢は了承した。
「とりあえず。残りの3人の情報調べておいたから。目を通してよ。どうせ、吉本君。私以外に参加者教えてないでしょ。」
そう言って成宮が鞄からクリアファイルを取り出して机に資料を出した。
一人目は2年E組の大谷佑介。
「なんだよ・・学校一番の頭の持ち主か。」
二人目は2年C組の下村つばさ。
「同じクラスだ。オタクで確かにいじめられている。」
最後の3人目。2年D組の佐々木遥。
(この子・・朝に会った子だ。)
各資料は履歴書のようなものに顔写真付きで書かれている。かなり細かく書かれていて、好きな食べ物から、色の好み。彼氏彼女の有無。家族構成に関係・・・
「この3人よ。さてと、誰が説得に行く?」
成宮が言った。
「待ってくれ。君は何者?」
伊沢が聞いた。
「この風貌見てわからないの?探偵よ。」
「探偵!?」
みんな声を揃えて言った。
「昔から推理モノが大好きなの。父の影響なんだけどね。子供ころから調べることは得意だったわ。まあ、映画や小説の中の探偵と、実際の探偵はだいぶ違うけどね。」
「だからスカートじゃなくてスラックスなの?」
「ミニスカよりこっちのほうがかっこいいじゃないのよ。それにあなたがた8人のことは調べさせてもらいましたから。吉本君、学校のパソコンでエロ動画見るのは、どうかと思うわ。」
みんな吉本を見た。特に麻耶は若干引いている。クスクスと笑いながら成宮はジュースを一口飲んだ。
「なんで俺まで調べているんだよ。ああ・・・もうわかったと思うが、俺が最初にこの案を教えたのが成宮だ。そして彼女がいじめられていて、そして才能がある。俺たち9人を選んだ訳だ。」
「去年の10月頃ね。吉本君から話を聞いたの。時間がもうちょっとあれば1年生とかも調べたけど。でも、こうやって考えたらひどいものね。一学年に9人もいじめられている人がいるなんて・・」
これにみんな顔を落とした。
「だから。人生を変えるんだよ。負けっぱなしは嫌だからな。」
吉本がみんなに言った。
「とりあえず。資料をよく読んで。同じ趣味や共通点はないかとか。つけ入れる隙があるなら、その人に任せるわ。」
成宮が言った。みんなで資料を見る。
「下村はなるほど。ネット大好きな子か。そして・・天才ハッカーか。」
桜井が言った。
「天才は言いすぎかもだけど、彼女はそこらへんの大人には負けないわよ。」
「そしてオンラインゲーム好きね。なあ、こいつは俺に任せてくれ。」
桜井は何やら自信があるようだ。
「決まったな。失敗してもいいからみんなも色々考えてくれ。」
吉本が促す。
「おい。この佐々木ってやつ。誰も近づけないんじゃないのか。」
伊沢が言った。
「そうね。私や伊沢君に麻耶さんも無理ね。」
成宮もお手上げのようだ。
「接触した吉本はどうなのよ。」
伊沢が聞いた。
「話は聞いてくれたよ。だけど終始怯えていたような。」
「あの・・僕、朝話しかけられました。」
みんな桐野を見る。
「どうだった?怯えてなかったか?」
「はい。普通だったと思いますけど・・」
「じゃあ決まりだ。桐野に任せよう。」
吉本が決めると桐野は無理だと言い張ったが、みんなから強く推薦されて渋々了承した。
「大丈夫よ、桐野君。みんなちゃんと手伝うから。口だけの仲間じゃないから。安心しなさい。」
成宮が言った。
「はい・・わかりました。」
こう言う桐野だが内心は嬉しかった。またあの可愛い子に会えると思ったからだ。一目見たときから好きになっていた。黒髪で長く、どこかお姫様みたいな感じも受けた。また会いたい。心からそう思えた。実はこのメンバーの中に入っていないかなとどこか期待していた。
「そしてこの秀才君はどうする?こいつも難しいぜ。」
最後に残ったこの男。桜井が言うようにこいつもお手上げ状態だ。
「よし。こいつは俺がやるよ。同じ人間だ。」
伊沢が名乗り出た。一番難解だと思われたがすぐに決まった。これからすぐ3人に接触を試みるように動こうと決めてこの日は解散した。
〈成宮レポート〉
桐野明。身長155体重45。放送委員長。好きな食べ物はハンバーグ。見た目はガリガリの長髪。よく中学生と間違えられる。好きな物はゲームに映画。ジャッキー・チェンやブルースリーに憧れている。将来の夢は映画関係の仕事かアナウンサー。性格は暗めで消極的な印象。これまでに彼女なし。
吉本太一。身長166体重57。外交的で喋りに自信アリ。好きな食べ物はウインナーとたらこ。好きなことはお笑い番組と会話。将来の夢はもちろんお笑い芸人や喋りを生かせる仕事。人間が大好きで様々な人と出会いたいと思っている。無類のAV好き。これまで彼女なし。
ブラッド伊沢。身長181体重67。小学校4年生の時に日本にやってきた。父親は日本人で母親がアメリカ人。好きな食べ物はステーキとお寿司。優しい心を持ち。喋りがうまい。吉本とは違った喋りの上手さだ。駆け引きが得意でポーカーが好き。吉本とは友達。アメリカの時と中学の時に彼女がいた。
麻耶クララ。身長161体重××。オカルト研究会。好きな食べ物は抹茶アイス。好きな物は不思議なこと。たった一人で部活を続けている。占いは日本のから西洋の占いまで一通りできる。噂ではかなり当たるらしい。今は中国の占いを勉強している。これまで彼氏無し。
桜井悠太。身長168体重56。麻雀やギャンブル事が大好き。特に麻雀はかなりの腕前で負け知らずらしい。好きな食べ物はカツ丼。親の影響で麻雀を覚えたらしい。倹約家の部分があり。趣味は貯金。坊主頭もお金がかからないから。好きな物はもちろん麻雀。そして好きなアイドルグループのグッズ集め。中学の時に彼女あり。
成宮夢。身長158体重××。好きな食べ物は菓子パン。好きな物はミステリー映画・小説。父親の影響で探偵にはまってしまう。あらゆる手で情報を集めることができる。ボーイッシュな服を好んでいる。これまで彼氏なし。
下村つばさ。身長157体重××。好きな食べ物はレバー。好きな物はフィギュアとパソコン。父親は有名なクリエイター。オタクな女の子。ツインテールを好んでいる。色は白が好きで服も白いのが多い。中々の巨乳ちゃん(成宮調べ)。二次元に恋しているために彼氏はもちろんいない。
佐々木遥。身長162体重××。好きな食べ物はサラダ。好きな物は可愛いもの。なぜかわからないが、彼女は人一倍に警戒心が強い。独特の美意識がある。成宮でもあまり深く調べることができなかった。
大谷佑介。身長165体重48。好きな食べ物は甘いもの。好きな物はテスト。生まれた時からお金持ちの厳格な家庭に育った。友達付き合いも制限され。友達というのを知らないと言っても過言ではない。勉強とマナーだけに全てを注いできたような男。
この日。桜井はパソコンとにらめっこしていた。
「まーだかな。早く現れろ。スワローのやつ。」
スワローとは下村のパソコン上のハンドルネームだ。ここは若者に人気のオンラインゲームの世界。様々ゲームが楽しめる場所だ。
桜井はここで待つこと三日目。もう徹夜の連続だ。そろそろ現れて欲しい。するとメッセージが飛んできた。開けてみるとスワローからだ。
〈おい。お前だな。最近俺のことを嗅ぎ回っているガキは。今034ロビーにいるから。そこに来い。〉
「来やがったな。女のくせに男のアバターかよ。いいぜ、いってやるよ。」
桜井はすぐに指定された場所に向かった。そこにはスワローらしきアバターを含めて数人の姿があった。ここからはオンライン上で会話がやり取りされる。
「おい。てめーだな。俺に何のようだよ。」
「吉本から話を聞いているだろ。俺たちの仲間になれよ。」
「あー。お前はあいつの仲間か。俺は弱そうなやつには従わないんだよ。あんな奴の集めた仲間なんて絶対につまらないね。」
「安心しろよ。俺もあいつには何も期待していない。だけど、お前も俺もこのままじゃダメだろ。」
「面白いこと言うけど。うぜーな。俺にはこの世界があるんだよ。それに仲間も沢山いる。」
ここでほかのアバター共が騒ぎ出した。帰れ。消えろ。スワローに近づくな。怒りをこらえながら桜井は文章を打ち込む。
「勝負しろよ。てめーの好きなこの世界で勝負しろ。」
「勝負?」
「ああ。ここには沢山のゲームがあるだろ。」
「面白いね。久しぶりに退屈凌ぎになるよ。いいよ、何がいい?」
「麻雀だ。」
「麻雀?わかったよ。条件はこっち3人。お前は1人でいいよな。」
「は?ふざけんな。コンビ打ちされたら勝てねえよ。」
「だったら、やらねえよ。早く消えな。」
「わかった。それでいいよ。」
「どうしようかな。一回拒否られたし。やめようか。」
「おい!頼む、勝負しろよ。」
「お願いしますだろ。」
「お願いします。」
文章では普通に見えるが、桜井ははらわた煮えくり返っている。
「いいよ。移動だ。鍵付きの部屋を作っておくから。キーは送っておく。」
数分後。スワローからメッセージが飛んできて。場所と入るためのキーが記載されている。
指定された場所に行くともうスワロー含めて3人は待っていた。キーを打ち込み。部屋へと入る。
「さて。待っていたぜ。じゃあさっさと始めようか。ルールはアリアリで半荘三回。終わった時の俺とお前の点数で多かったほうが勝ち。先に二つ勝った方が勝ちだ。いいかい?」
「望むところだ。さっさと始めるぞ。」
賽は投げられた。まずは一回戦目。予想通りコンビ打ちされる。スワローに鳴かせる二人。ポン・チーの嵐だ。さらには差し込みまで。何も出来ず負けてしまった桜井。
「お前。弱すぎなんだけど。何なの、馬鹿なの?」
コメントで煽ってくるスワロー。
「今のうちに笑っていろ。目にもの見せてやるよ。」
パソコンの前で呟く桜井。続く二戦目。雲行きが変わった。チーで鳴かせようと切った牌は全部桜井がポンしてくる。チーよりポンの方が優先される。スワローがポンして、牌を切ったら、それは桜井の当たり牌。
「ねえ!なんか読まれているんだけど。」
ボイスチャットで対局している二人に話す下村。
「そんなこと言われても。こっちは言われた通りにやっているよ。」
ほころびが生まれ始めた。二回戦は桜井が勝った。
「ねえ。もう私に上がらせないで。とりあえずあいつを狙い撃ちしましょう。なぜかわからないけど、読まれているみたい。もしかしたらハッカーかも。」
「いや。ここのゲームサーバーにアクセスはできないよ。だけど確かにおかしいね。わかったよ、とりあえずあいつから上がりまくろう。」
作戦を変更した。だけど桜井は。
「これで運の差になったな。コンビで打てなくなった素人に負けるほど俺は弱くないぜ。」
言葉の通り。桜井は圧勝で三回戦を終えた。すぐにコメントを送る。
「これで。お前はこっちの仲間になれ。」
「・・・・・わかったよ。悔しいけど負けは負け。明日会うよ。それと、教えろよ。なんで勝てたのか。」
これで一人。こっちに加わった。
街の待ち合わせスポットにいる桐野。この日の彼は人生で一番緊張しているであろう。女性と初デートなのだから。事の経緯はあの会議から次の日。すぐに佐々木遥に接触した。そしたら一緒に出かけましょうと向こうから誘ってきた。
「よーし。中々イケメンに仕上がったな。」
尾行班の伊沢が言った。桐野を美容室に連れて行き。服を選んであげたのだ。
「ちょっとちょっと。そんなに近づかないでよ。」
腕を引っ張りながら成宮が言った。
「まだ大丈夫だろ。それに成宮ちゃん。そのコートは目立つでしょ。」
「探偵のトレードマークなんだから。私は尾行のプロよ。それに格好の問題なら吉本君の方が・・」
「えっ?なんか問題あります?」
吉本はチェック柄のシャツをジーンズにインしている。オタクなファッションだ。
「はぁ・・だから私一人で来たかったのよ。」
「まあ。そう言わないで。みんな他人の恋愛に興味があるのよ。」
麻耶もやってきている。全身黒のコーディネートで黒い帽子を被っている。魔女みたいだ。傍から見たら変な集団だ。魔女にコートの女の子。オタクファッションに一人だけイケメン。(桜井は下村の勧誘のために別行動)
「おい。佐々木が来たぞ。」
伊沢が言うとみんな隠れながらも視線を送った。そこに現れたのはロリータファッション姿の佐々木だった。まるでお姫様だ。
「ごめんね。桐野君。待った?」
「い・・いいえ・・全然。」
「変かな?私の格好・・」
「・・可愛い。」
「えっ?」
「すごく。可愛いというか、綺麗です。」
「・・ありがと。いこっか。」
少し照れながら二人は歩き出した。佐々木の要望で雑貨屋と服屋を回った。徐々に会話も増えていき、いい感じになってきた。
今度は桐野の要望でゲームセンターに向かった。ここで、不思議の国のアリスに出てきそうな、シルクハットを被ったうさぎのぬいぐるみをUFOキャッチャーで桐野が簡単に取ってあげた。
「すごい桐野君。うまいんだね。」
うさぎのぬいぐるみを抱きながら佐々木は喜んでいる。
「ふ・・普通ですよ。誰だって簡単に取れますよ。」
「そんなことないよ!これ大切にするね。」
このやり取りを見る尾行班の4人は。
「なんだよ。ただのデートじゃないか。しっかり勧誘しろよ桐野の野郎。」
「吉本君。男の嫉妬は醜いわよ。」
麻耶が言った。
「そうよ。自分がブサイクだからって桐野君に八つ当たりはよくないわ。」
成宮も続いて完全に吉本はへこんでしまった。
「おい。ゲーセンから出て行くぞ。へこんでないで尾行だ。」
伊沢が言うと追うように彼らもゲームセンターを後にした。桐野と佐々木は近くのカフェに入った。遅れて彼らも入店した。
「今日は楽しかったわ。ありがとうね・・桐野君。」
「こちらこそ。久しぶりに楽しかったです。」
「やっぱり君もいじめられているんだ。」
「はい。あの・・実はお話が。」
桐野はここしかないって思った。
「・・やめてよ。桐野君。私は入らないわ。」
「えっ・・」
「吉本君に頼まれたんでしょ。私を引き込む為に・・」
「そんな、いや・・その・・」
なぜかわからないがバレていた。焦って言葉が出てこない桐野。
「私は誰も信用できないの。だけどね、君は違った。澄んで綺麗な目。偽りのない言動。やっと出会えたと思えたのに。やっぱり、私はお笑い者ね。」
「違います。僕達はただ仲良くしたいと・・」
「私達の後をついてきている4人が仲間でしょ。絶対に私のこと笑っている。」
全部お見通しだった。
「そんなことない。みんないい人です。絶対に貴方を拒みません。」
「・・・・・高校一年の時かな。いじめなんてされなかった。だけどこの格好がバレたら、みんな離れていった。距離を置かれたの。そして一人の男子生徒に声をかけられたの。夏休みのことだったかな。数回遊んで、告白されたの。そしたらそれは罰ゲームで、あのロリータ女に告白ゲームだってさ。」
「・・ひどい。」
「桐野君もそうでしょ?あの4人に言われて私を陥れようと。いじめられている人たちすら集まって私で遊ぶのね・・」
「違います!ぼくらは貴方を仲間にしたいんです!一人にしたくないんです!」
大声を上げてしまった。客の目線が突き刺さる。店員が注意しに行こうと動いたら。伊沢が店員に。
「あいつらは僕らの仲間です。すいません、こっちで注意にいきますので・・・よし、俺たちも行こうか。」
4人は立ち上がり。二人に近づいた。佐々木は気がついた。
「なによ・・何するのよ・・」
「佐々木さん。彼らが僕たちの仲間です。よく見てください。貴方を拒むような目をしていますか?貴方を笑いものにしようとしていますか?」
ビクつきながらも佐々木は顔を見渡した。吉本・伊沢・麻耶・成宮そして桐野。
「ふぅ・・もう一度、信じてみようかな。だけど、変な真似はしないでよ。」
これで残りは大谷一人だ。
「いいか。お前は勉強していればいい。何も心配するな。」
「はい。お父様。」
「変な友達を作るな。それにジャンクフードを食べるなよ。一流の人間は一流の物だけ食べて、使っていればいいんだよ。」
このような会話をいつも思い出す。夢の中・勉強の最中・学校生活のどこかで。いつも車で登校させられ、車で帰る。友達は何かよくわからないパーティで顔を合わせる、御曹司ばかり。
正直、つまらない。
勉強に没頭すれば少しは楽になるかと思ったけど。そうもいかなくなってきた。
楽しいことを求めてここに来た。小学・中学とエリート校だった。だけど、周りからはいじめられ。親に初めて反発してここに来た。何かあると思って来たのに。1年間何もなかった。それどころかガリ勉と罵られる。
そんな僕に転機が来た。同じクラスの女の子から声をかけられた。ショートカットで女性のくせにスカートを着ていない変わった子だ。
「ねえ。実は、貴方と仲良くしたいのよ。もちろん変な意味じゃないよ。私以外にも仲間がいるの、それに貴方を招待したいの。」
「どんな集まりなんだい?」
「んー。嫌われ者の?集まりかな。」
これを聞いて、僕は戸惑った。自分は嫌われ者なのか?だとしても得体のしれないこんな集まりに行くもんか。断ってやった。そしたら女は素直にじゃあ気が向いたらと言って去っていった。
だけどもこの日の夜。僕は眠れなかった。変に色々考えてしまった。あそこで行くと言っていたら。
次の日はまた違う人から声をかけられた。ハーフの男の学生からだ。
「昨日はうちの成宮ちゃんがすいませんでした。何か気に障ったこと言いました?」
「い・・いいや。別に大丈夫だが。」
「そうですか。何か失礼なこと言ったのかと。じゃあ僕はこれで。」
「待ってくれ。ちょっと、待ってくれ。」
この時なんで引き止めたのか、それはわからない。
「なんでしょう?」
「君は、あの成宮さんの言っていた仲間の一人なのか?」
「ええ。そうですよ。」
「じゃあ、君は嫌われ者なのか?」
「恥ずかしいですが。いじめられっ子ですよ。」
「君もなのか・・そうか・・わかった。ありがとう。」
「もしかして、僕たちの集まりに興味ありますか?」
「いいや。全然ない。」
何強がっているんだ私は。
「そうですか。もし気が変われば、昼休みに放送室まで来てくれませんか?」
「放送室?」
「そこでいつも昼食を食べていますから。では。」
男はそう言い残した。僕はこの日も考え事で頭がいっぱいだった。入学してからこんなに人に話しかけられたことなかった。
明日、行ってみようかな。
次の日。昼休みに放送室の前にやってきた。だけどもドアノブを回せない。緊張している。入れないままでいると、そこに昨日のハーフの学生がやってきた。
「お。来てくれたんだ。嬉しいな。ちょうど俺も入るところだから。一緒に入ろうか。」
「えっ・・あっ・・」
有無を言わさず中に連れ込まれた。放送室なんて初めて入った。中は思ったより広い。数人の男女が机の上でご飯を食べている。なんだかわからない集まりに誘ってきた吉本の姿もそこにはあった。
そうか、これがやつが言っていた。集まりってやつか。吉本の見た目で決めて拒否をしてしまったが。このハーフ君や他のみんなは普通ではないか。
こっちにおいでとみんなが話す。戸惑いながらも席に座った。慣れない。こんなことは初めてだ。みんな会話をしている。何を喋ればいいのやら。
「うわ。君のお弁当すごく豪華だね。初めて見たよ。」
一人の女の子が僕のお弁当に反応した。確かにこれは高い弁当で栄養価もしっかりしているらしい物だが。
「いいよな。俺なんて今日も焼きそばだぜ。」
そう言って丸坊主の学生が弁当に詰まっている焼きそばを一口すすった。
「それ、焼きそばっていう料理?」
「ん?そうだぜ。知らないのか?」
「し・・知っているよ。」
僕は自分の弁当を食べ始めた。
「焼きそばなだけいいじゃないか。俺の家は母さんがアメリカ人だから、ハンバーガーでも買いなさいって・・いつもこれだよ。」
ハーフの子がそう言って、この学校の食堂で買えるハンバーガーを数個取り出した。
「それが、ハンバーガー?」
「そうだよ。なんだ君はやっぱり知らないのか?」
「いいや。知っているよ。」
「そうだ。せっかく来てくれたんだ。このハンバーガー一個あげるよ。ほら。」
そう言って一つのハンバーガーをくれた。僕は家で食べるねと言ってカバンの中にしまった。
そのあと終始みんなの話には入って行けず。ほとんど喋らないまま昼休みは終わってしまった。
この日の夜。あのもらったハンバーガーを食べないまま。僕は寝てしまった。
「いいか。佑介。お前は一流なんだ。何事も一流だ。勉強もマナーも生活も。」
「はい。お父様。」
またこの会話だ。だけど今日はもう一つ夢を見た。
「うめーな。この焼きそば。」
「ハンバーガーも美味しいよ。このフライドポテトも。」
あいつらだ。今日の昼休みに一緒にいたあいつらだ。今日知っているとか言ったが、食べたことない。焼きそばもハンバーガーも。なんかツインテールの女の子が食べていたクレープというのも。知っているだけ。
「・・美味しいそうだったな。」
次の日もそのまた次の日も。僕は放送室に顔を出した。そして三日目。ハーフの学生から。
「おい。無理すんなよ。食ってみろよ。」
この日彼からハンバーガーを渡され時。こう言ってきた。
「なんで。そんなこと言う。」
「食ったことないんだろ。ハンバーガーってやつ。」
「焼きそば食べてみるか?」
「クレープ一緒に買いに行く?」
みんなこの日は優しい。なぜだ。
「大谷君。もうちょっと素直に生きてみようよ。」
あのボーイッシュな子も。僕は少し震えながらハンバーガーを受け取った。一口噛じってみた。
「はぁ・・なんだよ・・うまいじゃないか。」
伊沢の作戦だった。彼と友達になるためにはこういうのが効果的だと思った。
この日を境に大谷は自分をしゃべりだした。今までずっと制限されていた生活のこと。それに仲間になると決めた。
この日の夜。両親に友達ができたと報告した。そしたら父親は怒ったが。それを聞いていた祖父が。
「おい。いい加減にしろ。そこまで佑介を縛らなくていいだろ。」
「お父さんは口を挟まないでください。」
「悪かった。私がお前を束縛したばかりに。だから、佑介にもそういう教育をしてしまうのだな。」
「お父さん。その話は関係ありません。」
「いいや。私から頼む。佑介は普通の学校生活を送らせてやってくれ。」
「・・遅いんですよ。謝るのが。」
これで9人全員が揃った。
拙い文ですが、よろしければ感想ください