表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/28

プロローグ

ファンタジー設定なのに、単位が「センチ」ですみません。

 「護衛、ですか?」

 上官から告げられた任務内容に、ノアは首を傾げた。

「ああ。王都にエリナーという娘がいる。領主様の娘だ。彼女をこの地へ移すため、その護衛を頼みたい」

 領主様の娘と聞いた時点で、訳ありだなと思った。領主様が好色で、いろいろなところに子どもがいるのは有名な話だ。それを引き取るというのは少々珍しいが。

「おまえとメイベルと……マックスに行って貰う予定だったんだが、あいつ先日足を怪我してな。かわりをどうするか……」

 上官が唸った時、雑なノックの音がして戸が開いた。

「ちょっと邪魔するよ」

「軽々しく入って来るな、ウィルフレッド」

「固いことばっかり言ってると、戦術までガチガチになっちゃうぜ、閣下」

 そう言ってにやりと笑う騎士には見覚えがあった。軟派で、騎士にしては珍しく型にはまらないと有名なウィルフレッド。しかし腕は確かで、第五師団のなかでもその強さは群を抜いている。


「そうだ、ウィル。おまえが行け」

 上官がぽんと手を叩いた。

「は?どこに」

「王都だ。このノアと一緒に、警護の任で王都へ行け。おまえなら腕もたつし……なんだ、適任じゃないか」


  冗談ではない。悪名高きウィルフレッドと一緒に?


 思わず怯んだノアを、ウィルフレッドがじろりと見た。

「嫌だよ。俺、王都には敵が多いから」

「それ、半分は昔の女だろ?」

「ああ。半分はその女たちの恋人か旦那」

 ウィルフレッドはまったく悪びれずにそう言った。上官は鼻を鳴らして、彼に指を突きつける。

「とにかく。口答えは許さん。これは命令だ。出発は明後日だ。いいな」




 「ノアと一緒の任務だなんてびっくり!よろしくね」

 そう言ってにっこり笑うのは、幼なじみで騎士見習いのメイベルである。彼女は、数少ない女性騎士なのでこの任務に抜擢されたようだ。ノアのひとつ下で、くりんとした大きな目が愛らしいが、なかなか好戦的で気の強い娘である。今も、「ああ、うん。よろしく」と気のない返事をしたノアをじろりと睨んできた。

「なんか気合い入ってなくない?せっかくの任務なんだから、もっと元気にいこうよ」

「俺はこれぐらいがちょうどなの。メイベルは元気すぎ」

 そうかなあ、と不満げなメイベルに、ノアは少し離れたところで町娘と話しているウィルフレッドを引き合わせることにした。

「ウィルフレッド殿、紹介します。この子……」

「おいおい。その堅苦しい話し方どうにかしてくれよ。名前もウィルでいい」

 そう言われても、と思ったが、メイベルはあっさりしていた。

「じゃあウィル、あたしメイベル。ノアとは幼なじみなんだ」

「へえ、そうなのか。もしかして、おまえのコレ?」

 ウィルフレッドがノアに向かって小指をピンと立ててみせる。

「違うよ!」

 慌てて思わずウィルフレッドへの敬語がとんだ。そうすると、それからは意外と気さくに話せるようになった。

 ウィルフレッドはノアとメイベルの関係をひとしきり聞き、二人が幼なじみ以上の関係ではないとわかると、伸びをしながら言った。

「じゃあさっさと行こうぜ。お嬢さん、足が痛くなったら言えよ」

「ありがとう!でもあたし、丈夫だから大丈夫だよ」

 メイベルは力瘤をつくってみせ、ウィルフレッドのあとへ続いた。

 ノアはちょっとこの道中に不安を覚えつつ、そのまたあとに続いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ