639 女公爵
六百三十九
残るは女公爵と魔獣のみ。
魔獣の方は離れた場所でゴットフリートのチームが激戦を繰り広げている。
ノインチームは、魔獣の方に合流。そしてヴァレンティンチームは女公爵の浄化を狙うため、そちらに向かっていた。
「存分に戦力が揃っておるとはいえ、公爵級をここまで早く制圧出来てしまうとは驚きじゃな」
浄化した公爵を引き受け飛空船にまで運び込んだミラは、そのまま救護所に戻っていた。そして薬を塗り終え出撃準備をしているノインの着替えを手伝いながら、そう単純に思った事を口にする。
ここには公爵級の悪魔にも通用するだけの戦力が集まっているのは確かだ。とはいえ極めて強力な相手に変わりはないため、それを制圧するにはもう暫くかかると思っていた。
しかし実際は、予想していた半分程度で一体を攻略完了。ミラは驚くべき早さだと感心する。
「そうなんだよ。それに何となくだけど、難敵ではあったが驚異的だったかというと、なんかそうでもなかった気がしている。個体差といえばそれまでだけど……本調子ではなかったような、万全ではなかったような。戦っていて、なんとなくそう思ったな」
戦線に復帰する前に決着がついた。途中で前線から下がってしまう事になったノインだが、かといってそれをピンチだとは感じていなかったそうだ。
かつて戦った強敵、『イラ・ムエルテ』のボスであった公爵級悪魔。その時は、前線を支えなければいけないと実感するだけの強烈なプレッシャーがあったという。
だが今回は、どういうわけかそこまでの圧はなかったというのがノインの感想だ。
「それだけ、皆が強くなっておったという事かのぅ」
「んー、どうなんだろうな。訓練は欠かしていないけど、そんな劇的な変化があるかというと……」
同じ公爵級が相手だったが、この違いはなんだったのだろうか。原因はよくわからないと首を傾げるミラとノイン。
「まあ、こっちに都合がいいのなら問題ないさ。皆、凄い」
戦ってばかりの者達の言葉はよく理解出来ない。そう、すっぱり聞き流したミケは、それだけ被害も少なく済んでよかったと、わかりやすい結果を挙げて称賛した。
「それじゃあ、行ってくる!」
そうこうしている間に着替え終えたノインは、言うが早いかそのまま颯爽と飛び出して行ってしまった。平然とした顔でミラに手伝われていた彼だが、やはりその状況は落ち着かなかったようだ。
「さて──」
負傷者の処置も、ひとまず済んだ。気づけばアスクレピオスは救護所のリーダーの如き立場になり、全員が迅速かつ的確に治療を進められたお陰だろう。
だからこそか多少のセクハラも許されており……というよりはあまり気にする者がいないのか。今はミケの服の下に潜り込んでのんびりしている。
医療については聖獣界のトップだが、その中身はスケベオヤジな白蛇アスクレピオス。そのあたりについては、触れない方がよさそうだ。そもそも、ただの蛇が戯れているだけなのだから。
そう保護者責任を放棄したミラは、救護所が静かになったので戦場へと繰り出そうかと思い、そちらへと目を向けた。
どちらかというと浄化を早めに済ませるためにも、加わるのは女公爵の方だろうか。などと考えたところだ──。
「なっ──!?」
直後、強烈な閃光と共に吹き上がったマナの奔流が辺り一帯を吹き抜けていった。そして同時に耳をつんざくほどの破裂音が響く。
相当な衝撃を伴ったそれは、救護所の結界を震わせる。
これはいったい何事か。飛び出して確認してみると、まさかの状況が目に飛び込んできた。
何が起きたというのか。女公爵と交戦していたアンドロメダのチームが悉く吹き飛ばされていたではないか。
それは少し前の事だ。
女公爵と戦うアンドロメダチームに教皇が加わった事で、戦況はかなり有利な方へと傾いていた。
相性というのは、やはりどのような場面でも色濃く影響するものである。中でも教皇のそれは、女公爵が扱う呪法に対して特に効果的だった。
無数に湧き出ては支配される死骸の群れを、その憎悪や未練ごと綺麗さっぱり解脱させていく。
そうなってしまえば、女公爵の力は半減。呪いが解けた死骸は、もはやただ操作されているだけの死骸でしかなく、アンドロメダ達は一気に女公爵を追いつめていった。
「ほら、悪いようにはしないから、もう諦めた方がいい。この戦況がわからない君ではないだろう?」
アンドロメダは、女公爵を相手に降参するよう促していた。
公爵という位にまで上り詰めた彼女の実力は相当だ。しかし今回ばかりは相性が全てをひっくり返した。
女公爵は今もその原因である教皇の隙を窺っているようだが、当然彼女の護りは強固だ。名も無き四十八将軍の一人、尖塔守ヴァルフォーネがきっちり守りを固めている。更にシャルークら四聖将も油断なく身構えていた。
呪いの力を無効化された死骸では、その護りを突破するのは難しい。加えて、女公爵が得意とする呪詛の類は教皇に通用しない。
ゆえに勝負は決着したも同然。浄化後を考え出来る限り傷もつけたくないからこその降伏勧告だ。
「それなら──!」
とはいえ、相手が相手だ。はいそうですかと素直に聞いてくれるはずもない。追い詰められた女公爵は脚のベルトに手を伸ばした。
直後アンドロメダ達に緊張が走り、全員が直ぐ飛び出せるように構える。女公爵が手にしたのは黒い液体の入った小瓶だったからだ。
「先に言っておくけど、それで力を増幅したところで、ここにいる総力には届かないよ。それと使った後にどうなるかは、ちゃんと聞いているの? 私達はこれまでに何度かそれを飲んだ悪魔に会っているけど、結果は酷いものだよ。ただの怪物になって暴れるだけ。力を得る事と引き換えに理性も何かも捨てるわけさ。ただ、ここでようやくそれを手にした君の事だ。私に言われなくても、どれだけ危険かとっくに予想出来ているよね」
強力な力を得られる代わりに、異形へと姿を変えてしまう恐るべき液体。しかもそれを使われてしまったら浄化が出来なくなるという厄介なオマケ付きだ。
だからこそ、その選択はさせまいと説得するアンドロメダ。そして、それでも飲もうとした時に備えシモーネクリスが小槍を手にして、じっと様子を窺っていた。
「……! ああ、もう! うるさいうるさい! こんなものがなくたって!」
これまでの男悪魔とは違い、勝敗や力に囚われるタイプではない事が功を奏したのか。彼女は躊躇いを浮かべた後に、それを投げ捨てた。
何よりも、その危険性をより強く感じていたからこその選択だ。けれど諦めた結果の選択というわけではなさそうだ。それどころか女公爵は、また違う覚悟を決めたといった目をしていた。
「来なさい!」
女公爵がそう言葉にすると、微かに大地が揺れた。そして次の瞬間、双方の間に大きな石──石櫃が大地よりせり上がってきた。
どうやら、それこそが彼女の最後の切り札のようだ。立てられた石櫃の蓋が開いていく。
石櫃に納められていたそれは、これまで女公爵が操ってきた死骸とは明らかに違うとわかる代物だった。何といってもそこに納められていた死骸──もとい遺体は、立派な武具を身に着けていたからだ。
「なんだ、それは……」
「どういう、事だ!?」
しかし、それよりも大きな衝撃が皆の間に広がっていた。中でも一番に声を上げたのは、アリスファリウスの四聖将達だ。
「どうして、ここに!?」
「厳重に管理されているはずですよね!?」
まず四聖将達が、そんな事あり得るわけがないと目を見開き、その石櫃に納められていた遺体を見つめていた。
「──……!」
そんな四聖将達の陰で声なく、けれど瞬間に泣き出しそうなほどの悲愴を浮かべた者がいた。
教皇だ。石櫃に納められた遺体。それは先日に逝去した三神将、ヨルヴィレド・ポラリスのものだったのだ。
「なんで……なんでその人の体が、そこにあるの」
戸惑いと怒り。教皇は震える声を抑えながら女公爵を睨む。
今はまだ公表もされていないヨルヴィレドの死。ゆえにその遺体の方も公式に葬儀が行われる時まで秘密裏に特別な場所で保管されている。
だからこそ簡単に持ち出せるようなものではない。ゆえに、姿形を似せただけとも考えられる。
だが教皇は、一目で気づいた。それは間違いなく、ヨルヴィレド本人の遺体であると。
「ふふ、その感じ、もしかして彼の知り合い? ……ううん、その反応からすると、そう、そうなのね。──あはっ、ごめんね! 私はね、ただ彼との約束を守ってあげただけ。死んだら一緒になろうっていう、秘密の約束を。だからこうして死んじゃった後に彼は私のところまで会いにきてくれたの。そして彼が望んだ通り、私のものにしてあげたのよ!」
そう小気味よく語る女公爵。そうしている間にもヨルヴィレドの遺体が動き出す。目を開き石櫃から出て地面に降り立つと、その言葉を証明するかのように跪き、愛おしそうに彼女の腰に両腕を回した。
その姿といったら、夜の女王にかしずく性の奴隷とでもいった情景だ。
「ふざけないで。あいつが、あなたみたいな女に靡くわけないでしょ。あいつはね……あいつは小柄で控えめな女の子が大好きな変態なの! どうしようもないくらいのね! そうでなければ今頃、孫の孫くらいまでいたでしょうに。死ぬまで女に縁の無かったあいつだから、正反対のあなたは論外中の論外!」
男を奪ってやった。そんな態度の女公爵に対して猛烈に反論する教皇。ヨルヴィレドについて、よほど詳しいようだ。一般的な部分のみならず、女の趣味や好みまで十分に把握していると断言した彼女は、これまで表に出る事のなかったあれやこれまでも暴露する。
中でも特に女性に対する趣味云々については、色々と思うところもあるようだ。怒りやら悲しみやらが交った複雑な表情である。
「ふーん……なに、もしかしてそれって、自分が彼の一番だったって言いたかったりする? でも残念。きっと心変わりしたんでしょうね。今の彼は、私に夢中だから」
教皇の背格好をじっくり確認した女公爵は、更に挑発するように微笑みながらヨルヴィレドの頬に手を添わせる。するとヨルヴィレドは、女公爵の腰から更に上へと腕を絡めていき、その魅惑的な身体に甘えるように顔を寄せて埋もれる。
それは言葉通り、誰の目から見ても愛する女性に夢中といった姿だった。
「ヨルヴィレド様を、あのように……」
同時に彼をよく知る者の目からしたら信じられないような、また見たくもないような光景でもあった。
それもこれも全ては、女公爵の仕業である。当然、ここにいる全員は女公爵の言葉を鵜呑みになどしていない。
そうであるとわかっているからこそ四聖将は、ここまで死者を──三神国の英雄ヨルヴィレドを冒涜するその行為に怒りを露わにしていく。
ただ教皇の反応は少し違っていた。
「こんな女に使われるとか、恥ずかしくないの!?」
次に飛び出した言葉は罵声だった。三神将とあろうものが死んだ後に醜態を晒すなんてと呆れ、しかもそんなわかりやすい女に引っ掛かるのかと憤慨する。
教皇は既に遺体となった相手に辛辣な言葉を投げつけるのみならず、女公爵に対しても堂々と喧嘩を売っていった。
「こんな女、とか言われたくないんだけど。何なの、何様なの!?」
「教皇様ですが、何か!?」
「あー、はいはい。凄い凄い。でも彼にはもう必要ないから、帰ってくれる?」
「帰りませんし、必要あります。むしろそいつは、私しか見てなかったんだから──!」
売り言葉に買い言葉とでもいうか。一人の男? を巡って睨み合う教皇と女公爵は怒涛の言い争いを始めた。
いったい二人が交わす言葉のどこまでが本当なのか、どこまでが嘘なのか。それすらもわからなくなるほど、あれやこれやと信じられないような言葉まで飛び交っていく。
そしてそのまま収拾がつかなくなるくらいの舌戦が繰り広げられていったところで、その戦況は教皇側へと傾き始める。やはりヨルヴィレドについて知っている事が多いというのが強みか、口喧嘩はそうかからず決着した。
「うるさいったらうるさい! もういい、全員殺しちゃって!」
言葉では勝てないと察したのか、女公爵がそう叫んだ。するとどうだ、彼女の腕から僅かに光が漏れ出した。
「ああっ、ぐっぅ……!」
女公爵は苦痛に耐えるように顔を歪め、教皇を恨めしそうに睨む。
直後だ。彼女の命令に呼応するかのようにヨルヴィレドの遺体が動き出した。
「見つけた。詳しくはわからないけど今のが主因子の力みたいだね」
その瞬間をアンドロメダは見逃さなかった。教皇を庇いながら下がらせると、その一瞬で起きた事を分析する。
アンドロメダは、女公爵の主因子の力がヨルヴィレドの遺体を操っている大本であると見抜いたのだ。
しかしその力を以てしても、三神将クラスは手に余るようだ。
遺体とはいえ、未だに神の力の名残を宿す体。今の悪魔にとっては劇物となる力ゆえ、これを操るために繋ぐ時、その影響を受けるというわけだ。
事実、力の行使に耐え切れず、女公爵の腕はもう内側から引き裂かれたかのように傷だらけで血に塗れていた。
だが、その代償の代わりに三神将が牙を剥く。石櫃の奥から禍々しい剣を引き抜いたヨルヴィレドが大地に立つ。
剣を構え立ち塞がるその姿は、死してなお三神将としての迫力に満ちたものであった。
先日、丁度チートデイの日に出かける用事がありました。
という事で、これはもうチートデイ用の何かを買うしかないと思ったわけですよ!!
では何にしようか。
迷いながらあっちこっちとうろつきつつ考えました。
バーミヤンのテイクアウトもいい!
駅地下で惣菜でも探してみるのもいい!
それとも、ずっと気になっていたコメダ珈琲でテイクアウトしてみようか!
などなど。いやはや悩みました。その分、歩数も稼げたのでダイエットにも丁度良かったですね!
そうして考えた結果!!!
駅中にある中華支店的な惣菜店に行き着きました!!
お気に入りの冷凍餃子のある店ですが、惣菜なども扱っている店です。
そこに、幾つもある惣菜を4種類選んで買えるというお弁当パックみたいなのがあったのです!
選びました。
青椒肉絲、麻婆豆腐、炒飯、五目そば
の四種類です!!!
そしてこれがもう、素晴らしく美味しかったのです!!!
またチートデイに出かける時があったら、別の組み合わせも試してみようと思いました!!!




