634 魔王対策
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六百三十四
こちらの状況を探りにきていたのだろう、潜んでいた公爵級悪魔を引きずり出して始まった突然の対悪魔戦。その結果は、見事にヴァレンティンが浄化するという事で決着した。
上手くいけば、この悪魔から更に魔王側の情報を得られるかもしれないが、浄化したばかりの今はまだ昏睡状態だ。
という事で、ひとまず容態が落ち着くまで悪魔はヴァレンティンの仲間が彼らの拠点に連れて帰った。目覚めた後、情報が得られたら伝えに来てくれるという事だ。
と、そうして落ち着いた今、作戦の方はというと予定通りに進み始めた。最新型の大型飛空船は今、魔王城に向かって航行中だ。
なおミラ達はというと、船内の大会議室に集まっていた。今回の作戦の参加者全員が一堂に並びながらも、まだ余裕のある広さだ。
「して、何やら主因子を小瓶に吸い込んでおったように見えたが、あれはなんじゃろうか?」
思わぬ公爵戦が勃発したが、それはそれ。これから始まる魔王城攻略作戦の最終確認を始めるわけだが、まず先にと、ミラは出発前の出来事について改めて問うた。
ヴァレンティンによる浄化を妨げていた主因子。極めて厄介な力を秘めたそれを吸い込んでしまったのだ。気になるのも当然だろう。その質問に他の面々も興味を示しアンドロメダへと視線が集まっていく。
「驚いてくれたようだね。そう、これこそ今回のために用意した、とっておきの秘策なんだよね!」
本番前に試す機会があってよかったと笑うアンドロメダは、それはもう誇らしげに小瓶を掲げてみせた。
彼女が言うに、それは確実に厄介となる主因子への対抗手段として考え開発したものとの事だ。
魔王側には、主因子持ちの極めて強力な悪魔がいるとわかっている。だからこそ少しでも有利に戦えるようにするため、アンドロメダは色々と試行錯誤していたわけだ。
そうして、これまでのデータなども参考に調整を繰り返し完成したのが、先ほど使った小瓶だった。
「ほぅ、それはとんでもないのぅ!」
つまりその小瓶を上手く使う事が出来れば、主因子による不確定要素を緩和する事が出来るようになるわけだ。
なお主因子を封じられるチャンスは、相手がその力を行使している時や先ほどヴァレンティンが浄化を試みていた際などの、主因子が表に出ている場合に限られるという。
「一度は使わせる必要があるとはいえ、心配が一つ消えるのはいいな」
戦術が組みやすくなると、レイヴンは機嫌が良さそうだ。また他の皆も、これで単純に戦いやすくなったと喜ぶ。
「そういう事ならば、もう一つ聞きたいのじゃが──」
そんな中ミラは、更に気になった点に触れた。主因子については、ミラも特別に考慮するべき部分があったからだ。
それは、魔王フォーセシアに宿っている主因子についてである。
倒されたら次に乗り移るという魔王の主因子。つまり魔王になってしまう原因であるそれを小瓶で吸い取ってしまえば、もしかするとフォーセシアを元に戻せるのではないか。と、ミラはそう期待したのだ。
「うーん、残念だけど難しいかな。そもそもこの小瓶は、私達天魔族が持つ力の一部を封じたものなんだ。詳しい仕組みについては長くなるから省くけど、言ってみれば天魔族に繋がりがある者、つまり天使と悪魔だけにしか効果がないんだよ」
その期待はもっともだとしつつ、しかしそればかりはどうしようもないと告げるアンドロメダ。
「そうじゃったか……」
やはり未来を護るためには、魔王と闘い、フォーセシアを破壊しなくてはいけないようだ。精霊王の事もあってどうにか出来ればと思ったが、それは叶いそうもなかった。
「ああ、ついでじゃから先にもう一つ言っておきたい事があってのぅ──」
期待通りとはいかなかったが、魔王の主因子について話題に上げたついでにと、ミラは三神と交わした約束について触れた。
それは、魔王との戦いの決着についてだ。
当初の予定としては主因子の乗っ取り対策として、魔王を再び完全に封印するという方法で進んでいた。
アンドロメダとカシオペヤ、更にヴァレンティンと教皇とで専用の封印棺を開発。その後、魔王の主因子を解析して、どうにかする方法を探っていくわけだ。
けれど、相手は魔王である。封印は討伐よりも難度が高く、確実に方法が見つかるとも限らない。
だからこそミラは、止めを刺すのが確実だと話した。更に続けて魔王の主因子は肉体が破壊された際、一番近くの者に乗り移るという特性を持つため自分が止めを刺す役を担うとも宣言したのだ。
「おい、待て。そんな事をしたら」
「もしかして自分が犠牲になるとか、そういう話じゃないよな?」
「確かに封印するのは厳しいが、やってやれない事はないぞ」
魔物を統べる王に止めを刺したからこそ、フォーセシアが魔王という存在になってしまった。つまり作戦が成功すれば、その時に同じ事が起きる。
そのための封印という後回し策だったが、ミラがこれを引き受けると言ったからこそ余計に場がざわついた。
誰かを犠牲にしなければいけないなんて話は聞いていないと。そして、そんな作戦しかないのなら協力はしないという意見まで飛び交っていく。
「あー、すまんすまん。わしとて犠牲になるつもりなど毛頭ない。その点については既に対策済みとなっておってな──」
ミラ自身、誰かを犠牲にするというのなら反対派に回っていたと公言し、だからこそ大丈夫な方法があるのだと説明した。
ただ今は、元プレイヤーのみならず教皇達もいる状態だ。よってややこしい事にならぬよう、三神に直接会ってどうこうという部分をぼかし気味に話していく。
そして最後に、これは三神と精霊王の合同策である事を全面的に押し出し、準備の方も完璧に整っていると締めくくった。
「なるほど、そういう事ならいけそうか」
「三神に精霊王か。確かにどうにかなりそうだな」
「それなら加減なく全力でいけるわけだ。悪くない」
やはり精霊王という名の効果は覿面だ。普段から会話していると少し抜けているところなども見えてきたりするが、他の者にしてみれば力強い安心感が勝るのだろう。その作戦に対する感触は、概ね良好だった。
「それって、絶対に安全なものって言える?」
しかし疑り深い者もいた。納得はしたが、それでも不安は払拭出来ていない顔をしているのはカグラだった。
ただ、その不安は作戦の成功失敗というよりは、ミラ自身について心配している様子である。準備があるとはいえ、得体の知れないものが身体に入るのだ。一切の影響もなく万が一にも零れたりせず済ませられるのかと、随分な隅っこを突いてくる。
「その点については、わしはまったく問題ないと信じておるぞ。何といっても三神様と精霊王殿が練りに練った策じゃからな!」
何事も絶対とは言い切れない。対象が対象であるため、ミラもまた心のどこかに不安を抱いてはいた。
けれど可能性からすれば、この策が最も確実である。また三神と精霊王に加えてマーテルとリーズレインも、本番では何があっても動けるように準備しておいてくれるとの事だ。
現状、あらゆる面において最高のサポート態勢といえる。
「うーん、それなら、まあいいけど……」
何かあってもどうにかなる。万全ではあるというミラの言葉に一応は納得を示すカグラだが、それでもやはり心配な気持ちは拭い切れないようだった。
魔王への止めはミラが刺す。その部分を全員に周知した後は、予定通りに魔王城決戦についての最終確認が行われた。
「やはりこれが一番無難じゃな」
とはいえ作戦は、そう複雑なものではない。
まず第一の目的は、魔王城に持ち帰られた骸を奪取する事。
次に主因子持ちの悪魔を浄化する事。
そして魔王を倒す事。
この三つを達成出来れば勝利というわけだ。
ただ先ほど一つ嬉しい誤算があったため、その結果次第で作戦に変更が加えられる可能性が残っている。
そう、公爵級一体を先に浄化出来た件についてだ。魔王側の情報がどれだけ得られるかによって、もっと有利になる作戦を立てられるかもしれない。
そのため幾らか作戦に幅を残しつつ会議は進む。
「バランスを考えると、こんなものじゃろう」
チーム分けについても既に完了していた。元プレイヤー四十三人と四聖将などの現地メンバーを混合した四チーム編成だ。
一チームが十五人前後となっており、それぞれのリーダーを、ヴァレンティン、ノイン、ゴットフリート、アンドロメダが担当している。
また、各チームを統括する連絡兼指揮役としてレイヴンとカシオペヤが収まった形だ。
「でも、本当にいいのか?」
前衛と後衛のみならず、それぞれの得意分野も上手く組み込まれているため問題ないと納得するミラだが、ソウルハウルは少々不安げだ。
「よろしくね、ミラさん!」
なぜならチームに教皇が含まれているからである。
戦力は十分に揃っているとはいえ、これから向かうのは格上が待ち受ける魔王城だ。そんなところに三神教のトップを連れて行ってもいいものなのか。万が一にでも何かあったら、国際問題では済まない事態に陥るのは間違いない。
だからこそソウルハウルは、やる気満々でそこにいる教皇に心底苦笑していた。大司教三人はお留守番というのが唯一の救いというものだ。
なお、ちゃっかり後ろに控える護衛の二人は頭数から外されている。
「大丈夫、大丈夫。いざとなったら自分の身は自分で守れるから。皆は気にせずドーンとやっちゃってね!」
実際のところ、彼女の自信は言葉ばかりではない。空港にて公爵級すら閉じ込めた結界などからわかる通り、教皇は聖術以外にも、それこそ神術といえるクラスの力を有している。
いざとなれば自身のみならず、誰かを護る事だって十分に可能だろう。
「……出来る限り離れないでいてくれよ」
彼女がこの調子では、もはや何も言えない。そう諦めたソウルハウルは、教皇がはぐれないよう注意しておこうと決めるのだった。
「──で、これが確認出来た最低限の戦力さ」
「私も手伝いました。えっへん」
アンドロメダとカシオペヤが並べたのは、魔王城周辺の偵察データであった。
「よくもまあ、こんな詳細に……」
かなり細かいデータが並ぶそれを前に、感嘆とした声で呟くのはノインだ。
その偵察データだが、二人の話によると日之本委員会の技術者連中が中継基地にごてごてと追加した装置を利用して収集したものだそうだ。
かの中継基地には、研究のために今もまだそこそこの数の技術者が残っている。今回はその力を借りて、カシオペヤが特別に設計した偵察用ゴーレムを作製。それを中継基地から射出する事で、それこそ監視衛星の如く、魔王城周辺の情報を根こそぎ収集したとの事だ。
「先にここまで知れたのは僥倖じゃな」
直接観測出来た地上の戦力のみならず、様々な数値の計測結果から見えない部分まで推測出来た。
このデータによると、魔王の拠点はそこまで深くないとわかる。
また拠点に存在する個体数も、さほど多くない。ただ相手側も少数精鋭といったところのようだ。強力な個体の反応も見つかった。
魔獣クラスが存在している。加えて、そこには主因子持ちの悪魔もいるはずだ。
注意すべきは、やはり悪魔の存在である。
「それと上からの報告だと、二日前に一チーム規模が、予定地点に向けて飛び出していったそうだよ」
敵方の戦力が明らかになったところで、アンドロメダが情報を追加する。
その内容は、こちらから流したダミー情報に相手側が喰いついたようだ、というものだった。
空港に公爵が潜んでいた通り、これだけの戦力が集中したら注目されるのは当然。
よってこれに先んじて、『この過剰戦力が集まる親睦会こそが陽動で、秘密裏に別動隊が残りの骸を狙う』という作戦を極秘に進めていると流したわけだ。
しかも実際に完全武装の最新型魔導人形を使い、別動隊として動かしている。
魔王側は、これの確認のためにチームを派遣したと思われる。
「少しでも戦力を減らせればと思っていたけど、これでまた勝利に近づいたね」
戦力分散を狙う他にも、魔導人形には各種測定器が取り付けてあるため、上手くいけば骸の状態や魔王側の戦力に個体値なども分析出来るだろうとの事だった。
遂に……遂にきたーーーーーーーーーーーー!!!!
いつか来てくれると待ち望み続け、ちょくちょく確認していたのですが……
なんとなんとなんと遂に!
itunesに、KinKi Kidsがきたーーーーー!!!!
どれだけこの日を待った事か。
というわけで早速、購入!!
青春が蘇るぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
という事で今は青春真っ只中!
まあ、ドラマや漫画のような青春なんて一つも経験していないんですけど……。
夢見たっていいじゃない。妄想したっていいじゃない。




