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605 アーティファクト

今年も終盤。そんな月末にコミック版の最新刊が発売予定です。

よろしくお願いします!

六百五



 アーティファクト。それは神からの特別な贈り物の総称であり、そのどれもが類稀な奇跡の力を秘めている。そして人の心に共鳴して真価を発揮するのが特徴だ。

 特にその中でも武具として贈られたものの中には、特別に英霊武具と呼ばれているものもある。そしてこれら英霊武具は、神話に登場する英雄達の持ち物として登場する。

 伝説級をも超えるそれらは、大陸全土の歴史においても未だ数える程度しか確認されていない代物だ。


「これも、こっちも、凄い凄い!」


「もしかして、これ全部がそうなのか?」


 どこを見ても、どれをとっても全てが希少なアーティファクトだ。その事実を前にして次から次へと見て回るハミィ。対してノインはというと、もはや圧倒されたように部屋を見回していた。


「あるところには、あるものなのね」


 思っていた以上だった事もあって、カグラは少し放心気味だ。だがその目には歓喜が渦巻いていた。


「うんうん、いい感じの反応だ。見ての通り、ここにあるのは特別に特別なものばかり。というわけで君達は、この中からこれだと感じたものを一つ選んでおくれ」


 今回は全員の度肝を抜けたようだと満足そうなアンドロメダは、近くの台に腰かけながら「ゆっくりじっくり決めていいからね」と続けた。

 と、そんなアンドロメダの言葉に質問を投げかける者がいた。


「二つ以上はダメなのー? ここにあるので完全武装とかしてみたいなぁ、なんて」


 ハミィだ。それはもう欲望のまま、希望するままに気持ちをはっきり言葉にする様は、時に頼もしくすら見えるとミラ達の注目も集まる。

 実際のところ勝利のために戦力を高め必勝を狙うと言うのであれば、いっそ全身をアーティファクトで揃えてしまうのが一番確実といえるだろう。

 極めて希少なため本来ならば不可能だが、ここにはそれが出来てしまうだけの数が揃っている。だからこそ勝率をより高めるのなら、ハミィの言葉は理に適ったものであるのだ。


「それが出来れば、そうしたいところなんだけどね。でも見ての通りというか何というか。こうしてここに大量に保管してあるっていうのにも理由があってさ。ここにある武具って、神話とかの言い伝えに登場するそれらとは、ちょっと勝手が違うものなんだ──」


 アンドロメダもまた、アーティファクトのフル装備が出来れば、これほど頼もしいものはないという。だが、それが出来ない理由があるのだと語った。

 彼女が言うに、この場所に保管されている無数のアーティファクトは、歴史に登場する英雄のそれとは別物らしい。


「何というか、ここにあるものが創られた頃は、まだまだ世界も随分と若い時代でね。人間が地上に出てきて間もないくらいで特に大変な時期だ。問題も山積みで、更には危機に晒される事も少なくなかった。そこで人間の繁栄のために神々が、その助力としてこれらを贈ったわけだけど。まあ神とはいえ、当時はそのあたりもまだ慣れていない時期でさ。そこに秘められた奇跡の力には、大きなむらがあったんだ──」


 神の奇跡の力を秘めたアーティファクトだが、初期に創られたそれらの性能は、それこそピンからキリまであったとアンドロメダは言う。

 熊を軽く殴り飛ばせるようになるものから、巨大な魔獣を空の遥か彼方にまで吹き飛ばしてしまえるようなものまで。それはもう極端に扱いの難しいものが多かった。

 そんな事もあってか、神々は高水準で安定した恩恵をもたらす事の出来るアーティファクトを生み出すため、歴史の裏で色々と努力し試作を重ねていたそうだ。


「なるほどのぅ。つまりここにあるのは、その時に量産された試作品というわけじゃな」


「大正解!」


 何となく状況が読めてきたぞとミラが口にすれば、アンドロメダからその通りだと返ってきた。


「つまり早い話が、安定を目指している途中のものばかりってわけ。ある程度は形になっているけど、不安定さも内在している事に変わりはないんだ。だからこれらを一度に複数も身に着けようものなら、不安定な部分に不安定な部分が重なって干渉し合い、もうどんな事になるのか正直予想もつかないよ」


 それこそがアーティファクトのフル装備が出来ない理由だった。

 性能の面だけで言えば実際に贈られたアーティファクトよりも強力なものもあるそうだ。だが調和といったものとは無縁の状態で、その全てが混ぜるな危険。ゆえに、選ぶのは一つだけに限定されたという事だ。


「それは確かに、物騒な事になりそうじゃな……」


 神器には届かずとも、アーティファクトもまた神が誂えた代物だ。だからこそ、そんなものが誤作動でも起こして暴走したらどうなってしまうというのか。

 実際に神の力をその身で体感した事のあるミラは、何よりも身の危険をビンビンに感じて、その理由に納得する。

 またカグラ達も、それなら仕方がないと得心のいった様子だった。

 けれど、そこまで聞いてもまだ諦めない者がいた。


「それならさ、一つずつ使うなら大丈夫って事?」


 ハミィである。むしろそんな特別感のあるアーティファクトだと聞いて、ますます興奮した様子だ。また、一つだけ選ぶという制限自体も移り気のある彼女にとっての難敵なようだ。どうにか選択肢が増えないかと挑戦していく。


「うーん、こればっかりはねぇ。ここにあるものに限らずアーティファクトって、わかり辛いけど使用者にも影響が残るものなんだ。複数使うと、その影響も重なる事になる。そして重なり具合によってはまあ、最悪の事態になったりするわけだ。だから一人一つが基本。同じ神が創ったものなら親和性もあるけど、そこら辺もここにあるのは不安定だから許可は一つだけだよ」


 ハミィが期待の眼差しを向ける中、アンドロメダはアーティファクトに秘められた別の注意点を挙げて、それは難しいと断言した。


「うあー、ダメかぁ」


 これに肩を落としたハミィだったが、最初からダメで元々といったつもりだったのだろう。直ぐに気持ちを切り替えると、「それじゃあ、どれにしようかなっ」とアーティファクトを選び始めた。


「では、究極の選択じゃな」


「ええ、悩みどころね!」


 二つは無理だったが、そもそも一つだけでも万々歳なアーティファクトだ。しかも効果だけなら伝説に残るようなアーティファクトを超えるものまであるわけで、ミラとカグラの目もギラギラと輝き始める。

 そうして皆でアーティファクト選びが始まった。

 アンドロメダの説明によると、武器と防具で場所が分けられているそうだ。

 よってミラ達は一斉に武器が並ぶ場所に群がっていく。


「少しは守りも考えてくれないかな……」


 唯一、防具の並ぶ場所にいたノインは、これから始まるであろう戦いに一抹の不安を覚え苦笑を浮かべるのだった。






 それぞれ思い思いのアーティファクトを選んだ後、現地にて使い勝手などの確認を終えたミラ達は研究所に戻り、次の行動について話し合っていた。

 議題は、魔物を統べる神の骸の捜索についてだ。


「──そういうわけで、場所についてはもう聞いておるのでな。後は現地に向かってこれを手に入れるだけじゃが、まあほぼ間違いなく魔王の手の者と遭遇するじゃろう」


 三神からの情報によると、ミラ達が既に処理を終えた二つ以外の封印は今もまだ健在だそうだ。

 だが封印の場所自体は、既に魔王側も掴んでいる状態。よって封印解除の作業が進められているはずだ。

 当然、そう簡単に解ける封印ではないが既に二つが持ち出されていた事からして、残りもきっと時間の問題だろう。


「戦闘は避けられそうにないわけか」


 守る事を重要視するノインとしては、出来るだけ戦闘になる事は避けたいようだ。

 だが同じものを狙っている以上、それを手に入れられるのはどちらか一方。そして敵対関係にあるからこそ、向かう先に待っているのは戦いのみだ。


「さて、無事勝利して骸を入手出来た場合だけど──」


 次にアンドロメダが、骸を手に入れた後はどうするかについて触れていく。

 彼女が言うに、一応その選択肢は三つあるそうだ。


「一つは、より強固に封印し直すというもの。一つは封印場所を移す。そしてもう一つが、先の二つのようにミラさんが処理する、だね」


 そう三つの方法を挙げたアンドロメダ。ただ、これについての最善の手段というのは、やはり一択と言ってもいい。


「封印し直すのは、ちょっとどうでしょうね」


 強固に封印し直したところで、場所がバレている以上は時間稼ぎにしかならないだろうとヴァレンティンが言う。


「場所を移しても、あれよね。封印が解けたら魔王はどこからでも察知出来るんでしょ? 封印したまま移せるのならアリかもだけど、出来ないなら変わらないわよね」


 場所がバレたのなら隠し直せばいい。一見すると堅実な方法だ。けれど、それほど強力な封印を簡単に移せるものなのかとカグラが疑問を呈する。


「まあ、一度解除する必要はあるだろうね」


 実際、移すには封印を解除する必要があるとアンドロメダが答えた。

 そうすると次の封印先を知られないため、先に魔王の方をどうにかする必要が出てくるわけだ。

 だが魔王がどこにいるかなんて、今はまったくわからない。ゆえに場所がわかっている骸の対処を優先しようというのが現状である。


「結局のところ、選択肢は一つって事だな。先に手に入れて、妨害が入る前に処分するしかなさそうだ」


 先の二つと同じように、ミラが残りも処分する。わざわざ話し合うまでもなく、これが最も確実で手っ取り早いと結論付けるソウルハウル。

 ただ、ここでアンドロメダが選択肢を提示したのには、そこにこそ意味があった。


「うん、やっぱりそれが一番だよね。でも今後もそうするとなったら、やっぱり大変になると思うんだ──」


 最終決戦の事を考えるならば、魔物を統べる神の弱体を狙える骸の処分は非常に有効といえる。

 だがそれを行うためには、一つ前提があった。

 切り札となる三神の神器の存在に気づかれないようにする事だ。そしてそのためにはミラが神域へと赴く必要があるわけだが、これにはアンドロメダの拠点を経由しなくてはいけない。

 つまりこれまで通り、研究所のゲートからその拠点へと転移するわけだが、これについての問題がつい先日に発生したばかりである。


「ここだけの話として聞いてくれるかな。ミラさんが骸を処理する方法なんだけど、実は神域で神器を使うというものなんだよ」


 少し声を潜めながら、アンドロメダはその事実を皆に明かした。骸を処分するためには、日之本委員会にあるゲートを経由しなければいけないのだと。


「なるほど。だからここが襲撃されたって事か」


 ゲートがあるからこそ、骸は研究所に運び込まなくてはいけない。そしてだからこそ、魔王の手先がここに差し向けられた。状況を改めて把握したソウルハウルは、同時にアンドロメダが三択にした意味も理解する。

 つまり処分を続けるとしたら、いよいよ本格的に研究所が狙われる事になるわけだ。それこそ、先日の襲撃の比ではないほどの戦力が、ここに差し向けられるはずである。

 なんなら魔王が直々に潰しにくる可能性もあった。それはそれで決着をつけるチャンスではあるものの、研究所が決戦場となってしまえば大勢の技術者達が巻き込まれる事になる。加えて、研究所自体もただでは済まないだろう。

 もしも次に骸を手にして、そのまま研究所にでも向かったら、それが現実になるはずだ。


「幾ら守りを固めておるとはいえ、わざわざここを戦場にするのも何じゃな」


 ミケ達を中心に構築された防衛網は、非常に強固だ。とはいえ絶対ではない。また研究所には非戦闘員も多く、膨大な量の知識と技術も蓄えられている。これを戦火に巻き込むのは避けたいところだ。


「うん、私もそう思う。だからここはいっその事、あのゲートを別の場所に移し替えてしまうっていうのはどうかな」


 ならばどうすればいいだろうか。そう皆で考えようとしたところで、アンドロメダがそんな提案を口にした。

 そう、神域への入り口は動かせないが、アンドロメダの拠点に繋がるゲートの方は、そもそも日之本委員会の技術者であるアラトが作ったものだ。

 作ったというのなら、きっとまた作れるはず。よって今度は、魔王に襲撃されても問題のないところにゲートを据えればいいというのがアンドロメダの考えであった。

 しかも彼女が続けて提案した移設場所は、なんとミラ達がこれから利用する予定となっている特別製の飛空船だった。


「それが出来たら一番な気がする!」


「確かに理想的ではあるか」


 上手くいけば、魔王の狙いを研究所からこちらへと移せるはずだ。ハミィがいち早くその案に賛同すると、ノインも可能であるのならそれがいいと答えた。

 またカグラや他も、これを支持する意思を示していく。

 ただ、そうするためには、確かめておかねばならない懸念材料が含まれていた。


「以前にその制作者から、あのゲートは偶然の産物のようなものじゃと聞いた覚えがあってのぅ。はたしてまた作れるのかどうかが、ちょいと心配じゃが」


 そもそもあのゲートは、制作者であるアラトが以前より実験的に作っていたタイムゲートの試作にも満たないハリボテゲートが基になった代物だ。

 そこに、謎の設計図から解析出来た技術のあれこれを組み込んでみたらなぜか起動してしまったというのが現状である。ゆえにアラト自身が、何をどうしたらそうなったのかを理解していない状態だった。

 だからこそ、もう一度同じものを作るなど出来るのだろうかというのがミラの抱く懸念だ。


「その点については、私も前に彼から聞いた事がある。そして今でもゲートの解析を続けているという事もね。ほんと、ここの皆は面白い人達ばかりだよ」


 日之本委員会の研究所にやってきてからというもの、アンドロメダは技術者達と多く交流しているようだ。だからこそアラトが努力し続けている事も知っており、だからこそ可能性は十分にあると笑う。


「それじゃあ、本人に聞きにいこ!」


 出来るかどうかなんて直接確かめた方が早い。そう言って一番に立ち上がったハミィは、颯爽と会議室を飛び出して行ってしまった。

 はたして彼女は、アラトがどこにいるのか知っているのだろうか。それ以前に、ゲートの制作者が誰か知っているのだろうか。

 とはいえど彼女の言う通りだと、ミラ達もまたアラトに直接聞いてみようと席を立つのだった。












いよいよクリスマス間近。そして年末まであとちょっと……


などというこんなタイミングでまさか──



素敵な魔法の箱である電子レンジが……電子レンジが!!!


温めようとしたらどれだけ経っても凍ったままに!!!!!

こんな年末になんてこったい!!


つまりチートデイ用に用意してあった、冷凍ご飯なんかも温められなくなってしまったという事!!

こいつは、困ったことでっせ。


しかも今年の残りは色々あって、買いに行く余裕もなし。

これはもう今まで通りな普通のチートデイは、諦めた方がよさそうですね。

いやぁ、残念。実に残念だ。


と、色々前後しつつも最近は毎週火曜日になっていたチートデイ。

そして思えば残るチートデイは、24日と、31日。



おや、おやおやおやおやおや!?

つまりこれは、特別な日に普通のチートデイなんてするんじゃないよという神の思し召しかな!?



わかりました、神様。

スーパーウルトラチートデイにさせていただきます!!!!!!!





魔法の箱は1月のどこかで買って来ればいいよね。

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― 新着の感想 ―
ゲームによくあるユニーク装備の理由が判明…!よくばってはいけない。 潜水艦とか空母とかに秘密基地や司令部を作って、誰にも見つけられないようにするの、ロマンある… 家電は急に壊れると困りますねー、まぁ焼…
更新ありがとうございます。 皆がどの武具を選んだのか気になります。他の皆がこれを聞いたら、間違いなく嫉妬されるでしょうけど、そちらにもアンドロメダから一つずつ提供されるのかな? 魔法の箱を奪うなんて…
マイナスを超絶プラスにするとかwww
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