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568 天才ロウジュ

五百六十八



 ところ変わって、同じ訓練棟にある別の部屋。簡単な訓練や少人数での特訓などに使われる場所のようだ。

 ここでならば召喚術について語り合う他、実演も交えつつ先ほどの試合を振り返る事が出来るだろうとの事。

 なお、ここから先は秘匿の召喚術会議という事で、ミレディアは別室で待機中だ。城内におけるミラの案内役としての任もあるため帰れそうで帰れない。そんな微妙な立場のミレディアである。


「なるほど、そこでタイミングをずらしたわけですか──」


「──とする事で、時間差をつけつつ同枠で召喚が出来るのじゃよ」


 訓練室にて試合の流れを振り返りつつ、その時その時の戦略や対応について事細かに説明し合い、その瞬間毎の最適解を共に追求していく。

 試合内容的にはミラの完勝ではあったものの、対応次第ではまだ幾らか反撃も出来た。

 改めて確認する事で見えてくるものもある。特にロウジュは、こういった反省点などを見つけ対応策を考えるのが得意のようだ。

 ところどころで、ミラもそうされていたら大変だったという案が提示される。

 それもあってか、この召喚術談議はミラにとっても有意義なものだった。

 と、そうしていよいよ最後のヴァルキリー戦に触れたところだ。


「それにしても、あれには驚かされましたね。まさか武具精霊で武装するなどという技があるなんて!」


 ロウジュは、まず初めに──というよりはここぞといった勢いで武装召喚について触れる。それから更に、とても素晴らしい術であったと熱烈に語ってから、「あれこそ正にダンブルフ様の理想を叶える夢の第一歩に違いない!」と興奮気味に続けた。

 よほど衝撃的だったのだろう、それはもう大絶賛である。


「しかも、自身のみならず召喚体にも適用出来るとは驚きでした。そして彼女の強さといったら──!」


 興奮冷めやらぬ中、今度はイナシス・ワン本人を話題にするロウジュ。

 ヴァルキリー同士で更には二対一という状況でありながらも圧倒的な強さをみせたイナシス・ワン。その鍛え抜かれた実力に感嘆するロウジュは、それでいて不意に鋭い視線をミラに向けた。


「ところで一つ──」


 ロウジュは神妙な面持ちでそう切り出すと、次には確かめるように、だがどこか確信を持っているかのように言葉を続けた。


「──あのイナシス・ワンと名乗った彼女ですが……アルフィナ殿ですよね?」


 その言葉はミラにとって、あまりにも唐突だった。名前もコードネームに変え、尚且つ確認する間もなく武装召喚で顔を隠せていたはずだ。

 ゆえに彼がその正体に気づけるはずがない。そのはずだったが、何をどうして見抜いたというのか。ロウジュは、あのような状態からでも正体に辿り着いていたのだ。


「は……はて、何の事じゃろうな……」


 とはいえ確定的な証拠は残していないと考えるミラは、どうにか誤魔化そうとする。

 けれどもロウジュの目はミラの言葉を受けてなお揺るがない。それどころか、彼はその考えに至った根拠を話し始めた。


「私は、アルフィナ殿に会った事を今でもはっきりと覚えています。当時より更に洗練されていますが、先ほど目にした剣技には、あの頃と変わらない類似点が幾つも確認出来ました。剣の癖、技の癖というものは、余程の悪癖でもなければ大抵はそのままですからね。そして彼女の声もまた、とても覚えのある懐かしい響きでした。ただ一言、『始めましょう』と言ったあの声で、私の脳裏には当時のアルフィナ殿の姿が明瞭に浮かびましたから」


 もはや彼には、確信しかないようだ。その正体に至った要素の全てを並べたロウジュは、揺るぎない自信をその顔に浮かべていた。

 しかも彼は、そこから更に、その根拠を確定づける理由までも付け加える。

 それは先ほどの事。ロウジュは、彼が召喚したヴァルキリー姉妹に、イナシス・ワンと名乗る彼女の事を知っているかと問うたそうだ。

 そしてその返答は、口止めされたから答える事が出来ないというものだった。


「彼女達は、第六ヴァルハラでトップの実力者です。当然、その序列もかなり上にあります。そんな二人に口止めするのみならず、あれほど圧倒出来るヴァルキリーとなったら、そうはいないでしょう。けれど彼女がアルフィナ殿であったのなら納得です。第一ヴァルハラの頂点が相手となれば、勝負の結果も彼女達の反応にも頷けます」


 状況証拠でしかないが、なおもロウジュは、その考えに至った工程を連ねていった。それこそミラの逃げ場を塞ぐよう、徐々に徐々に包囲網を狭めていく。

 ロウジュいわく、気づいたのはアルフィナの存在だけではないという。

 まず初めに、ミラが召喚術を行使する際の癖や、格闘時の動きなどから幾つもの類似点を見つけていたそうだ。

 ただ最初は、師匠の教えをそのままなぞっているだけかとも思ったらしい。

 けれど戦闘時以外に、それこそ日常的な仕草といった部分にまで類似点があった事で疑いは一気に濃くなった。

 そんなところで登場したのがアルフィナだ。幾ら弟子であろうとも、ヴァルキリー達が主を変えるような事は、まずあり得ない。


「そこで私は考えました。そして思い出したのです。三十年前に現れた天人族という存在を。あの激動の時代に英雄と謳われた者達は、そのほとんどが天人族だったと歴史に記されています。ならばその時代から考えて、ダンブルフ様も天人族であった可能性が高い。そしてこの天人族というのは、稀に生まれ変わったかというくらいに容姿が変わる事があると聞いた事があります」


 極めて正解に近い真実にまで迫ったロウジュは、そこで遂に決定的な言葉を口にした。


「今のミラさん、いえ、貴女様の実力は、私が知る当時のダンブルフ様の更に上。いくら弟子とはいえ、ダンブルフ様を超えるなど至難の技。となれば単純に、当時より腕を上げたダンブルフ様である──と、そう思い考えた次第でございます」


 全ての情報を統合して予想した結果、ロウジュはミラこそがダンブルフ本人であるという解に至ったわけだ。


(いったいどんな頭をしておるのじゃ、こやつは! 天才か? 天才系によくあるタイプのアレか!?)


 かつて、ロウジュと過ごした時間は半日にも満たないものだった。それにもかかわらず、彼は当時の事を今でも詳細に記憶しているという。

 ミラにしてみればちょっとしたイベントだったが、ロウジュにとっては、それほどまでにかけがえのない一時だったようだ。

 とはいえこういう場合、当の本人はそこまでピンとはこないものだ。ミラはただただ、いくら何でも恐るべき記憶力だと戦慄する。しかもそこからミラの正体にまで辿り着いてしまうのだからとんでもない。

 ロウジュの様子からして、もはや言い逃れなど出来そうになかった。

 とはいえ、この件については国家機密扱いだ。だからこそ他国に、しかも三神国の一つグリムダートなどという大国にバレたなんて知られたら、ソロモンからどれだけこっぴどく叱られるかわかったものではない。

 それどころか、九賢者仲間達からも言いたい放題に罵られるのは確実だ。


(いっその事、過去の記憶ごと消し飛ばしてしまおうか……)


 良い感じに殴り飛ばせば、ロウジュの頭からダンブルフの記憶だけ丁度良く消えてくれないだろうか。そう冗談半分に、だがもう半分は本気で出来ないかどうかと考えるミラ。

 そう色々考えていたところだ。悩む気持ちが顔に出ていたのか──。


「ダンブルフ様の事。こうしておられるのは、深い事情があると存じております。当然ながらこの件が秘密であるとも理解しております。ゆえに、このロウジュ。我が身命に懸けて、この秘密は決して他言しないと三神様に誓います。そして私の人生を変えて下さったダンブルフ様のためならば、持ちうる全ての力を注ぎ、真実すらも捻じ曲げる所存です!」


 ミラの気持ちを察するなり、ロウジュはたちまちに平伏し、そんな宣誓の言葉を口にした。

 その覚悟は、本物のようだ。たとえ国王に命じられたとしても、この真実は口外せずに墓まで持っていくと告げたのだ。


「……ふむ、そうか。それは助かる」


 流石に命まではとも思うところではあるが、真摯な態度で誓いを立てるロウジュの顔は、嘘偽りのない誠実さで溢れていた。

 この件については本来ならば、九賢者である事を隠しているミラ側にこそ非があると咎められて当たり前の状況だ。

 けれどロウジュは、その事実を伏せて秘密を守る側に立つと誓った。


「そこまでしてくれるというのなら、お主には色々と話さねばならぬじゃろうな──」


 そんな彼の誠意に応えるためにも、という気持ち半分。ミラは細かい部分を問われる前に先駆けて、なぜ少女になったのかについてを語った。

 それもこれも全ては、行方不明となっていた九賢者達を探し出すための秘策であったと。

 ロウジュが示した誠実さに対し、ミラのそれには保身のための嘘が多大に含まれていた。実に不義理な内容といえなくもないが、出来る限り正体を隠せるよう真逆の容姿に──少女になったという点以外は、全てが真実だ。

 また実際にミラという存在となった事で動きやすくなり、無事に九賢者達を見つける事が出来たのだと確かな実績も並べる。それもこれも国のためであったという点をこれでもかと誇張する。


「なるほど! 確かに以前のダンブルフ様のままでしたら、自由に国を出るなど出来なかったでしょう。ですが国のため仲間のために、ここまで姿を変えてしまうという大胆さも、流石はダンブルフ様です!」


 かなりの推理力と洞察力を持っているはずのロウジュだが、どうやらダンブルフの言葉であったら全て鵜呑みにするタイプのようだ。まったく疑う様子もなく納得してくれた。それどころか、ダンブルフの大きな決断と、その使命感に感動すら示している。


「ここだけの秘密じゃからな」


「もちろんでございます!」


 ミラがそう言えば、ロウジュは天地神明に誓ってといった態度で答えた。それどころか術的な影響力を持つ誓約書を書き認めるなどと言い出すロウジュ。だが流石にそこまではと止めるミラであった。





 グリムダートの術士団団長のロウジュに、正体がバレた。

 ダンブルフの弟子だと吹聴していた彼は、同時にダンブルフの事をよく知るという実にマニアックな一面があったためだ。

 そのあまりの洞察力を前にして、認めざるを得なかった次第である。

 とはいえ秘密の厳守に関しては心配もなさそうだ。彼はダンブルフ信者といっても過言ではなく、だからこそミラの言葉には全てがイエスだった。


「それでは改めまして、ダンブルフ様。いえ、これからはミラ様とお呼びした方がいいですかね。では、ミラ様。こうして再びお会い出来た事、心から嬉しく思います」


 一通りの問答を終えた後、ようやく再会出来たとミラの前に跪き感涙する彼は、それでいて清々しいほどの笑顔を湛えていた。


「うむ、あの時の青年がこうして立派になってくれて、わしも嬉しく思うぞ。よくぞここまで頑張ったものじゃな」


「ああ、なんと勿体ないお言葉!」


 以前とは違い、ロウジュも今は大国の重役だ。ゆえに対応に困ったミラであったが、これまで通りと彼が熱望したため以前と同じように応じたところ、ロウジュの表情はより一層輝いた。

 ただ──。


「しかし何やら……少々お変わりになられた事もあってか、なんだかこそばゆくも感じますな」


 ミラの容姿をじっと見つめたロウジュは困惑気味ながらも、これはこれで悪い気はしないと頷いた。

 心から憧れ目標にした存在が、再会したら美少女になっていた。事と次第によって様々な感情が浮かぶ現状ではあるが、ロウジュは無事に今を受け止める事が出来たようだ。

 それどころか、何がどういった感情かはわからないが、現状に対して不思議な高揚感すら覚えていると彼は告白する。


「……召喚術士の未来のためにも、お主は今の身分と立場を忘れてはならぬぞ」


 ロウジュの表情と、その様子から、ミラは何となく危ういものを感じ取った。これまでにも時折感じた事のある、少々屈折気味な気配が彼の中に生まれたような気がしたからだ。


「御意!」


 そう答えて平伏したロウジュは、同時に何だか今の瞬間がとってもしっくりきたと驚きつつも嬉しそうに笑った。

 彼が見ているのは、新世界だ。少女に敬意を抱くという今の感情に、不思議な高揚感を得ているのである。けれど、これまでには影も形もなかった感情だからこそ、ロウジュはその正体を正確に掴めずにいる。


「さて、もう随分な時間じゃからな。そろそろ帰るとしよう」


 これまでの間で、その感情に近い嗜好を自覚する者達の視線を幾つも浴びてきたからこそ、ミラは察する事が出来た。彼の心の中に、その芽が生まれてしまった事を。

 だからこそミラは、それがこれ以上育たないようにと、急ぎ帰り支度を始めた。よその国の重役を少々問題気味に目覚めさせたなどと知られたら、それこそ国際問題になりかねないからだ。


「そんな、ミラ様! まだまだお話いたしたい事は山ほどあるというのに」


「それはまた今度落ち着いてからにしよう。今は任務で用事が詰まっておるのでな」


 まったく話し足りないと、どうにか引き留めようとするロウジュ。そんな彼をあしらうように宥めたミラは「精進するのじゃよ」と言い残してミレディアを呼ぶと、急ぐように王城を後にしたのだった。




「──まだまだダンブルフ様、いや、ミラ様のようにはいかないな」


 訓練室で一人になったロウジュは、ミラが言い残していった言葉通り、早速訓練に取り掛かっていた。

 現在は、基礎だけ教わった部分召喚に挑戦しているところだ。とはいえ流石のロウジュとて一朝一夕でものに出来るような代物ではなく、苦戦している様子である。


「しかし……噂には聞いていたが、天人族というのは、あれほどにまったくの別人へと変わるものなのか……」


 記憶に焼き付けたダンブルフの姿。そして今回、新たに記憶に焼き付けたミラの姿。そこに共通点は皆無であり、見た目は完全に別人だ。

 けれど、この二人は同一人物である。その事実を前に、とんでもない種族がいたものだと改めて実感したロウジュは、新たに焼き付けたミラの姿を思い浮かべながら考える。


(この、心から湧き上がってくるような高揚感は、なんなのだろうか)


 深くまで入れ込まないよう早々に退散したミラであったが、どうやらロウジュがそれの正体に気づくのは時間の問題のようだ。











先日の事です。

折角外にでたので、ちょっとイイ感じのおつまみでも買っちゃおうなんて思いつきまして。


こういう時は、だいたい唐揚げが一番に思い浮かぶのですが、やはり唐揚げは唐揚げ。カロリーが気になりますからね。


ここは、もう少しヘルシー寄りな方にしようかと考えたわけです。

そして思い付いたのは、


なんとなく野菜も入っているし揚げ物ではないので、唐揚げよりはカロリー低めな気がする!

というわけで、餃子をチョイス!


そして餃子と言えば王将だと向かう途中で、ふと目に入ったのは日高屋!

何やらテイクアウトだと餃子が安くなるようです。250円です。


ほほぅ。

それを記憶してから王将にいったところ、

餃子290円。


日高屋の方が安いだと!?




という事で日高屋を訪れました。

テイクアウトも店内の端末でピピッと出来るという事で見てみると……


テイクアウト餃子250円

テイクアウト冷凍餃子2人前300円


え!!!!!!?????


もはやわけがわかりませんでしたね。

しかもそこから更に、冷凍餃子5人前700円と畳みかけてくるではないですか!!!!


普通に焼き餃子を買って帰ろうとしていた頭はここで既に、うちにある調理器具なら十分に餃子も焼けるな、と計算し始めておりました。


結果、

冷凍餃子5人前700円と冷凍唐揚げ1kg1160円を購入して帰りました。


美味しかったです。今後、ちょくちょく買いにいこうとも思いました。

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― 新着の感想 ―
師匠に対する愛情が恋心に変わった瞬間ですね。
[一言]  ご投稿お疲れ様です。  バレちゃいました。 弟子ではないとかで揉めませんでしたねw  餃子は人類が生み出した文化の極みなのです!
[一言] ロウジュさん ダンブルフ好きというか研究しつくしてたのか バレてしまいましたねー 師匠愛があるから心配ないかな コミックは小説読んでてもまた違う感じで楽しめた ミラが可愛いからカッコイイに…
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