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545 祭の境界

五百四十五



「……ん? ここはどこじゃ?」


 ひと際眩い光に包まれてから覚悟を決める事、数秒。幻のように光が消え去ったかと思えば、何がどうなったのか。周りの景色が一変していた。

 先ほどまでは山と谷と神殿跡に囲まれていたが、今一番に見えるものは大きな棚だった。それこそ巨大な倉庫などにあるような本棚が無数に並ぶ光景がひたすらに続いている。

 だがそれでいて、ここがどこかの倉庫だという気はしない。なぜならば足元には草花が生い茂り、見上げれば星の煌めく空がどこまでも遠くにまで広がっているからだ。

 しかも星空の下でありながら、不思議と夜のように暗くない。むしろ遠くまで見渡せるほどに明るく見える。夜空というよりは、天井に夜空が映し出されているかのようだ。


『問題なく来られたみたいね』


『どうやら招かれたようだな』


 ここは何なのか、どうしてこんなところにいるのか。どこまでいっても棚、棚、棚。丘を越えた先にまでも棚が並んでいる様子は、どれだけ足掻いても逃げられない業務感を想起させるほどだ。

 けれどマーテルと精霊王は、この景色を前にして、どことなく懐かしむような感想を口にしている。

 社畜経験でもあったのだろうか。そんなふわりとした感情を抱きつつ、いったい何があってどうなったのかと問うたところ明確に状況を教えてくれた。

 マーテルいわく、花冠には特定の精霊──リーズレインの力に反応する魔法が編み込まれていたそうだ。そしてその魔法はミラが手をかざした際に、空絶の指環を感知して発動。先ほどの光は、この場所──祭の境界への入り口が開く兆候だったとの事だ。

 つまり、あの瞬間に大丈夫だと言ったのは、光の先に祭の境界の気配があったためらしい。


『何というか、イメージと随分違っていてびっくりじゃのぅ……』


 現世と幽世の狭間。更には花冠を見せられた事もあってか、それこそ桃源郷のような雰囲気の場所だろうと当たり前に連想していたミラ。けれど実際に来てみれば、まるで仕事が終わらない作業員が見る悪夢のような光景だ。


『どのような場所をイメージしていたのかはわからないが、何やら随分と散らかっているな』


 思っていた桃源郷と違う。ミラが思わぬ現実に愕然としていたところ、精霊王がそんな言葉を零した。

 その言葉通り、どこまでも棚が並ぶどころか荷物から何からが溢れ出て、そこかしこに積み上げられている。相当な散らばり具合だが、言い方からして以前は違ったのだろう。


『ふむ。昔は、どういったところだったのじゃろうか』


 作業員の悪夢のようになる前は、どのような場所だったのか。気になったミラは、その点について単刀直入に聞いてみた。


『ああ、それはだな──』


 精霊王が言うに、まずなんといっても今と当時ではまったく違った使われ方がされているとの事だった。

 リーズレインが創り出したという、祭の境界。ここは、ただ最後に一目だけでもアナスタシアに逢いたいと願ったリーズレインの想いが形になっただけの場所。天ツ彼岸の社の先にて、やって来た死者をほんの一時留めるためにある、それだけの場所だった。

 つまりは死者達の待合室程度の意味しかなかったのだが、ある時に三神がここの利点を見出したという。


『ここ祭の境界は、その成り立ちからもわかる通り、かなり急ごしらえで創られたものでな。仕組みもまた大雑把になっているため、善も悪も関係なく全ての死者が手当たり次第に通過するように出来ている──』


 少しでも早く、アナスタシアに会うため。そして何よりも、アナスタシアがいなくなる前に。細かい調整は全て省いて、勢いのままに設置した。それが祭の境界というわけだ。

 ただ、もう輪廻に還ってしまった後だったのか、それとも未だに還っていないのか。アナスタシアとの邂逅は果たされず、待ち続けるリーズレインはそのまま眠りについたとの事だ。

 ともあれ、その例外なく集めて留めるという特性が三神にとって都合が良かったようだ。

 まず罪に塗れたまま還った魂は時折悪い影響をもたらすため見つけ次第対処していたが、祭の境界が出来てからは全部ここで見張っているだけで済むようになった。

 そして何よりも、この場所は情報の集積地として極めて有用であると判断されたらしい。


『以前は、そこまで気にするほどでもなかったが、人類の歴史というのは時代が進むと共に深く複雑になっていった。そしてそこから生まれる知識もまた、重要性が飛躍的に高まっていった。けれど数多くの歴史の裏で、忘れ去られていく歴史も多かったのだ──』


 三神は、その歴史と知識を保存する事に決めたという。いずれ訪れる未来のため。何か知識が必要になった時のため。そして何よりも多くの歴史が存在していたという証として、これを残すためのアーカイブを構築した。

 つまり、この場所には当時から今に至るまでの人類全ての記憶が記録として残されているという事だ。


『……思った以上にとんでもない場所じゃのぅ』


 この場所には今もまだ謎の歴史のみならず、もはや痕跡すら残っていない歴史すら記録されているという。

 もしも考古学者や歴史研究家がここを知ったら泣いて喜びそうだ。いや、もしかしたら絶望するかもしれない。

 ふとした事でやってきたが、思いのほかとんでもないところに連れてこられたものだ。ミラは驚きと感心を抱きながら、どこまでも並ぶ棚を見回す。なんといっても、その棚こそが記憶の保管棚との事だ。


「しかしまた、不可思議な物体じゃな」


 ちょっとした好奇心のまま手近な棚に歩み寄ったミラは、その中の一つをじっくりと観察した。

 死者達の記憶を記録として写したという物体は、色々な形がある。その人物の人格なども関係して、記録しやすい相性のようなものがあるそうだ。

 ただ、中でも一番多いのは本だった。しかし当然と言うべきか、ただの本であるはずがない。それは物質ともいえず霊体のようなものなのか、はたまた情報の塊というものなのか。少々言葉では言い表し辛い存在として、そこに並んでいた。

 なお、そんな本やら何やらの一つ一つに数十人分の歴史が記録されているらしい。そしてこの祭の境界には、それらが数千、数万などでは足りないほどに保管されているわけだ。

 ただ、これもまた当然か。人が閲覧出来るようなものではないとの事だった。以前に考古学者のドルフィンが言っていた歴史の謎などを、ここで解き明かせてしまえないだろうか何て考えたミラは、それは残念と苦笑する。

 と、そんなやり取りをしていた時だった──。


「あ、やっぱり気のせいじゃなかった! 気づいてくださったんですね!」


 急に背後の方から、そんな騒がしい声が響いてきたのだ。


「おおっと!? なんじゃ!?」


 精霊王でもマーテルでもない、まったく別の声が聞こえてきたとあって驚き振り返るミラ。するとそこには少女の姿があった。けれど少し違う。その少女は、ミラよりも更に半分ほどの背丈であったのだ。


「はじめまして、はじめまして。ようこそ、祭の境界へ! なんだか入り口近くからリーズさんの気配がしたら貴女がいて、もしかしてと思ったら本当に来てくれちゃうんだもん。びっくり! 私はここの管理者、メルフィリカキティリアリカ。メルフィって呼んでね!」


 そう屈託なく笑う少女は、なぜだかとても嬉しそうだった。そしてミラの脳裏では、『おお、メルフィか。大きくなったものだ』『あら、ほんと。それにとっても明るくなったわね』などと、孫の成長を喜ぶような声が響いていた。


「うむ、はじめまして。わしはミラという」


 来客が珍しいからか、それとも何か理由があるのか。名乗り返したミラは「して、どういう事じゃろうか──」と早速疑問を並べていった。

 その結果として色々と判明する。

 まずホーリーナイトの頭に花冠を載せたのは、彼女だそうだ。

 いわく、あの神殿跡はリーズレインが祭の境界を創り出した地という事で想いが強く残っている場所であり、ここと最も接点が強いらしい。そこでミラが空絶の指環を使った事で、メルフィはその気配を察知。リーズレインと関係のある人物かもしれないと期待して、ここへの入り口を開くための花冠を置いていったそうだ。

 無関係ならば、花冠はそのまま消えるだけ。けれど関係者ならば、こうして招く事が出来るというわけだ。


「で、リーズレインの関係者を招いて、どうするつもりじゃ?」


 花冠あたりの謎については解決した。だが、そもそもなぜそんな事をしたのかという点は不明なまま。特に、リーズレインの関係者だからという件りが気になる点だ。


「それは、リーズレインさんを目覚めさせてほしいからです──」


 そんな言葉から始まったメルフィの答えは、精霊王やマーテルのようにリーズレインを思いやって……というのとはまた違ったものだった。もっと現実的であり、かつ彼女の苦労が窺えるものでもあった。

 メルフィが言うに、祭の境界の状態は、かなりギリギリらしい。

 ただそれは、空間が崩壊しそうだとかいった世界がヤバイ的な意味ではない。ギリギリなのは、アーカイブの方であった。

 地上では人の数も増え、それにともない死者も増加。記録する量も一気に増大した事で、最近はアーカイブが溢れ気味になっているという。更には、それらが散らばって整理すらもままならないのが今の状況だそうだ。


「これを解決する方法は、ただ一つ。この祭の境界をもっと広げて貰えばいいのです! でもそれが出来るのは、ここの創設者であるリーズレインさんお一人。なのにリーズレインさんは、まったく起きてくれません。しかも今では、どこにいるのかさえわからないくらいです。そんな時に貴女が──リーズレインさんの力を使うミラさんがやってきたというわけですよ! これはきっと運命だと感じました! お願いしますミラさん。リーズレインさんを見つけて起こしてください!」


 深刻そうに語ったメルフィは、とびきり期待を込めた眼差しをミラに向けていた。

 アーカイブ拡張のため。それが朝から色々とあって、この祭の境界に連れてこられた理由というわけだ。


「まあ、そのつもりじゃったから構わぬぞ」


 彼女の理由だなんだについては大変そうだなくらいの感想だが、目的については一致している。そもそもリーズレインを目覚めさせるために、あの神殿跡を訪れたのだ。断る理由などない。


「なんて力強いお言葉! ありがとうございます!」


 迷いなく承諾したミラを拝むくらいの勢いで礼を述べるメルフィは、「お手伝い出来る事があれば、何でも仰ってください!」と希望に縋るような目で続けた。


「ふむ、それではちょいと聞きたいのじゃがな──」


 リーズレインを目覚めさせる方法については、まったくわからない。だが、きっかけになりそうな存在、アナスタシアについて調べれば何かしらのヒントが掴めるかもしれない。

 アナスタシアは、まだここにきていないのか。また、幽霊として地上に残っている場合はどうか。アーカイブの管理者であるメルフィは、幽霊の記憶を読み取ったりは出来るのか。

 ミラは、可能性のありそうな要素を片っ端から挙げていった。





「まさかまさか、リーズレインさんに、そのような過去があったなんて……! 悲しいですねぇ、悲しいですよぉ」


 リーズレインを目覚めさせるための方法。それを模索するための前段階として、様々な情報のすり合わせも一緒に行ったところ、メルフィは顔をくしゃくしゃにして涙を流していた。

 そっと精霊王が教えてくれた話によると、彼女はリーズレインが眠りについてから三神の指示によって送り込まれた管理人だそうだ。その業務内容はアーカイブの構築と維持管理、そして魂の選別。ゆえに、そもそもここがどういう理由で創られた場所なのかなど、事の発端あたりについては何も知らされていなかったわけである。


「というわけでじゃな。あの場所には、そのアナスタシアの幽霊が出ると聞き調べに来ていたわけじゃよ。もしかしたらその接触が目覚めのきっかけになるかもしれぬし、またはそれに繋がる何かを知っておるかもしれぬとな」


 過去のストーリーを語り終えたミラは、最後にそう続けて話を締めくくる。悲恋の物語を紡いだからこそ、アナスタシアという存在はリーズレインが目覚めるカギになるかもしれない。そして、そんなアナスタシアの幽霊が、あの神殿跡に現れるという情報を得たのだと。


「幽霊……といいますと、強く膨れ上がった感情によって魂と記憶が地上に結び付いて離れなくなってしまう、あのこびりつき現象の事ですね!」


 このような場所にいるからか、幽霊という存在に対する認識が少し違うようだ。少しだけ首を傾げたメルフィは、それを現象だと認識しているらしい。

 存在ではなく現象。暮らす場所によっては、こういうところも変わってくるものなのか。と、ミラが感覚の違いに驚きと興味を抱いていたところだ──。


「では、その方がカギとなるのなら、早くここに連れてきちゃいましょう!」


 それはもうやる気満々な様子で、メルフィが準備を始めた。


「まずはアナスタシアさんがどこにあるか特定しまして、それから──」


 希望が見えてきたというくらいに弾んだ声で、この先の流れを確認するメルフィ。

 もう慣れたものだといった態度と手つきである。


「のぅ、メルフィさんや。そんなパッと行って済ませようみたいな気軽さで、幽霊を成仏させたり出来るものなのじゃろうか?」


 もしや、ゴーストネゴシエーター的な能力もあるのか。それとも、幽霊の未練だなんだを読み取ったり出来るのだろうか。だとしたら、これは心強い。

 と、ミラがメルフィに多大な期待を抱いたところ──。


「はい、それはもうこれでスパっと切り離してしまえばいいだけですから!」


 そんな言葉を口にしたメルフィは、どこぞから身の丈以上に大きな鎌を持ってきた。

 いわく、これまでにも時折いたそうだ。貴重な歴史的情報を抱えたまま、ずっと成仏せずに幽霊となり地上を彷徨っているものが。

 メルフィは、そんな幽霊を地上から切り離して、直接ここに連れてくるというような業務も行っているとの事だ。


(それって、死神ではないのか!?)


 彷徨う死者を、あの世へ送る。一見すると小さくて可愛らしい少女でありながら、やっている事は死神のそれである。

 まさかの真実に戦慄するミラ。


「では、行きましょうか!」


 準備完了と息巻くメルフィ。大きな鎌にフード付きの黒いコート。その下には、特注だろう武具の数々。完全に魂の狩人だ。


「随分とがっつり武装しておるのじゃな……」


「はい、死後にまで残る未練というのは強力ですからね。皆さん凄く抵抗してくるので、これくらいでないと仕事にならないんですよ」


 実に大変なのだと主張するメルフィは、それでいて大きな鎌を掲げながら、今回は特にハードな大仕事になりそうな予感がするとヤル気満々で答える。

 ちなみにそれとなく聞いてみたところ、彼女が持つ大鎌は、感情そのものを切除してしまう道具だそうだ。

 魂を地上に縛り幽霊にしてしまうのは未練が原因。その未練は感情から発生するものであるため、その根本を取り除いてしまえば問題解決というわけである。


(……何というか、割とえげつないのぅ)


 そこには成仏させるために未練を晴らしてあげるというような慈悲など微塵もなかった。それどころかメルフィの言葉には作業感がところどころに含まれている。これもまた立場の違いというものなのだろう。

 ともあれ効率最優先の強制成仏なんて目に遭うとなれば、幽霊が必死に抵抗するのも納得だ。

 ミラは、当然といった顔で話すメルフィを見やりつつ、なんとなく幽霊船で出会った幽霊達を思い出して苦笑する。そして彼らが彼女に目を付けられなくてよかったと、安堵すら覚えた。


「いや、あれじゃ。他にも何かしら方法はあるじゃろう?」


 そんな容赦のない方法ではなく、もっと穏やかに成仏させる事も出来るはずだと提案するミラ。未練が原因とわかっているのなら、それを晴らしてやれば喜んでここに来てくれるだろうと。


「でも、こっちの方が早くないですか?」


 幽霊が地上に留まる未練の原因を調べて、それを解決する。最も穏便な方法ではあるが、メルフィは首を傾げる。そこに至るまでにどれだけの時間がかかるかわからない以上、鎌ですぱっとやる方がずっと早くて確実だというのが彼女の意見だ。


「まあ、早さだけならば、うむ……」


 メルフィは、徹底した効率重視タイプのようだ。実際のところアナスタシアの幽霊の未練については、まだ何も情報がない。ならば一から調べるよりも、メルフィの言う通り大鎌でスパっとやる方が圧倒的に早いだろう。


『こればかりは、そのような考えに至るのも仕方がないであろうな』


 メルフィの言葉を受けて、そんな感想を述べたのは精霊王だ。

 言うなれば、彼女は祭の境界であらゆる仕事を一手に引き受けている状態だ。ならば効率重視になるのも無理はなく、むしろそのくらいの気概でなければ務まり切らないというわけだ。

 しかも今回のアナスタシアの件については、その大切な仕事に発生している支障を解決出来るかもしれない要素だ。迅速に完了させたいと思うのも当然だろう。

 これに対してはマーテルもまたメルフィの苦労を知っているとあってか、そのような考え方になるのも無理はないといった様子だ。


「しかしほれ、今回は繊細な問題じゃからな。もっと穏便にいくのも手じゃぞ」


 少しでも気が変わらないかと、ヤル気満々なメルフィに説得を試みるミラ。


「ですが未練の原因なんてわかりませんし、調べるにしても相当な時間がかかりそうですよ。だからこっちの方が確実です!」


 素早く確実に回収出来る方法が手元にある。ならば他には必要ないといった態度のメルフィ。

 実際のところ、未練を解消して成仏に導くなんて事が上手くいく保証はどこにもない。前回のそれは、巡り巡ってたまたま理想的な結果になっただけといっても過言ではないのだ。

 今からアナスタシアの未練を特定して、これを晴らし成仏させるなど、それこそ夢物語の域である。

 とはいえ、それでもどうにかしたいと思うミラは続けて説得を試みる。


「じゃがな、先ほど話した物語は悲しい結末じゃったろう?」


 ここで再びリーズレインとアナスタシアの悲恋について話題に挙げて、そんな結末だったからこそ未練くらいは晴らしてあげたいとは思わないかと心に訴える。

 これに対してメルフィは、「とても悲しいお話でした」と同意を示した。ずっと眠っているだけのリーズレインに、そのような過去があっただなんてと、しんみりした様子だ。

 だが、これはいけるかもしれないと手応えを感じた直後「──でも、それはもう終わった事ですからね」と、メルフィは無慈悲に告げる。

 どれほどの物語を紡ごうとも死んだらそれまで。物語はそこで完結。後はアーカイブに加わるだけの情報でしかないというのが彼女の認識のようだった。

 実に、すっきりでさっぱりとした考え方である。ともあれ死神のような仕事もこなしていると、そういった考えに至るのかもしれない。


(むぅ……手強い)


 アナスタシアの円満成仏ルートに行くには、どうすればいいのか。頑ななメルフィを相手に悪戦苦闘するミラ。

 と、そんな時に救いの光が差し込んだ。


『少し、我らが話してみよう』


『アナちゃんのためにも、ね!』


 精霊王とマーテルがメルフィの説得に名乗りを挙げたのだ。

 かのヴェイグやハルミレイアが成仏する場面を見送った事のある両名だ。だからこそアナスタシアにも、穏やかに成仏してほしいと思ったようである。


「メルフィ殿や。暫し、手に触れさせてもらってもよいじゃろうか。少々、話したいという者がおってな」


 そんな言葉と共に右手を差し出したミラ。するとメルフィは「話したいとは、どなたでしょうか?」と答えつつ、差し出された右手を見つめ首を傾げる。

 その反応も当然だ。ミラと精霊王について何も知らぬ者からしたら、言葉と動きがまったくのちぐはぐなのだから。

 ただ、それでいてメルフィは理解が早いというか素直であった。疑問を浮かべつつも、これといった警戒もせずミラの右手を握り返した。


『メルフィ殿、久しぶりであるな』


『メルちゃん、お久しぶり』


 手が繋がった事で、精霊ネットワークもまた繋がる。と同時に、待ってましたといった勢いで精霊王とマーテルが声をかける。


「わわわっ!?」


 ミラと手を繋いだら、突然誰かの声が頭の中に直接響く。これまでの大半がそうであったように、突然のこの状況にはメルフィも驚いたようだ。

 だが直後には、状況を呑み込めたらしい。しかも「その声とこの気配……もしかして精霊王様とマーテル様ですか!?」と、声の主まで的中させた。


『その通り。こうして言葉を交わすのは、いつぶりになるのか』


『私達は、五百年ぶりくらいになるかしら。なんだかあっという間ね』


 手を繋いだら精霊王とマーテルの声が聞こえる。特に両者を知る者ほど、その驚きは大きくなるようだ。これはいったいどうなっているのかと慌てて周囲を見回すメルフィの様子を前に精霊王達は嬉しそうだ。


「えっと、あの、精霊王様は精霊宮殿に、マーテル様は今もあの場所にいらっしゃるのですよね。それがなぜ、このように一緒にお声が」


 まったく別々の場所にいながら、なぜこうして一緒に会話が出来ているのか。メルフィは戸惑った末に、そのまま疑問を口にした。


『それは、ミラ殿のお陰でね──』


 と、そんなメルフィに対して、隠さなければいけない秘密などないようだ。その疑問を受けて精霊王は、全てを一から説明していった。

 召喚契約と精霊ネットワークによって、今ではマーテルも含め何名もの精霊達と交流出来るようになっているのだと。


「精霊王様の繋ぐ力と召喚術が結びつき、こんな素晴らしいものが構築されるとは! 流石は精霊王様です!」


 更には契約主のミラに触れる事で、誰でも一時的に精霊ネットワークに加わる事が出来る。メルフィは繋いだ手を見つめながら、これにはそういう意味がと感動を示し精霊王の凄さを絶賛する。


『我の手にかかれば、造作もない事だ』


 そう言って笑う精霊王は、とても嬉しそうだった。


『という事でね、これまでのやり取りもある程度聞いていたのだけど、そこでちょっとメルちゃんにお願いがあるの──』


 上機嫌になるだけの精霊王を端に置いてから、マーテルが本題を切り出した。

 何よりも愛を信じ、愛を喜びとするマーテルである。ゆえにリーズレインとアナスタシアの恋路が、このまま悲恋で終わるなんて事は見過ごせないのだろう。迸る気迫と共に、メルフィの説得が始まった。











納豆って、なんかもう色々な種類がありますよね。

付属のタレが違うというのが一番の味の違いにも感じられますが、実際にはどのくらい違うのでしょうね……。



とりあえず、いつものスーパーで売っている納豆を色々と食べ比べています!




……なんとなく、違う!!!


中でも、おかめ納豆のすごい納豆というのが、なんだか美味しい!!

そしてお値段も普通の納豆の倍くらい高いという高級納豆です!



やはり高いものは違うというのか……。


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― 新着の感想 ―
メルフィー… 役職(アーカイブの管理)的には、閻魔大王の元の神格であるヤミ•ヤーマ(印度神話の双子の姉弟神)だよねぇ。 それにハーベストサイズを持たせて、死霊狩りをさせるのですか? ある意味、死霊術師…
[一言] ○キンの納豆だけはやめなさい!! 一見すると九州産大豆で、九州で作っているかの様な表示をしてますが、その実、何処かの国の大豆で作った悪意ある商品でした。講義の電話も受け付けてくれませんでした…
[良い点] メルフィがすごい! 切り替えの速さは有能な証 感情論で仕事終わらないものね さて、精霊王達の言葉は届くのか! ミラはロマンチストなとこあるよねー いろんなキャラの様々な思いや考えがあるのが…
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