536 羞恥の事実
いよいよ書籍版19巻発売直前!
30日に出ます! よろしくお願いします!
五百三十六
『……ふむ、これで十個目じゃな! ようやっと全貌が見えてきたわい』
満天どころではない星空を観察し続ける事、二時間と少し。ミラ達は、この母なる星が見出したであろう星座の星を特定する事に成功した。
ここまでくるには、中々の苦労があったものだ。
まず、ミラ達だけで見つけるのは難しいと判断し、居残り組達の協力を仰いだ。あの精霊っぽい星が他にもあるようだと教えたら、むしろ率先して探し始めてくれた次第だ。
中でも特に活躍したのが、アラトと同じ部署の者達だった。
中継基地のメンテナンス要員になってくれたら、ある程度の機材配置を許可するというアンドロメダとの約束もあって、彼らは天体観測用の設備一式を持ってきていたのだ。
そこには星図も含まれており、地上からは見えないが中継基地からならば見える一等星の発見で大いに活躍した。
その数は、二十を超えるほどだ。
ちなみにアイゼンファルドも、見事に二つの星を見つけていた。ちょくちょく天体観察をしているらしく、丁度知らない場所にひと際輝く星があったと。
そして、その先は精霊王達の出番である。それらの星を一つ一つ見つめて、一番初めに感じたという郷愁のような感覚があるかどうかを見極めていった。
結果、見事に九個の星からそれを感じとり、全ての星を特定する事が出来たというわけだ。
なお、手伝ってくれた居残り組だが、今は既に中継基地内だ。一時間ほど前に生命維持機能の復旧報告を受けると、さあ本番だと内部に乗り込んでいった。
ゆえに今、中継基地の上部にはミラとアイゼンファルドが残るのみとなっている。
『これが、我々の原点となる星か。実に感慨深いものだ』
『何だか、嬉しくなるわね。とっても愛がこもっているように感じるわ』
母なる星が願いを込めた星達だ。精霊王とマーテルにとっても、やはりそこには特別感があるのだろう。しんみりとした様子である。
『しかしまた、とんでもなくでっかい星座を描いたものじゃな。じゃが星座の中に幾つもの星座があるというのが、何ともそれらしい感じがするのぅ』
特定した十の星は、かなり広範囲に広がっていた。それこそ空の端から端まで届くほどだ。ただその大きさが、この母なる星の想いの強さにも感じられた。また何よりも、大陸全土を見守る精霊王達の存在を表すのに相応しいとも言える大きさだ。
『さあ、後はどれをどのように結ぶかだ。これはなかなか、考察のし甲斐があるぞ』
『そうね。ここからどんな星座を描いたのか。それを見つけるのも、ちょっと楽しみね』
見出した十の星。だが今はまだ、そこまで。この星をどのように繋いで星座とするのかまでは、まだ予想しか出来ない状態だ。
とはいえ、一つだけだった状態から全部の星を特定出来たのだ。最初と比べたら、目覚ましいほどの進展である。
『そうじゃな。星が願った星座──原初の星座とは、どのようなものか。これは興味深いところじゃのぅ!』
後は本当にこの星座が《アストラの十界陣》に繋がるかどうかなのだが、ミラは母なる星がどのような星座を描いたのかという部分にも大きな興味を抱いていた。
半分は召喚術のため。もう半分は、星の願いという不可思議なそれを垣間見るため。
「アイゼンファルドや、お主も一緒に考えてくれるか?」
頭数は多い方がいい。加えてアイゼンファルドならば、また別方面の視点から見られるかもしれない。
ミラは甘えさせるままにしていたアイゼンファルドに声を掛けると、十の星を記した紙を見せながら、そこに星座を描いていった。
原初の星座について色々と考察し始めた頃より数時間後。
中継基地の全機能復旧については、そこまで苦労せずに完了した。大きな故障やシステム異常といったものはなく、幾らか調整して初期化するだけで中枢システムは正常に稼働を始めたのだ。
ただ、ここの設備を十全に活用するには、かなりのメンテナンスが必要であった。
中継基地には、とんでもなく高度な状態維持の魔法が随所に施されている。更には見た事もない金属が使われているとあってか、悠久の時を超えて存在するという話ながら経年劣化は、ほとんど見られない。
だがごく一部、生活用スペース周りについては例外だった。その場所は、ある程度気合を入れて改装しなければいけない状態にあったのだ。
なお、なぜここだけがそのような状態になっているのかという原因の究明には、そう時間はかからなかった。
問題は水回りだ。いったい、どうしたらこんな場所にまで入り込めるというのか。そこには真っ赤な苔が大繁殖していた。
そして、何がどうしてそのような特性を得たのか不明だが、この苔は状態維持の魔法に干渉する事が出来た。この特性を使い、魔法を少しずつエネルギーに代えながら繁殖していった。それが、マーテルの分析で判明した原因だ。
『いやはや、植物の進化と生命力には目を見張るものがあるのぅ』
『私よりも先に宇宙に来ているなんて、なんて優秀な子達なのかしら』
当然ながら、苔をそのままにしておくわけにはいかない。機能を復旧させた事で閉じていた色々な部分が開いたため、放置していたらそこから中継基地全体にまで広がるかもしれない。
というわけで、この逞しい苔を全て取り除く事になったわけだが、その役目はミラに振り分けられる事となった。
どうやら、このチームに幽霊船調査船チームと仲の良い者がいたようだ。以前、マーテルの力で植物を色々していた事が伝わっており、ならば苔もという流れだ。
考察については、一度中断。また帰りも頼むと労ってからアイゼンファルドを送還した後、ミラはマーテルの力を借りながら、その苔を片っ端から引きはがして袋に詰めていた。
『しかし、魔法を喰う苔とは、興味深いものじゃな』
『本当にびっくりね。ここまで複雑な進化工程になると、私も完全に再現するのは難しいもの』
草木どころか、あらゆる生命の活動を拒絶するような環境で育った赤い苔。そこに至るまでには、相当な進化の歴史があったようだ。そして、そこまでの過程を経て勝ち取った能力は、マーテルの力を以てしても真似出来ないほどだという。
つまりこの赤い苔は、母を超えた存在というわけだ。
とはいえ、それはそれ。このままにしておけば中継基地が使えないため、その全ては取り除かれる運命にあった。
『マーテル殿も驚くほどとは、ますます実験するのが楽しみじゃのぅ!』
その逞しさも際立つところだが、ミラはこれまでに覚えのない『魔法を喰う』という特性に心を惹かれていた。
この中継基地に施された魔法は、それこそ神代の魔法。今とは比べ物にならぬほどに強固な代物だ。ミラどころか九賢者の力を結集しても、これを解除出来るかどうかというほどである。
だが、この赤い苔は、そんな魔法を喰い破った。この特性は、もしかしたらとんでもないアンチマジックの可能性を秘めているのではないか。
そう思ったゆえに、ミラは取り除いた苔を全て厳重に袋に保管しアイテムボックスに収納していった。後でじっくりと、その特性を研究するために。
なお日之本委員会の面々も、その特性を聞き多大な興味を寄せていたが、ミラが持ち帰って研究すると言ったところで諦めた。なんといっても術や魔法に関しては、日之本委員会といえど銀の連塔には及ばないとわかっているからだ。
特に今の銀の連塔には、次々と帰還した九賢者が揃っている。ミラがそこに持ち帰るといったなら、これを邪魔出来るものなどここにはいなかった。
赤い苔の対応を終えて作業をアラト達に引き継いだミラは、中継基地の下部デッキにやってきていた。
数人の技術者達が復旧作業に勤しむそこは、吊り下げるような形で通路が張り巡らされている。この中継基地の存在理由ともいえる、送受信装置のメンテナンス通路だ。
そこからちょっと下をのぞき込めば、遠く離れた大地のみならず、普段は見下ろす事のない雲までも見えた。
「これは確かに、色々と捗りそうじゃな」
ここにいる技術者達が頑張る原動力の一つとして、この中継基地を実験場にしてもいいというアンドロメダとの約束がある。
この場所から見える景色を前にしたミラは、なるほど面白い事が出来そうな環境だと実感する。
「さて、そろそろ頃合いじゃな……」
技術者達が作業を進める中、こっそりと動き始めたミラ。ここでやるべき事が残っているからだ。
それは、復旧作業に関係するようなものではない。ただ、ちょっとした術具をそっと取り付けるだけの事。
そう、以前フローネに中継基地について話した際、是非とも仕掛けてきてほしいと頼まれていたアレだ。
「ふーむ、アルカイトは……よし、あっちの方角じゃな」
中継基地の重要な部分に干渉しないよう注意しながら向きを調整して仕掛け終えたミラは、「本番が楽しみじゃのぅ!」などと呟きながら何食わぬ顔で下部デッキを後にした。
「よし、これで一先ずは、生活圏の確保完了だ。念のためにと持ってきた隔壁一式が役に立つとは」
中継基地内にある居住スペース。赤い苔を片付け終えたそこで宇宙服のヘルメットを脱いだアラトは、一仕事終えたと安堵した様子で笑った。
赤い苔の浸食によって荒らされていた居住スペースだが、アラトの機転と周到な用意によって使えるようになった。
生命維持に必要な装置などが無事だったのが幸いだ。後は壁の損傷などを修復し、気密性を取り戻すだけというところで、アラトが取り出したのが簡単に組み立てられる隔壁。
これを各所の補修に使う事で居住スペースの気密性が回復。暫くの後に、人間が生存可能な環境が整ったと確認出来たところでアラトが率先しヘルメットを脱いだ次第である。
「ふぅ、これが上空十万メートルの空気か。……なんか、季節を跨いでから稼働したエアコンみたいな臭いがするな」
「実際、そんな感じの設備なんだから、まあそうでしょうね」
アラトに続くように次々とヘルメットを脱いでは大きく息を吸い込み、複雑な表情をみせる技術者達。
高い山の空気は澄んでいると聞くが、幾ら高くてもここは中継基地の中である。外に空気などほとんどないのだから、皆が吸い込むのは装置が作り出した空気。比べるべくもない。
「ふむ……ようやっと落ち着けそうじゃな」
同じくヘルメットを脱いだミラは、ようやくこの窮屈な格好から解放されると一息つく。
様々な機能が搭載された宇宙服。それでいて、かなりの快適性も併せ持った素晴らしい完成度ではあるが、それはそれ。余計なものを何も着ない状態に比べれば、窮屈である事に変わりはない。
「それじゃあ着替える人は着替えようか。一班と二班以外は着替えちゃってもいいかな」
ヘルメットを脇に抱えながら、そう確認するのはミケだ。技術者チームの一班と二班は、まだこれから外部作業が残っているという。そして残りの者達はというと、この居住スペースの掃除や改装が担当だ。
よって居住スペースで作業を行う者達は、男女に分かれて二つの部屋に向かう。臨時の更衣室として分けた部屋だ。
「……」
ミラはというと、そのどちらでもない。ただの送迎要員であるため、残る役割は中継基地の作業が終わった後に皆を研究所に連れ帰るだけだ。
復旧作業については、今日いっぱいを予定している。明日の午前に設備の稼働チェックと最終点検が行われ、午後からは技術者連中お待ちかねの実験機材展開タイムとなる。
よってミラ達が帰るのは、早くても二日後になるだろう。
ミラにとっては先ほどのような何かがなければ、もう出番もない。そのためここで着替えてしまえばいいのだが、臨時の更衣室を前にその一歩を踏み出せないでいた。
「そんなところに突っ立ってないで、君も早く着替えたらどうだい?」
ここに来ている女性陣は、全員がミラの正体云々について承知済みだ。そして更衣室なども含み女性用に分けられたそれらをミラが利用する事も認められていた。むしろ、そんな可愛らしい姿で男共の領域に入るのは危険だと、率先して迎え入れてくれたほどである。
ゆえに躊躇う必要などなく、それでいて何を躊躇っているのかと疑問を抱くミケ。
ただ、それから数秒して「ああ、そういえばアレだったね」と、出発前のエピソードを思い出したようだ。直ぐに気づけなかったのは、彼女にとってそれがあまりにもくだらな過ぎたからだろう。
そう、今のミラの下着はウサギプリント。そして宇宙服は、下着の上に着ている状態だ。
このまま女性陣の中に入っていき着替えたとしたら、そこにいる全員にそんな下着を愛用している変態だと軽蔑した目で見られる事になる。と、ミラは恐れていたのだ。
「あ、あー、そうだ。それならもう大丈夫だと思うよ」
不安を募らせていくミラに対し、ミケは自信たっぷりに告げた。その件については、もう心配したり誰かの目を気にしたりなんてしなくてもいいと。
「なんじゃ、と? それはいったいどういう意味じゃ?」
なぜ大丈夫などと言えるのか。自分ですら躊躇いのあるそれを、周りが気にしないなどあり得るのか。皆に、特に女性陣に変態の如き扱いを受けないと本当に言えるのか。たとえば同じような境遇の者──レヴィアード改めレヴィが、子供用の下着で喜んでいる姿を見たらドン引き出来る確信すらある状況だ。
しかも大丈夫と言ったのは、そもそもがこういう事にあまり興味のなさそうなミケである。
その大丈夫は、本当に信じられる大丈夫なのだろうか。次から次に湧き出してくる不安に沈んでいくミラ。
と、それでもうじうじ悩み続けるミラを見兼ねてか、次にミケの口からよもやな爆弾が投下された。「その事は、もうだいたい皆知っているから」と。
「……──ぬ?」
急に飛び出してきたミケの言葉。その意味を理解──というより呑み込み切れずに、ただ聞き返したミラ。
「だから、もうほとんどの皆が知っているんだよ。復旧作業中に話してたんだ。風水とか占いって、どう思うってね。で、その際に君がそれを実践しているから、何か影響があるか計測してみようなんて話になって、実践って具体的にどういったって話の流れでウサギプリントの下着だよって教えたわけさ」
ミケは、事も無げにそう言った。ミラが隠しておきたかった秘密を、あっけなくほぼ全員に暴露していたのだ。
ウサギプリントの下着。ミラにとっては極めて機密性の高い内緒だったのだが、ミケにとっては下着事情なぞ、たかがその程度の認識だったために起きた悲劇だ。
「なんという事を……」
もう周知の事実になっていた。まさかの事態に愕然とするミラ。だがそんなミラの心など察する様子も察するつもりもないミケは、「ほら、突っ立ってても邪魔だから着替えるよ」と、ミラの腕をとって更衣室の中に連れて行った。
そこから先の出来事は、いつもと逆な状態だ。
女性用の更衣室をはじめとして、ミラは色々な場所でそれはもう色々と満喫していたものだ。
けれど、ここでは違う。
「うわ、本当だ」
「へぇ、可愛いじゃん」
「うんうん、似合ってるよ」
この宇宙服は慣れないと一人で脱ぐのは大変な代物だった。そのためミラは、ミケが脱ぐのを手伝わされた後に抵抗する間もなくミケに脱がされた。
そして下着姿を晒したところで、周りの女性陣の目がミラの全身に注がれ今に至る。話にあった風水の一環となるそれは、どういったものかと興味深げに。それでいて、ミラの正体を知っているからこそか。彼女達は、これまでのイメージとはかけ離れながらも異様に似合っているミラの下着姿を見据えて、にんまりとした笑みを湛えている。
「ぐぬぬ……」
これが好奇の視線に晒される側の感情というものか。似ているようでまったく違う悔しさを味わいながらも、ミラは下着を隠すため急いで部屋着用のワンピースに着替える。
着心地の良い、ゆったり丈のワンピース。ただ、その部屋着もマリアナが用意してくれたものとあってか、当然のようにウサギマークがそっとあしらわれていた。
それを前にして、女性陣の目は一層楽しそうに輝き始める。
「いやはや、徹底しているんだね。これで、どのくらいの効果があるのか。興味深い。ああ、なんならいっそ、うさ耳でも付けてみたらもっと効果があるんじゃないかい?」
科学のみならず、魔法でも解き明かせない謎。幽霊船の時といい、ミケの目に浮かぶのは好奇心のみで他意はない。
ただ、他の女性陣は違っていた。うさ耳があれば、きっともっと可愛くなると盛り上がり始める。
まるで、リリィ達のようだ。そんな印象を抱きつつ逃げ出すように更衣室を飛び出したミラは、元プレイヤー達が相手では、今の姿を活かすどころか逆に獲物にされてしまう事になると学んだのだった。
洗剤って色々ありますよね。
用途だったりなんだったりで、それはもう色々な洗剤が。
ただ中には、どこがどう違うのだろうか……なんて思ったりする事もあるわけでして。
しかしそれもちょっと前までの事!!!!
最近、しびれる出来事がありました。
それというのも、まあやっぱり何だかんだで、あれなんですよね。
掃除って定期的にやろうと思っていても、ちょくちょくサボりがちになってきたりしちゃいますよね?
自分もまあそんな感じでして……
トイレがなかなかな状態になってきて、そろそろ掃除しないとなんて思ったりしておりましてね……。
掃除用のあれこれを用意したところで、なんとなくまあ今回は道具用意したから開始はまた今度に……などと先延ばしにする事数度。だらだらと……。
そんな時、ちょっと出かける用事が出来たので、とりあえずと買っておいた洗剤だけぶちこんでおいたわけです。
なんか、ぶっかけて放置するだけで擦らず綺麗とかいう感じの洗剤を。
まあいうて程度もあるだろうから、その後の掃除が少しは楽になったらいいな程度の気持ちだったのですが……
帰ってきてトイレを見たら
ピッカピカやないか!!!!!!!!!
と、それはもう度肝抜かれましたね!
謳い文句に偽りなし!!
専用の洗剤という実力を思いっ切り見せつけられました。
実は以前、まあ似たようなものだろうと似たようなキッチン洗剤を使ったのですが、まあ多少落ちたかなくらいだったので余計にびっくりでした!
という事で、洗剤はしっかり用途にあったものを使った方がいいですよ。という当たり前の話。
ちなみに使ったトイレ用洗剤は、
スクラビングバブル超強力トイレクリーナーです!
こいつは本物だぜ!!!




