519 英雄の家
五百十九
測定を開始したミラは、あちらこちらの数値を調べながら聖域内を巡っていた。
また、案内役としてウムガルナが引き続き同行している。なお団員一号は、途中で見つけたキウイのようなフルーツに噛り付いて以降、完全な役立たずになっていた。ウムガルナの頭の上で、ごろにゃん中だ。
「ふむふむ、流石は丹精込めて復興した聖域じゃ。良い感じじゃのぅ」
測定を開始したミラは、十分な数値が表示されたタブレット画面を見つつ微笑む。かつて手掛けた聖域がとても素晴らしい場所だと数値化されたから──というのもあるが、それと同時に聖域化に必要な数値というのも把握出来たからだ。
「そして、こっちもばっちりじゃな」
加えて、安全装置の設置に適した場所であるという事も判明したため、北側はこれで完了だ。
最も交渉しやすい自前の聖域で解決出来てよかったと安堵するミラ。
「次は東側──」
これは幸先の良いスタートだ。と、一段落して次の行先について思い浮かべたところだった──。
不意に周囲の気配がざわついたかと思えば、遠くから獣達のけたたましい鳴き声が響いてきたではないか。
「何事じゃ……!?」
いったいどうしたのかと驚き振り向くミラ。
それと同時だ。ミラに断りを入れるように一礼したウムガルナが、そちらに向けて一気に駆け抜けていった。
ただ事ではなさそうだ。ミラは、ポーンと投げ出されたように宙を舞う団員一号をキャッチしつつ、ウムガルナの後に続いた。
「なるほどのぅ、そういう事じゃったか……」
ウムガルナと共に現場へと到着したミラは、そこに広がる光景を前にして納得した。
獣達の鳴き声が響いてきたその場所は、聖域と周囲の森を分け隔てる丁度境目。その境界線を挟んで向こう側に、なんと魔物の群れの姿が確認出来たのだ。
ブラックライザー。黒い角を持つオオトカゲのような魔物であり、その強さはBランクにも相当するかなりの強敵だ。
とはいえ、聖域側には霊獣とウムガルナがいる。戦力としては、十分といえるだろう。けれど一部の、大きな戦闘力を持たない獣達にとっては脅威である。睨まれただけで竦んでしまうのも仕方がない。
そして当然だが、聖域を狙う魔物をそのままにはしておけぬというもの。よって、いざ安全のためにとウムガルナ達が殲滅に動こうとした時だ。
「ちょいと、わしにやらせてもらえぬか」
そんな言葉と共に前に出たミラ。
なぜなら、ブラックライザーの角は精錬石の素材として優秀だからだ。けれどウムガルナ達が容赦なく暴れた場合、その角は悉く砕け散ってしまう事だろう。
だからこそ、綺麗に倒して綺麗に回収しようというのがミラの魂胆だ。
なお翻訳の団員一号は、まだ役に立たない状態であるため、そういった細かい内容を伝える事が出来ない。ただミラの動きと態度で、『ここは任せろ』というような意図は十分に伝わったようだ。
ウムガルナは、これに素直に従い身を引いた。
ただ一部の霊獣と獣達は、そんなウムガルナの判断を前にして困惑気味だ。『どうしたんだ』『皆で戦えば、もっと安全に倒せるだろう』とでもいうような反応である。
どうするつもりなのか。大丈夫なのか。中でも特に獣達がはらはらした様子で見守る中、その戦いは……始まると共に一方的な結果で終わった。
「いやはや、麻痺が通りやすいと楽でよいのぅ」
全ては、聖域の境界で睨み合うなどという状態になっていた時点で決まっていたのだ。
ミラの魔眼による仙瞳術《痺命之魔視》は、その視界に捉え続ける事で麻痺を蓄積していくという効果がある。つまり、ウムガルナ達を警戒していたブラックライザーは、こっそり仕掛けていたミラに気づかなかったわけだ。
しかもブラックライザーは、麻痺への耐性が低い。ゆえに、これが一番楽な倒し方でもあった。
ミラは武装召喚と聖剣サンクティアを使い、麻痺で動けなくなったブラックライザーを一体ずつ丁寧に介錯していった。
こうしてミラは派手な戦闘行為を行わず、完璧な状態で素材の収集に成功する。実に冒険者らしいスマートなやり方──というよりは、プレイヤーらしい効率的なやり方というべきだろうか。
「後は死骸の処理じゃが……任せてしまってもよいか?」
とはいえ、素材の入手方法は以前と大きく異なっている。それこそ専門の知識がなければ、上手く分けられないのだ。
よってミラは、聖剣で切り落とすだけで済む角以外については諦めていた。
頷き答えたウムガルナが、ブラックライザーの死骸を全て丸のみにしていく。実に豪快な処理の仕方だが、焼いたりなんだりするよりも安全で確実な方法だ。
それを完了まで見守ったミラは、「さて、次に行くとしようか」と呟きガルーダワゴンに乗り込んだ。
そしてウムガルナ達に「では、またな」と告げてから、空高くに飛び立っていったのだった。
──遠くなるガルーダワゴンを名残惜しそうに見つめるウムガルナ。
その傍に集まった聖域の霊獣と獣達だが、どうやら色々と理解したようだ。ウムガルナに倣い、深く畏敬を宿した目でキリリとミラの出立を見送っていた。
ガルーダワゴンで空を行く事、また一日。次にミラが訪れた場所はアース大陸の東。アリスファリウス聖国の国境近くにある聖域だった。
そして、ここもまたミラが復興させた場所であるため、出入りするのに許可は必要ない。
また何よりも、ここの統治者はペガサスだった。ミラを乗せたガルーダワゴンが聖域の傍に来た時点で、それこそ言葉通りに飛んできたペガサス。
ミラはそのまま乗り換えて聖域に降り立ったという次第である。なおガルーダとワゴンは、聖域内にある湖の畔に下りて待機中だ。もう長距離移動はガルーダの領分とあってか、何から何まで余裕に満ちている。
「──というわけなのじゃが、測定してもよいかのぅ?」
「──と、仰っていますにゃ!」
今回もまた団員一号の翻訳を通して、集まった霊獣や獣達に状況を説明するミラ。それに対するペガサスの答えは『幾らでもどうぞ』であった。しかも、即答ときたものだ。
だが今回は、それだけに留まらない。
「団長の好きなようにして良いと言っておりますにゃ!」
霊獣や獣達もまた、満場一致でペガサスに続いたのである。ミラに対する圧倒的な信頼が、そこには既に満ち満ちていた。
なおそれは、日々ペガサスがこの聖域の真のボスについて、また彼が契約を結んでいる人物について、どれほど素晴らしい存在なのかを普段から語り聞かせていたためであった。
とはいえそれはミラの与り知らぬ話であり、だからこそ、信頼されている感を覚えてご満悦だ。
「おお、そうかそうか。皆、感謝する」
ミラが礼を口にするだけでも喜ぶペガサス達。そのため、この聖域での測定は何の問題もなく始める事が出来た。
ミラが来た事が珍しいからか、少しでも長く一緒にいたいためか、測定中も傍を離れないペガサス。霊獣や獣達もまた、同じように付いて回る。
ともあれ、皆は興味深げにミラの行動を観察しているだけであり、何か妨害されたり邪魔になったりといった事はなかった。何となく律儀に付いてくるのが、どこか可愛らしいと感じる程度のものだ。
よって、作業は恙なく完了した。
「ふむ、ここもばっちりじゃな」
結果は、安全装置の設置に適しているというものだった。この大陸東側においては、現存している聖域で大陸一とされる『虹の咲くオーレガリア』も存在している。だが、どうやらそこまで行かずに済んだようだ。
(……ちょいと行ってみたかったのぅ)
ただ、もう行く必要はないのだが、やはり有名な聖域とあって気にはなっていた。
何といっても、現大陸最大の聖域である。アリスファリウス聖国によって管理されているためおいそれと立ち入れないが、それだけの聖域となれば、かなりの聖獣や霊獣が存在しているだろう。
是非とも会ってみたい。あわよくば召喚契約までこぎつけたいなどと妄想するミラ。
とはいえ、そのような理由で許可など出るはずもない。しかし今は、世界を危機から救うためという大義名分がある。
世界のためとなったら、立ち入りも許可してもらえるのではないか。
そんな事を思い付いたミラは、そこに広がっているであろう新召喚の可能性に夢を広げていく。
だがしかし、それらを説明するに際して、アンドロメダの存在や、世界の秘密みたいな部分にも多く触れてしまう事になる。
はたして、そのような情報を独断でアリスファリウスのお偉いさん方に話してしまってもいいのだろうか。
「……流石に、じゃな」
無論、いいはずがない。冷静さを取り戻したミラは今回の測定結果を送信すると、そのまま振り返りペガサス達を見やった。
そして、思う。いっその事、ここの聖域の規模を更に広げてしまうのも手ではないかと。
どうにかして『虹の咲くオーレガリア』に行くのではなく、むしろこちらの聖域を更に素晴らしいものにして、向こうから聖獣がやってくるようにしてしまおうというわけだ。
そのために必要な諸々は、各地で行った測定によって見えてきている。今はもう、規模の拡大も夢物語などではないのだ。
(いっそ、向こう以上の聖域にしてしまうのも一興じゃのぅ)
そんな新たな企みを胸に抱いたミラは、不敵な微笑みを浮かべながら次の聖域に向かった。
アルカイト王国の近隣。安全装置を設置出来る可能性のある南側の聖域は、自国の傍に存在していた。
そして何よりも、そこはかつてダンブルフが初めて聖域の復興に成功した場所だった。加えて別の聖域の復興や、新規開拓に尽力するきっかけにもなった場所でもある。
ついでに付け加えると、大半の財を消費する事になる原因ともいえた。
「確か、この辺りじゃったな」
アルカイト王国の東部にある山岳地帯。ミラを乗せたガルーダワゴンは、その中ほどの小山付近に下り立った。
ワゴンから降りたミラは、「ご苦労じゃった」とガルーダを労い送還。更に続けてワゴンを収納してから、改めるようにして周囲を見回した。
その目に映るのは冬枯れた景色。だがそれでいて立ち並ぶ木々からは春に備える力強さが感じられた。
春に芽吹き、夏にもなると辺り一帯はむせ返る程の緑に覆い尽くされる事になるわけだ。
「──で、こっちの方じゃったな」
今ならば夏よりもずっとわかり易い。ミラは記憶を辿るようにして林を抜けると、そのまま山間を流れる小川にまで進んでいく。
それから小川に面する岩場に隠された小道を通り、森の奥へと入り込んだ。
冬の気配に覆われた森は冷たく、枯葉が敷き詰められた地面は柔らかい。周囲は虫の音一つなく静まり返っており、ただざくざくとミラの足音だけが響いた。そして時折、遠くから鳥の声が降ってくる。
自然に囲まれて清々しいと感じるには程度も必要だと思い知る、そんな環境だ。
と、そんな森の中へ更にずんずんと入り込んでいったところ──。
「お待ちしておりましたにゃ!」
その途中で待っていたのは、団員一号であった。
なぜ彼がここにいるのか。それは、この先の聖域内に団員一号も暮らすケット・シーの村があるからだ。
だが、周囲一帯には迷いの猫妖精魔法がかけられているため、偶然でも辿り着けないようになっている。しかもケット・シーの族長のみが使える特別な魔法であり、その構造は極めて強固。九賢者クラスの実力を以てしても、これを無理矢理に突破するのは難しいときたものだ。
ゆえに案内人として団員一号が入り口で待っていたわけである。
「いつ見ても、見事なものじゃな」
入り口の時点で、既に魔法の中。多くの術を研究し多くの知識を修めた事もあって、ミラもまたそういった部分については極めて鋭い。ちょっとした違和感から、仕掛けられた罠の術にも気づけるくらいに。
それでいて今は、周囲に展開されている魔法の気配すら感じられないというのだから、とんでもない。
「族長様の魔法は、更に磨きがかかっておりますにゃ!」
団長であるミラと同じくらいに、団員一号が尊敬している存在。それが彼の育ての親ともいえる族長だった。尊敬する団長から尊敬する族長への言葉とあってか、団員一号は余計に嬉しそうだ。
そんなご機嫌な団員一号の案内で、森の中を複雑に進んでいくミラ。周囲に広がる景色は相変わらずの自然一色。あまりにも代わり映えがなく、進んでいるのか迷っているのかすらわからなくなる。
「──そこで経験の差を見せつけてやりましたにゃ。これまでに団長と潜り抜けた修羅場に比べれば、簡単なお仕事でしたにゃ」
とはいえ、今は団員一号と一緒だ。話し相手に事欠かず、しかも賑やかな彼がいれば、退屈な森歩きも愉快なそれに代わっていく。
ただ今回は、治安維持のため近隣に現れた魔物を皆で討伐する際に大活躍したのだという自慢話に付き合わされる事になっていたが。
そうこうしつつ更に進んだところで、いよいよ目に見えて変化があった。
冬枯れた森の景色から、一歩ごとに緑溢れる光景へと変わっていく。遂に迷いの領域を越えて、ケット・シーの村に到着したのだ。
「ほぅ……これまた、以前から随分と様変わりしておるのぅ」
目の前に広がった光景を見渡したミラは、一番にそんな感想を口にする。
団員一号が暮らす村。多くのケット・シーが住むそこは、以前に来た時とは比べ物にならないほど発展していた。
広さだけを見ると、記憶と大きな違いはない。だが何よりも変化していたのは、その密度であった。
生い茂る森の木々に囲まれながら、ぽかりと広がった空間。以前は踏み固められた道が、ところどころに点在する民家を繋いでいるといった状態だった。
しかし今は、きちんと舗装された道が真っすぐと伸びており、自由気ままに建っていた民家もきっちり区画整理されている。
更に驚くのは、メインストリートだ。民家ではなく様々な商業施設が軒を連ねているのがわかる。つまりは商店街が出来上がっていたのだ。
もはやそこにあるのは村ではなく、ケット・シーの街と言った方が適切かもしれない。それほどまでに、あらゆるものが増えていた。
「団長の国を参考に色々と皆で意見を出し合い、毎年少しずつ増築していきましたにゃ。そして小生達自慢の村が完成したのですにゃ!」
何とも誇らしげに胸を張る団員一号。いわく彼が、この街造りの総監督を任されていたそうだ。
実際その言葉通りに、ルナティックレイクとの類似点などが見受けられる。
少し先にあるのは学校だろうか。仔猫なケット・シーが無邪気に遊んでいるのが見える。カグラでなくとも、思わず頬を綻ばせてしまう可愛らしさだ。
「いやはや、見事なものじゃな」
村から街に。その変化ぶりに素直な驚きを示したミラは、特に気になる場所、メインストリートに立ち並ぶ商業施設に注目する。
なんとそこでは、人と同じように通貨としてリフを用いた商売が行われていた。商店街のように様々なお店が軒を連ねるそこでは、一風変わった商品を扱っているところもある。中でも特に人だかり──猫だかりが出来ている店には、『またたび屋』という看板がかかっていた。
ただ、客のみならず店主までごろにゃんしているため、もはや商売として成り立っているのかは判断に苦しむところだ。
「──この辺りはとても拘り抜いたところですにゃ! ──そちらでは、いつでもルーレットが楽しめますにゃ!」
他にも様々な施設が目白押しだ。中には、なんとカジノまであるという。
ただ、賭けに使われるのは金銭ではなく木の実などだそうだ。特に大きくて立派な大黒松ぼっくりは、もっているだけでも尊敬される最高レートのチップらしい。
なお、団員一号は持っているのかと聞いたところ、先日見事にすったと遠い目をして答えた。
街には、風車や時計塔などもあった。色々な要素がごちゃ混ぜになっているが、だからこそ賑やかな街並みに仕上がっている。
「しかし、なんとも不思議な感覚じゃな」
そして何よりも目の前に広がる街は、その全てがケット・シーサイズに合わせて造られていた。ゆえに今は、ミニチュアの世界にでも迷い込んでしまったかのような状態でもあった。
傍にある木造二階建ての立派な民家ですら、ミラの背丈より少しだけ高い程度。その様は一見すると、よく出来たドールハウスにすら思えてしまうほどだ。
とはいえ窓から室内をのぞき込んでみれば、そこで暮らす住民の姿が確認出来た。更に街のあちらこちらには生活感が溢れており、ここがミニチュアではなく正真正銘の街なのだと否応なく伝えてくる。
と、そんな街並みを見回していたところ、興味深げに見つめてくるケット・シーと目が合った。
その際にミラが手を振ったところ、相手もまた嬉しそうに手を振り返してくれる。
(……可愛い)
何だかんだいっても、ケット・シー達は人懐っこい性格だ。更にその容姿が可愛らしさを加速させている。
ゆえに、しっかりとした街でありながらも、どこかメルヘンに満ちていた。
また、だからこそこの場所の事はカグラに秘密だ。今回のように案内がなければミラ達ですら来れないはずだが、カグラの事である。もしかしたらその情念で迷いの猫妖精魔法までも突破してしまうかもしれないからだ。
「ささ、こちらですにゃ」
続き団員一号の案内で、メインストリートを進んでいくミラ。
今回、先に団員一号がミラの来訪について伝えていたのだろう。街の住民達はミラの姿に驚くような事は無く、それどころか「あのお方が!」「ありがたにゃ、ありがたにゃ」などと言って盛り上がりながら集まってきていた。
「ほほぅ、ここがお主の家か。何とも立派になったものじゃのぅ」
商店街の奥、街の中央近くの一等地に団員一号の自宅があった。出会ったばかりの頃は小さな掘立小屋だったが、今は他よりも頭一つ抜けた立派なお屋敷になっている。
何だかんだで有能であり、またこの聖域を復興させたミラ──つまりは地主と契約しているためか、彼は街でもそこそこの立場にあるようだ。
「団長と共に乗り越えてきた冒険の数々が、小生を成長させたのですにゃ」
これが我が城、これが今の自分の証明であると、それはもう誇らしげにお屋敷をバックにしながらニヒルな笑みで決める団員一号。
随分な出世ぶりである。
ただ──。
「ああ、団長、ダメですにゃ! それより早く、村長のところに行くですにゃ!」
ミラが窓から中を覗き見ようとしたところだった。自慢げに胸を張っていた団員一号が、一転して慌てたように全身で視界を塞いできたではないか。
見せたくないものでもあるのか。もしや女と同棲でもしていたりするのではないか。ダメと言われたら余計に気になるというのが人の性というものだ。
身を挺して防ごうとすれども、しょせんは猫と同程度。団員一号をひょいと引きはがしたミラは、そのまま胸に抱くようにして拘束し、彼の屋敷を覗き込んだ。
「……」
直後、ミラは絶句した。
その立場を利用して贅の限りを尽くしているのではないか。はたまた、ハーレムでも築き上げているのではないか。団員一号が、どれほどまでに出世したのか最終確認だと意気込んでいたミラは、言い表しようのない現実に目を細める。
なぜならお屋敷の中は、散らかり放題だったからだ。
それこそ、だらしない男の一人暮らしってこんな感じになるよね、という状態をそのまま再現したような光景がそこに広がっていた。
立派なお屋敷の外見との対比が、それはもう酷い。
「……流石に少しは片付けた方がよいのではないか?」
多少ならば散らかってしまっても仕方がない。それがミラの考え方であり、多少程度であるならばミラ自身も人の事は言えない立場だ。
今はマリアナがいるからこそ、部屋の隅々にまで掃除が行き届いているに過ぎない。もしも一人で気ままに暮らしていたとしたら、それなりに散らかっていたであろう。
何よりもそうなってしまうという自覚がミラにはあった。だが、そんなミラも言わずにはいられないほどに、流石にこんな状態になるまでは放置しないと確信出来てしまうほどに、団員一号の屋敷内は酷い有様だった。
「最近はちょっと忙しくて、それどころではなかったのですにゃ……」
そんな言い訳を口にしながら、そっと視線を逸らす団員一号。それはもはや、忙しくなくても初めから片付ける気などない者の反応である。
「このままでは、溜まる一方じゃぞ」
これからこの状態の屋敷を片付けるとなったら、それ相応の時間と労力が必要になるだろう。そして、そこまでの状態になってしまうと、今度はその時間と労力を片付けられない理由にしてしまうのだ。
かつて、何度か妹の部屋の掃除を強制執行した事のあるミラは、団員一号の屋敷もその状況になりつつあると忠告する。
だが、団員一号の表情は渋い。その様子から察するに、どうやらもう掃除を諦めつつあるようだ。
「よし、では後でちゃちゃっと片付けてしまうとしようか。こういうのは思い立ったが吉日というものじゃよ。これ以上散らかる前に済ますに越した事はない」
「にゃんと!? けれど団長の手を煩わせるわけにはいきませんにゃ!」
ミラが手伝いを申し出たところ、団員一号は恐れ多いと首を横に振る。だが「ならば一人で片付けられるか?」とミラが続けたところで答えはなし。
ゆえに、この時をもって団員一号の屋敷清掃の強制執行が決定したのだった。
以前、唐揚げを買ったらオマケしてくれた総菜屋さんにもう一度行ったのですが……
なんと、またオマケしてくれました!!!
もしかしたら、一定数以上でオマケが確定しているのかもしれません!!
なんと素敵なサービスでしょう!
というわけで先日、またまた唐揚げを買いにいったところ……
そんなまさか……
1個80円だった唐揚げが、100円になっているではないですか!!!!!!!!!
こんなところにも値上げの波が……。
いったいいつまで続くというのか……。
そしてその日は、あまりのショックで買わずに帰ってしまいました。
2度もオマケしてもらいながら値上げに日和った私を許してください……。




