504 スタミナ無限
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五百四
突如舞い込んだ、新しい幽霊船の話。その件も大変気になるが、最高の装備作りもまたとても大切な事だ。
そのように気持ちを切り替えたミラは、開発室に拵えられた簡易更衣室で着替えをしていた。
「生着替えセーラー!」
常軌を逸したオペミトランの叫び声が響く中、昨日から一日中着ていたセーラー服を脱ぎ、用意された服を着る。白く薄手で患者着のような服だ。
着替えを終えた後、脱ぎたてを欲しがるオペミトランからセーラー服を隠しながらミケに受け渡し解析してもらう。
そうして色々な準備が整ったところで、いよいよ今日の調整が始まった。
「さて、どんな感じだい?」
「ほっ、ほっ、ほっ。まだまだ全然余裕じゃな!」
ミラの身体の詳細な数値を基にして、調整された試作品。スタミナ上昇のそれを身に着けたミラは今、ルームランナーで走り続けていた。
現在、時速二十キロメートルで一時間が経過したところだが、ミラの顔に疲労の色は微塵もない。それどころか体感的に走り始めた時とほとんど変わっていないと笑いながら答える。
試作の段階でありながら、とんでもない効果といえるだろう。
「じゃあ、もう少し速度を上げてみようか」
だがミケは、まだまだ満足してはいないようだ。そう答えるなり、ルームランナーの速度を上げていく。
「おお、これは速いのぅ! しかしまだまだ快適じゃな!」
運動量がより激しくなっていくも、ミラの反応は軽いものだ。むしろこれだけ動きながらまったく息が乱れないと、驚きすら浮かべる余裕があった。
「く……。運動用のセーラー服も作っておくべきだったか……!」
そのように様々な調整と実験が行われる中、心の底から悔やんでいるのはオペミトランだ。プリーツスカートを翻しながら全力で走るセーラー服少女はさぞ美しかっただろうと、ミラを見据えながら涙していた。
「お、流石。完璧な安定ぶりだね」
「ではそのまま、展開した術式を維持してくれ」
続いて調整するのは、マナの貯蔵術具の方だ。
スタミナ強化の装備よりも、こちらの方が難度も極限に高いため、関わる技術者の数も多かった。
その中の一人は、日之本委員会トップの魔工技師であるエーデルワイス。
そしてもう一人。新たな技術として大陸に広まる魔導工学において、その祖となる存在、魔工技師改め魔導工技師のクロックハートだ。
ミラ専用のマナ貯蔵術具は、この二人を中心として開発が進められており、こちらでもミラは手取り足取りでデータをとられていた。
「よし、同調成功。これで後は、容器の方を完璧に作るだけね」
「まあ、それが一番難しいんだけどな」
じっくりと協議した末、一番の難題であったマナ容量と小型化について一つの答えが出たという事で、ミラはここでもあれこれとデータをとられていた。
その答えとは、専用化である。
現在、流通しているマナ貯蔵用術具は、その全てが汎用的に使えるように調整されている。そうしなければ、使い物にならないからだ。
マナとは、同じに見えて個人ごとに違っている。そしてこれが、貯蔵用の術具の仕様に大きくかかわっていた。
個人ごとに特徴の異なるマナを、全てそのまま受け入れられる容器など存在しないのだ。
ゆえに流通しているそれらの術具には、マナを汎用化するアダプターのようなものがセットになっており、容器もまた汎用とする事で誰にでも対応出来るようになった形だ。
しかし汎用化したマナというのは、いわば糸を解して綿にしたような状態となる。ゆえに容器の中でかさばった。
だからこその専用化だ。そもそもミラしか使う予定はないのだから、汎用性に拘る必要はないわけだ。
だが綺麗に確実に、しかも大量にマナを貯蔵するためには、その糸を緻密に織り込む仕組みが必要となる。同時に、その反対もだ。
今はその部分の調整を進め、完了したところ。
これで残るは容器の方だが、こちらについては流石の日之本委員会の研究所であっても、まだそれなりの時間を要するだろうとの事だ。
「では、後はよろしく頼むぞ」
「ああ、意地でも完成させるからな。期待して待っててくれ」
最後の同調検査も完了したら、後はもうひたすらに開発実験の繰り返しだ。完成が楽しみだとミラが言えば、クロックハートは自信満々に答える。手応えはあると。
「いつまでに、とは言えないけどねぇ」
対してエーデルワイスは、途方もない仕事が舞い込んだものだと遠い目をしていた。それでいて誰よりも熱心に実験データを精査しているのは彼女だ。
同じ穴の狢とでもいうのか。この研究所には、中毒気味なクリエイターしかいないようであった。
日之本委員会の研究所にやってきてから、約十日。ミラは見学を楽しみ、時に研究を手伝ったり、愛妻に連絡したりしながら楽しく過ごしていた。
「遂に出来たのじゃな!」
そうして今日、とうとう注文していた一つが完成したとの知らせを受けて開発室に飛び込んだミラは、期待に満ちた顔をそこにいるミケ達に向けた。
「ああ、最終調整もばっちり完了した。君専用装備の完成だ。自分で言うのもなんだが、これはもう伝説級にも負けないどころか、それを超えてしまったかもしれない逸品だよ」
多分に注がれるミラの期待を受けてなお、自信満々に胸を反らせて答えるミケ。そればかりか開発に携わった職人一同もまた同じ気持ちなのだろう。『試してみな』といった笑みを浮かべていた。
「ふむ……お主らの様子からして、最後に見た時以上になったという事じゃろうな。これは楽しみじゃ!」
ただ仕上げただけではない。ミケ達の表情からそんな意思を感じ取ったミラは、期待に胸を膨らませながらそれを受け取った。
初めに完成したのは、スタミナ強化用の装身具だ。腕輪の形をしたそれは、加えて少し特殊な仕様になっている。
そのまま腕輪としてもよし。また、左腕の端末に被せるような形でも装着出来るように作られていた。つまり、端末をデコる事が出来る仕様というわけだ。それでいて操作時の邪魔にならないときたものだ。
「ほう、これはこれで便利かもしれぬな」
主にオシャレ面に拘る女性陣のアイデアだそうだが、これにはミラもまた面白いと頷く。
上級冒険者の証でもある操者の腕輪と同じ見た目の端末。それは身分を示すステータスであると同時に、それ相応の人物であるという証明にもなる。ゆえにその上に被せれば、実力を誤魔化せるわけだ。
変装などをする時など、状況によっては便利な仕様といえるだろう。
「どれどれ……」
ミラは早速、その腕輪を身に着けて身体を動かし始めた。全力疾走に加え《縮地》や《空闊歩》の他、極度にスタミナを消耗するため使ってこなかった仙術技能なども多用して、開発室内を飛び回る。
スタミナを気にせず全力で動き回るミラは、それこそ縦横無尽であり、その姿を捉えきれる者は少なかった。
ただ、オペミトランを含め完全に捉えきっている猛者もいる。中でも男達の目は、ひらりと舞い踊るスカートの中を確実に捉えていた。
「素晴らしいな」「しかし、奴の正体はあれだからな」「ああ、わかっているさ」「わかっているのに、なぜか目が引き寄せられてしまう」
問題なしと凝視する者。真実を知るゆえ複雑な色を浮かべる者。理解し、その上で納得する者。葛藤する者。
十人十色な反応を示す男達。対して女性達はというと、むしろスカートなど目に入っていないのか、まったく動きの衰えないミラの動きっぷりをじっくり観察していた。
「思った以上に、とんでもなく仕上がっておるな!」
本来であれば、もうとっくに疲れ果て倒れているであろう。そして試作段階のままであったら、幾らかの疲労感は浮かぶほどには動いた。
けれど今は、息一つ切れていない。ミケ達が完成というだけあって、その性能はとんでもない域にまで到達したようだ。
何よりもその効果を存分に体感したミラは、素直に驚きを伝える。
だがミケ達はというと、そこから更に不敵な笑みを浮かべて言った。「実は、それだけじゃないんだなぁ」と。
「なん、じゃと?」
正に理想とするものを見事に作り上げてくれた。そう満足していたミラは、そんなミケ達の言葉にぎょっとする。
ここにいるのは素晴らしい技術者ばかりであるが、オペミトランを筆頭に、なかなか倒錯した者達も揃っている。
そんな彼ら彼女らが怪しげに微笑むのは、だいたいが不穏な理由であった。
もしや自爆装置でも追加されているのかと警戒するミラ。
だが流石に今回は、最高を目指すために総力を挙げて作り出した事もあってか、それだけじゃないという要素は至ってまともだった。
「よーく見てくれ。何か、はめ込めそうな穴があいているだろう?」
どこか勿体ぶるように、それでいて成功を確信しているかのような顔で告げるミケ。
言われた通りに腕輪を確認したミラは、シンプルながらオシャレなデザインの中にあった穴を確かに見つけた。
「おお、多分これじゃな」
「そこで、こいつの出番だ」
ミラが反応したところでミケが差し出してきたそれは、小指ほどの大きさをした玉だった。リング状のパーツが取り付けられているため、どこか土星のような形になっている。
「ほぅ……この形からして、ここに嵌めればいいのじゃな」
それを受け取ったミラは、まあそういう事だろうと理解するなり腕輪の穴に玉を嵌め込んだ。
「これは……!」
すると何やら不思議な感覚が全身に広がっていく。それと共に技術者の一人が、「じゃあ、これを持ってみろ」と言いながら大きなバーベルをどんと置いた。
見たところ、五キログラムの重りが十個は付けられている。つまりは、五十キログラムのバーベルだ。
「つまり、これはもしや!?」
このタイミングで、わざわざそのような事をさせるというのは、つまりそういう事なのではないか。状況の流れから予想したミラは多大な期待を胸に、そのバーベルを手に取った。
「ぬぐぅ……!」
バーベルは重かった。だがしかし重く感じはするものの、ミラはそれを持ち上げていた。しかも少し様子をみてから走り始めたではないか。元々の筋力では、まず出来なかったであろう事だ。
「いやはやこれは、素晴らしいのぅ!」
スタミナ強化だけのはずが、筋力までも上昇した。その思わぬ追加性能に喜ぶミラ。そんなミラに向けられたミケ達の目は、まだ何かあると語っていた。
聞けば、強化効果は他にもあるというではないか。いわく、追加効果の玉は着脱可能であり、他にも幾つか用意があるそうだ。
「おお、至れり尽くせりじゃな!」
筋力のみならず、五感の強化、暗視、痛覚鈍化、解毒、酔い止めなど。一定の場面において、あるとよかったという効果が揃えられていた。
通常は筋力強化にしておき、場面によって使い分けるのがいいだろうとミケは言う。
「そしてこれが、感度──」
色々と説明が終わったところで技術者の一人が、それはもう満面の笑みでもう一つを差し出してくる。だが直後、彼は女性陣により袋叩きに遭い、ボロ雑巾のように捨てられた。
いったい彼は、何と言おうとしていたのか。そして何を渡そうとしてくれたのだろうか。
突然の事に驚くミラに、ミケ達は一切気にする必要はないと告げたのだった。
年が明けてから、もう半月。
そしてここから更に半月と少しで、いよいよ待ちに待った……
ホグワーツレガシーの発売日!!!
遂にあのホグワーツを歩き回れる日がくるわけです!
ワクワクですねぇ。
幾らかプレイ動画を見ましたが、魔法バトルもカッコいい!
ただ、キャラの強化育成についてはまだ把握していないので、そこら辺がどうなっているのかは気になるところですね。
消費アイテムだったり装備だったり……。
杖の種類とか色々あったりするのだろうか。性能とか違ったりするのだろうか。
その辺りは原作のように、ほぼ変わらない感じなのだろうか。
どんなゲーム体験が待っているのか。楽しみですね!!




