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460 慌ただしい打ち上げ

四百六十




 質問コーナーに続きこれまでの研究と塔の今後について発表が終わったところで、メインステージでのイベントは全て終了となった。


「お集まりいただき、ありがとうございました。残り二時間となりましたが、建国祭をお楽しみください」


 そんな司会者の言葉と共に、奥の砦へと戻っていくソウルハウル達。

 観衆達は、それを大歓声で見送った。しかもその興奮は暫くの間収まる事はなく、ステージ前にて九賢者の話題で盛り上がり始める。

 九賢者という存在が帰還した事による影響。今後の術士達の環境と将来性。今回の件でその辺りが大きく変化していく事は確実である。

 だが、どうにもそういった話題を上げている者は少数派のようだ。

 では、どのような話題に注目が集まっているのかというと、何よりも九賢者という人物そのものについてだった。

 これまで伝説として語られてきた人物が登場するばかりか、質問コーナーにて物語上ではなく本物の九賢者の人となりというのが明らかとなった。

 語られてきた九賢者と、実際に見た九賢者。アルカイト王国民ならば、むしろそれを話題にしないわけがないというものだ。


(なかなかの人気ぶりじゃな。これならば、今しばらくは安泰そうじゃのぅ)


 ステージ前のみならず特別席においても、その話題で持ちきりだ。英雄の帰還とあってか反応は概ね良好だ。

 九賢者を、より受け入れやすくするという目的もあった特別ステージは成功したとみていいだろう。


「さて、残りの店を回るとしようか」


「はい、ミラ様!」


「きゅい!」


 仲間達が慣れないステージであくせくする姿を十分に堪能したミラは、残る祭りの時間を楽しむために再び街へと繰り出していった。

 建国祭最終日の今日は九賢者帰還の発表後もあってか、ここぞとばかりに九賢者関連のグッズで溢れていた。特に帰還した五人分がどこも多めに並んでいるようだ。

 その中でもよほど売れ行きが好調なのだろう。カグラのグッズは、どこもかしこも品薄状態だった。

 なんとなく見て回っている間にも、カグラのグッズを求めて彷徨い走る男達の姿がちらほらと確認出来た。イベントステージでカグラを目にして、そのままファンになったのだろう。

 きっとこれを機に、カグラグッズが増産されるのは間違いない。そして強かなソロモンの事だ。様々な新商品を追加してくるはずだ。近いうちにカグラのフィギュアが土産物店に並ぶと思われる。

 また本人が帰ってきた事もあって、ファングッズの定番である肖像写真も可能となった。こちらもまた各々の分が追加されるだろうが、現状のカグラ人気を見るに、そこだけ幾らか種類が増えそうな予感もした。

 なお、そんなカグラだけでなく品薄状態がもう一人分。


(……きっと、わしもそれだけ売れているという事じゃろうな、うむ、きっとそうじゃ)


 きっと売れたからだ。前にもどこかでこんな状態を見たような気がすると感じつつ、ミラはそっと視線を逸らしながら思う。現役として来られていたなら、きっと爆売れ間違いなしだったはずだと。

 理想を再現しただけあって自身の姿に多大な自信を持つミラは、そんな負け惜しみのような事を考えつつ、グッズ格差が目に入らなそうな方へと歩き出したのだった。





『──以上を、皆への感謝の言葉と代えさせてもらう。この国は、ここに生きる君達のものでもある。そしてこの平和は、我々が望む理想だ。共に、未来へと歩いて行こう!』


 建国祭の終わり。終了と共に閉幕の挨拶を告げるソロモン。

 じっくりと国の歴史を振り返り、その歴史こそが国を形作っているのだと表し、今があるのは国に生きる全ての者が努力した結果だと語る。そして締めに未来を口にすれば、『アルカイト、万歳!』と、街のあちらこちらで声が上がり拍手が鳴り響いた。


「最後の最後で、随分と盛り上がるのぅ。しかもまた揃いも揃って」


 その様子を前にしたミラは、驚いたように周囲を見回す。


「いつからか、毎年の定番になっているんですよ」


 マリアナは、興味深げなミラを微笑ましそうに見つめながら説明してくれた。

 曰く、もう二十年以上は前から建国祭の最後は、こうしてソロモンの挨拶に合わせて締めを飾るのだそうだ。

 いつから、そして誰から何をきっかけに始まったのかは不明だが、もうアルカイト国民ならば誰もが知る常識になっているという。


「ほぅ、そんな事もあるのじゃなぁ……」


 起源不明の定番。出所不明の常識。あるところには、そういったものが色々と転がっているものだ。

 と、そんな常識を知ったミラは「ならば仕方がないのぅ」と笑いながら手を叩いた。

 マリアナもそれに続き、ルナもまた見様見真似で両前足をバタバタさせる。

 二人と一匹が響かせる音は、小さなものだ。

 けれどルナティックレイクの街は、そんな小さな音でいっぱいに溢れていく。

 きっと、これもまた時代の波の音の一つであるのだろう。そう思えるほどに力強い響きであった。




 そうして二日間にわたって開催された建国祭は幕を閉じた。それでも街の灯は、まだまだ赤々と輝いている。そしてその盛り上がりようといったら、先ほどまでとあまりかわらないときた。

 酒が本格的に回り始めた事もあり、町中が二次会会場のような騒ぎである。

 加えて、九賢者帰還の話題性は極めて高く、その盛り上がりも加わってか歴代一というくらいの喧騒と歓喜で染まっていた。

 もはや建国祭中よりも後の方が、警邏兵の仕事が多いくらいだ。


「粛々としておると思うたが、こっちもまた賑やかじゃのぅ」


 ミラ達はというと、祭りの残り火が燃え続ける街から離れ、別の場所へとやってきていた。

 それは、王城の宴会場だ。建国祭の打ち上げという形で開かれているそれは、ソロモンが中心となっている他、各国からやってきたゲストなども参加している。しかも今年は、帰還組の九賢者も一緒だ。

 そんな、国の重役が揃う席である。宴席とはいえ会議のような重々しいムードに包まれているのではないかと予想していたからこそ、ミラはその宴会場の様子を目にするなり驚きを口にしていた。


「いつも建国祭後の宴会は、ソロモン様が身分など関係なく意見をぶつけ合っていこうと仰っていまして。毎年このようになっているんですよ。この場では、ソロモン様に意見する事さえ許されてしまうんです」


 あーだこーだと熱く語り合う者達を見回しながら説明してくれるマリアナ。

 彼女の言う通り、ここには身なりからしてお偉いさんだけでなく、一兵卒や使用人といった者も見受けられた。

 王様直々の宣言という事もあってか、ところどころでここぞとばかりに上司へ物申している。

 また、一か所に集まっては大いに意見交換している貴族達の姿もあった。今日は爵位の差など気にせず、大いに語り合っている様子だ。


「ふむ、ソロモンらしいのぅ」


 上に立つ者ほど、下の意見を尊重しなければいけない。常日頃から、そのあたりを気にする事の多かったソロモン。

 けれど、それに振り回されてもいけない。その取捨選択は実に難しいラインであるが、ソロモンにはスレイマンという優秀な頭脳がいる。

 だからこそ、こういった場を用意したのだろう。

 見ればソロモンも、多くの者達に囲まれて忙しそうであった。


「と、言う事でしてミラ様。折角ですので私も少し失礼しますね。まず洗い物はアイテムボックスにしまったままにせず、その日のうちに出してください。あと、最近ルナが少しぽっちゃり気味ですので、おやつをあげ過ぎないようにお願いします。それと夜中にお手洗いで起きた後、元よりも少し離れて寝てしまうのはなぜでしょうか」


 王様として、やれる事は全部やっていく。そんな意気込みを見せるソロモンに感心していたところである。常日頃から思う事があったのだろう。ここぞとばかりにマリアナが、怒涛の勢いでそれらの言葉を羅列していったではないか。


「う……!」


 訓練であったり実験であったり、塔にいる間はマリアナがいる安心感もあってか、いつもよりちょっとやんちゃ気味になる事が多いミラ。そのため水を被ったり泥が撥ねたり謎の粘液まみれになったりで、服やら下着やらを汚す頻度が高い。

 その都度着替えはするものの、とりあえずアイテムボックスに入れて、そのまま忘れてしまう事がいつもだった。

 また、ルナを可愛がり過ぎるあまり、求められるままおやつなどを与えたりしている事もマリアナにはバレていたようだ。

 よくよく見れば、出会った時に比べて少しばかり丸っこくなっている。なお、それを告げられたルナはというと、マリアナのカバン内にて、その顔を衝撃に染めていた。

 夜中のお手洗いについても、ミラには心当たりがある。ただ、なぜ気付かれたのかとでもいった心境だ。

 お手洗いから戻り、再びベッドに入る際の事。この時は、夜になって寝る時と少しばかり状況が違っている点がある。

 それは、順番だ。

 夜寝る時は、いつもミラが先にベッドに入り、その後マリアナが寄り添うという形だ。それはもう、いつも嬉しそうに寄り添ってくるマリアナである。

 対してお手洗いから戻った場合はどうか。その際は、マリアナのいるベッドに入るという形になる。

 なんだかんだで、まだ照れの残るミラ。ゆえに寄り添うほどに思い切って近づく事が出来ず、少しばかり離れた位置で寝てしまうというわけだ。

 けれど、そんなミラの行動がマリアナにとっては不満だったようだ。

 特にその点を口にするなり、ふくれっ面になるマリアナ。ミラはというと意識してしまい照れているから、などとは恥ずかしくて言えない。


「……うむ、善処しよう」


 よって、そんな言葉を絞り出すので精いっぱいであった。ただマリアナにしてみれば、それで十分であったようだ。「はい、よろしくお願いします」と笑顔で返す。

 なお、その顔は『言質はとった』とばかりに輝いていた。





 建国祭の打ち上げは、宴会場のみならず王城の各所でも開かれていた。

 建国祭の間は係員として徹してきた王城勤めの者達にとっては、ここからが本番といっても過言ではない。

 食堂やダンスホールなども開放し、城中で盛大に祝う。それがアルカイト王国の建国祭である。どこもかしこも、飲めや歌えの大騒ぎだ。

 ただ今年は、いつもと違う。何よりも帰還した九賢者がいるからだ。

 そのためか次から次へと帰還組のいる宴会場に人が集まり過ぎて、どうにもこうにも出来なくなる。

 よって急遽、特別ルールが施行された。各打ち上げ会場となっている場所を、帰還組が回っていくというもの。

 つまり、それぞれの場所で待っているようにというわけだ。


(あ奴らも大変じゃのぅ……)


 宴会場にて入れ替わり立ち代わりに、お目通りを挨拶をと並ぶ貴族やお偉いさん方。

 それが終わればファンだという者達が殺到する。

 そして一通りの挨拶が済んだところで、ソウルハウル達は次が待っていますと急かされるようにして別の宴席へと出張していった。

 それはもう面倒そうなソウルハウル。仕方がないといった顔のカグラ。笑顔を絶やさないアルテシア。むしろやる気で満ちているラストラーダ。そして、挨拶よりも食事優先のメイリン。

 沢山のご馳走や極上の美酒で溢れる打ち上げだが、帰還組が──メイリン以外がそれらを存分に堪能出来るのは当分先になりそうだ。

 なお、そんな五人を見送ったミラは、マリアナ達と一緒に思う存分ご馳走を堪能していた。





 建国祭の打ち上げは、深夜にまで及んだ。お祭りとはいえ業務もあるため、城勤めの者達は交代制で楽しんでいる。

 それもあってかソウルハウル達のところには、定期的にファンだという者達が列を作っていた。


(しかしまあ、これほどまでに人気があったのじゃな)


 帰還組が休めるのは、もう暫く先になりそうだ。だがそれも、英雄の務めというもの。

 存分にご馳走を堪能し終えたミラは、ソロモンに軽く挨拶してから、そんな帰還組を尻目に宴会場を後にした。マリアナ達も一緒にだ。

 それから風呂で一日の疲れを癒してから部屋に戻ってベッドに入る。

 そうしていつも通りに、のんびりと今日の出来事について語らいながら眠りに落ちていくのだった。











という事でして、先週は再びのバーミヤンにしました!


麻婆チャーハンと餃子です!

鉄板の組み合わせだからこそ、鉄板の美味しさでしたね!

加えて今回は特別に、台湾カステラをスイーツ枠で追加しました!!!


ハチミツをかけて食べる台湾カステラ……。

食べた時間もあってか、実に背徳な味でした。

フフフフフ。




そして、先週……


そろそろ期限という事もあって、遂に機種変しました!!!!

最近、早くしないと使えなくなるよいう連絡が多くなってきたので、予約していってきました。



そして折角の機会だからという事で……


スマホデビューしちゃいましたよ!!!!


何というか……でかい!

iPodtouchで、スマホ的な感じにはさわり慣れていたのですが……

それより大きな画面になりました。見やすいです。


ついでに料金やら何やらの流れで、auPAYも使えるようになりました。

店員さんに色々と教えてもらいました。

そう、電子マネーです。


ここにきて、出前館初回利用チャンスが……!!!

今は何かキャンペーンしているのですかね。


ただ、まだ使い方をよく理解していないので、そこが何ともいえないところですね……。


そしてまだ電話もしていないので、かけ方と受け取り方を把握出来ておりません……。


いつくるのかドキドキです。

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― 新着の感想 ―
ミラ「前向きに善処します。」(政治的用語で「する気はありません」のこと。) マリアナ「いつから、そんな悪い言葉を覚えたのですか?(怒)」
[一言] aupayにせよ電子マネーにしろ、注意するべし。 奴らは湯水のごとく請求額を増やしおる。 コンビニ、密林、aupayWebマネー、使い勝手がよすぐる!!
[良い点] 今週も更新ありがとうございます。 早めに感想を…と思っているうちに日曜日(笑) 九賢者の紹介と質疑で終わり…技見せたりしないの?見せれば本物と分かるし、凄さも広められるのにw 被害が大き…
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