450 ソロモン信者
明けましておめでとうございます!
今年も、よろしくお願いします!
四百五十
校舎内で一番大きな場所といっても過言ではないだろう。体育館は、どこの模擬店にも負けず劣らず──というよりはそれ以上の客達で溢れていた。
「おお……よもやこれほどの盛況ぶりとはのぅ!」
大いに繁盛した様子を前にして、ここまでの人気かと、たまげるミラ。
しかも体育館に並ぶのは、他の教室とは違った店ばかりだ。
何が違うかというと、その運営主である。なんとこの体育館内だけは生徒主導の模擬店ではなく、プロの商人達が集う激戦区となっているのだ。
しかも注目すべきは、扱っている商品のジャンルだ。この場に並ぶのは、生徒達の模擬店とは一切競合しないものばかり。また何よりも、ソロモン王直々に公式認定された品しか並んでいないという、正式な販売所となっていた。
では、いったいどのようなジャンルを扱っているのかというと──。
「ああルミナリア様、お美しい……」「ソウルハウル様ぁー、この陰のある感じがステキ」「アルテシア様に甘やかされたいなぁ」「フローネ様……可憐だ」
そんな声の飛び交う体育館。なんとここは、アルカイト王国公認グッズ売り場となっていた。
九賢者を筆頭に、アルカイト王国の様々な魅力をグッズとして販売しているのだ。銀の連塔のジオラマなど、でかくて高くて誰が買うのかといったものまであるが、これが毎年売れているというのだから驚きだ。
「やはり、ルミナリアの人気が高いのぅ……」
見た目だけならば、絶世の美女だ。加えて現時点で唯一、アルカイト王国に存在すると公にされている九賢者である。行方知れずの他の連中とは違い、頭一つ二つと抜けて人気なのは、むしろ当然ともいえる結果だ。またイラストカードではなく、ブロマイド写真であるという点も強みだろう。
とはいえ、ルミナリア以外だって負けてはいない。伝説となっている九賢者の人気というのは、時を過ぎてもなお健在だ。
マリアナいわく、数あるアルカイト王国グッズの売り上げの半分を占めるのは、やはり九賢者関連であるという。
見れば、そこかしこで九賢者グッズが売れていく。
「ヴァレンティンの黒包帯……これは衣服ではなく医療用具扱いなのじゃな」
「メイリンのお面……本人が着けた事もないようなものまであるのじゃが」
「ラストラーダの変身ベルト……これはもしや術具か? 無駄に凝ったギミックじゃのぅ」
「カグラの扇子に切子グラス、提灯に風呂敷、手ぬぐい、箸、皿……どれも和風様式の流行りにカグラの名を乗っけただけのような気がするのぅ」
ミラは、それぞれどのようなグッズがあるのかと見て回り、その無駄な豊富さと多様さに呆れながらも大いに楽しんだ。
ちなみにアルテシアのクッキーといったものなど、マリアナが開発に携わった商品も幾つかあるそうだ。
なお、アルテシア要素はどの辺りなのかと尋ねれば、ミルクなどで溶けば離乳食にもなる、という事だった。
食品関係のグッズというのは土産物の定番としての需要もあり、かなり力を入れて開発されているらしい。ソウルハウルのゴーレムチョコだったり、ルミナリアのストロベリーゼリーだったり、フローネの岩サブレだったりと多種多様に揃っていた。
「カグラの天然水……出おったな水商法。とはいえ、僅かに感じ取れるこのマナからして、多少の良心はあるようじゃな」
天然水。それは、ラベルを変えるだけで倍以上に値段が膨れ上がるグッズの定番である。ただここに置いてあるのは、何かしらの効果が付与されているようだ。
よくよくラベルを見ると、効能としてマナの回復速度アップなどと書かれている。
陰陽術によるものだ。以前、現実のイベント会場にて色々と文句を言いながらも水を買っていたソロモンだからこその配慮であろう。
だがしかし──。
(……これは、本人にバレる前に販売中止とした方がよいのではないじゃろうか)
そのラベルを見つめながら、ソロモンの身の安全を心配するミラ。
なぜならば、ラベルに使われているイラストが水着のカグラであったからだ。しかも実際にはあり得ないほどのセクシーさである。明らかに販売対象がわかる代物と言えるだろう。
これをカグラが目にしたら、どうなるのか。
きっと面倒な事になるだろう。そう直感したミラは、その存在を見なかった事にした。
「おお……これが……」
全てソロモンが悪い。そう決めたミラは今、マリアナが開発に携わったという内の一つを手に取っていた。
そしてそれこそがダンブルフグッズの中で一番の人気商品であるという。
「うむうむ、なかなか良いイラストじゃな」
包装紙に描かれたダンブルフのイラストを眺めながら、満足げなミラ。
そして、そこに書かれた商品名を確認するなり「素晴らしいのぅ」と、ご機嫌に笑う。
イラストの上にあった商品名。それは『ダンブルフのチーズケーキ』だった。貰って嬉しい、食べて美味しいという鉄板中の鉄板なチーズケーキである。
そんな誰もが大好きなチーズケーキの顔となっている事で気分が良くなったのだろう。「流石はダンブルフじゃな」と、ミラはこれまでのあれこれを忘れて嬉しそうだ。
しかし、少しばかり複雑そうな顔をしている者が一人。
そう、マリアナだ。
彼女は知っていた。ダンブルフがチーズケーキの担当になった理由を。
それは、召喚術人気とダンブルフ人気を少しでも取り戻せるようにというソロモンの優しさであった。また何よりブランドイメージも兼ねて、売り上げでぶっちぎりの最下位となるのを回避するためだ。
だからこそ、誰もが大好きなチーズケーキなのだ。
そんな配慮とマリアナの想いと拘りが合わさった事で、ダンブルフのチーズケーキという絶品が出来上がった。
ダンブルフだけではさほど揮わなかっただろうが、極上のチーズケーキとあれば話は別だ。そのチーズケーキの美味しさ目当てで売れるのである。
しかもパッケージには、さりげなく『マリアナ秘伝のレシピ』と書いてあった。他に関わった商品には書かれていないが、このチーズケーキにだけは書かれているのだ。ダンブルフだけでなく、マリアナ人気もそっと上乗せしている次第である。
ただマリアナは、そんな真実を心に秘めたまま、ただただ嬉しそうに喜ぶミラを優しい目で見つめるのだった。
「解せぬ……しかしまあ、当然といえば当然でもあるか……」
どんな九賢者グッズがあるのかと一回りし終えたミラは、続いて隣のグッズエリアに踏み込んでいた。そしてそこに広がる現実を前にしたミラは、これでもかと顔を顰める。
九賢者グッズ売り場の隣。そこにあったのは、国王ソロモンのグッズ売り場であった。
まさかのソロモン公認のソロモングッズである。稼げる手段があるならば何でもやるという彼の意気込みが、そこには容赦なく詰まっていた。
しかも、何だかんだで九賢者と肩を並べて様々な伝説を作り上げてきたソロモン王である。加えて少年王という特徴的な容姿も相まってか、その人気は九賢者に負けず劣らずの勢いだった。
グッズ売り場には多くの客が集まっている。更に言うならば女性客の数が群を抜いて多い事もあり、ミラの嫉妬心は大絶賛上昇中だ。
「っと、これまたとんでもない爆買いぶりじゃのぅ……。もしや全種類網羅するつもりじゃろうか」
嫉妬メーターが振り切った状態であったにもかかわらず、よもやそこで思わず上昇が止まるほどの光景を目にするミラ。
それは、ソロモングッズを買い漁る熱狂的な女性の姿だ。もはや両手では抱えきれないほどの量をかごに入れては販売カウンターの横に積んでいく女性。
ミラがもしやと思った通りなのか。彼女は棚ごとにかごを用意しては、そこにあるグッズを全種類かごへと入れていった。
「よっぽどソロモン様がお好きなのですね」
マリアナもまた、その熱烈さに驚いたようだ。自然と彼女に目が惹かれた様子である。
「そのようじゃな。わしの方が渋くてカッコいいじゃろうにのぅ。まったく!」
ダンブルフグッズが並ぶ場所と、ソロモングッズが並ぶここでは、その人気度が雲泥の差といっても過言ではない。
その事実を、こうして突きつけられたミラは、特に熱狂的な女性を恨みがましく見つめる。
と、そうして少しばかりよく見ていたところであった。
「……ん? あの者、どこか見覚えが……」
あれもこれもと無駄のない動きでグッズをカゴに詰め込んでいく女性。周りのファン達をも恐れおののかせる彼女を見ていたところで、ふとミラの脳裏にその感覚が過った。
その女性の顔立ちと体つき。そして何よりも、そのソロモン好きぶりには、どこかで出会った事があるような気がすると。
はて、どこかの道ですれ違ったか。どこかの店で見かけたか。いったいどこだったかと考え込んだ矢先だ。
ちょっとすれ違った程度ではない。ここまで熱烈な人物とは、後にも先にもあの場面でしか出会っていなかったと思い出した。
「そうじゃったそうじゃった。確か大陸鉄道に乗る前の宿にいた客じゃった!」
アリスファリウス方面にある天上廃都に向かう時の事。駅街シルバーゲートにある和風様式の温泉宿にて、ミラは聖騎士の女性アセリアと出会った。
ソロモンの大ファンであるゆえか、その特殊な戦い方までも倣っていたものだから行き詰まっていた、あの彼女である。
昔はソロモンも盾を持っていた。そんなアドバイスをしてから幾月か。彼女は、その後どのような調子なのか。望みの盾は手に入れられたのだろうか。
と、そのように色々と思い出しては気になったところだった。
他に買い逃しはないかと視線を走らせたアセリアと、不意に目が合ったのだ。
直後アセリアは動きを止めた。何やら見つめられていたと気づいた彼女は、はてどうしてだろうか、知り合いだろうか、どこかで会った事があっただろうかと首を傾げながらミラをじっと見つめ始める。
「あ……ああー!」
顔見知りな碧眼の美少女、そしてアルカイト王国。これらから幾らか絞り込めたのだろう。数秒後にアセリアはミラの変装を見抜いた。彼女もまた当時の事を覚えていたのか驚きをその顔に浮かべながら怒涛のように駆け寄って来た。
「えっと、ミラちゃん……ミラちゃんだよね!? あたしの事覚えてる? ほら、星月荘で会った!」
嬉しそうに、というよりはどことなく獲物を見つけたかのような勢いで迫るアセリア。ただ、その表情に浮かぶのは再会の喜びだけではない。何か他に目的があるかのような、非常にギラギラとした目をしていた。
「う、うむ、覚えておる覚えておる。ソロモン好きのアセリアじゃろ。何というか、相変わらずのようじゃな」
こんなソロモンに囲まれたような場所にいるためだろうか。やけにテンションの高いアセリアを前にして困惑気味のミラ。
その理由は彼女の勢いもそうなのだが、何分アセリアは、なかなかに立派なプロポーションの持ち主だ。加えて身長差もあるため、目の前に山が迫ってくるわけである。それはもうそこにあるなら登ってみたい魅惑の山が。
だが今は、マリアナと一緒だ。ゆえにミラは理性との板挟みに遭いながら平静な顔を保とうと必死であった。
「覚えていてくれたんだ! 良かったぁ。じゃあさ、あの時の約束も覚えていてくれてるよね!?」
ミラが堪えている中、嬉しそうに飛び跳ねたアセリアは、次の瞬間にこれでもかというほどの期待に満ちた顔で更にミラへと迫った。
その顔は、それこそ恋する乙女のそれに近く、また深い欲望までも見え隠れするような妖しさに満ちたものだった。
という事で、クリスマスに続き大晦日が過ぎましたね。
そんな大晦日ですが、ここ数年は定番のテレビ番組を見ながらピザを食べるのがお決まりの過ごし方でした。
しかし今年は、そのテレビ番組が中止という事に!!!
そこで思いました。今年は何を食べようかと。
そのままピザを食べるのも、何か違うなと感じたのです。
ただ今回は、いつも買い出しに行く曜日の次の日が大晦日でした!
そこで買い出しの際に、大晦日を過ごすためのご馳走も一緒に買ってきました!
今回は、色々なお肉料理がセットになったやつと、色々なサラダがセットになったやつ、そして焼き鳥セットを買ってきました!!!
大豪遊です!
そうしていつもとは違う年末になりましたが、美味しく過ごす事が出来ました!
まだ体重計には乗っていません!!!!




