446 建国祭の学園にて
四百四十六
ミラはマリアナとルナにタクト達との出会いなどについて話し紹介した。
そしてタクトと両親にも、マリアナとルナの事を紹介する。大切な家族であると。
「ルナちゃんっていうんだ、すごい可愛い……!」
タクトの反応は実に分かりやすかった。愛くるしいルナの姿を目にするなり、ぱっと笑顔が咲いたのだ。
モフモフバッグから顔を出すルナは、その通りとても可愛かった。
とはいえ、極めて人見知りなピュアラビットのルナである。引き寄せられるようにやってきたタクトを前にして、ぴょいっとバッグの中で丸くなってしまう。
やはり注目されるのは、まだ苦手のようだ。
「ごめんなさい、タクト君。この子って、とっても人見知りなんです」
だが、残念そうなタクトにマリアナがそう告げた時だった。
マリアナの言葉に反応してか、それとも心境の変化か、はたまたルナの中で何かが芽生えたのか。
再びもぞもぞとバッグの中で動いたかと思えば、ルナが「きゅい」と小さく鳴きながら顔を覗かせたではないか。
「おお、珍しいのぅ。あの人見知りのルナが自ら出てきおった」
「はい、こんな事初めてです」
タクトが傍にいるままであるにもかかわらず、その真ん前に姿を現したルナ。その行動は初めての事であり、ミラとマリアナもまた驚いた。
しかもルナの珍しい行動は、それで終わらない。タクトに向かって「きゅい」と声を掛けたのだ。
「ふむ、この佇まい……もしかしたら撫でてもよいと言っておるのかもしれぬな」
「ルナからなんて初めてですが、そう見えますね」
これまでに見た事のないルナの行動。だがしかし、その際に発した鳴き声にミラとマリアナは聞き覚えがあった。
それは、撫でてほしいと甘えてすり寄ってくる時の鳴き声と同じ調子だったのだ。
だが今回は、すり寄りはせず、その場でじっと待っている。ゆえにミラとマリアナは予想したのだ。もしかしたら、撫でさせてやるといった意思表示ではないのかと。
「えっと、ルナちゃん。撫でてもいいですか?」
ルナの可愛らしさは万国共通だ。タクトもまた是非に撫でてみたかったようで、ミラ達の言葉を聞くなり期待に満ちた顔でルナに問いかけた。
するとルナは「きゅい」と答えるなり、少しばかり身を乗り出した。その姿たるや、さあ存分に撫でるがよいと言わんばかりである。
「ありがとう、ルナちゃん」
了承と受け取ったタクトは、そっとルナの毛に触れる。そしてその柔らかさと温かさに感動したのか、夢中になってモフモフと撫で始めた。
「きゅい、きゅいー」
初対面でありながらも、心を開き始めているのだろうか。ルナもまた、どことなく嬉しそうだ。
ただ、アシュリーも小動物好きだったようで、タクトを羨ましく思ったのだろう。「ああ、いいなぁ。僕も少しだけ……」と、僅かに近づいた瞬間──。
「きゅい!」
それはもうピュアラビットらしい迅速な速さでルナがバッグの中に引っ込んでしまったではないか。
「僕も撫でさせて──……」
懇願するように頼むアシュリーだったが、ルナが答える事はなかった。バッグの中で、断るとでもいった様子で頑なに丸くなっていた。
「ほら、お父さん。ルナちゃんが怖がっちゃってるから」
そう離れるように言ったタクトは、「ルナちゃん、もう大丈夫だよ」と声をかける。
するとどうだ。その声に反応して、再びルナが顔を覗かせたではないか。
「いいなぁ……なんで僕はダメなんだろう……」
遠くに追いやられたアシュリーはタクトと戯れるルナを見つめて、ほろりと涙した。
と、そのようにルナの一挙手一投足に盛り上がっていたところだ。
「あ、こちらにいましたか。っと、何だが随分と楽しそうですね」
そんな言葉と共にやって来たのは、なんとエカルラートカリヨンの団長セロであった。
「おお、セロではないか。大会ぶりじゃな!」
そうミラが声を掛ければ、セロはミラの事をじっと見つめてから、「どうも、ミラさん。大会ぶりです」と直ぐに変装だと気付き笑顔で返す。
ニルヴァーナで別れ際に言っていた通り、セロ達も建国祭を楽しんでいるようだ。しかも今のセロは、ラフな服の上に法被を羽織っていた。どちらかというと、夏祭り色が強めである。
ただ、一つ気になる点があるとすれば、セロがかけているタスキに『エカルラートカリヨン名物』なる文字が書かれている事だ。
見た限りで言うならば、参加するというよりは出店する側に近い格好といえよう。
「ああ、そうだ。ミラさんにも、是非こちらをどうぞ。うちの屋台で出しておりまして」
そんな普段と違うセロは、丁度いいところにとでもいった調子で、アイテムボックスから小さな紙袋を取り出した。
その紙袋には、甘い香りのするころころとしたものが入っている。いったいこれは何だろうか。とても見覚えのあるものなのは確かだ。
差し出されたそれを受け取ったミラは、その一つをひょいと抓んで口に放り込み咀嚼する。
そしてミラは間もなくして、その正体にたどり着いた。
「これは……! エカルラートカリヨン……カリヨン──鈴……じゃから鈴カステラというわけじゃな!」
「その通りです!」
祭りの定番お菓子である鈴カステラ。だがそれでいて、相当に改良が加えられているようだ。
素朴で懐かしさすら覚える味わいながら、もっちりとした食感は、新たな時代の風を感じさせる一品だった。
場合によっては、食べただけでそれが鈴カステラだとは気づかなかったかもしれない。
けれども、それを的中させたミラは、なぜ鈴カステラなのかまでも推理してみせた。
鍛え抜かれた灰色の脳細胞が珍しく仕事をしたのだ。どうしようもないダジャレのような答えであるが、それでも真実を解き明かしたミラの顔は名探偵のそれであった。
「ところで、先程誰かを捜しているような様子じゃったが、もしやタクト達に用事じゃったか?」
マリアナとルナにも鈴カステラを分けながら、そのように問いかけるミラ。セロがやってきた時の、「こちらにいましたか」という言葉を思い出したのだ。
「おっと、そうでした。リーネさん」
マリアナとルナもまた鈴カステラを食べて美味しそうに微笑んでいた。セロはそれを見て手応えを感じながらリーネに目を向ける。
「はい、なんでしょうかセロ様!」
するとどうだ。名を呼ばれたリーネは、もはや乙女モードとでもいった態度でセロの傍に駆け付けたではないか。
「それが商業地区の方なんですが──」
そんな彼女にセロは言う。商業地区の屋台で調理担当が怪我をしてしまったため、一時間早めに当番に入っては貰えないだろうか、と。
何でも、調理担当の一人が祭りの神輿担ぎではしゃぎ過ぎてしまったそうだ。腰痛が再発してしまい、今日一日は安静にしていなくてはいけないという事だった。
そのため、その次の調理担当であるリーネが繰り上がったという次第である。
「お任せください!」
それらの事情をセロが説明し、どうにかお願い出来ないだろうかと言っていた途中である。リーネは、一も二もなく即答した。
「ありがとうございます、助かりました。それで今の状況なんですが、中身用のクリームが──」
リーネの返事に安心した様子のセロは、そこで簡単に担当する屋台の状況について話した。在庫状況の他、神輿の動きと客の移動などで、担当してもらっている時間に最盛期がくるかもしれないなど。今回が初参戦であるリーネを心配してだろう、屋台慣れしている者がいるので、いざとなれば頼るようにだとか色々とアドバイスをする。
そしてリーネはというと、そんなセロの言葉を夢中になって聞き、うっとりとした様子で返事をしていた。
人妻すらも虜にする。何と罪深い男であろうか。
「あれぇ……家族で楽しむ予定だったんだけどなぁ……」
と、そんな場所から少しばかり離れた位置で佇むのはアシュリーだ。
可愛い息子のタクトは、ルナと楽しそうに遊んでいる。一緒に鈴カステラを食べたり抱きしめたり、それはもう自分もしたいのだとアシュリーは羨む。
そして大切な奥さんは、他の男に熱を上げているときたものだ。しかもその相手というのが、自身が霞むほどの大物であり、返しきれない大恩がある人物というのだから、やるせない。
「……お主も、一つどうじゃ?」
「……ありがとう、ミラさん」
見るに見かねて紙袋を差し出したミラと、せつなそうに鈴カステラを口に含んだアシュリー。そんな彼にミラは「どんまい」とだけ告げて慰めるように肩を叩き去っていった。
アシュリーは、戻るなりマリアナとイチャコラするミラからそっと視線を逸らした。そして、これは一過性のものに過ぎないはずだと信じ、いずれ戻ってきてくれるだろう二人を待って天を仰いだ。
「おお、まるで学園祭のようじゃな!」
セロ達と別れた後にミラ達がやってきたのは、アルカイト学園だった。
建国祭は、街だけでなく様々な施設を全て巻き込んでのお祭りであるため、学びの殿堂であるアルカイト学園もまた、この期間だけは全生徒全教員を挙げての大騒ぎとなるそうだ。
校舎内に足を踏み入れると、そこはもうお祭り会場だ。
いつもの厳粛とした雰囲気はどこへやら。扮装した生徒達が練り歩き、そこかしこの教室で様々な出し物が用意されていた。
その内の一つである、歴史ストリートなる廊下を進むミラ達。
「何とも、本格的じゃのぅ」
「このあたりは毎年同じ方が担当していまして、学園に来る前は歴史研究家をしていらしたそうです」
何だかんだで建国祭の時には、マリアナも関係者側として参加する事が多かったという。そのため学園内の事については、色々と把握しているようだ。
行く先々にて、そこで行われている出し物の裏話などが次から次に出てきた。
「ほぅ、道理でここまで詳細なわけじゃな」
そんなマリアナの裏話にも耳を傾けながら、気になる出し物を回っていくミラ。
各教室にて行われている出し物は、やはり建国祭という事もあってかアルカイト王国に関係するものが多かった。
建国から今に至るまでの年表などは、ミラがまだ来ていなかった三十年間も網羅されているため、それを一年ずつ追うだけでも楽しめる。
特に最初の十年ほどは、ソロモンの迷走ぶりと困惑具合、そして必死な努力がひしひしと伝わってくる内容だった。
「この辺りは、特にごちゃごちゃとやっておるのぅ。それこそ手探りといった状態じゃな」
「それはもう、突如賢者様方が消えてしまわれた時期ですから。当時はルミナリア様もいらっしゃいませんでしたので、毎日が戦争みたいに慌ただしかったです」
当時の混迷ぶりを思い出したのだろう、マリアナはどこか懐かしむように目をつむった後、それからミラを見つめ「今とは大違いです」と嬉しそうに笑った。
他にも年表には、興味深い内容が幾つも記載されていた。
ソロモンが行ってきた、様々な政策についてなどは特に詳しい。
五行機関を始めとする、今のアルカイト王国を支える主要施設の重要性。そしてそれらをいち早く整備したソロモンの手腕などを、これでもかと称賛している。
また、ベネディクトトンネルの開通と、それによる産業の発展。シルバーホーンとの往来が活発になった事による観光業の活性化。一泊二日程度で銀の連塔を見に行けるようになったと、そこには喜びの言葉が羅列されていた。
そしてアルカイト学園の設立。そこで学べる英知は、銀の連塔があってのものだと真摯に綴られている。また、今の最高の伴侶と出会えたのもアルカイト学園のお陰であると、それはもう熱く書かれていた。
何よりも特に思いがこもっている箇所は、やはり二十年前。そう、九賢者の一人であるルミナリアが帰還した時期だ。
2126、8、11。この日こそアルカイト王国の未来が、大きく変わった運命の日であると記載されている。
加えて、これを書き認めた者は、余程ルミナリアを崇敬しているのだろう。はたまた、もっと別の感情があるのか。その日より先から、ルミナリアが行ってきた公務について余す事なく記述されていた。
少しばかり視点を変えると、ストーカーめいた何かすら感じられるほどの情熱で、それらについてまとめられている。
とはいえ、ルミナリアの事だ。どちらかというのならばどうでもいい事だと流したミラは、それでいてルミナリアが行ってきた任務を確認しては徐々に表情を顰めていった。
(何というか、今のわしの扱いとはえらい違いじゃな!)
九賢者としての帰還という事もあってか、ルミナリアの公務の多くは何とも華々しいものだった。
国連会議におけるソロモンの代理だったり、懇親会のパーティだったり、友好国で行われた王族の結婚式典のゲストだったりと、多忙そうながらも実に煌びやかな舞台ばかりである。
対して自分の扱いはどうなのかと、ミラは改めてこれまでを顧みる。
初めに出張したのは、腐った死体が蠢く古代神殿ネブラポリス。その次は、人里離れた森の奥地。更に次は、高い高い山の上にある廃墟の街。
思い返すほど浮き彫りになっていく扱いの違いに、ミラの表情は一段と険しくなる。
(もう少しじゃな、ほれ、こう、何かあったはずじゃろう!)
ダンブルフではなく、ミラになってしまった事。それは確かに、ミラ自身に原因がある。
ダンブルフとして帰国したのならば、それは間違いなく大陸中を騒がせる大ニュースになったであろう。そして二人目の九賢者帰還として、華やかな公務で忙しくしていたかもしれない。
それが今は、どうだ。ちょっとした手違いで美少女になってしまったせいで、九賢者としての実力はそのままであるにもかからわず、裏の任務で泥臭くこき使われているのだ。
これは少しばかり、待遇が悪いのではないだろうか。しかも今は、そんな任務を見事にこなしてきた実績もある。
(結果、多くの九賢者を連れ戻したわけじゃからな。もっとこう、あってもよいのではないか!?)
ダンブルフという看板に泥を塗りたくないという自分自身の我がままもあるという事を棚に上げたミラは、今度待遇の改善でもソロモンに訴えようかと画策する。
早い話が、支度金をもっと寄越せだとか、実験のために術具や素材なんかも沢山使わせろといった改善内容だ。
はたして、そんなミラの要求は通るのかどうか。はてさて、それは難しいかもしれない事だが、それでも期待を胸いっぱいに膨らませながらミラは悠々とアルカイト王国の歴史を辿っていった。
これまではダイエットという事で、お米を食べるのは週に一度のチートデイだけだったのですが……
もっとお米が食べたい!
と思いまして、どうにかいい感じにお米を食べる方法を考えていました。
そこで、一つ思い付いたのが雑穀ごはんです。
雑穀ごはんにする事で、健康的に栄養を摂るという大義名分が生まれるという作戦です!
しかし、当然ながらカロリーやら糖質が少なくなるというわけではないので、もう一工夫必要だと考えました。
そして行き着いたのは……
キャベツチャーハンです!!
ちなみに普通にキャベツを使うのではなく、みじん切りにするのが閃いた部分になります!
なんとキャベツ4分の1個分と、ご飯0.75合で2食分のキャベツチャーハンが完成します!
雑穀ごはんの栄養にキャベツの野菜分が加わる事で、罪悪感ゼロ!!!
味付けをしっかりすれば、満足感もばっちりのチャーハンが完成です!
いやはや、我ながら素晴らしいものを発明してしまいましたね。
しかもチャーハンなので色々とアレンジも出来そうです。
暫くは、これを色々と追及していこうと思います!




