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407 協奏の夜

四百七



 満足いくまで見学したエリヴィナ達と合流したミラは、魔法少女風フリークな三人娘達と別れた後も様々な催し物を見て回った。

 中でもイリスが興奮していたのは、各国の英雄が集まり魔獣王グランカエクスとの決戦に挑んだ時を再現した演劇だ。

 困難に立ち向かう勇気と団結に、それはもう夢中になっていた。

 対してミラ達はというと、少々バツが悪そうに苦笑いを浮かべている。

 それというのも、この各国の英雄というのに九賢者も含まれていたからだ。


「しかしまた演劇というのは恐ろしいのぅ……。あれを、よくぞここまで美談に出来たものじゃ……」


「あの時の、ですよね。今でもよく覚えています……」


「ほんと、何をどう解釈したら、こんな話になるのかしら」


「八十六回ですにゃ。小生が巻き込まれたのは八十六回ですにゃ。今でもよーく覚えていますにゃ」


 ミラだけでなくヴァルキリー七姉妹や団員一号も、その戦いを経験していた。

 魔獣王グランカエクス。それはプレイヤー達にとって初めて遭遇する事となった、大規模レイドボスだった。

 かつてのミラ──ダンブルフら九賢者もまたソロモンと共に総力をあげてこれに挑んだ。

 だが、それだけではない。アトランティスやニルヴァーナも含め多くの国の猛者達が、その討伐に参戦していた。

 ゲームとしては珍しく、FF(フレンドリーファイア)──仲間同士でも攻撃が当たる仕様であったため、魔獣王の攻撃だけでなく他のプレイヤー達の攻撃にも注意しなければならなかった。

 だが、ここまでのプレイヤーが入り乱れる戦闘は誰もが初めてであり、その結果戦場は阿鼻叫喚。

 やられたらやり返す。初めての大規模レイドボス戦は、魔獣王と他プレイヤーを相手とするバトルロイヤルな戦いへと推移していったのだ。

 最終的には、《軍勢》と《巨壁》によって他プレイヤーを抑えている間にソロモン達が魔獣王を仕留め、その戦いは九賢者の勝利という形で幕を閉じた。

 だが目の前で繰り広げられている演劇では、国同士が手を取り合い協力し、力を合わせて見事魔獣王を討伐したという内容に変わっている。

 国境を越えた共闘。国とは本来こうあるべきだ。戦争は何も生まない。国は違えど人は繋がりあえる。などといったメッセージが演劇にはふんだんに盛り込まれており、イリスはそれにいちいち感動していた。

 そんな純粋なイリスを前に真実を知るミラ達一同は、当時の事は誰にも言うまいと心に決めるのだった。




 そうして夕暮れ時も過ぎ去り、空が夜の帳に覆われ始めた頃。

 それでも辺りは照明によって明るく照らされ、未だ会場内は多くの者達で賑わっている。

 そんな会場の一角、より一層賑やかな音色に包まれた場所にミラ達の姿はあった。

 そこは、コンサートステージだ。大陸中から集まった音楽を生業とする者達が、この大舞台の主役である。

 民謡やバラード、合唱に聖歌、更にはロックやポップスといった現代調のものまで。この舞台にコンセプトのようなものはなく、あらゆる音楽が奏でられていた。

 しかも曲順といったものも一切考慮されてはいないようだ。激しいロックの次がクラシックな曲などという落差の激しいコンサートでもある。

 とはいえ、それもまた次にどんな曲が来るのかという楽しみも生み出していた。

 また演奏に使われる楽器も様々であり、観客達は慣れ親しんだ曲に和みつつ、聞き覚えのない曲に刺激されながら盛り上がっている様子だ。

 加えて曲の合間合間に司会がちょっとした会話を挟んでくるのだが、それがまた音楽家達の人となりを見事に引き出すものだから面白い。


「ふむ、カバーバンドか……。とはいえ誰のカバーをしておるのか、ほとんどわからぬじゃろうな……」


 ミラは、その一曲一曲に耳を傾け、個性豊かな音楽家達の話を楽しむ。

 今演奏しているのは、間違いなく元プレイヤーであろう。そのバンドが歌う曲は、全てミラも馴染みのあるものばかり。

 つまりは、現代で流行っていた曲なのだ。

 そのためかバンドはコピーバンドと名乗っているが、何をコピーしているのかは元プレイヤーにしかわからないだろう。


「何だかカッコイイですー!」


「悪くないですね」


「音楽って色々あるのね」


「小生も今、ギターの練習中ですにゃ!」


 どちらかというと懐かしさを感じるミラとは違い、イリス達にとっては新鮮な音楽と聞こえるのだろう。

 ミラは、そんな感じ方の違いにそっと微笑みながら歌詞を口ずさみ、楽しいひと時を満喫する。

 そうしてコンサートも最終盤。トリを飾る事になった音楽家が舞台に上がったところで、ミラは「おお!?」と驚きを口にした。


「さあ、今日も最後になりました。今夜を〆て下さるのは、この方達。その甘い歌声と優しい歌声のハーモニーが魅力な新進気鋭のデュオ、エミーリアーナです!」


 コンサートの進行役がそう紹介したところで、「よろしくお願いします」と一礼する二人の音楽家。

 ギターを手にする男性のエミーリオと、ライアーハープを持つ女性のリアーナ。そっと寄り添うように立つ二人の姿は仲睦まじく、それだけで心を穏やかにしてしまうような優しさに包まれていた。

 その二人が演奏を始めるなり、その旋律は瞬く間に会場に澄み渡っていき、歌声は空高くへと解けていく。

 これまでに見てきた世界、そしてこれから見ていくであろう世界を夢想する。二人の歌は、そんな旅情たっぷりでいて明るい未来に向かうような、希望に満ちたものだった。

 曲が進むほど観客達も盛り上がり、そして目の前に浮かんでくるかのような旅の情景を垣間見ては共感し、またいつか見てみたいと夢に思う。


「そうかそうか……その道を選んだのじゃな」


 エミーリオとリアーナの歌が終わる。するとミラの胸に去来するものがあった。

 二人が歌い、二人が望んだ未来。

 エミーリオとリアーナ。二人とは、かつて大陸鉄道にて出会った仲だ。

 片や盲目となり絶望の中にあったリアーナ。そんな彼女を壮大な旅に連れ出した吟遊詩人のエミーリオ。

 あの日出会った二人は、こうして共に歌っていくという未来を選んだわけだ。

 響き渡る歌は、共に歩んできた旅の思い出を綴ったもの。そしてまだ見ぬ旅路の先に想いを馳せるもの。

 だがミラにとって、二人の事を知る者にとって、それは鮮烈なまでのラブソングだった。




 と、ミラが二人との出会いを思い出していた時である。


「素晴らしい歌をありがとうございました!」


 そのように締め括った司会者が「さて──」と、フリートークを開始する。


「皆さん、精霊女王と呼ばれる新進気鋭の冒険者をご存知ですか? ご存知ですよね? なんと私が噂で聞いた話によりますと、エミーリオさんとリアーナさんは、今のように有名になる以前の精霊女王さんとお会いした事があるとか。その点について、私とても気になるのですが……真実は如何でしょう?」


 二人に素早く距離を詰めるなり、さあどうぞとばかりにマイクを向ける司会者。客席からも期待の声が上がる。

 対してエミーリオとリアーナは苦笑しながら手を繋ぎ「はい、会いました」と肯定した。


「僕達にとってあの出逢いは、一生忘れる事の出来ない思い出です。何よりも彼女に会えたからこそ、今の僕達があるといっても過言ではないんです」


 エミーリオは、あの時の出逢いがどれだけ素晴らしいものだったかを語った。

 楽しい冒険の話を聞けた事。二人で本音をぶつけ合うきっかけをくれた事。そして音の精霊に会わせてもらえ、音楽の可能性を心の底から信じさせてもらえた事。

 エミーリオ、またリアーナも、あれは神様がくれたような出逢いであり、それはもう大切な思い出だと告げた。


「精霊女王さんは、素晴らしい方なのですね。彼女のお陰で、こうしてお二方の歌を私達も聴く事が出来たわけですから」


 感慨深げに頷く司会者は、そこから更に「もしもまた会えるとしたら、どうですか。やっぱり会いたいですか?」と続ける。


「もちろんです」


「はい、会ってお礼を言って、今の私達を見てもらいたいです」


 当然とばかりに答えたエミーリオとリアーナ。けれど二人は、いつかどこかで自分達の歌が届いてくれればそれだけで幸せだと言って笑った。


「きっとその時には、また素晴らしい歌が生まれるのでしょうね」


 と、司会者が最後に〆の言葉を口にした時だった。コンサート会場に思いもよらぬ声が響いたのだ。


「見てますよ! お二人の事、ミラさん見てましたー!」


 ぎょっとして振り向くと、立ち上がったイリスがそんな事を叫んでいたではないか。しかも二人の話に感極まったとばかりな顔である。


「これ、イリス。何をしておる!?」


 現在ミラは変装中だ。

 なぜ変装しているかというと、精霊女王だと気付かれて騒ぎになるのを避けるためであった。

 だからこそミラはコンサート後に、そっと二人に会いに行ってみようなどと考えていたところだ。

 だがまさかこんな場所のこんなタイミングでイリスがばらすとは思いもよらず、ミラは慌ててイリスを引き戻す。

 けれど、時すでに遅し。ステージ上の二人だけでなく、観客全員の視線がミラ達の方に集まっていた。


「え、ほんと?」「なんだ? 何かの冗談か?」「あれだろ、そういう演出だろ?」「どこ? どこにいるの?」


 そんな声があちらこちらから湧き上がってくる。

 また何より遠くの反応は曖昧といった様子だが、近くともなると別だ。


「黒髪だけど、言われてみれば……」「あ、変装しているのか!? もしかして変装していたのか!」「ケット・シーだ。確か召喚出来たよね」「よく見れば確かに……」


 と、そうだと疑って見てみれば、そうではないかという要素がちらほら浮かび上がるものだから大変だ。

 これは本物なんじゃないかという声が次第に大きくなっていき、あれよあれよという間にコンサート会場は、精霊女王コールで溢れていってしまったではないか。


「ミラさん凄いですー! 大人気ですー!」


 変装がばれてしまった云々といった事は、まったく気にした様子のないイリス。それよりも精霊女王ミラの人気ぶりを、心の底から喜んでいる様子だ。


「如何なさいますか、主様」


「脱出するなら、お任せください」


 いつ殺到してきてもおかしくはない状態だ。シャルウィナとエリヴィナは、周囲に目を配りながら警戒する。

 そして団員一号はというと、ギターを手にミラの肩に立つなりニヒルに笑う。


「さあ、団長、小生達のロックが頂点をとる日がやってきましたにゃ!」


 視線が心地良いとばかりに悦に入る団員一号。その背にあるプラカードには[シェケナベイベー]と書かれていた。

 ともあれ、既に騒ぎは誤魔化しがきかないほどに広がってしまった。

 そうなれば選択肢は一つだ。


「まったく、仕方がないのぅ」


 バレてしまったのなら、それはそれ。満更でもなさそうなミラは立ち上がるなり、颯爽と飛び上がって宙を駆けていった。

 そのまま観客達の頭上を飛び越えてステージにとんと着地したミラは、エミーリオとリアーナに「久しぶりじゃな」と、苦笑気味に声を掛ける。


「凄い変装ですね。でも、その声とその目は、間違いなくミラさんだ」


「そうね。ミラさんの声」


 対面するなり、二人はそう嬉しそうに笑った。

 するとその様子を前にした司会者が、「何という偶然の再会なのでしょうか!」と煽り盛り上げる。

 それは、本当にただの偶然だったのだが、むしろ運営側が用意したサプライズなのではないかといった声も上がる。

 そんな中ミラは、エミーリオらと幾らか言葉を交わしたところで不敵に笑った。


「二人がコンサートのトリを飾った後じゃが、わしにも一曲披露させてはもらえぬじゃろうか?」


 本来ならば、このままコンサートは終了だ。けれど折角の好機であると判断したミラは、まずエミーリオとリアーナに目配せするなり、司会者に振り向いた。


「それは素晴らしいですね!」


「ええ、私も是非また聴きたいです」


 ミラが何をする気なのか直ぐに察したようだ。エミーリオとリアーナは、後押しするように同意を示す。

 そんな二人の反応から、司会者もまたピンときたようだ。「確認しましょう!」と言うなり、ステージ裏に走っていった。

 それから十数秒後、駆け戻ってきた司会者は「是非ともお願いします!」と言う言葉を届けた。

 許可は、とれた。

 ともなればミラは、ここでもまた召喚術ここにありとばかりに笑いながら、ロザリオの召喚陣を展開した。


『この声が聞こえたら、この想いが届いたら、君は目覚めてくれるだろうか。その声を聞かせて欲しい、その声で歌って欲しい。鈴のように響く音色をもう一度、今此処に願う』


 静かに響くミラの詠唱。それは進むに連れて召喚陣を輝かせていき、一際眩く光ったところで、その者を降臨させた。


「ふわぁ……コンサート会場ですよぅ!」


 音の精霊レティシャは周囲を見回すなり、その場所がどういったところなのか把握したようだ。

 ステージの後ろに並べられた楽器や音響設備、そして期待に満ちた表情の観客達を前にして、それはもう大喜びだった。


「それじゃあ歌いますよぅ。奏主様の──」


「──いや、それはまた後でよい。それより、《永遠なる君へのラブソング》を頼む」


 ここで《奏主様の歌》などという、聴いているこちらが照れてしまう曲を歌われては大変だ。そう素早く判断したミラは、早速とばかりに歌い出そうとしたレティシャを制し、今の二人にぴったりな曲を選んだ。

 それは、エミーリオとリアーナ、二人の未来を祝福するための一曲だ。


「リクエスト、承りましたよぅ」


 少々残念がるレティシャであるが、リクエストもまた大好きであり、それはもう存分に奏で始めた。

 健やかなる時も、病める時も、共に歩み、共に過ごし、共に越えていく。

 二人の幸せ、二人だからこその幸せ。何気ない幸せ。

 生きていく上では、必要のないもの。けれど、だからこそ必要と思える気持ちこそが大事だという事。

 レティシャの歌は、そんな純粋でいてひたむきな愛に溢れていた。

 そして何よりも音の精霊の成せる業か、このタイミングで歌を聴きに次から次へと観客が集まってくる。

 ラブソングが終わったところで観客達は冷める事なく、またこういったステージは久しぶりだからだろう、レティシャも相当に調子が上がっていた。


「あ、エミーリオさんとリアーナさんですよぅ。一緒に歌いましょぅ」


 またレティシャは、エミーリオとリアーナを覚えていたようだ。二人に気付くなり早速とばかりに駆け寄っていく。


「はい、喜んで」


「あの、私も……その、レティシャさんに憧れて音楽を始めたんです」


 心の底から喜ぶエミーリオと、思いを述べるリアーナ。

 するとレティシャは「それはとても嬉しいですよぅ!」と歓喜して、リアーナに飛びついた。

 そうして今度は、レティシャとエミーリアーナの合奏と合唱が始まる。

 精霊と人とで奏でるそれは、両者の未来の在りようを示すかのようであった。素晴らしい音楽に種族の差など関係ないと誰もが知り、誰もが引き込まれていく。

 しかもコンサートはそれだけで終わらない。更に他の音楽家達も、居ても立っても居られないとばかりに飛び出してきて、そのままアンサンブルが始まったのだ。

 その結果コンサートステージは、ここから本番だとばかりに盛り上がり、あっと言う間にレティシャを中心とした楽団が出来上がっていったのだった。











そういえば、毎年恒例のアレが始まっていますね。


そう、春のパン祭りです!!!


とはいえ、きちんとダイエット継続中の今、パンはなかなかに難しいものですよね……。

しかし堂々とパンを食べる口実──


いえ、今年のお皿は、とてもシンプルで使いやすいタイプ!

是非ともゲットしたいところです!


さて、どうしたものか……。

何かいい方法はないかと売り場を見て回っていたところ……


いいのがありました!

なんと、ランチパックの一つにカロリーオフというものがあったのです!

具は、ツナ&たまご!

鉄板の美味しさです!


更にはカロリーオフ!

もう、これしかありませんね!


去年まで買っていたホワイトデニッシュショコラは、一つ400キロカロリーくらいでしたが、

今回のランチパックは、一パックで200キロカロリーです!


さぁ、ポイントためるぞー!




ところで今回、28ポイントでお皿一枚になっていますが、

今までは25枚じゃありませんでしたっけ……?

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゲーム時代だからこそのハチャメチャエピソード! 現実だった凄惨な悲劇でしかない歴史の裏話を、当事者がある種の笑い話として語るのは、ゲーム時代から地続きで歴史が積み重なっているが故の醍醐味で…
[良い点] 伝説の演劇を観賞する生きる伝説(タイトル風)的な?笑
[良い点] 騒動が起きなければ話として面白くないのは判りますが イリスの今まで不自由だったからなにをしても許されるは やりすぎると反感買いそうかな、などと思ったり。 しっかりとした注意は必要だと思いま…
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