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404 お出かけの準備

四百四




 悪魔アスタロトとの決戦後。少し落ち着いたところでアルマに通信室を貸してもらったミラは、ソロモンに現状を報告していた。

 とはいえイラ・ムエルテ関連については、アルマとも連絡を取り合っていたソロモンだ。だいたいの事は把握済みだそうだ。

 ただ、資料を基にした情報では足りない部分もある。

 ミラは、ソロモンが気になったという幾つかの疑問について、当事者目線で答えていった。

 と、そうして悪魔アスタロトの企みはまだ終わっていなさそうだ、といった結論に達したところで通信装置越しにスレイマンの声が聞こえてきた。

 どうやら、ソロモンに用事がある様子だ。


「何ともまた、随分と忙しそうじゃな」


 もう少ししたら行くと答えるソロモンに対して、ミラはこれでもかと寛ぎながら言う。メイリンを見つけ出し、更には悪の組織の首魁を討ち取ったミラはもう、一仕事どころか二仕事終えたとばかりに休暇モードだ。


『ああ、建国祭の準備もあってね、てんてこ舞いだよ。何と言っても九賢者の帰還を発表する場にもなるから出来るだけ豪華で盛大にしようと思っているんだけど、今は招待状を誰に送ろうかで難航していてさ』


 そう答えたソロモンのため息が通信装置を介して聞こえてくる。


「ふーむ、なるほどのぅ。それは確かに難儀じゃな……」


 いわゆる国の誕生日祝いだが、今回は九賢者の帰還というアルカイト王国史上最大級の発表が控えている。

 ともなればお祝いだけでなく、見届け人という意味合いでも、今までより多くの有力者の目に留まった方がいい。そうすれば九賢者の抑止力としての効果が、より大きく広まるというものだ。

 ソロモンが言うに、現時点ではアルマが出席を約束してくれており、アトランティス側もまた将軍位の数人を出席させてくれるとの事だ。

 アーク大陸において一位と二位を誇る二大国家が建国祭に出席するともなれば、アーク大陸諸国への睨みは万全といっても過言ではない。

 だが、場所は海を挟んでの向こう側。位置的には、相当に遠い国となる。


『出来る事なら、もう一手強力な何かが欲しいところなんだけどねぇ……。アリスファリウスとは、それなりに仲良くさせてもらっているけど、まだ流石に大物を招待させてくださいとは言えないし……』


 よって周辺諸国への牽制という面を考えるならば、出来ればアルカイト王国と同じアース大陸内における強国、特に三神国あたりとの友好関係を示唆しておきたいというのがソロモンの考えのようだ。

 けれども抑止力として、また注目度の面で話題になるほどの人物は、まだ出席してもらえないだろうと言う。

 アリスファリウス側も自国の影響を知っているからこそ、そのあたりの基準は極めて厳しいらしい。


『まあ、そういうわけで会議に行ってくるよ。今日も決まりそうにないけどね……』


「うむ、そうか。……ご苦労様じゃな」


 国の今後を思ってか、重々しいため息を漏らすソロモンと、彼の心労を思いやりつつも、あまり巻き込まれたくないと一歩身を引くミラ。

 そうしてミラは、簡潔に現状報告を終えた。

 しかし、それだけでは終わらない。次に王城の中庭へと場所を移してワゴンを取り出すと、今度は召喚術の塔に連絡を入れたのだ。

 その目的は、当然マリアナである。


『はい、こちら召喚術の塔、補佐官のマリアナです』


 何とも久しぶりにも感じる声が、通信装置から聞こえてくる。

 ミラは、その愛おしい声に聴き入りながら満面の笑みをこぼして「わしじゃよ。元気にしておったか?」と答えるのだった。





 大陸全土に影響を与えた『イラ・ムエルテ』本拠地攻略作戦完遂より数日後。

 さて、仲間達が各々で自由に過ごしている中、ミラはどうしているかというと──


「ふむ、自分で染める場合と何が違うのじゃろうな……」


 その姿は、今もイリスの部屋の中にあった。

 脅威が去った今、イリスが狙われるような事はもうない。よって護衛の任は解かれたミラが、なぜまだここにいるのか。

 それは、ただ快適な環境が整っているイリスの部屋に居座っている……わけではない。

 単純に、イリスがそれを望んだからだ。闘技大会が終わり帰ってしまうまでは、友人として一緒に過ごしたいと。

 とはいえ、男心を内に秘めるミラがイリスと共に暮らす事を容認されてきたのは、何よりも護衛という名目があったからこそ。

 そのように考えていたミラは、だからこそ、それを継続するのは難しいだろうと思っていた。

 しかし、アルマはあっさりとこれを了承したではないか。


(それもまあ、そうじゃろうな。裏があって当然というものじゃ)


 アルマが許可した思惑。それがどの程度のものなのかは不明だが、一つだけ明確に理解出来るものがあった。

 その一つとして、ミラは今、イリスに髪を染めてもらっている最中だ。


「これでばっちりですー!」


 上下左右から確認したイリスは、その染め上がりぶりに満足そうな笑みを浮かべていた。

 事実、ミラが自身で染めた時のような色むらもなく、とても艶やかな仕上がり具合である。

 更に長い髪をお下げに結った事で、これまでの印象から一転し、どことなく大人しめな少女といった様子へと変わっているではないか。


「ふむ、なかなかよいな。これならば、わしと気付かれんじゃろう!」


 ミラがしていたのは、変装だった。

 では、なぜ変装などしているかというと……そう、二人はこれから外出するのだ。

 命を狙われる理由がなくなったため、イリスは数年ぶりに外へ出る事が出来るようになった。

 かといって危険がないかというと、それもまた違う。

 暗殺者だなんだという心配はなくなったが、大陸最大級のイベントが開催中であるため人も多く、それだけ危険も増えているのだ。

 そんな街に、数年もの外出ブランクがあるイリスをいきなり解き放つなど出来るはずもない。

 しかも彼女は男性恐怖症だ。

 そのように誰もが心配する状況であり、当然アルマの心配もまた絶大だった。

 だからこそ、ミラに役目が回ってきたわけだ。護衛改め、友人兼引率役としての役目が。

 それを機に、まずミラはイリスの男性恐怖症を治すべく動いていた。

 その方法はというと、ワーズランベールや、人間形態のアイゼンファルドに協力してもらい少しずつ慣らしていくというものだった。

 距離を変えつつ過ごしていき、いざ辛そうになってきたらワーズランベールの隠蔽能力によって見えなくしてしまう事が出来た。

 そうして少し慣れてきたところで、人間形態のアイゼンファルドの登場だ。

 見た目は、まるで物語に出てくる王子様のようなイケメンであるアイゼンファルド。

 だがそれでいてミラの前では子供のような甘えん坊になる事もあり、普通の男よりも男性感のようなものは希薄といえた。

 それが功を奏してか、イリスはミラに甘えるアイゼンファルドを見るだけなら問題ないというほどにまでは回復したのだ。


「どうじゃ、町娘のように見えるか?」


 そうしてこの日は、いよいよこれまでの集大成である外出にこぎつけた次第だ。

 ミラは変装した自身の姿を鏡で確認して、その新たな可愛さを気に入るなり自信満々に振り返ってみせる。


「完璧ですにゃ!」


「はい、素晴らしい変装具合です!」


 その先にいたのは、団員一号とシャルウィナだった。ミラと共に、両者もまたイリスの友人として過ごしている。

 団員一号はカードゲームの対戦相手として確固たる地位を築いており、シャルウィナもまた本好き仲間という立場にて最高の友人となっていた。

 二人は、これならば容易く看破される事はないと太鼓判を押す。

 ただ、その直後の事だ。不意にシャルウィナが、ハッとしたように目を見開くと、そのままじっとミラの全身を隈なく見つめ始めたのだ。

 そして何事かと戸惑うミラをよそに、イリスへ向けてこう言った。「この髪型……『ミッドナイト・サーチャー』のブリジットが、サティスン市場に紛れ込む時のものですね!?」と。


「はい、大正解ですー! シチュエーションが似ていたので、閃いちゃいました!」


 興奮気味なシャルウィナの言葉を受けるなり、イリスもまた少し上気した顔でそのように答えた。

 どうやら二人の盛り上がり方からするに、ミラの髪型は、とある小説のキャラクターを基にしたもののようだ。

 余程の出来栄えなのか得意げなイリスと、その仕上がり具合を絶賛するシャルウィナ。

 するとだ。そのように盛り上がった末に、だからこそ服も完璧にしてしまおうなどと二人が言い出したではないか。


「いや、変装用の地味目な服ならば、もうあるのでな──」


 明らかに熱に浮かされたような……病的でいて狩猟者の如き目でミラに振り向いたイリスとシャルウィナ。

 そんな二人に対してミラは、テレサに貰った素朴な町娘風衣装を取り出して見せる。


「ブリジットぽくないですー」


「彼女は、こういった服は着ないですね」


 もはや二人は完全にミラを、『ミッドナイト・サーチャー』なる小説のブリジットっぽく仕上げる気満々のようだ。

 どうすれば、もっとブリジットっぽく仕上げられるだろうかと熱く語り合う二人の熱は、そう簡単に冷ませそうにはなかった。

 ただ、そうしているイリスは、とても楽しそうだ。

 ゆえにミラは取り出した服をしまい、好きにしてくれとばかりに全てを二人に委ねるのだった。











さて、二週に亘っての和牛チートデイが終わりました。

実に素晴らしい二週間でしたね!

明日は、冷凍してある豚バラでのチートデイ予定です。

豚バラも美味しいですよね。


と、つい先日の事です。

編集さんに、こう言われました。

もっと景気の良い話をしてください、と。


これまで贅沢していたという話を色々としてきましたが……編集さん曰く、そうでもないというのです!

そして、だからこそ、

まるでうちがあまりお金を払っていないみたいに見えるじゃないですか! と、言うのです。


これまで贅沢してきたつもりでしたが、

それは、今まで積み重ねてきた日常基準での事だったようです……。


そこで考えました。

お世話になっているマイクロマガジン社様に、そのような迷惑をかけるわけにはいかないと!


よって、それを考慮した今年の目標を設定しました。

それは、高級品を買う事です。

アニメ化を記念するという、絶好の理由もありますからね!


では何を買おうか。

考えた末に思いついたのは、


懐中時計です!


ある国家錬金術師も持っていた懐中時計。

なんかカッコいいですよね!

なんとも中二心に突き刺さる、魅惑の一品だと思いませんか!?


という事で今年の目標は、


アニメ化を記念して、お高い懐中時計を買う。


と決定しました!!

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― 新着の感想 ―
[一言] (読み返すで「名も無き四十八将軍」の人達を確認途中) 今更ですけど… 「イラ・ムエルテ」本拠地調查途中、イリスのために、団員一号の召喚に難色を示すのに… 結局、悪魔戦の最中にエギュールゲイ…
[一言] 世の中には【億越え】の懐中時計何てものも...
[一言] アイゼンファルドのバブみが役に立つ日が来ようとは。 ワーズランベールを呼ぶんならアンルティーネとサンクティアも一緒に呼べば、2人に地味ネタで弄られる彼が見れて、早めに男への恐怖が薄れたかも…
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