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381 ヒルヴェランズ盗賊団攻略戦

三百八十一



 アーク大陸中央部、林に囲まれた平原のど真ん中にヒルヴェランズ盗賊団の本拠地はあった。もはや一つの街……というより要塞のようですらあるそれを、レイヴン達は遠くの木々の間から望んでいた。


「トーラスターム国から完了の合図を確認。これで全て配置完了だ。さて、いよいよだぞ。お前達も準備はいいな?」


 周辺諸国の兵士達の展開準備が完了したという合図が、通信用の術具に届く。これより作戦の開始と共に、林に潜む一万の兵士達がこの平原を一斉に包囲する手筈だ。

 それを確認したレイヴンは、ここからが出番であると揃った仲間達に声を掛ける。

 ゴットフリートが合流してから三日後の今。遂にヒルヴェランズ盗賊団討伐、兼『イラ・ムエルテ』の最高幹部が一人、イグナーツ捕縛作戦開始の時がやってきた。


「よっしゃ、ようやくだな!」


 今にも飛び出して行ってしまいそうなほどに気合が入っているのは、やはりゴットフリートだ。三日間も大人しくしていた分、正義の心は最高潮に燃え上がっているようだ。


「早く帰りたい……ベッドで寝たい……」


 エリュミーゼはというと、野営用の簡易ベッドがお気に召さなかったらしい。いつも以上に眠たげな表情であった。

 だが、そんな彼女をやる気にさせる方法を心得ているレイヴン。「帰ったら一日中寝て構わない。俺が許可を取ってやる」と言えば、エリュミーゼは「約束だから」と応え、それはもう覚醒でもしたかのように顔つきが変わった。


「さて、俺も狙撃地点に移動しておく。タイミングは合わせる」


 そう言って一行から離れ林の中に消えていったのは、シモーネクリスだ。迷彩柄のマントを羽織った彼の姿は熟練兵のそれであり、木々に紛れる狙撃手の如くだった。

 そうして残る者達もまた、十分に士気を高めていく。

 これからレイヴン達は、たった十人で、数千人にも及ぶヒルヴェランズ盗賊団との戦闘を開始する事になる。見かけでは圧倒的な人数差だが、ここにそれを心配する者は皆無だった。

 それどころか彼らの顔には余裕すら浮かんでいる。だが、かといって慢心の色は微塵もない。そこにあるのは、ただ任務遂行の意思と、ほんの僅かな義侠心だ。


「よし、サイゾーに合図を送った。始まるぞ」


 最後にそうレイヴンが伝えたところ、各々の反応は様々だった。

 ゴットフリートは平原に広がる本拠地を見据え、今か今かといった顔で、その時を待つ構えだ。

 対して、エリュミーゼのように耳を塞ぐ者もいた。衝撃に備える構えである。

 そのように、それぞれが構えた数秒後、あまりにも鮮烈に戦闘開始の合図が轟いた。

 爆炎と爆炎、更に爆炎。本拠地の各所で赤々と燃え盛るような爆炎が幾つも上がる。そして僅かに遅れて響くのは、耳をつんざくほどの轟音と大地を震わせる衝撃。

 それは、敵地に潜入したサイゾーによる破壊工作によるものであり、また開戦を知らせる狼煙だった。


「よっしゃー!」


 当然の如く、いの一番に飛び出していったのはゴットフリートだ。特大剣を手にしながらも、有り得ない速さで駆けていく。


「直ぐ行って、直ぐ帰る」


 彼に続くのは、なんとエリュミーゼである。作戦が早く終われば、それだけ早く帰れるからという単純な動機だ。

 だが、そんな二人よりも先に仕掛けた者がいた。

 それは、シモーネクリスだ。開始の合図が見えたところで、即座に狙撃が始まった。直線軌道を描く彼の投槍は、攻城兵器をも軽く上回る破壊力でもって本拠地の防壁を破壊する。


「各自、包囲殲滅開始。討ち漏らしても周りの兵士が何とかすると思うが、なるべく処理するように」


 合図と共に、待機していた兵士達も動きだした。それをしっかりと確認したレイヴンは最後にそう告げてから、自らも戦場に向かい駆け出していく。そして残るアルトエリーにハートシュルツら六名の将軍達はというと、正面から突っ込んだ三人と違い、それぞれ広がってから敵陣を囲うようにして戦略的に突入していった。




「おい! 今の爆発はなんだ!? 何が起きた!?」


「誰か術具でも暴発させたのか?」


「そんなところでぼさっとするな! 早く火を消すぞ!」


 ヒルヴェランズ盗賊団の本拠地では、突然の大爆発によって混乱が広がっていた。

 誰も手が出せない大陸最強の盗賊団という立ち位置。加えて禁止術具なども多く保有している事が災いしてか、それが破壊工作によるものだと直ぐには気付かなかったのだ。

 いつもの事故が、いつも以上の規模になっただけ。それが彼らの最初に思った事だ。

 だが、真実は別にある。そうして気付かぬ間に──


「敵襲だぁぁぁぁぁ!!」


 最速最短で突入して暴れ始めたゴットフリートとエリュミーゼ、更に防壁の瓦解によって彼らはようやくそれが襲撃であると気付いた。


「おい、あれを見ろ! 兵士達に囲まれているぞ!」


 更に見張り塔にいる男の一人が叫ぶ。数分前まで異常なしだったはずが、いつの間にか林の中より多くの兵士達が現れたと。


「どういう事だ! なんで警報が鳴っていない!?」


 当然、目視の難しい林には、ところどころに監視用の術具が仕掛けられていた。あれだけの兵士が侵入していれば、反応しないはずがないのだ。けれど監視装置は沈黙したまま。


「これは……導線が切られて……」


 その受信機を慌てて確認した男は、そこに残る痕跡を前にして目を見開く。監視装置を制御する重要な術具が、人為的に破壊されていたのだ。


「ああ、それは拙者が切っておいた、でござる」


「な……!?」


 常に人がいる見張り塔にもかかわらず、いつの間にか受信機が破壊されていた。その状況に戦慄していたのも束の間、男は直ぐ背後から響いてきた声に身を震わせる。

 だが男は身を震わせただけで、もう何も出来なかった。その背に突き立てられた小さな刃によって、心臓を貫かれていたからだ。

 音もなく崩れ落ちる男。その姿を前にしたもう一人の見張りは、そこに佇む黒装束の男──サイゾーを睨み、「な、なんなんだお前は!」と叫ぶ。


「拙者は、影。闇を闇へと葬る者、でござる」


 サイゾーは、そう告げながら右腕を振るった。そして鋭く奔る小さな刃物は見張りの喉に突き刺さる。

 見張りは、もう何も言う事なく膝をつき永遠に沈黙した。


「南無阿弥陀仏……」


 そっと黙祷したサイゾーは、直ぐ傍に備え付けられている通信装置を手に取った。


「こちら見張り塔。敵の司令官らしき人物を目視で確認、中央広場へと向かっている模様です!」


 そう通信装置を使い報告をするサイゾー。いったいどういった技なのか、その声は先程始末した男そのものであった。


『了解、そのまま監視を続行しろ、絶対に見失うんじゃないぞ!』


 返ってきた答えには、こちらの正体を疑う色が一切見られなかった。完全に報告を信じ切っているようだ。

 サイゾーは「わかりました!」と答えると、音もなくその場を後にする。

 彼が担うのは破壊工作ともう一つ。それは、情報操作だ。

 そして情報操作は、もう三日以上前から始まっていた。

 ヒルヴェランズ盗賊団は、今回のような各国合同での襲撃に備え、周辺諸国の動向を見張るための人員を配置していた。一万にもなる兵士が動いたとなれば当然、報告が入る体制だ。

 けれど、そのような事は一度もなく、昨夜も異常なしという報告で終わった。否、終わらせていた。

 この本拠地にある通信装置は、サイゾーの工作によって外部との連絡が出来ない状態にある。ゆえに、偽の報告もし放題というわけだ。




「おお、どんどん集まってきているな。よし、まとめてかかってこい!」


 中央広場にて数百という盗賊達に囲まれているのは、ゴットフリートだ。だがそれでいて近づく端から斬り倒していく彼の勢いは、ますます激しくなっていく。彼一人だけでありながら、この場こそが主戦場と言っても過言ではないほどの戦力が集中していた。

 数多の術が殺到し、一級品の装備で身を固めた盗賊達が休みなく攻めてくる。だが、そんな戦場にあってもゴットフリートは、一切の躊躇いも一切の迷いもなく、その手にした特大剣を振るう。

 その一撃は、正に必殺。刃が閃くたびに盗賊達が倒れていく。


「報告を受けてきてみれば……まったく、なんて有様だよ。てめぇ、ただの賞金稼ぎじゃねぇな?」


 百近い盗賊を成敗したところで、なんと一人の男が空から下りてきた。この盗賊団の幹部だろうか、他に比べて更に強力な武具で身を固めた彼は、一目でわかるほどに只者ではない雰囲気を漂わせている。

 また、そんな男の実力を証明するかのように残りの盗賊達が喚き始めた。


「よっしゃ隊長だ!」「やっちまってください!」「へへ、これで終わったな」


 その反応からして隊長と呼ばれた男は、それほどまでに信頼される実力の持ち主のようだ。不思議とこの場が、形勢逆転とでもいった雰囲気に染まりつつある。

 勝利を確信したかのように笑う盗賊達。対してゴットフリートはというと、こちらもまた快活に笑っていた。


「ああ、その通り。賞金稼ぎじゃあないな──」


 盗賊隊長に真っすぐ向かい合ったゴットフリートは、「──これは、公務だ」と続けながら特大剣を構える。


「公務だと? 何を言って──……!」


 周辺諸国には、ヒルヴェランズ盗賊団に逆らえる力などない。よって役人が、こんなところに来るわけがない。加えて軍が動いているという報告も無しだ。

 盗賊隊長は、何を馬鹿なといった様子で笑おうと──したところで口をつぐんだ。ほんの僅かに残る可能性が脳裏を過ったからだ。

 そしてその予感は、ゴットフリートの分かりやすさによって証明された。


「バカな……有り得ない。貴様……その姿、そしてその剣……アトランティスの将軍ゴットフリートか!?」


 現役で活躍している事もあってか『名も無き四十八将軍(ネームレスライン)』の知名度は特に高い。だが国を出る事はほとんど無く、今回はかなり特殊な状況だった。

 ゆえに盗賊隊長の顔に浮かんだ動揺には、戦慄と共に驚きが混じっていた。

 どれだけ大きな盗賊団であろうと、アトランティスは動かない──いや、動いていないはずだった。

 その知名度、そして他を圧倒する武力を有する将軍達は、それゆえに外交などで国を出るだけでも大騒ぎだ。

 特に限定不戦条約の失効が迫った今は、最も各国がピリついている時期である。そんなタイミングで、街一つを一人で落とせてしまえるような将軍を動かすなど、周辺諸国に余計な緊張を与えるだけといえる。

 あまつさえ完全武装しての戦闘行為までも行うとなれば、無数のハードルを乗り越える必要があった。

 それほどまでに、国家クラスの最高戦力とは扱いが難しい存在であるのだ。

 加えて、だからこそその戦力が動く際には相応の情報が流れる。そのためこのヒルヴェランズ盗賊団では、そういった情報をいち早く得るための情報網が幾つもあった。盗賊団の脅威とするのがアトランティスの『名も無き四十八将軍』と、ニルヴァーナの『十二使徒』だからだ。

 しかし彼らに、『名も無き四十八将軍』が動いたという情報は入らなかった。

 その原因は、この作戦がエスメラルダとの貸し借りに起因するからだ。実際には公的ではなく私的な出国だったため、彼らの網にかからなかったのである。

 結果、その脅威は彼らの目の前にいた。


「いやぁ、俺も有名になったもんだな。……その通りだ」


 どこか照れたように笑うゴットフリートは、次の瞬間にも数十という盗賊達を一度に斬り伏せてみせた。そして鋭い眼光を湛えたまま「で、お前がここの親玉か?」と問う。


「いや、違う。俺はただの小隊長だ。うちの団長を狙っているっていうのなら、ここはハズレだぜ」


 そう答えた盗賊小隊長は、続けて提案する。「なあ、将軍さんよ。見逃してくれるってんなら、親分が使っているだろう抜け道の場所を教えるぜ」と。

 盗賊小隊長は、わかっていた。アトランティスの将軍が攻めてきた今、この盗賊団が壊滅する事を。そして団長は逃走を図るとも。それゆえの提案だ。


「いや、それはもう間に合っている。それに、一人も逃がすなというお達しだ」


 一考する事もなく提案を却下したゴットフリートは、一歩二歩と盗賊小隊長に歩み寄っていく。


「いや、待てよ……そう、ならば取引だ! 大陸各地にある宝の隠し場所について教える! あんただけに、だ。そこには金目のものだけじゃあない、伝説級の武具だって置いてある。な、どうだ? あんた、そういうの好きじゃないか?」


「……ああ、好きだな。それは魅力的だ!」


 盗賊小隊長の言葉に反応するゴットフリート。伝説級の武具ともなれば、その力は千差万別。あればあるだけ戦術や切り札が増えるというものだ。

 ゆえにきっと、反応するのはゴットフリートだけではないだろう。他の将軍達もまた、それを聞いたなら興味をもったはずだ。

 そして同時に、全員が同じ事を思うだろう。倒してから、吐かせればいいと。


「くそっ……やっぱりそうなるかよ」


 僅かにも足を止めないゴットフリートを前にして、交渉は無駄だと悟り後ずさる盗賊小隊長。

 そして、いよいよその剣が届こうかという距離にまで迫った時だ。


「今だ!」


 盗賊小隊長が叫ぶと共に、周囲の建物の壁が開いた。

 そこに隠されていたのは、特大のバリスタ。四方を囲むようにして配置されたそれは、間髪を容れずに特大の矢を放った。

 しかも、それだけではない。周囲に待機していた盗賊達が、禁制品の術具を起動し、獄炎を降り注がせたのだ。

 そう、盗賊小隊長は時間を稼いでいた。そして最も狙いやすい位置にまでゴットフリートを誘導したのである。

 たとえアトランティスが誇る最高戦力とて、無敵ではない。直撃すれば、ただでは済まないだろう。


「面白い!」


 にっと口端を吊り上げたゴットフリートは、僅かに構えてから全力でもって特大剣を地面に叩きつけた。

 瞬間、暴風が吹き荒れると、爆風にも近い衝撃波が一帯に広がった。

 周辺の建造物には大きな亀裂が奔ると共に、バリスタの矢と獄炎もまたゴットフリートを囲んでいた盗賊達諸共吹き飛んでいく。

 なんとゴットフリートは、たった一撃によって迫る攻撃の全てを無力化してしまったのだ。

 だが、そんな局所的に起きた嵐の中で、耐える者が一人。

 盗賊小隊長だ。地に伏せる事で被害を最小限に抑えた彼は、その直後に飛び出した。

 禍々しい文様の浮かぶナイフを手に、ゴットフリートを狙い一直線に跳ぶ。

 対して全力を込めて振るわれたゴットフリートの特大剣は深く地面にめり込んだまま。この瞬間に引き抜いたとしても、僅かの差でナイフが先に届くだろう状態にあった。

 ゴットフリートの特大剣よりも、盗賊小隊長のナイフの方が早い。全力の一撃だったゆえに、それは覆せない事実だ。

 だからこそゴットフリートは、何の躊躇いもなくその手を離した。そして最短距離でもって迫る盗賊小隊長の顔面に、その拳を叩き込む。

 特大剣を片手で難なく振り回していたゴットフリートの腕。そこから放たれた拳撃は、そこらの名剣を凌駕するだけの威力を秘めたものだった。

 ゆえにその直撃を受けた盗賊小隊長は、そのまま真横に吹き飛ばされて背後の建造物の壁を突き破っていった。


「あ、力が入り過ぎたか? 宝の隠し場所を訊かねぇといけなかったが、まあ次だ、次!」


 瓦解し崩れ落ちていく建造物からそっと目を背けたゴットフリートは、別に知っていそうな者を捜して更に突っ込んでいった。




 ゴットフリートが暴れる場所より少し離れたところ。小さな建造物が複雑に入り組む道を一人の少女が歩いていた。


「みっけ。五十人目、ごあんなーい」


 いったいヤル気があるのかないのか。どこか気の抜けるような声で、そんなカウントをする少女はエリュミーゼだ。

 白いローブをはためかせながら歩く彼女は、目に入った端から獅子型ゴーレムをけしかけては盗賊達を石の檻に閉じ込めていく。

 エリュミーゼのクラスは、死霊術士。ゆえにその檻もまた特別製のゴーレムであり、彼女に追従するように自走している。その中には気絶させられた盗賊達が既に五十人ほど閉じ込められていた。


「ここだ……!」


 建造物の上から、迸る気合を込めて斬りかかっていく盗賊が一人。

 彼は、エリュミーゼの更に前方にいる獅子型ゴーレム──数十という盗賊達を容易く叩き伏せたそれと対峙するのを避け、術者本体を奇襲するという手段をとった。

 獅子型ゴーレム、そしてエリュミーゼからも死角となる頭上からの攻撃。彼がもっとも得意とする、一撃必殺の戦法だ。


「はい、五十一人目、ようこそー」


 それは最早、戦いなどではなかった。完全な不意打ちだったにもかかわらず、盗賊の男は容易く撃ち落され、檻に呑み込まれていったのだ。

 そう、エリュミーゼが操る戦力は獅子型ゴーレムだけではない。後続の檻型ゴーレムもまた、強力な戦闘力を有しているのである。その上部に備え付けられた筒状の何かは破壊力抜群の砲弾を放ち、また捕獲用アームまで射出するという万能振りだ。


「こっちだ!」


「喰らえやー!」


 そんな裂帛の気合と共に、二人の盗賊が左右の壁を突き破ってきた。その二人は、これまでの者達に比べて明らかに装備の質が違った。隊長格が連携をとってエリュミーゼを襲撃したのだ。

 その二人は、反応速度に加えて防具による頑丈さも相当なものであった。一人は檻型ゴーレムの砲撃が直撃したにもかかわらず、即座に体勢を立て直す。更にもう一人は紙一重のところで砲弾を躱しきった。そして獅子型ゴーレムが振り返るよりも先にエリュミーゼに迫ったではないか。

 そのまま近接戦ともなれば、死霊術士のエリュミーゼには分が悪い。

 ただ──だからこそ彼らは、そこに足を踏み入れるべきではなかった。『名も無き四十八将軍』の一人である彼女が、その弱点をそのままにしているはずもないからだ。

 二人がエリュミーゼの三メートル圏内にまで接近した瞬間に、それが動いた。

 それは、ずっとそこにあった。

 それは、常に獲物が掛かるのを待っていた。

 それは、まるで地獄の亡者のように手を伸ばし二人の男を捕えていった。


「なっ……ばかな!?」


「こんなところにも……!」


 それとは、地面だった。エリュミーゼの操るゴーレムが一体、地面に同化するようにして薄く広がっていたのだ。そして接近する二人に反応し、その足元より無数の手を伸ばして搦め捕ってしまったのである。


「残念でしたー」


 まったく哀れみのない声で言ったエリュミーゼは、手も足も出ない状態の二人のうち、より頑丈そうな防具に護られた男に向かい合った。


「くそっ……だが、この程度……!」


 力任せにもがく男。その膂力は確かなようで彼を拘束する腕がミシミシと軋む。

 エリュミーゼは、そんな男の兜を丁寧に外してから右腕を引き絞るようにして構える。それは正しく、右ストレートの構えだ。


「……はっ、止めといた方が身のためだぜ」


 エリュミーゼは細腕の少女だ。対して盗賊の男は、闘気によって鉄壁のような防御力を得る技を会得していた。どのような結果になるかは明らかというものだ。

 そっと獅子型ゴーレムに目をやった男は、今がチャンスとばかりに力を込めた。きっと拘束に集中しているため、獅子型ゴーレムを動かせず、だからこその右ストレートなのだろうと。

 少女の小さな拳に打ちのめされるはずはない。そう考え、その間に拘束から抜け出そうと画策した男。だが直後に「へっ?」と、間の抜けた声を上げた。

 その理由は、一つ。エリュミーゼの右腕にゴーレムが纏わりつき、まるで処刑人か何かかと見紛うような、凶悪ナックルが完成したからだ。


「や……止めてくださいませんでしょうか」


「残念でしたー」


 引き攣った顔の男に、今まで通りの調子で答えたエリュミーゼ。その次の瞬間に、色々と砕けるような鈍い音が響き渡った。

 更にその数秒後の事。もう一人の男の情けない声がした直後、同じような鈍い音がもう一度響いたのだった。










最近、steamなゲームライフを始めました。


steam、それは色々なゲームが買える凄いやつです。


そこで前々から気になっていたゲーム


baba is you なるゲームを買いました!

1500円くらいです。


パズルゲームなのですが、これがまた難しく……それでいて面白いのです。

時間があっという間に溶けていきます……。


しかし、だからこそ都合がいい!

エアロバイクを漕ぎながらやっていると、あっという間に目標を超えているなんて事が……。

なんといっても、数十分の間ずっと画面を見たまま考え続ける何てことがあるゲームですからね……。

しかしだからこそ、解けた時といったらもう!


次はどんなゲームを買ってみようかな……。

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― 新着の感想 ―
エリュミーゼちゃんがミラの精霊ハウス見たらどんな気持ちになるんだろうね(笑)
[良い点] 術師が強いんじゃない! 規格外な連中が強いんだ! あの大国からやってきた! 大剣を振り回してやってきた! 48人の一、ゴットフリィイイトォオオオオ!! [一言] こうやって見ると魔術って…
[一言] ・・・こんなのが48人もいる国が攻め込んでも撃退される……。 どんだけ化け物なんだ三神将……。
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