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357 イラ・ムエルテ攻略会議

三百五十七



 一通りの尋問を終えたミラ達は、王城の会議室に集まっていた。これから、どう動くかを簡単に決めるためだ。

 なお、ガローバの後、イーグルなる暗殺者にも尋問した。だが重要な情報は、ほぼガローバから得られていたため、あまり意味はなかった。

 新情報は、彼の師匠がガローバである事と、ヨーグは彼の兄弟子であった事、そして他にも袂を分かった二人の兄弟子がいるという程度のものだ。


「さて、どうしよっか」


 会議が始まるや、そう口にしたアルマ。

 多くの情報を得られた今、ここから大きく動いていく事になる。

 残る最高幹部の二人、イグナーツとユーグストの身柄の確保。そして、『イラ・ムエルテ』の支配下にある組織の一斉摘発だ。

 その影響力と規模からして、キメラクローゼンの件以上の大騒動になるだろう。

 だが、まず初めに話し合わなければいけない事が出てきた。

 それは四本の柱を束ねていたという真のボスについてだ。


「ともあれ残る二人を確保するのが、やはり一番の近道じゃろう」


 ガローバから訊き出した情報が真実であるならば、真のボスがいるという『イラ・ムエルテ』の本拠地は、海のどこかにあるという話だ。

 そう、正確な場所はまったくの不明だった。

 しかしながら、僅かな可能性は残っている。より深く追及した事で、幾らかの足掛かりが見つかったのだ。

 その可能性は、ガローバ達最高幹部四人が、それほど真のボスを信用していなかったから生まれたものでもあった。

 真のボスは謎ばかりである事に加え、何やらガローバ達とは違う目的を持っている。彼らは、そこに不信感を募らせていたそうだ。

 そのため、いざという時には、真のボスがいる本拠地を襲撃しようと考えていた。

 ゆえに四人は、秘密裏に本拠地の場所を特定するための術具を準備したという。

 ただ、相手にそれと悟られないように、また互いに先走らないよう牽制する意味も兼ねて、四つ合わせる事で場所を特定出来る仕組みになっているらしい。

 つまり四人全員を押さえなければ、真のボスには辿り着けないというわけだ。


「俺もそう思います。その後、カグラさんに術具の隠し場所を訊き出してもらうなりすればいいかと」


「ええ、私もそれが一番だと思うわ」


 ノインとエスメラルダも、ミラの意見に同意する。

 真のボスについては気になるが、現時点では手の出しようもないと。

 本拠地を捜そうにも、場所は広大な大海原だ。加えて方角すらわかっていない今、発見は絶望的である。

 ガローバ達が用意したという術具に賭けるのが、今とれる一番の手といえた。


「まあ、それしかないわよね」


 カグラもまた、素直に頷く。それが『イラ・ムエルテ』攻略の最後のカギであると。

 こうして全員の意思が一致したところで、次の話し合いが始まった。


「それじゃあまずは、ガローバとトルリ公爵が保管していた術具の回収についてね」


 犯罪組織『イラ・ムエルテ』本拠地への鍵となる術具入手について。アルマは初めに、攻略済みとなっている二人分を議題に挙げた。

 まずはガローバが保管している分だが、この点については既に在りかが判明していた。カグラが術で洗いざらい自白させたからだ。


「そこなら、私がぴゅーっと行って回収してきますよ。ピー助を飛ばせば早いですから」


 ガローバ所有の術具については、そうカグラが申し出た。

 ガローバの隠れ家は、ニルヴァーナの東にある群島の一つ。その特定も完了している今、ピー助の速度なら日帰りで行けるだろう。


「ありがとうカグラちゃん。それじゃあ、そっちは任せるね」


 こうして一つは、簡単に目処が立った。

 次に回収したいのはトルリ公爵が持つ術具だが、これが少々面倒そうだ。

 まず秘匿されている術具の在りかを知るトルリ公爵は、監獄の中である。更に現在は、その私財やら何やらの一切合切がグリムダートの管理下におかれていた。

 よって、こちらにもピー助を飛ばして、さくっと回収してくるというわけにはいかない状況にあるのだ。


「頭の固い国だけど……うん、こっちは私がどうにかしてみる」


 グリムダートに交渉してみると言ったアルマは、それでいてため息交じりに苦笑した。

 しっかりとした理由はあるものの、いわばそちらの国の公爵の私物を寄こせという交渉だ。しかも、かの犯罪組織『イラ・ムエルテ』に関係する品である。

 その件に関わらせろといった返事が来るのは目に見えていた。これを壊滅させたとなれば、自国の公爵がしでかした不祥事も多少は誤魔化せるだろうからだ。

 なるべく早く交渉を終わらせたい。アルマは最後に「終わらせる」という約束ではなく、ただ希望を述べてトルリ公爵の件を預かりとした。




「残る二人だけど、まずは制圧から始めないとよね」


 続き議題に挙がったのは、身柄の確保からが始まりとなる二人。イグナーツとユーグストについてだ。

 その中でも特に問題なのが、イグナーツである。


「軍団規模の盗賊団ともなると、ただの盗賊狩りとは訳が違ってきます。これを、どのように攻めたものか……」


 そう答えたノインは、また厄介な事になったと眉間に皺を寄せた。

 数千人規模の大盗賊団。これを攻略するには相応の戦力だけでなく、周辺地域に敗走した盗賊が散らばらないように配慮する必要もあった。

 大切なのは、数だ。盗賊団を逃がさないだけの兵士を揃えなければ、イグナーツを捕縛出来たとしても、その後の対応が困難極まる事になる。

 数といえば、ミラお得意の『軍勢』だが、そこでノインが付け加えた。自身とミラとでこれの攻略を行ったとして、イグナーツの捕縛は出来そうだが、完全勝利は難しいと。

 盗賊団の規模と要塞の広さ、当該の地形からして、『軍勢』とて完全にはカバー出来ないだろうとの事だ。


「それなら、こういうのはどうかしら?」


 どうしたものかと考える中、そう口にしたのはエスメラルダだった。なんと、盗賊団を殲滅出来るだけの戦力と、完全に封じ込めるだけの兵力に当てがあるそうなのだ。

 それは、どんな案かと問うたところ、アトランティス王国の力を借りるというものだった。

 エスメラルダ曰く、別件で、以前アトランティスに協力した事があるらしい。

 その礼として、要請すればアトランティス王国から『名も無き四十八将軍』を五人派遣するという密約が交わされているというのだ。


「それとね、アトランティスの将軍が五人も出張ってくるってなったら、周辺の国も動かせそうじゃないかしら」


 アトランティスの将軍が動く。それは他の国を動かすための要因になると、エスメラルダは言う。

 中でも特に、盗賊団をどうにかしたくとも軍事力の及ばない周辺の小国が狙い目だと。

 軍事力は足りないが、それらの国から兵を集めれば、包囲出来るだけの数は揃う。

 今までのままなら揃えただけでは戦力不足だが、アトランティスの将軍がそこに加わるとなれば勝率は十割だ。

 これまで高い料金を盗賊団に払わざるを得なかった国なら、きっとこの話に乗ってくるはずだ。そうエスメラルダは続けた。


「ほぅ、それは良い手じゃな」


 勝機があるどころか、現状における最善にも思える案だとして、支持するミラ。


「あいつらが出てくるなら、どうにかなりそうですね」


 ノインもまた乗り気だ。

 というのも、アトランティスの将軍は、滅多に他国の問題には介入しないという前提があった。

 それは『名も無き四十八将軍』という看板が、それだけ重く、強大な影響力を持つためである。そんな将軍が盗賊団の討伐に動くとなれば、周辺諸国が大いに触発されるのは間違いない。

 そうなれば問題解決のため、他国に後れを取らないためにと、兵が集まるだろう。むしろ、ここで出兵しなければ国のメンツが潰れるとさえ言える。

 実現すれば、ヒルヴェランズ盗賊団の壊滅も時間の問題というわけだ。


「よし、それでいきましょ!」


 アルマもまた同意すると、イグナーツの対応はエスメラルダの案で確定した。

 そうして、三つの目処が立った。残るは、変態といっても過言ではない『闇路の支配者、ユーグスト・グラーディン』だけだ。


「それじゃあ、最後の一人だけど──」


 アルマが議題に出したところで、すっと手を挙げた者がいた。


「──わしが行こう。イリスの分も、たっぷりぶん殴ってやらねば気が済まぬのでな」


 立候補したのはミラだった。

 巫女の能力対策として、イリスを男性恐怖症にした挙句、今でも酷い事を続けているユーグスト。奴には、とびきりきつい仕置きが必要だと、それはもうヤル気満々だ。


「うんうん、思いっきりやってやらないとだよね!」


 ミラの言葉にこれでもかと同意するアルマ。だが、今のミラには大切な役目があった。

 そう、イリスの護衛である。


「でもそうなると、暫く離れる事になっちゃうか。イリスの方は大丈夫?」


 鉄壁の要塞にいるといっても過言ではないイリス。とはいえ万が一という事も有り得る。

 実際、暗殺者のガローバ達が、王城の深くにある特別監獄にまで侵入していた。

 しかもそこで、標的であるヨーグの口封じまで成功させているほどだ。

 なお、ガローバから訊き出した手口は、特別な毒蜂を使うというものだった。

 標的であるヨーグの匂いを覚えさせてから放つ事で、後は毒蜂が格子をすり抜け、武具精霊にも感知されず仕事を全うしたわけである。

 他にも、彼の知らぬ彼のような暗殺者がいないとも限らない。

 ゆえに最後の砦として、ミラが護衛についているのだ。


「それならば、心配はないじゃろう。わしがここにいる今でも、しかと団員一号と騎士達が護っておる。加えてユーグストをしばきに行く時は、シャルウィナを置いてゆこう。本好きで、最近は漫画にも嵌っておるようなのでな。きっとイリスとも話が合うじゃろう」


 心配そうなアルマに対してミラは全く問題はないと、それはもう自信満々に答えた。

 今のイリスの部屋は、この国で一番安全な場所であると同時に、不届きものには一番危険な場所になっていると。


「うっわ、とんでもないな……っていうか、騎士達って大丈夫なのか? あれだよな、武具精霊だよな? 見た目からしてイリスちゃんの男性恐怖症が反応しそうなんだが……」


 そう、懸念を口にするノイン。そこには不安だけでなく、どこか希望めいた色も混じっていた。武具精霊が大丈夫だったなら、同じような鎧があれば護衛に紛れ込めるのでは、などと考えているようだ。

 だが、その希望は叶わぬもの。


「うむ、それは問題ない。監獄に配置したものと同じように、ステルス状態で待機させておるからのぅ。そもそもイリスは、灰騎士がいる事に気付いてすらおらぬじゃろう。あの部屋は、既にわしが何日か空けたところで問題はないくらいに固めておるぞ」


 イリスの部屋のあちらこちらに配置されている灰騎士の護衛。見た目の威圧感は相当である事に加え、その体躯も極めて雄々しいものだ。ノインが言うように、男性恐怖症が反応する恐れは十分にあった。

 だからこそのステルスだ。現状その存在を知るのは、ミラと団員一号のみである。


「流石、じぃじ。やっぱり任せて正解ね」


 思った通りの仕事ぶりだと称賛したアルマは、だからこそユーグストをミラに任せると続けた。

 また、イリスと共に過ごしたミラだからこそ、ユーグストへの怨みも任せられると。

 そうして一先ず、術具入手までの予定は決まった。

 と、そこまでの話し合いが終わったところで、気付けばすっかりと夜になっていた。











フフ

フフフフフ

フフフフフフフフフ。


買っちゃいました。買っちゃいましたよ!


そう、遂に我が家に電気圧力鍋がやってきたのです!

しかも、高級なやつです。パナソニックです!


ただ本当は、店に行って直接見て吟味したかったのですが、

このご時世という事もあって、今回はヨドバシドットコムを利用しました。


そして、去年の引っ越しの際に、幾らか家電を揃えたのがヨドバシだった事もあり、

その時のポイントが残っていたという!

32000円くらいだったところを、24000円くらいで買えちゃいました!


一昨日、早速あんかけを作りました。今度はカレー風あんかけです!

いい感じに出来上がりました!

今度は角煮とか、色々と作ってみたいところですねぇ。

可能性が広がります!

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― 新着の感想 ―
[一言] 返信ありがとうございます。 炊飯器2台持ちで片方炊飯器調理に使って色々と便利です。
[一言] 電気圧力鍋は持っていませんが、高圧土鍋厚釜炊飯器便利です。
[気になる点] 召喚体を維持できる距離的な限界ってありませんでしたっけ……? このまま離れたらダメなのでは?
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