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349 罠に誘われた獲物

いよいよ漫画版6巻の発売日が近づいてきました!

1月30日発売となります。

よろしくお願いします!

三百四十九



 闘技大会の予選が始まってから数日。ミラ達は、至って平和な日常を過ごしていた。

 朝、目が覚めたら、いそいそと準備を整え三人揃って魔導テレビの前に陣取り、闘技大会の予選を存分に観戦するのだ。

 しかもこの場には、数多くの戦いを潜り抜けてきた者がいるため、ただの観戦だけでは終わらない。


「わわ! 凄いですー! 何があったのか見えませんでした!」


 などとイリスが言えば、


「今のは魔術の一つ、《戦迅の風》じゃな。ほんの僅かな時間じゃが、猛烈な風を起こすという術じゃ。しかも、その風で自らのマントを飛ばして目くらましにするとは、考えたものよ」


 と、一般ではわからないような部分をミラが解説しており、闘技大会におけるイリスの没入具合は極めて高かった。

 加えて、この予選のためにアルマが指示を出し、係の者が相当に頑張ったのだろう。予選を映す魔導カメラの数は多く、様々な角度や距離から観戦する事が出来ていた。

 もしかしたら、現地で見るよりも楽しめるのではないかというほどの充実ぶりだ。

 そして、そのチャンネル捌きにおいて、イリスは既に達人の域にあった。見どころの場面をいち早く察して、チャンネルを回していくのだ。


「うわぁ……この方、とんでもなく強いです。それに可愛いですー!」


 大盛り上がりな予選のバトルロイヤルを観戦していた時だ。そこに一人、これまで以上に群を抜いた力を見せつけた者がいた。

 開始早々に対戦相手の九人を倒してしまったのは、可愛らしい衣装に身を包んだ少女であり、ミラが良く知る人物でもあった。


「そうじゃのぅ、馬鹿みたいに強いのぅ」


 予選の時点で早速とばかりにその頭角を現したのは、やはりメイリンだった。それでも手加減はしているつもりなのだろう、片足立ちで左手だけしか使っていないにもかかわらず、次から次へと対戦相手が昏倒していく様は、まるで手品師か催眠術士のようですらあった。

 と、そのようにして観戦を続けていると、ちらほらと別格な強さを備えた猛者達が見つかっていくものだ。


「わっ! 凄いです! ヴァルザーグさんです!」


 その日もまた、無双するほどの実力を見せつける者がいた。

 ヴァルザーグ。元Aランク冒険者である彼は、他の冒険者だけでなく、一般層からも一目置かれるほどの人物であった。

 こなした依頼は数知れず。彼に救われた者も数知れず。始末された悪党も数知れず。

 冒険者総合組合に多大な貢献をした彼は今、その組合にて、後進を育てるための教官役としても活躍している。かのAランク冒険者である『一刀竜断のジャックグレイブ』もまた、彼の弟子だったりするのだ。

 また、カードにもなっているため、イリスの視線は特に熱い。

 腕試しだろうか、それとも有望な弟子でも探すつもりなのだろうか。ヴァルザーグが戦う舞台は、気付くとバトルロイヤルではなくなっており、稽古のような有様になっていた。

 それなりの実力を誇る者達が、ヴァルザーグ相手に軽く転がされていく。それでもまた立ち上がり向かっていく様は、熱血漫画のようであった。

 だがそんな舞台の上で、ヴァルザーグに向かわずに佇む男が一人。


「いきなりクライマックスですー!」


 八人が戦闘不能となったところで動き出した、その男。イリスが言うに、彼は最近活躍中のAランク冒険者であるそうだ。

 そう、なんとバトルロイヤルの舞台に、元Aランク冒険者と現役のAランク冒険者が同時に上がっていたのだ。

 イリスが言う通り、二人の戦いは熾烈なものであった。

 予選の一戦目とは思えないほどに激しい技の応酬。そして熟練した技術による鋭い攻めと、柔軟な発想による切り返し。こういった舞台でなければ見る事は出来ないだろう、本物の力と力のぶつかり合い。

 その一戦は、全ての観客達の目を釘付けにした。イリスもまた、釘付けになっていた。

 だが、そうなるのも仕方がない。それはきっと大会の歴史に残るであろう名勝負となったからだ。

 と、そんな勝負が繰り広げられている中。


(大丈夫じゃ、大丈夫じゃぞ。わしが……わしがしっかりと見ておったからな! お主の勇姿は、わしが見ておったぞ、ブルース!)


 予選会場にいる全ての視線がヴァルザーグらの試合に注がれていた中、その隅の方で、そっと決着した試合があった。

 ブルースの初戦だ。戦士クラスの者達を相手に見事な召喚術捌きで下したブルース。しかも、圧倒的な力を見せつけるような、そんな試合運びですらあった。

 間違いなく、誰もが召喚術の秘めた力に驚いたであろう一戦だ。

 けれど、その一戦を見ている観客は一人もいなかった。それほどまでにヴァルザーグの戦いは盛り上がっていた。

 だが、ミラだけは見ていた。激戦が繰り広げられているテレビ画面の端に映る、彼の活躍ぶりを。

 とぼとぼと歩いて画面外に出て行ったブルースを思い、ミラはよくぞやったと惜しみない称賛を送るのだった。




 毎日、数々のドラマや名勝負が生まれる大会予選。それも折り返しを過ぎた頃である。

 いつも通りにお菓子やジュースを並べて予選を観戦していた時に、通信装置の呼び鈴が鳴り出した。


「イリスですー」


 ぱっと立ち上がり応答するイリス。すると、いつも通りに『はい、アルマでーす』と返ってきた。ただ、そこから続く言葉の雰囲気が少し変わる。


『ミラちゃん、いる? お客さんが来た(・・・・・・・)から、こっち来てもらっていーい?』


 それは普段通りの呼び出しであったが、どことなく緊張感が混じったものだった。

 ただ何よりも、その言葉に含まれた秘密の符丁に、ミラは反応する。


「うむ、わかった。直ぐに行こう」


 そうミラが答えたところで、アルマは『じゃあ、よろしくー。あ、イリス。今日は良いお肉を仕入れたから楽しみにしててね』と、いつも通りの口調で告げてから通信を切った。


「さて、誰が来たのかのぅ」


 若干、とぼけるようにして呟きつつ立ち上がるミラ。すると「今夜は焼肉パーティですー」と盛り上がっていたイリスが、ふと考える素振りを見せた後、閃いたと表情を輝かせる。


「もしかしたら、『グリモワールカンパニー』の人かもですー! 早速、特別なカード用の写真を撮りにきたんですよ!」


 イリスは、きっとそうだと言わんばかりな様子で「私も欲しかったですー」と羨んでは、楽しそうな笑みを浮かべていた。




 イリスの部屋を出たところ、そこにはセシリアの姿があった。制圧部隊の隊長をしていた彼女は、ミラの案内をするために待っていたそうだ。

 そうしてセシリアに案内してもらう事、五分と少々。ミラは、城に隣接する塔にやってきた。

 セシリアに礼を言って中に入り、言われた通りに階段で地下へと進む。そうして突き当りの扉を開いた先にいたのは、アルマとエスメラルダだった。


「して、状況はどうじゃ? 上手くいったか?」


 ミラがそう問うたところ、アルマは振り返ると共に「予定通り、見事に網にひっかかったわ」と告げて、促すように部屋の奥へ視線を戻した。

 見ると、この部屋は、これでもかというほどの尋問室であった。

 目の前には大きなガラス窓。だが、この部屋の様子からして、窓はきっとマジックミラーのようになっていると思われる。

 そして、その窓の奥には、重厚な椅子に拘束された男と、傍に立つノインの姿が見えた。


「さて、彼はどんな秘密を教えてくれるのかしら」


「楽しみね、本当に」


 冷たく微笑むエスメラルダと、男を無慈悲な目で見据えるアルマ。

 ミラは、少し恐ろしげな二人からそっと距離をとりつつ、四肢と口を拘束されている男の様子を確認した。


(ふむ……如何にも悪党といった面構えじゃのぅ)


 人を人とも思わぬような目をした男は、傍に立つノインに何かを訴えるかのようにして唸り声を上げていた。

 その男は、この城への侵入を図った賊である。上手い事、地下監獄にまで忍び込んだものの、途中で準備万全に仕掛けられた罠に嵌った不運な男でもある。


(しかしまあ、思った以上に上手くいったものじゃな)


 ミラは、予定通りといった状況を前にして感心する。

 それは、カグラの術によって、ヨーグから重要な情報を全て聞き出した日の事だ。

 ミラ達は、それらの情報を踏まえて話し合い、罠を仕掛けていた。

 一つは、ヨーグの尋問についてだ。カグラの術の事は完全に隠蔽し、『ヨーグは極めて口が堅く、まったく情報を引き出せない』と、嘘の噂を流したのである。

 更に加えて、もう一つの手を打っていた。

 それはヨーグから訊き出した、組織と繋がりのある裏商人ステンダールへの接触だ。

 アルマは、騎士団の副団長に指示を出し、ステンダールに非合法の自白剤を仕入れるように依頼していた。しかもその際に、さりげなく素姓がバレるように仕向けさせていたのだ。

 どれだけ口の堅い者でも抗えなくなる自白剤を、国の者が秘密裏に注文する。

 アルマは、予想していた。その情報が必ず、ステンダールの口から組織へ届けられるだろうと。そして必ず、それを阻止するために組織が動くはずであると。

 その目論見は、見事に的中。幾つかの妨害工作も考えられたが、組織は情報流出を防ぐ上で最も確実な方法である、ヨーグの暗殺を決めたようだ。

 窓を隔ててこちら側には、小さな台の上に、拘束された男の持ち物であろう道具が並べてある。鋭い刃物の他、毒の類も用意されていた。


(あの男は、組織に切り捨てられたか。しかしまあ……捕虜を囮にするなぞ、随分な策を思い付いたものじゃな)


 情報を全て引き出したヨーグ。彼は既に裁判の後、死罪となるのが確定している。それだけの悪逆非道をヨーグは行ってきていた。

 アルマは、そんなヨーグの命を囮に使った。刑罰にかけるか、仲間の手で葬られるかの違いであり、その判断に慈悲などは一片もなかった。

 人として、また女王として多くの経験をしてきたのだろう。昔のアルマでは考えつかないだろう策であり、だからこそミラは、その強い意思を尊重して従った。

 その結果、こうして重点的に網を張っていたところに、まんまと暗殺者が忍び込んできたわけだ。

 後は、この男から、どれだけの情報が得られるかである。


「おーい、カグラやー。こちらへ来てくれんかー」


 ミラは、アルマの肩に乗っかっていたガウ太を下ろしてから、そう呼びかけた。

 すると、それから数秒後、ガウ太が光に包まれると、入れ替わるようにしてカグラがそこに降り立つ。


「よろしくね、カグラちゃん!」


 言うが早いか、猛烈な勢いで飛びついたアルマ。対してカグラは予想していたのか、それをひらりと躱して、素早くエスメラルダの隣に陣取った。アルマを窘める役でもあるエスメラルダの傍こそが、最も安全だと理解しての迅速な対処である。

 睨みを利かせるエスメラルダを前にして、しょんぼりと落ち込んだアルマは、こほんと改めるように咳ばらいをして用件を告げた。


「カグラちゃん、またあの術をお願い。その男から、洗いざらい情報を引き出したいの」


 そのようにアルマが頼めば、「わかりました」とカグラは即答した。けれど、後でぎゅってさせてという要望は、完膚なきまでに却下していた。











ところで、

遂にあのアニメが始まりましたね。


そう、オーフェンです!!!!


原作に出会ったのは、高校の頃でした。

図書室で借りたものです。

いやはや、嵌っていましたねぇ。それはもう、今の中二心の基礎が形成されるほどに……!


そして当然やりますよね。オリジナルの呪文考えたりとか……。


それももう、ずっと昔の事です。

それがまさか、またアニメになるなんて!

しかも原作通りに進む様子……!

楽しみですねぇ。

何といっても、高校を卒業した事で続きを読めていなかったのですから……。

実は結末を知らないのです。


最後までアニメでやってくれるといいなぁ……。



追伸

デラックス得丼、実装されたみたいですね!

何やら、500円ってなってました!

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― 新着の感想 ―
のーみそコネコネ
[一言] オーフェン、 「術の発動時のあれは呪文では無い、自分が気持ちを込められる言葉であれば何でもいい」だったと思います。
[一言] ブルース、よくやったそ!観てないけど!
感想一覧
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